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2005年05月26日

「県政検証 シリーズ対談」(2)
地域経済と中小業者

対談者
○杉本ちさと(県会議員)
○磯谷吉夫(兵庫県商工団体連合会会長)

(5月15日付け「兵庫民報」より)

≪消費税課税拡大、震災特別融資打ち切り≫

(杉本)確定申告も終わりましたが、消費税が一千万円に課税限度が下がったことで、中小業者のみなさんには困っている方が増えているのではありませんか?

(磯谷)消費税を実際に納税するのは来年の三月末まででから、課税限度が下がったことによる負担感は今はないといっても、来年は大変になるという予想はしています。
 我々のような規模のサービス業、小売業では、消費税を売値に上乗せしているところは、ほとんどありません。来年は従来の売り上げの中から身銭を切って消費税を払わなくてはなりません。生活がなりたたなくても、消費税を払わなくてはならなくなります。

(杉本)いま消費税分を値上げしておかないと来年に払えない、けれどいま、消費税を消費者に転嫁するなんてとてもできませんよね。

(磯谷)うちでも、震災前と比べ売り上げが四割ぐらい減っています。その低い所得に消費税がかかり、ますます大変です。周りをみても廃業がものすごく多い。

(杉本)借金などのために廃業しようにもできない人も多いですね。
 国も県も景気はよくなったと議会でもたびたび口にしていますけれど、実感はありますか?

(磯谷)勤労者世帯の給与水準は六年間連続で下がって、購買力も下がっていますから、地域密着で商売している業者にとっては、景気はむしろ悪くなっています。大企業は輸出とリストラで膨大な利益をあげていますが、中小業者としては、景気がよくなっている実感はまったくありませんね。

(杉本)どこに焦点をあてて産業・経済施策をやっているのか、まったくかけ離れています。 特別震災融資も県が率先して打ち切りました。「被災業者は自力で立ち直っている。立ち直っていない人は努力が足らない」との県の姿勢には、「なんてことを」と怒りを新たにしました。

(磯谷)県や市は、震災十年で復興したとおおいにキャンペーンをしています。しかし、ことし一月十五日に兵商連主催で、長田から須磨の実態調査をして、神戸市が鳴り物入りでつくった再開発ビルでは十軒のうち三軒しか営業していない状況をまざまざと見ました。これをみても「復興した」というのはまったく実態をみていないことは明らかです。
 行政は、「復旧」は震災以前にもどること、「復興」は「それ以上によくなるんだ」と区別していますが、震災以前の状態にも戻っていないのに、「復興できた」とか「復興できつつある」というのは思い上がりもいいところです。
 融資も県と市の代位弁済の状況を見れば、一般の制度融資は四%から五%の代位弁済なのに、震災融資に限っては一一・何%という額を信用保証協会に払うということですから、震災融資を受けてなんとかつないできた業者の営業がいかに苦しいかが分かります。
 神戸市会への陳情で私も口述しましたが、いまの実態からみて十年で楽になった業者はない、少額で返済が据え置かれたり、支払い中だったり…三百万から四百万というわずかな金額の人が大変な困難に追いやられています。あと五年、十年は据え置きし、利子補給も続けて、零細な末端の業者まで立ち直れるようになって、はじめて「復興した」といえるのではないでしょうか。

(杉本)代位弁済だけでなく返済中の人も含めれば、半数以上の業者が約束どおりの返済はできていません。県は「八割が返済している」といいますが、これは金額ですから、論理のすり替えです。県議会では、兵商連からの請願審議で、自民党、公明党はもちろん、民主党も、「ほとんどの方が誠実に返済している」「返済できていないのは不誠実であり、それを救うのは公平性に反する」と主張しました。中小零細業者の実態、願いをほんとうに、分かっていないことに憤りを感じました。

≪大企業への民主的規制を≫

(杉本)景気が良くなっているというのは、一部の大企業がとても業績をよくしていることからです。予算特別委員会の歳入予算案審査では、法人県民税がものすごく増えている予算案になっていました。石油・石炭、運輸、鉄鋼、電機といった大手企業で、純利益が昨年度比二倍から六倍増えていますから、法人税が増えて当たり前です。
 しかし、県民所得税はマイナスです。大企業がもうけた利益が給与や下請け単価に還元されてないということです。

(磯谷)個人所得を減らして、大企業はもうかったというわけですね。

(杉本)それなのに、県は、新産業支援、大企業支援の施策をいっぱいつくっています。尼崎に松下電器がプラズマディスプレイの工場を建てました。これに県は三十億円もの助成金を出しています。大企業誘致のための助成金です。しかし、この工場での新規雇用はゼロです。大阪の門真から労働者を移してきたのです。広い工場に五十人。尼崎での新たな雇用はありません。
 一方で、各地の地場産業への支援は非常に劣悪です。

(磯谷)既存の業者や商店街を支援する体制が、基本的にないのでは。たしかに「商店街の振興」は県の産業政策にあります。しかし、片方で大型店の進出をくい止めないでおいて、商店街を復興しようというのは、現実的に無理です。
 きょう、うちの電機ポットが壊れたので、コジマ電機の灘店へいったら、閉まっているのです。芦屋店と統合になったと書いてありました。ここはコーナンが進出したものの採算が取れず撤退したあとにコジマ電機がきて、それもやめたわけです。
 つまり、進出も撤退も大型店の自由気ままです。その間に、地域の商店街・小売市場がどんどん壊れていきました。街の電器屋なんか次々なくなっています。撤退したらそこは「砂漠」のようなもの、生活関連の店がどこにもないという地域になってしまいます。
 大規模店への民主的な規制をせずに、アーケードやらカラー舗装にちょっと補助をして、振興策だというのは、片手落ちです。商店街や地場産業を守るというなら、なにが地域経済破壊の原因になっているのかにメスを入れないと…。

(杉本)ほんとうに中小企業を支援するというのなら、それぞれの地域に合った商店街や商店を住民といっしょに発展させていくような施策が必要ですね。

≪中小業者の公共性に注目し、位置づけを≫

(磯谷)中小企業、商店街、小売市場に公共性があるというとらえ方を県はしていません。これが損なわれれば、地域が死んでしまうという認識に行政がたたないと、真剣に支援しようかとはならないでしょう。
 雇用の面でも、たとえば、町工場や飲食店が中卒・高卒の青年から高齢者までの雇用を確保しているんだということから見れば、中小企業・商店街などには地域の雇用を安定させるという公共性があります。
 こうした公共性に注目しないと、買い物に便利だとか、品揃えがいいとかという観点からだけ見れば、弱肉強食の論理が押し通されてしまいます。

(杉本)中小企業の位置づけについての認識が重要です。県は、少数の意見のようにいいますが、軒数からみても、働く人口からみても、中小企業が圧倒的ですね。

(磯谷)灘でもだんじりは、酒屋のおっちゃんや、肉やのおっちゃん、市場の若いものが中心になって運営しています。商店街がなくなってしまったら、だれが、だんじりを担ぐんですか。スーパーから担ぎ手を十人出せとかいえますか。実際、担ぎ手が減って、私の店の前の坂をだんじりが登れなくなって、私まで駆り出される始末です。まちが壊されるばかりか、地域の文化まで壊されてしまいます。

≪中小業者の意見を反映する場が必要≫

(杉本)間違った産業政策がまちのコミュニケーションを壊してしまってます。
 やはり、中小企業の実態や要求を行政に知らせていく、反映させていく取り組みが必要ですね。兵庫県は国の打ち出した雛形を兵庫にあてはめているのに留まっています。実態をよくみて、施策に反映させるという姿勢がないように思います。
 震災特別融資でも、「実態を聞いたか」と金融課長に尋ねても、「聞いてません」と平気で答えます。県の担当者は業者の実態を知らないのです。

(磯谷)行政が小さい企業まで含めた調査を十分していないこともありますが、産業政策について、中小業者、零細業者とともに協議できるような場がない。一部の商店街役員に聞いて、それが「実態」だということにしてしまう。広範な業者の意見を吸い上げる仕組みをつくるべきだと思います。

(杉本)県自身、「参画と協働」といっているんですから、本当の意味で、実行すべきですね。
 仕事起こしの面では、私たちも、小規模業者の登録制度や住宅リフォーム助成制度などを提案してきました。こんど、国も住宅耐震化の目標数値を打ち出しましたが、私たちは、これを活用して建設業者の仕事起こしができないかと検討しています。

(磯谷)小規模業者登録制度は明石市ではやくにできました。いま阪神間で各市に制度化をもとめる運動が広がっています。

(杉本)昨年の県議会の一般質問で、埼玉県などの例をあげて小規模業者登録制度の実現を迫ったのですが、知事は「必要ありません」と一蹴しました。

≪生活していけないのに国保・消費税取り立て≫

(磯谷)社会保障の面では、国民健康保険の問題が深刻です。一カ月とか三カ月の短期証を発行して、国保料(税)の取り立てを強めています。
 自分の店の営業だけでは暮らしていけない業者が半数です。妻のパートタイマー収入でなんとかやりくりしています。生活ができないのに、消費税を払わなくてはならない、国保料(税)を取り立てられる。払えなくて保険証が支給されず、病気になっても医者にいけないという人がそうとう広がっています。

≪地場産業にも光を≫

(杉本)地場産業も成り立たなくなっています。西播でも皮革産業が危機的になっています。マッチや鎖も地場産業でしたが、もうありませんね。

(磯谷)加古川でも靴下産業で、ゲルマニウム入りなど工夫をしてますね。地場産業振興への産学協同に補助金などもっと支援が必要です。

(杉本)生き残りのためには、外国との競争に負けない新しい商品づくりが中小企業にも求められています。これまで地場産業で培われてきた技術や伝統を生かせるような、支援がいま課題になっているんですね。

(磯谷)兵庫の地場産業を全国にアピールできる施設を県でつくってはどうでしょう?新潟県の燕市の地場産業館には観光バスも必ず立ち寄るぐらいになっていて、特産のスプーンやナイフなど洋食器など土産品としても買えるし、地場産業もわかるという施設になっています。

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