2012年度予算編成にあたっての重要政策提言(6)
第6.農林水産業の振興と食の安全について
福島第一原発事故による放射能汚染が、農林水産業と食の安全を脅かしている。すでに、セシウム汚染の可能性のある牛肉が兵庫県内に出回り、消費者に不安を与えるとともに、生産者や関連業者に風評被害を含む損害を与えている。福島第一原発事故による放射能汚染の影響は長期にわたると考えられ、長期的に抜本的な対策が必要である。
- 放射能で汚染された農産物・畜産物・水産物が流通することのないよう、国に対し、抜本的できめこまかな調査の徹底とともに、生産者に対する迅速な補償を国と東京電力の責任で行うよう求めること。
- 放射能について、県内できめこまかな検査が継続しておこなえるよう、農産物・畜産物・水産物や土壌の検査体制を抜本的に強化すること。県内流通食品についても独自の検査体制をとること。そのための放射性核種分析装置など機器の導入・増設や、人員増のための予算増をおこなうこと。
- 東日本大震災と原発事故の影響による11年産米の不足への懸念がおこっていることから、備蓄米の適切な放出などの需給対策を国に求めること。10年産米などの買い占めや不当な価格吊り上げがおこらないよう価格対策を国に求めること。
- 国にたいし、農林水産業と被災地の復興に壊滅的な打撃を与えるTPP(環太平洋連携協定)加入に反対するよう強く求めること。FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)締結や、ミニマムアクセス米の義務的輸入、WTO農業交渉など、輸入自由化・拡大路線をやめ、食料自給率を早期に50%台に引き上げるよう求めること。
- コメの生産について、少なくとも60キロ・1万8千円の価格保障を中心に、農地面積などを対象にした各種の所得補償を組み合わせて生産コストをカバーできる施策に切り替えるよう国に求めること。県としてコメなど農産物の価格安定対策にとりくむこと。
- 兵庫県の状況をふまえ、中山間地等直接支払制度の恒久化と要件緩和を国に求めるとともに、県として中山間地など条件不利地への支援を充実すること。
- 集落営農や大規模農家に対する施設・機械導入などへの助成・低利融資など支援の充実とともに、家族営農を含む中小農家が農業を続けられるように抜本的に支援を充実するなど、担い手対策を行うこと。新規就農者への助成・支援を拡充すること。
- 都市近郊農業の宅地並み課税をやめ、生産緑地の要件を緩和するよう国に求めるとともに、県として農業を都市づくりに位置づけ、生産緑地指定拡大、直売所や体験農園などの取り組みへの支援充実に取り組むこと。
- 鳥獣被害対策について、防護柵などの設置・更新への補助増額や駆除に参加する猟友会員への支援など、被害防除や駆除対策をいっそう強めること。被害を食い止めるとともに生息できる生態系を取り戻す研究と対策を強めること。アライグマやブラックバスなどの外来種駆除や被害防止の対策も強めること。
- 小学校の学校給食への県産農水産物などの供給や、中学校給食の実施を県主導で推進し、農林水産部・産業労働部・教育委員会などが連携し、販路拡大と食育に寄与する地産地消を抜本的にすすめること。
米飯給食実施への補助制度を復活すること。
- 食品の産地偽装や賞味期限の改ざんなどを防ぎ食の安全を守るため、健康福祉事務所など検査体制の強化をおこなうこと。
- 口蹄疫や鳥インフルエンザなど、家畜の伝染病対策について、防疫・治療研究とともに、発生し長期化した場合の対応と費用負担、保険制度創設を含む営農保障、埋設場所、焼却対策の整備など対策を抜本的に強めること。
- 林業労働者の確保と技術の継承、流通・加工体制の確立で再建を図ること。
- 県産材需要拡大のため、公共事業での県産材使用を拡大すること。
- 自然環境に悪影響をあたえる広域基幹林道優先でなく、「作業道」の設置を計画的にすすめること。
- 木材の生産、水源の涵養、国土保全、生物多様性など森林の多面的な機能を発揮させるため、間伐材や廃材によるバイオ燃料の供給など、森林資源を活用した自然エネルギーの供給を促進する支援をおこなうこと。
- 県民緑税の使途を県民にひろく明らかにし、県民参加で検証をおこなうとともに、継続について意見を聞くこと。
- 経費に見合う水産物価格の実現のために、価格保障、所得補償をはかるよう国に求めること。
- 国の責任で、燃油価格の安定と、値上がりの直接補填や休業補償、恒常的な価格安定対策をするよう求めること。
- 瀬戸内海側でノリの色落ちを始めや漁獲量の低下などが顕著になっている。豊かな瀬戸内海をとりもどすため、藻場・干潟の再生や栄養塩供給などの対策に環境保全と両立させながらとりくむこと。
- 試験研究機関を、「行革」対象にすることなく、充実すること。
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