2015年度予算編成にあたっての重要政策提言(6)
第6.大企業参入で農業・農村を壊す安倍「農政改革」でなく、小規模農業の生産拡大で食料自給率を向上させる農政に転換を
安倍内閣の成長戦略「農政改革」は、TPPを前提に、農地の集約で大規模化を推進し、大企業の農業への参入を促し、地域の大多数の中小農家を切り捨てるものである。 しかし、国連は今年を「国際家族農業年」と定め、食料保障と環境保全、持続可能な社会のために、小規模家族農業への積極的な政策策定と必要な予算措置を勧告している。 世界では、規模拡大や輸出志向型農業の推進政策が、小規模農業を衰退させ、貧困と飢餓を拡大したことが明らかになり、2008年の世界的経済危機と穀物価格高騰による食糧危機の経験を通して、市場原理にゆだねた効率的経営政策を根本的に見直しされている。兵庫県は、世界の潮流と逆行している安倍「農政改革」に反対し、TPP撤退を求める立場を明確にするとともに、基幹産業としての農林水産業の本格的な再生と食料自給率の向上、食の安全を守る県政への根本的転換を求めるものである。 - 国にたいし、農林水産業に壊滅的な打撃を与えるTPP(環太平洋連携協定)撤退を強く求めること。FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)締結や、ミニマムアクセス米の義務的輸入、WTO農業交渉など、輸入自由化・拡大路線をやめ、食料自給率を早期に50%台に引き上げるよう求めること。また、国の食料自給率は39%、兵庫県は16%である。兵庫県の食料自給率を大幅に向上させるための目標と計画を設定し、具体的な施策を遂行すること。
- 国の「成長戦略」による農業・農村の「所得倍増」計画は、コメの生産コスト引き下げや大手流通加工企業の主導する6次産業化など、農業を株式会社の参入で大企業のビジネスチャンスにするもので、農家の所得を増やすものではない。安倍「農政改革」に反対するとともに、国連の「国際家族農業年」に連帯して、地域農業、小規模農業振興のための政策と予算措置を国に求め、県としても実施すること。
- 養父市の農業特区は、農業委員会を弱体化し企業参入を促すための、政府の「農政改革」を先取りするものである。農業特区に反対し、県として農業委員会の権限を守り、地域農業と農地を守るために支援すること。
- 農地を担い手に集約する「農地中間管理機構」は、条件のよい優良農地に営利目的の企業が参入しやすい仕組みであり、耕作放棄地の増大や農地の荒廃を食い止めるものではない。借り手の見つからない農地も含め希望する全ての農地を対象とし、貸付先については地域農家を最優先すること、や農民代表を機構の役員に選任することなど制度運用の改善を国に求めること。
- 「攻めの農政改革」で打ち出した生産調整の廃止は、政府の責任を全面的に放棄するものであり、政府に反対すること。米作りの生産費を4割削減する「農政改革」では、米価をさらに下落させ、暴落時の支えをなくして経営は維持できなくなる。生産費を償う価格保障と所得補償を組み合わせた制度を確立するよう国に求めること。県としてコメなど農産物の価格安定対策にとりくむこと。
- 国がめざしている農協解体や、農業委員会委員の公選制の見直しなどは、大企業が農業に参入し営利をさらに得るためのものであり、反対すること。
- 農村は再生可能エネルギーの宝庫である。小規模で分散型、地域に利益を還元できる再生可能エネルギーの売電事業を住民ぐるみで展開できるよう支援すること。
- 兵庫県の状況をふまえ、中山間地等直接支払制度の恒久化と要件緩和を国に求めるとともに、県として中山間地など条件不利地への支援を充実すること。
- 集落営農や大規模農家に対する施設・機械導入などへの助成・低利融資など支援の充実とともに、家族営農を含む中小零細農家が農業を続けられるように抜本的に支援を充実するなど、担い手対策を行うこと。新規就農者への助成・支援を拡充すること。
- 食の安全を守るために
- BSE全頭検査を復活・継続すること。
- 仮にTPP参加による非関税障壁撤廃が求められた場合にも、食の安全を守る立場から、産地表示、遺伝子組み換え表示、農薬回数等の表示、トレーサビリティなどが継続されるよう求めるとともに、「ひょうご安心ブランド」など独自の認証も継続すること。
- 食品の産地偽装や賞味期限の改ざんなどを防ぎ食の安全を守るため、健康福祉事務所など検査体制の強化をおこなうこと。
- 都市近郊農業の宅地並み課税をやめ、生産緑地の要件を緩和するよう国に求めるとともに、県として農業を都市づくりに位置付け、生産緑地指定拡大、直売所や体験農園などの取り組みへの支援充実に取り組むこと。
- 鳥獣被害対策について、第3次行革プランによる削減を中止し、防護柵などの設置・更新への補助増額や駆除に参加する猟友会員への支援など、被害防除や駆除対策を引き続き強めること。被害を食い止めるとともに生息できる生態系を取り戻す研究と対策を強めること。
- 小中学校の給食への県産農畜水産物などの供給や、中学校給食の実施への支援を強め、農政環境部・産業労働部・教育委員会などが連携し、販路拡大と食育に寄与する地産地消を抜本的にすすめること。米飯給食実施への補助制度を復活すること。
- 口蹄疫や鳥インフルエンザなど、家畜の伝染病対策について、防疫・治療研究とともに、発生し長期化した場合の対応と費用負担、保険制度創設を含む営農保障、埋設場所、焼却対策の整備など対策を抜本的に強めること。
- 木材の生産、水源の涵養、国土保全、生物多様性など森林の多面的な機能と林業の振興のために
- 林業労働者の計画的な育成と待遇改善をはかるため、「緑の雇用事業」の拡充と事業体への支援を国に求めるとともに、県としても行い、系統的な林業労働者の育成にとりくむこと。
- 県産材需要拡大のため、公共事業での県産材使用を拡大すること。県産材活用の住宅リフォーム助成制度を実施すること。
- 自然環境に悪影響をあたえる広域基幹林道優先でなく、「作業道」の設置を計画的にすすめること。
- 間伐材等によるバイオ燃料など、森林資源を活用した自然エネルギーの供給を促進する支援をおこなうこと。
- 国の間伐補助の面積要件(5ha以上)を従前の0.1haにもどして事業ごとの補助とするよう国に求めること。
- 経費に見合う水産物価格の実現のために、価格保障、所得補償をはかるよう国に求めるとともに、共済制度の拡充や、水産資源保全のための休漁補償など、漁業経営の安定対策に県としてとりくむこと。 漁業への新規就業者支援を行うこと。
- 瀬戸内海での藻場・干潟の再生や、栄養塩供給などの対策に環境保全と両立させながらとりくむこと。
- 燃油高騰に対する支援を行うこと。
- 軽油引取税の免税措置・農林漁業用輸入A重油にかかる免税措置・農林漁業用国産A重油にかかる還付措置の恒久化を国に求めること。
- 「漁業経営セーフティネット構築事業」における燃油費の補填発動の基準を引き下げるよう国に求めること。
- 県として値上がりに対する補てんなど独自の支援を行うこと。
- 試験研究機関を、「行革」対象にすることなく、充実すること。
|