2012年度予算編成にあたっての重要政策提言(3)
第3.福祉・医療の充実で、災害から命を守る県政に
東日本大震災から6ヶ月。国の政治とともに、地方政治のあり方が改めて問われている。今回の大災害で、「自己責任」の名で、福祉・医療などを破壊してきた「構造改革」路線では国民の命を守れないこと、日常から社会保障の充実とそれを支えるネットワークがつくられてこそ、災害にも強い社会となることが明らかにされたのではないか。福祉・医療・介護など、あたたかく強い基盤がつくられていてこそ、災害から命とくらしを守る県政になりえる。
- 後期高齢者医療制度をただちに廃止することを国に求めること。政府が検討している「新制度案」は殆どの高齢者を国民健康保険加入にするが、年齢で区分し「別勘定」とする差別医療制度の中身は存続し、75歳から65歳に年齢を下げる検討もされている。いっそうの医療費抑制を強制する「新制度案」は、撤回するよう国に求めること。
- 国民健康保険について
- 加入者の半数が所得0の国民健康保険制度は、社会保障制度として84年以前の医療費45%の国庫負担制度に戻すよう国に求めること。
- 保険料が高くて払えない世帯が県下で2割にまで上っている。国民健康保険への県補助を大幅に増やし、保険料を引き下げること。
- 滞納を理由にした保険証交付の取り上げが悪質滞納者だけでなく支払い能力のない低所得者にも及んでいる。医療を受ける権利を侵すことを辞め、資格証明書や短期保険証の発行はしないよう市町も求めること。また、市町の窓口留め置きによる事実上の保険証未交付はただちに解消すること。
- 保険料軽減の減免制度を拡充するとともに、国保法第44条にもとづく医療費の減免制度を実施するよう市町に指導・援助を行うこと。「保険料の滞納の有無に関わらず一部負担金の減免に応じるべき」との厚労省事務連絡に沿った対応をするよう、市町に指導すること。
- 国保料の引き上げや市町独自の減免制度の廃止などにつながる、市町国保の広域化をすすめないこと。
- 医療体制について
- 救急医療二次輪番病院への補助制度を創設するとともに、県の責任で三次救急の機能確立を図ること。
- 姫路の新日鉄広畑病院への救命救急センター設置にあたり、県の独自補助を行うこと。
- 尼崎病院と塚口病院の統合による新病院の建設にあたっては、塚口病院の跡地問題も含め、最後まで住民の意見を尊重すること。
- 塚口病院は、建物の老朽化により外壁や窓枠等から雨水が室内に入り込み、電気系統や医療器具等にも悪影響を及ぼすことが懸念される。現病院を運営する間、安全で安心な医療が提供できるよう、建物の補修など必要な対策を講ずること。
- 地域医療を崩壊させる国の「医療構造改革」に基づいた、医療適正化計画、保健医療計画、地域ケア体制整備構想、健康増進計画は根本的に見直し、特に療養病床削減計画は中止すること。
- 県立病院の独立行政法人化は行なわないこと。
- 県立病院の一般外来看護師や事務職、技能事務職の削減をやめること。
- 県立こども病院の新神戸中央市民病院隣接地への移転計画は、防災面、救急時のアクセス、また変異株を含むウイルスを扱うバイオ企業群によるバイオハザードの危険性など、多くの問題をはらんでいる。計画を撤回すること。
- 県立淡路病院について、建て替え移転地は津波の被害が想定される場所で、災害拠点病院としての機能が果たせない恐れもあることから、移転地を含め再検討すること。
- 県「新行革プラン」の一環で、重度障害者、乳幼児、こどもの福祉医療費助成の対象者を大幅に狭める所得制限の世帯合算方式への強化はやめること。
- 障害者施策について
- 障害を自己責任とみなす障害者自立支援法の「応益負担」の撤回を国に求めること。 新たに制定される障害者総合対策法は障害者の参加のもとで、実態が把握されたものにすること。
- 法内施設に移行できない小規模作業所への県独自の支援は、引き続き行なうこと。
- 県立障害者施設の事業団立化による、職員の人員や給与の大幅カットを中止し、正規雇用を中心とした職員の処遇改善をすすめること。
- 腎機能障害者に対する兵庫県独自の認定基準を設けて、すべての透析患者が障害等級1級に認定されるようにすること。
- 重度障害者医療費助成事業の対象となる精神障害者を、精神障害者保健福祉手帳2級まで拡充すること。
- 介護保険について
- 「要支援」と認定された方を、実態を無視し保険給付の対象から外す「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行をさせないように、市町に求めること。
- 県独自の保険料・利用料の減免制度を創設すること。
- 介護・福祉労働者の処遇改善のための財政補助制度は、3年間の期限をやめて、恒久的に支援するよう国に求めること。また、県独自の支援を行うこと
- 特別養護老人ホームの待機者(県下で25,100人)解消のため、施設の増設をすすめること。
- こども・子育て支援について
- 子育て世代の経済的負担の軽減のため、こどもの医療費を、義務教育を終えるまで、通院も入院も、所得制限を撤廃して完全無料化すること。
また、保育料の第三子軽減制度は、所得制限を撤廃し、保育料減免制度を充実すること。
- 産科医・小児科医不足を解消し、周産期医療、小児救急医療を充実するため、NICUなどの整備をさらにすすめること。
- 妊婦健診の全額公費となるよう、県の補助を増やすこと。出産費用を補助する制度を創設すること。
- 公的保育を解体する「子ども・子育て新システム」に反対すること。保育所待機児童(県下で1,071人)を解消するため、保育所を増設するとともに条件整備を行うこと。
- 学童保育(放課後児童健全育成事業)について、待機児童や大規模化解消のため増設をすすめること。開設日数加算はしないとする方針を撤回すること。また、小学校高学年や障害児の受け入れ、施設の充実、父母の負担軽減などの取り組みをすすめること。
- 新婚世帯、子育て世代に対する民間住宅家賃補助制度を創設し、県営住宅の入居優先枠を大幅に増やすこと。
- 子宮頸ガンワクチン、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンに対しての財政支援を継続することを、国に求めること。
- こどもの虐待が増え続け、命を奪われる事態も連日おこっている。こども家庭センタ−の専門職員の増員を行い、児童虐待の被害者を出さない支援対策を強化すること。市町との連携をより強化し、地域ぐるみで児童虐待を防止する対策をすすめること。
- DV対策は、専門職員を増やし、被害者自立のための住宅や仕事確保など支援体制を強化すること。また、民間シェルターへの助成を拡充すること。
- 有期化、医療費の自己負担を盛り込んだ生活保護制度の改悪をさせないよう国にはたらきかけること。
また、ソーシャルワーカーを増やし、きめこまやかな生活支援体制を強化すること。
- 消費者問題の相談者は、非正規職員でなく、安定した正規雇用で、多重債務者に対するきめ細かな相談活動など、消費者行政を市町とともに拡充すること。民間支援団体を対策協議会のメンバーに加えること。
- 年金制度の拡充について国に強く要望すること。
- 「消えた年金」問題を最後まで解決するよう国に求めること。
- 25年の受給条件期間を10年に短縮すること。
- 最低保障年金制度を導入し、低年金・無年金者をなくすこと。
- 年金財源を消費税に求めないこと。
- 地方分権改革一括法による福祉施設等の基準の条例化にあたっては、これまでの最低基準を少なくとも下回ることなく、関係者、及び県民の意見を十分聞いて、より充実したものを制定すること。
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