2013年度予算編成にあたっての重要政策提言(3)
第7.農林水産業の振興と食の安全について
記録的干ばつなどで、世界的な食料不足が懸念され、輸入に頼れる状況にないにもかかわらず、日本の農林水産業は衰退に歯止めがかからず、食料自給率は改善されていない。TPPなど輸入自由化を進め、「競争力強化」「効率化」の名で小規模農家を切り捨てる方向でなく、規模にかかわらず安心して生産に励める条件を保障する方向に農林水産行政を抜本的に転換することこそ求められている。
1.国にたいし、農林水産業と被災地の復興に壊滅的な打撃を与えるTPP(環太平洋連携協定)加入をやめるよう強く求めること。FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)締結や、ミニマムアクセス米の義務的輸入、WTO農業交渉など、輸入自由化・拡大路線をやめ、食料自給率を早期に50%台に引き上げるよう求めること。
2.コメの生産について、少なくとも60キロ・1万8千円の価格保障を中心に、農地面積などを対象にした各種の所得補償を組み合わせて生産コストをカバーできる施策に切り替えるよう国に求めること。県としてコメなど農産物の価格安定対策にとりくむこと。
3.兵庫県の状況をふまえ、中山間地等直接支払制度の恒久化と要件緩和を国に求めるとともに、県として中山間地など条件不利地への支援を充実すること。
4.集落営農や大規模農家に対する施設・機械導入などへの助成・低利融資など支援の充実とともに、家族営農を含む中小零細農家が農業を続けられるように抜本的に支援を充実するなど、担い手対策を行うこと。新規就農者への助成・支援を拡充すること。
5.放射能で汚染された農産物・畜産物・水産物が流通することのないよう、国に対し、抜本的できめこまかな調査の徹底とともに、県としてもきめこまかい検査を継続しておこなえるよう検査体制を引き続き強化すること。生産者に対する迅速な補償を国と東京電力の責任で行うよう引き続き求めること。
6.原発事故の影響による西日本産米などの買い占めや不当な価格吊り上げがおこらないよう需給対策・価格対策を国に求めること。
7.都市近郊農業の宅地並み課税をやめ、生産緑地の要件を緩和するよう国に求めるとともに、県として農業を都市づくりに位置付け、生産緑地指定拡大、直売所や体験農園などの取り組みへの支援充実に取り組むこと。
8.鳥獣被害対策について、防護柵などの設置・更新への補助増額や駆除に参加する猟友会員への支援など、被害防除や駆除対策をいっそう強めること。被害を食い止めるとともに生息できる生態系を取り戻す研究と対策を強めること。
9.小中学校の給食への県産農水産物などの供給や、中学校給食の実施を県主導で推進し、農政環境部・産業労働部・教育委員会などが連携し、販路拡大と食育に寄与する地産地消を抜本的にすすめること。 米飯給食実施への補助制度を復活すること。
10.食品の産地偽装や賞味期限の改ざんなどを防ぎ食の安全を守るため、健康福祉事務所など検査体制の強化をおこなうこと。
11.口蹄疫や鳥インフルエンザなど、家畜の伝染病対策について、防疫・治療研究とともに、発生し長期化した場合の対応と費用負担、保険制度創設を含む営農保障、埋設場所、焼却対策の整備など対策を抜本的に強めること。
12.木材の生産、水源の涵養、国土保全、生物多様性など森林の多面的な機能と林業の振興のため
- 林業労働者の確保と技術の継承を支援し、流通・加工体制の確立で再建を図ること。
- 県産材需要拡大のため、公共事業での県産材使用を拡大すること。
- 自然環境に悪影響をあたえる広域基幹林道優先でなく、「作業道」の設置を計画的にすすめること。
- 間伐材等によるバイオ燃料など、森林資源を活用した自然エネルギーの供給を促進する支援をおこなうこと。
13.経費に見合う水産物価格の実現のために、価格保障、所得補償をはかるよう国に求めること。
14.瀬戸内海での藻場・干潟の再生や栄養塩供給などの対策に環境保全と両立させながらとりくむこと。
15.国の責任で、燃油価格の安定と、値上がりの直接補填や休業補償、恒常的な価格安定対策をするよう求めること。
16.試験研究機関を、「行革」対象にすることなく、充実すること。
第8.大型公共事業優先から、生活密着型の公共事業へ
県の財政悪化の原因は、無駄な大型開発事業による借金であるにもかかわらず、「第二次行革プラン」のもとでも投資事業は温存されている。とくに県は、「高速道路空白地帯を解消」などと、なお大型公共事業に偏重している。大型公共事業の見直し・大幅な削減と、住民生活密着型の公共事業へ転換すべきである。
1.東海、東南海、南海地震等に備える「津波防災インフラ整備5ヵ年計画(仮称)」の策定に当たっては、計画(案)の段階で公表し、各分野の専門家や県民の意見を広く反映したものとすること。また、計画に伴う資料(例えば、海岸防潮堤基礎部の潜水調査結果など)、及び予算規模等を含めて関係資料を公開すること。
2.公契約条例を制定し、県発注工事については、県内建設業者への発注をさらに増やし、適正価格により、末端の下請け業者、建設労働者にいたるまで、営業と生活が保障される内容に改革すること。
3.住宅リフォーム助成制度の創設、耐震化補助制度の拡充、バリアフリー化の推進など、中小建設業者の仕事を増やすこと。
4.道路事業について
財政難の最大の原因となっている高速道路を中心とした6基幹軸優先の道路政策を転換し、通学路の安全対策や生活道路の改修など住民生活に身近な道路政策に改めること。建設中の新名神高速道路を含め、名神湾岸連絡道路、大阪湾岸線西神部、播磨臨海地域道路、紀淡海峡連絡道路など不要不急の道路計画を見直すこと。 また、西宮北有料道路の無料化のさらなる前倒しを検討すること。
5.空港事業について
- 神戸空港及び関西国際空港2期に対する県の補助金や出資をやめること。
- 伊丹空港の夜間離発着は、騒音による住民の犠牲と被害を拡大するものであり、住民合意なしにすすめないこと。
- 但馬空港については、毎年6億円以上の県の財政支出に加えて、但馬地域の各市町も多額の負担を強いられている。今後の需要拡大の見通しもない中で、空港のあり方について抜本的に見直すこと。
6.神戸電鉄粟生線については、住民の足・公共交通を守るため、路線存続のための支援を継続し、運転本数などを利用者のサービス向上になるよう働きかけること。
7.武庫川水系河川整備計画とダムについて
- 今後20年間、ダムに頼らない総合的な治水計画がつくられたが、その後においても、武庫川流域のダム計画はきっぱりと中止すること。
- 河床掘削や堤防補強など、武庫川の安全対策は十分にすすめること。その際、住民合意を重視すること。
- 総合治水対策のなかで、将来の分担量目標が極めて低く設定されている流域対策の目標を引き上げ、抜本的に強化すること。
- 天然鮎の遡上できる川に再生するための対策をすすめること。
8.河川整備・ダム事業について
- 但馬・丹波地域で進めている「生活貯水池ダム」や西播磨の金出地ダムなどの計画は、いずれも流域全体の総合治水の検討が不十分であり、計画を見直すこと。
- 河川整備については、下流からの改修だけにこだわらず、堤防の補強や危険箇所の改修を優先して安全を守ること。また、生態系の保全など、環境を守る事業も重視すること。
- 毎年被害が増加している記録的豪雨対策について、調査・研究を進め、調整池や下水対策など予算を大幅に増やすこと。
9.広畑港や高砂西など、港湾については、利用見込みのない整備は行わないこと。
10.県営住宅について
- 安全で低廉な家賃の県営住宅の建設はさらに必要度を増している。県営住宅の立替え戸数の削減計画を見直し、新規の県営住宅の建設や民間住宅借り上げ県営住宅の対策も含め、県の住宅対策を拡充すること。
- 家賃減免制度を拡充すること。
- 一般会計の繰り入れにより、外壁補修などの計画補修、空家補修等の予算を大幅に増やし、部分補修や改築、エレベーターの設置など計画を立て、積極的におこなうこと。
- 民間指定管理者による管理運営は、入居者の福祉的対応がなされないなど、住民サービスが低下している。県が管理運営に責任を持つようにし、指定管理制度をやめること。
- 入居者が低所得者であることを配慮し、高すぎる駐車料金にしないこと。また、駐車場を自主管理している団地については、十分に話し合いを行うこと。
- 介護や在宅療養が必要の入居者について、居住面積などを配慮すること。
- 条例委任された入居者の収入基準を、現行より厳しくしないこと。
- 公営住宅の入居承継基準は、現行基準を維持すること。
11.企業庁の事業について
- 地域整備事業の会計制度については、各事業ごとの収支、事業内容がわかる会計制度に早急に改めること。
- 安すぎる工業用水料金を改定し、平均供給単価の引き下げが行われたが、まだまだ高い県水の市町への押し付けをやめること。
- 夢舞台の事業に関する県の委託事業の内容を関係部局とともに協議・精査し、各事業のあり方を根本的に見直すこと。
12.国の直轄事業負担金の全廃を国に強く求めること。
第9.地球温暖化対策をすすめ、豊かな自然と緑を守るために
1.姫路市夢前町に建設予定の巨大な産業廃棄物最終処分場は、ほとんどの住民に隠してすすめられており、県民無視の計画は認められない。 夢前町だけでなく広範な姫路市民の命や安全、暮らし、観光や企業活動が脅かされ、美しい自然が壊される懸念がある。申請を予定している事業者は、不法投棄を繰り返し、さらに隠ぺいしたことで刑事告発も受けており、県の林地開発許可を行わないこと。
2.地球温暖化対策のため、事業所ごとに温室効果ガス排出量の削減目標と排出量を公開すること。総量削減を義務付けること。
3.絶滅が危惧されている県下の動植物の保護・保全や、生態系の維持にとって重要な指標種の保護に積極的に取り組むこと。
4.石綿(アスベスト)被害対策について
- 認定基準を緩和するなど、すべての被害者、家族に、より充実した補償と救済を行うよう国に要望すること。
- 民間建築物にかかるアスベスト除去費用に対する補助制度を県としてつくること。
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