2011年度予算編成にあたっての重要政策提言
格差と貧困が拡大し、暮らしていけないという声が広がり、昨年の総選挙では、政治変革を望む国民の意思で、歴史的な政権交代となった。しかし、民主党政権は、後期高齢者医療制度廃止や労働者派遣法の抜本改正など国民的な願いに背を向け、政治的行き詰まりの中、鳩山首相は8ヶ月で退陣を余儀なくされた。かわった菅内閣は、普天間問題で「沖縄県民より日米合意を優先」することや「消費税の増税と法人税減税をセットで」の打ち出し「衆院比例定数削減」など、アメリカや財界の要求にそった立場を鮮明にし、国民要求との矛盾を深めている。一方で高校授業料の実質無償化や30人学級実現の方向など、国民の声、運動が政治を動かしているという流れも重要である。
県民のねがいは県民意識調査でも明らかなように、雇用の安定と景気の回復、社会保障の充実など安心して暮らせることを切望している。しかし、県政はこれに応えるどころか逆行するものとなっている。
兵庫県が2000年からの「行革」、2008年の「新行革」は、県民の福祉やそれに携わる県職員の大幅削減をおこなう自治体の役割を持投げ捨てるもので、財政再建もできないものである。今年7月には「新行革プラン3年目の総点検における課題と検討方向について」を発表した。それによると老人医療費助成制度をはじめ福祉医療費など事務事業の大幅削減や県職員削減も14.5%、1560人減らされ、土木事務所、県税事務所、健康福祉事務所や農業改良普及センターなど県事務所は111カ所から71カ所へと「計画どおり」削減されているとしていると評価されており、それによる削減額は「効果額」として示されているが、削減で県民サービスはどうなったのか、県の職場や県職員の仕事の実態はどうか県民の実態や現場の実態については一切ふれられていない。
もともと財政が困難の大きな原因は、阪神・淡路大震災をも利用し、不要不急の大型開発をすすめてきた結果である。しかしその反省はなく、投資的事業は大型開発を「選択と集中」として進めるやり方は変わっていない。新名神、大阪湾岸線西伸部や播磨臨海地域道路など高速道路の建設をすすめることや、コウノトリ但馬空港の羽田直行便や阪神港の国際ハブ港化などを重点的にすすめようとしている。
また、県の企業誘致の全国1位、2位と、補助金をつぎ込んでも、パナソニックプラズマの第三工場の製造ラインが上海に移転になることからも、地域経済に本当に役立つのか大いに疑問があり、県の説明責任が問われるところである。 財政再建のために県がなすべきことは、県民の懐を温め、暮らしを応援する福祉・教育・医療を充実し、地域の経済を活性化させ内需を拡大することである。そのためには、何より雇用の安定が必要である。県として県下の大企業に安定した雇用と、下請け中小企業が安定した経営ができるよう、社会的責任をはたさせることである。また県自らも非正規雇用をあらため、住民福祉に携わる県職員の拡充を行い、責任を果たすべきである。地域経済を活性化させるためには、地域に根ざす第一次産業の農林水産業を基幹産業と位置付け、支援を強化すること。
また、県下の事業所数の99.1%、雇用の79.1%を占める産業の主役である中小企業の応援こそ行うべきである。そのため中小企業振興条例を制定し、公契約条例制定をすすめるとともに、経済効果抜群の住宅リフォーム助成制度を全県で実施するなど、中小零細企業応援の具体的な振興策実施の手立てを早急に打つことが必要である。 県が地方自治体の本旨に立ち返り、県民の暮らしを安定させ、地域経済の活性化をはかることこそ財政再建が可能となる道である。 県下でも「平成の大合併」としてすすめられた市町合併は、地域間の格差や行政が遠のくなど様々な課題をなげかけているが、「道州制」は、国、県の形をかえようとするものである。国の仕事は外交、防衛に限るなど、本来国が責任を持たねばならない国民の命や暮らしにかかわるしごとを地方自治体におしつける危険性がある。県はこの道州制に道を開きかねない「関西広域連合」(仮称)の設立をすすめている。この道州制と関西広域連合は、別組織で道州制に転化するものではないとの見解だが、その目的には国の出先機関の受け皿にすることがかかげられ、関西経団連からも「関西から国の形を変える」「道州制との関連も視野に入れ」など期待され、提言も受け、住民の置き去りで全国に先駆けて進めようとしている。「広域連合議会」へは兵庫県から3名の議員が選出となっているが、県民の多様な意見が反映されるのか、チェック機能が果たされるのかも疑問であり性急にすすめるべきではない。 県民の切実なねがいを実現する兵庫県政、県民の心によりそった来年度予算とするため重要政策について以下のような提言をおこなうものである。
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