2013年度予算編成にあたっての重要政策提言(2)
第4.福祉・医療の充実で、災害から命を守る県政に
東日本大震災から1年半。「自己責任」の名で、福祉・医療などを破壊してきた「構造改革」路線では国民の命を守れないこと、日常から社会保障の充実とそれを支えるネットワークがつくられてこそ、災害にも強い社会となることを大震災の教訓として、国の政治とともに地方政治も大本から変革することが求められている。
1.国民健康保険・後期高齢者医療制度について
- 加入者の半数が所得0の国民健康保険制度は、社会保障制度として84年以前の医療費45%の国庫負担割合に戻すよう国に求めること。
- 国民健康保険料が高くて払えない世帯が県下で2割にまで上っている。国民健康保険への県補助を大幅に増やし、保険料を引き下げること。
- 滞納を理由にした保険証交付の取り上げや財産差し押さえが、悪質滞納者だけでなく支払い能力のない低所得者にも及んでいる。医療を受ける権利を侵すことをやめ、資格証明書や短期保険証の発行や財産差し押さえはしないよう、市町・後期高齢者医療広域連合に求めること。また、窓口留め置きによる事実上の保険証未交付はただちに解消すること。
- 国保料の引き上げや市町独自の減免制度の廃止などにつながる、市町国保の広域化をすすめないこと。
- 後期高齢者医療制度をただちに廃止することを国に求めること。政府が検討している「新制度案」は殆どの高齢者を国民健康保険加入にするが、年齢で区分し「別勘定」とする差別医療制度の中身は存続し、75歳から65歳に年齢を下げる検討もされている。いっそうの医療費抑制を強制する「新制度案」は、撤回するよう国に求めること。
2.医療体制について
- 県立こども病院のポートアイランド2期の新神戸中央市民病院隣接地への移転計画は、防災面、救急時のアクセス、また変異株を含むウイルスを扱うバイオ企業群によるバイオハザードの危険性、周産期医療の集約化など、多くの問題をはらんでいる。計画を撤回し、安全な場所で建替えを行い、周産期医療の充実に寄与する計画に作り直すこと。
- 救急医療二次輪番病院への補助制度を創設するとともに、県の責任で三次救急の機能確立を図ること。
- 地域医療を崩壊させる国の「医療構造改革」に基づいた、医療適正化計画、保健医療計画、地域ケア体制整備構想、健康増進計画は根本的に見直し、特に療養病床削減計画は中止すること。
- 県立淡路病院について、災害拠点病院としての機能が果たせるよう対策をとること。
- 塚口病院の跡地は、有床の医療機関の誘致等、最後まで住民の意見を尊重すること。
- 県立病院の独立行政法人化は行わないこと。
- 県立病院の一般外来看護師や事務職、技能事務職の削減をやめること。
- 地元の強い要望から市に移譲・存続が決まった県立柏原看護専門学校は、引き続き県下の看護師養成を担う重要な役割をもつことから、県として財政支援を続けることで責任を持つこと。
3.「県行革プラン」による、重度障害者、乳幼児、こどもの福祉医療費助成の対象者を大幅に狭める所得制限の世帯合算方式への強化はやめ、元にもどすこと。
4.障害者施策について
- 障害を自己責任とみなし、「応益負担」を課す障害者自立支援法は、名称だけを変更した障害者総合支援法に変わった。訴訟団と国との「基本合意」に立ち返り、「骨格提言」にそった「障害者総合福祉法」が制定されるよう国に求めること。
- 法内施設に移行できない小規模作業所への県独自の支援は、引き続き行うこと。
- 腎機能障害者に対する兵庫県独自の認定基準を設けて、すべての透析患者が障害等級1級に認定されるようにすること。
- 重度障害者医療費助成事業の対象となる精神障害者を、精神障害者保健福祉手帳2級まで拡充すること。
- 移動支援などのサービスを実際には提供できない事業所が多く生じていることから、地域生活支援事業に対する県の財政支援を強め、事業所が確実にサービスを実施できるよう支援すること。
- 介護保険と同様に、障害者福祉サービスを提供する事業所に対する苦情を受け付ける窓口をつくること。
5.介護保険について
- 「要支援」と認定された高齢者を、実態を無視し保険給付の対象から外す「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行をしないように、市町に求めること。
- 財政安定化基金を取り崩し、保険料の軽減措置をはかること。県独自の保険料・利用料の減免制度を創設すること。
- 介護・福祉労働者の処遇改善のための財政補助制度を復活、拡充すること。
- 施設から在宅介護への移行を名目に2025年までの特別養護老人ホームの増床数を減らす県の方針を撤回し、市町ごとの実態に見合った新増設を行い、待機者(県下で25,100人)を早急に解消すること。そのために整備費補助単価を引き上げること。
- 生活援助の時間区分見直しにより、利用者の生活に深刻な影響が出ている。国の通知に基づき従来どおりの時間提供が可能であることを事業所に徹底するとともに、介護報酬を元に戻すよう国に求めること。
6.こども・子育て支援について
- 子育て世代の経済的負担の軽減のため、こどもの医療費を、義務教育を終えるまで、通院も入院も、所得制限を撤廃して完全無料化すること。
保育料の第三子軽減制度は、所得制限を撤廃すること。また、保育料減免制度を充実すること。
- 周産期医療、小児救急医療を充実するため、産科医・小児科医確保の対策を強めるとともに、不足しているNICUなどの整備をさらにすすめること。
- 妊婦健診は全額公費負担となるよう、県の補助を増やすこと。出産費用を補助する制度を創設すること。
- 公的保育を維持し、保育所待機児童を解消するため、保育所を増設するとともに条件整備を行うこと。
- 学童保育(放課後児童健全育成事業)について、待機児童や大規模化解消のため増設をすすめること。小学校高学年や障害児の受け入れ、施設の充実、父母の負担軽減などの取り組みをすすめること。
- 新婚世帯、子育て世代、母子・父子家庭に対する民間住宅家賃補助制度を創設するとともに、県営住宅の入居優先枠を大幅に増やすこと。
- 子宮頸ガンワクチン、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンに対しての財政支援を継続することを、国に求めること。
7.こども家庭センターの専門職員の増員を行い、市町との連携をより強化し、児童虐待を防止する対策をすすめること。
8.DV対策は、専門職員を増やし、被害者自立のための住宅や仕事確保など支援体制を強化すること。また、民間シェルターへの助成を拡充すること。
9.生活保護について
- 有期化、医療費の自己負担、親族に扶養を義務付けるなどの生活保護制度の改悪をしないよう国に求めること。
- 民法上の「扶養義務者」による扶養を要件にしたり、申請さえ受け付けないなどの「水際作戦」を行わないよう市町に徹底すること。ソーシャルワーカーを増やし、きめこまやかな体制となるよう支援を強化すること。
10.消費者生活相談員など消費生活センターの職員は、安定した正規雇用とし、消費者行政を市町とともに拡充すること。
11.年金制度の拡充について国に強く要望すること。
- 25年の受給条件期間を10年に短縮すること。
- 最低保障年金制度を導入し、低年金・無年金者をなくすこと。
- 年金財源を消費税に求めないこと。
- 物価スライドで今後3年間で2.5%年金を切り下げる計画をやめること。
12.地方分権改革一括法による福祉施設等の基準の条例化にあたっては、これまでの最低基準を少なくとも下回ることなく、関係者、及び県民の意見を十分聞いて、より充実したものを制定すること。
第5.雇用対策について
1.製造業への派遣禁止など労働者派遣法の抜本改正や、有期雇用を規制強化し、非正規雇用を期限の定めのない正社員化にするよう国に働きかけること。
2.長時間・過密労働、「サービス残業」をなくして雇用をふやすよう企業に働きかけること。
3.不当解雇、大リストラなどが自由にできないよう、解雇規制法の制定を国に働きかけるとともに、県においても企業に働きかけること。
4.個人消費がいっそう落ち込み景気悪化が続くなか、新卒者の就職について、企業訪問や就職面接会等マッチングの機会を増やすなど、就職支援体制を強化して、雇用の確保に努めること。
5.離職者などの職業能力開発事業は、民間教育訓練機関まかせにせず、県が責任をもって行い、正規雇用につながる実効あるものにすること。
6.パナソニックなど多額の補助金を出している誘致企業をはじめ、県内大企業の雇用について地元の正規採用を増やすよう県として要請すること。
7.最低賃金を全国一律1000円以上とするよう国に求めるとともに、兵庫県の最低賃金の大幅な引き上げを国に求めること。その際、中小企業を支援すること。
8.国の緊急雇用対策事業は、正規雇用に結びつくものに改善すること。淡路島で人材派遣会社パソナにふるさと雇用再生支援事業を委託しているが、地域の安定した雇用につながらない等、事業内容に問題があり、見直すこと。
9.県職員の採用は原則正規雇用とし、「行革プラン」による3割削減をやめること。
10.公契約条例を制定し、県発注の事業で末端の下請け労働者まで、低賃金、低単価を改善し、賃金・単価を保障すること。
11.憲法や関連する労働法で保障された労働者の権利や雇用主の義務を知らせる広報・啓発活動を強化すること。
第6.中小企業対策について
経済の行きづまりを打開する道は、内需拡大に重点をおいた対策に転換することである。大企業がよくなれば、中小企業も雇用もよくなるといったこれまでの経済対策を抜本的に見直し、中小企業と農林水産業の振興を中心にした地域循環型経済対策が重要である。
1.雇用の約8割を占める中小企業は地域経済の大黒柱である。中小企業振興条例を制定し、中小企業予算を大幅に引き上げ、地場産業や地域産業の支援を強化すること。
2.経済活性化の起爆剤といわれる住宅リフォーム助成制度は、全国で533自治体が実地している。県議会でも同主旨の請願が採択されており、兵庫県でも住宅リフォーム助成制度を創設すること。
3.三菱造船神戸造船所の民間造船の撤退や、川崎重工業(株)船舶海洋カンパニーが下請け単価を大幅に引き下げ、外注業者の単価引き下げや社外工のリストラを計画しているなど、県下の大企業による、一方的な下請け切り・リストラをやめさせるために、県として強く働きかけること。県活性化センターの相談窓口の事業内容を実効あるものに改善すること。
4.大型店の出退店が商店街や地域経済を疲弊させている。大型店の進出を規制強化するとともに、大型店の無責任な撤退を野放しにするのでなく、地域経済と住民生活に対して地域貢献の責任を果たすよう求めること。
5.原発から撤退し、自然エネルギーへの転換をすすめるうえで、地産地消のエネルギー対策を地域住民と地域の中小企業や、農林水産業などが連携して地域振興として推進すること。
6.大企業誘致による経済対策は、雇用も地域経済もよくならないと明らかになった。大企業誘致補助金制度を中止すること。
7.住民参加で、地域の食材や地域資源など地域振興とあわせた観光対策を強化すること。 |