2013年度予算編成にあたっての重要政策提言(4)
第10.すべての子どもの命、成長発達を支える教育に転換を
1.滋賀県大津市の中学生いじめ自殺、本県赤穂市での深刻な事件が相次ぎ、社会に大きな衝撃をあたえ、教育に対する信頼が揺らいでいる。いじめは人間の尊厳を傷つけるもので、絶対に許されるものではない。いじめをいじめと捉えず被害を隠ぺいし、深刻化している背景に学校評価や教員評価システム、教員の多忙化等が指摘されているところである。それらの解決のためにも、以下の対策を行うこと。
- いじめ・不登校を多発・深刻化させている受験競争など過度の競争と管理の教育をあらため、子どもの声をききとり、子どもを人間として大切にする学校をつくること。子どもの権利条約の普及に努めること。
- 教員の多忙化は、子どもたちと接する時間や授業の準備をする時間がとれない。共同して問題解決にあたる教師集団作りのためにも教員評価制度をやめ、教員の多忙化解消を図ること。
2.教育費の負担軽減・無償化をすすめること
- 義務教育は、無償が原則である。しかし、無償の対象は、授業料や教科書代などに限られ制服代、修学旅行費の積立などの負担が家計を圧迫している。義務教育に相応しく家計負担の解消を求めること。また、就学援助の国庫負担制度を元に戻し、対象や支給額を拡充するよう国に求めること。学校給食費の無償化を目指し、当面、必要な免除措置をすすめること。
- 公立高校無償化の見直しがすすめられている。ひきつづき無償化を国に求めること。
- 通学費、教科書、教材、制服、修学旅行、部活動などへの支援のため、公立・私学を問わず、県として給付制奨学金制度をつくること。
- 授業料補助単価を引き上げ、私立高校の実質無償化をめざすこと。国の「高校生就学支援基金」を入学金等にも対象を拡大し、恒久化を国に求めること。県外通学者についても県内と同額とし、専門学校・外国人学校にも適用すること。私学経常費補助については、国庫補助制度を堅持し、拡充を図るよう国に求めること。県としても拡充すること。
3.教育条件の整備をすすめること
- 30人以下学級・少人数学級は、世界のすう勢であり、国民のつよい要求である。国に対し、30人以下学級をすみやかに実現するよう求めること。また、義務教育の国庫負担を元の2分の1に戻すよう強く求めること。また、この施策は、若者の雇用をふやし、地域の景気対策としても有効である。県としても義務教育はもとより、高校教育でも30人学級を早期に実現すること。当面、小学校4年生でとまったままの35人学級について、中学3年生までひろげること。
- 安全で豊かな完全給食を全ての小・中・特別支援学校で実施すること。未実施の中学校での給食導入に県の補助制度をつくるとともに、「全員喫食」を基本とした「実施計画」とするよう市町に強くはたらきかけること。また、すでに給食を実施している市町に対する運営費補助制度を創設すること。
- 特別支援学校や特別支援学級に在籍する子どもたちが急増している。そのため普通教室や特別教室、体育館や運動場などが足りないなど、劣悪な教育条件となっている。施設の整備促進と教員定数を増やすことを国に求めること。現在、第二次「推進計画」検討委員会のもとで検討がすすめられているが、分教室の設置など安易な対策でなく、新たな施設整備を含め、早急に改善すること。
- 阪神淡路大震災を経験した兵庫県での公立学校の耐震化の予算を大幅に引き上げ、早急に耐震化をすすめること。
- 普通教室のエアコンの設置予算を増やし、計画を前倒し、すすめること。
- 中学校の武道必修化にともない柔道の事故が心配されている。指導体制がない中で、すすめないこと。
4.競争とふるいわけの教育をあらためること
- 現行の16通学区を5学区に統合し、全学区で複数志願選抜を実施、自由学区を市町単位の双方向受験に拡大する基本方針が決定され2015年度から実施されようとしている。通学区域の拡大による通学費や通学時間等の負担だけでなく競争の激化や、高校のさらなる「序列化」がもたらされると、この間の説明会等でも保護者や学校関係者から「拙速」や「不安」の声があがっており、計画を中止すること。
- 通学区域拡大と第二次高校改革実施計画の評価・検証を行う「県立高校長期構想検討委員会」も設置されたが、非公開となっている。住民の傍聴・発言を認めるなど、公開すること。
- 全国いっせい学力テストを廃止するよう国に求めること。
5.教育の自由と自主性を保障し、子どもの豊かな成長をささえること
- すべての子どもに基礎的な学力を保障することを学校教育の基本的な任務として重視すること。暗記ではない自然や社会のしくみがわかる知育、市民道徳の教育、体育、情操教育などバランスのとれた教育をおこなうこと。
- 市民道徳の教育を、憲法にもとづき、基本的人権の尊重を中心にすえ、子どもたちが自らモラルを形成できるようにすること。子どもの納得を無視して「規範意識」を叩き込むようなやりかたは、反人間的・反道徳的なものであり強制はやめること。
- 教育振興基本計画については、「愛国心」の押し付けなど、教育の内容に介入するのではなく、行政は教育条件や教育環境の整備を責任もっておこなうこと。
6.教職員の条件整備
- 定数内の臨時講師や非常勤教師など非正規の教師が増大している。そのため教育条件を不安定にし、官製ワーキングプアで劣悪な処遇となっている。早急な定数改善を国にもとめ、県としてもただちに正規化への取り組みをすすめること。
- 主幹教諭制度をやめること。また教員免許更新制を廃止するよう国に求めること。
第11.芸術・文化活動を支え、スポーツ振興を基本にすえる県政に転換を
文化・スポーツの振興のため、県民が日常的に文化・芸術・スポーツを楽しめる労働環境づくりや低廉で利用できる国や県の支援がいそがれている。
1.「スポーツは国民の権利」という基本理念を明確に位置付けたスポーツ基本法がこの8月24日から施行された。その理念にもとづいて、推進施策を実行するのは、「国」と「地方公共団体」の責務であると規定されている。現在検討されている「県推進計画案」に「身近なスポーツ施設の整備計画」と「指導員等の施設への配置計画」を盛り込むこと。
2.「文化・芸術振興基本条例」を制定し、文化・芸術の活動を保障し、支援すること。また、優れた芸術文化を享受できるように,鑑賞活動への支援をおこなうこと。
3.県下の歴史的・文化的遺産の調査・保存をすすめること。
4.文化・スポーツ施設は、低廉で使いやすい施設とすること。高齢者や障害者に配慮したバリアフリー化をすすめること。
第12.憲法と平和を守る県政へ
1.唯一の被爆国として核兵器廃絶を世界に発信することが求められている。県として「非核平和兵庫県宣言」を行うとともに、県管理のすべての港湾に非核「神戸方式」を導入すること。県の被爆者支援を充実すること。
また、いかなる核の被害を出さないために、原発から撤退し自然エネルギーへの転換を決断するよう国に働きかけること。
2.米軍ジェット機の低空飛行訓練をただちに中止するよう国・米軍に求めること。兵庫県内も通るブラウンルートも訓練が予定されているオスプレイは、きわめて危険であり、配備の中止を国に働きかけること。
3.「従軍慰安婦」問題、強制連行・労働問題、中国残留日本人問題、シベリア抑留者、治安維持法犠牲者、原爆・大空襲などの民間被災者問題など、未解決の戦後補償問題について、国の責任を明確にするよう働きかけ、被害者の立場に立った解決に向けて尽力するとともに、県内の被害者に必要な支援をおこなうこと。
4.兵庫県「国民保護計画」は、凍結すること。
第13.警察行政について
県民の安心・安全を保障するべき県警察への市民警察としての役割は強まっている。一方、未解決事件や警察の不祥事もなくならない、信頼を得るために絶えざる検証と警察刷新を進めることが求められている。
1.若年層にも蝕手を伸ばしている大麻問題や覚せい剤、MDMA、脱法ハーブなどの薬物対策、銃器犯罪の取り締まりを強化し、山口組など暴力団への徹底取り締まり・捜査を行うこと。
2.あとを絶たないヤミ金・振り込め詐欺や・架空請求など経済事犯や増え続ける児童虐待、ストーカー犯罪など、生活安全に関わる対策を人的体制も含め充実、強化すること。
3.信号機の設置を求める住民の声は切実であり、すみやかに応えられるよう「行革」による削減ではなく予算を抜本的に増額すること。
4.要望の強い地域での、交番の設置をすすめること。
5.自白強要やえん罪の防止のため、捜査の全体を可視化すること。また、冤罪の温床となっている「代用監獄」をやめ、被疑者・被告人は法務省が管理する拘置所に収容するように取り組みをすすめること。
6.警備警察偏重から市民生活の安全を守る本来の警察行政にたちかえること。そのために地域警察官の比率を高めること。
7.公安委員会が県警察を民主的にコントロールできるようにするため、独立した事務局の設置や、委員の住民推薦・公選制の導入などの改革をすすめること。
8.暴力団排除条例の運用については、県民に対し、相互監視、プライバシーの権利の侵害につながらないようにすること。 |