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2002年01月12日

県立病院「改革」を考える学習集会
金田峰生県議の報告

日本共産党県会議員団からの報告
     県議団 病院問題小委員会 金田峰生

クリックで大きな写真を表示1、これまでの経過

 今回の問題は、一言で言うと、県立病院の民営化にむけた本格的な動きを県当局がはじめたということです。
兵庫県は99年6月の選挙の後に、「県財政が危機的」「新しい行政システムなどが必要」と「県行財政構造改革」を提案。県民の審判をやり過ごす形で、「行革」が始まりました。
 その中で、県立病院は「補助削減」「市町との役割分担を見直し」、「一般医療の民間移譲」などが打ち出されていました。
 当局は「県立病院等のあり方」の検討を内部で開始して「素案」をまとめ、中身は、一般医療は他にゆだね、基幹病院から地域医療支援病院への転換、高度・専門医療をおこなう病院にする、などでした。
 そして「素案」を病院ごとにあてはめた、「県立病院の将来構想」(県立病院再編の責任者が作成したメモ)が作成され、議会での追及で、「せっかく作ったものだから、ベースにしたい」と答弁しました。
 実際、一昨年から、塚口病院の民間移譲とのじぎく療育センタ−の縮小・事業団移管が問題となりました。患者さんや地元の民間開業医をまきこんだり、家族会の結成、当局申し入れ、も宣伝、署名活動などの運動がすすめ、変化をつくりだしました。
 私は、県当局が、県立病院の役割を縮小する画策を仕掛けてきたこの数年間でしたが、県立病院の必要性やあり方を、県民の立場で発言・提案し運動を広げることで、当局の一方的な提案を退けることができた数年間でもあったと確信しています。


2、今回の「あり方基本方針」(案)について

 県は2000年度から県立病院への補助金算定基準を見直し、乳幼児医療補助を6700万円減額するなど行改の具体化を進め「県立病院あり方検討懇話会」を設置。これまで県民に全く非公開にされてきました。
 この懇話会は、2000年度内に4回、2001年度内にまとめの会議を1回開き、議会での重ねての追及し、最後の会議分の議事録が公開されました。
 さらに、昨年の11月2日、決算特別委員会で、突然、公明党が地方公営企業法の「全部適用」を要求、当局は「それも含め検討中」とし、12月17日に「あり方基本方針」(案)を記者発表。12月18日から1月11日にインターネットなどで意見を募集し、1月18日に開かれる県民生活常任委員会で報告説明し、2月4日に医療審議会にはかり、2月議会に条例提案。4月1日から適用開始を予定という段取りを組んでいます。すでに各病院の構想も検討に入っていることは、間違ありません。


【「あり方基本方針」(案)の特徴と問題点】

(1)県民不在の密室審議と強行推進
 これまでの経過の中に、県の姿勢の重大な特徴があります。すなわち、この基本方針案が、まったく県民不在の密室で決められ、県民に十分な知らせず、きわめて横暴な形で押し付けられようとしているということです。
 この案をまとめた懇話会は非公開です。案に対するパブリックコメント、つまり意見募集は、インターネットだけの25日間。しかも年末年始を含む日程設定です。
 また、議会での議論の前に根回しを進め、既定の方針のように扱うなど、二重三重に民主主義を踏みにじったやり方です。
 知事は、「参画と協働」をしきりに強調しますが、県民不在の計画をごり押しする今回の実際の行動に、その中身が現れています。
 職員からも最近、「井戸カラーを出したいのか、非常にあせっているよう」などと揶揄されており、矢継ぎ早のトップダウンの強引さが目立っています。
 今回の問題は、県立病院のあり方という、県民の命と健康にかかわり、県下の医療供給体制の重大な変更に、こうしたやり方は絶対に許されません。
 県当局の提案は、この段階ですでに認められないものだと言えます。

(2)経営合理化に主眼をおく、地方公営企業法「全部適用」

 提案の中身については、「地方公営企業法全部適用」という、聞きなれない言葉があります。この「地方公営企業法全部適用」というのはどういうことか、当局の言う「全部適用のメリット」は、県民や患者にとっての「メリット」とは言えないものだと、私たちは考えています。
 「地方公営企業法全部適用」とは、病院運営に企業経営的手法を全面的に持ち込もうとするものです。

(3)「役割分担論」による県責任の放棄

 まず、一番大切なのは、その「あり方基本方針案」で、県民医療が守れるのかということです。県はいったい県民医療にどう責任を果たそうというのか。「基本方針案」では、県は「役割分担」として、「一般医療などは市町や民間が担うべきものであり、今後県が担うのは、高度・専門、特殊医療である」としています。その高度・専門、特殊医療で具体的に示しているのは、粒子線医療と周産期医療、災害医療しかありません。尼崎病院の心臓外科も、成人病センターのがん治療も、姫路循環器病センターの医療も挙げられていません。議会での質疑でも、「民間でもできること」と見直しの必要を答弁しています。また、不採算部門である救急も、高度救命救急医療を担うとしています。
結局、県が補助金をつけるのは、粒子線医療センターとこども病院の一部だけに削られるということです。
 「一般医療から手を引くというが、郡部ではそうはいかないだろう。『基幹病院として整備強化する』ともしている」という見方もありますが、私たちが、「現在、県内で、県立病院が直接一般診療部門を担うべき圏域はあるか」と質問したところ、「そういう圏域はない」という答弁でした。ですから、病院を整備はしてもそれを運営するのは県ではなく、市町や医師会、民間だということのが県の姿勢です。
 また、現在深刻な問題となっている小児救急を含む救急医療は、県が担うべきだというのはこれまで常識になっていましたが、県は3次高度救急しか眼中になく、担う姿勢はありません。
 都市部でも小児救急は深刻です。例えば、神戸市・西区などは、近くにこども病院があっても、ここは一次救急を受けないことになっており、神戸西医療センターで受けられないとなると、車で高速を飛ばしても30分以上かかって、中央区ポートアイランドの市民病院まで運ばれるという事態になっています。県立こども病院も、他の県立病院でも、体制や施設も拡充して小児救急を受けるというのは、いまなお県の担うべき重要な役割だというのは明白です。しかし、県は、輪番制を進め市町や民間に任せようという姿勢だけで、自ら直接責任を果たす姿勢ではありません。
 県の「役割分担論」が、結局は責任放棄だということは明らかではないでしょうか。県立病院に「地方公営企業法」を全部適用し、民営化に向かおうとしていることに、今月9日、氷上郡広域行政事務組合議会が全会一致で意見書を出しました。この意見書では、「柏原病院については、丹波地域住民の命の砦であるから、県立で存続・充実を」と切実に要求されています。
 私は、そもそも「県立病院は高度・専門、特殊だけですよ」というのは、税金を使って県民医療を支え発展させるという役割からも、また、「全人的医療」という現代医療の流れ、患者さんを病気や臓器部位だけでみずに、その人の生活環境や生い立ちなどを含めてまるごととらえるという考え方ですが、そういう進歩の流れに逆行することでもあると考えます。
 さらに、現在、「高度・専門、特殊」言われる分野も、このままでいくという保障はありません。なぜなら、今回の提案は、あくまで経済効率、合理的な経営というのが狙いだからです。公開された「あり方懇話会」の議事録でも、ある発言者は、県立病院への繰入金が10年間で1000億円になっているということを確認し、「1000億円の税金を県立病院でつかうのが公平な税金の使い方なのかどうかと」、「1年間に県立病院に入院した県民は全体の1割未満。その入院患者に144億円も使うのは不公平」と言っています。
 こんなひどい議論です。県民のため、兵庫県の医療水準を維持・発展させる役割を担っている県立病院に、まるで「税金をつぎ込むのは無駄だ」と言っているのです。これでは、高度な医療が必要な患者さんで、重篤や難病であっても、ごく一部の県民だから多くの税金を使うべきではないということになります。こうした議論を重ねてつくられた基本計画案が、今後も高度・専門、特殊医療をそのままでなく、どこかで必ず切り捨てしてくるというのは、容易に想像できることです。

(4)経営面からの問題 〜「民間病院は黒字だ」という議論について

 そして、経営という側面でみても、決して彼らのいうようにうまくはいかないし、ましてや企業経営手法がサービス向上にはならないということも、指摘したい。
基本方針案では「民間病院は黒字なのだから、県立病院も独立採算でやるべきだ」と単純に論じています。しかし、事はそんな簡単なものではありません。
 まず、診療報酬、つまり医療行為に対して金額が決め、医療保険から診療に対する報酬として医療機関に支払われるお金ですが、これには、病院の老朽化に対する備えや、拡充・改修などの費用は含まれていません。ドクターの診療行為、看護職員の労働、検査、そして材料費などしか想定されていないのです。ですからその報酬から将来の建替えや改修の 費用を積み立てなければ、病院は存続できないのです。
 しかも、その診療報酬は、十分な評価額の設定だとは言えません。これまでも「低い」と指摘されてきましたが、今回の小泉医療「改革」で、診療報酬のマイナスが一部実施、来年度されに実施が予定されています。
 先日の医師会の新年会でも、出席者はまるでお通夜のように元気がなかったそうです。小泉「改革」で「1割も収入が減る、病院は潰れるところが増える」。こういう話ばかりです。
 何よりもひどいのは、高齢の入院患者さんに対する医療差別です。昨年10月に特別に指定された病気以外の方に提供される注射や投薬、処置などの治療が、90日を越えると半額以下になるという措置が強行されました。長く入院しているだけで半額以下になるというのはあまりにひどい仕打ちではないでしょうか。病院はだからといって投薬や注射処置をやめるわけにはいきませんから、その分は持ち出しになります。そこで経営を優先させると、治療行為を行わないということに直結します。
 基本方針案に描いている「職員の経営参画意識の高揚」は、税金の無駄遣いを戒めるという意味合いを通り越し、まさに医療行為をやめるのかどうかということを迫る、そして経営のためには打ち切りますという選択をする「医療人」をつくろうということになるのだということを、指摘したいと思います。
 さらに、外注が進められる。いまでも食事の配膳はパートに任せればよいという話が出ています。しかし、食事というのは医療上非常に大切なことです。配膳したときの顔色や反応、「食べたくない」という一言に、見逃してはならない患者の様態にかかわることしばしばです。それを外部に、ましてや素人に任せようという発想にも、経営優先の弊害がみられます。また、外来診察にいる看護婦さん全員が、資格はあるが派遣会社から派遣されている社員になったら、それを聞いて患者さんはどう思うでしょうか。その人の能力うんぬんでなく、患者にとっても、働く側にとっても、責任をもちきれない体制は、大きな不安と、弊害をもたらします。
 医療という分野は、ヒューマニズム、良識が強く働くという点で、他の仕事、サービス提供とは異なる部分があります。国鉄はJRになって、職員の接遇がよくなったかもしれない。電車車両はかっこよくなった、スピードも速くなった。パフォーマンスは良くなったかもしれない。しかし、故障や事故を起こさないとか、単線を複線にする、住民の足を守るといった基本的部分が損なわれたというのが、効率化やコスト意識の結果であるというのは明らかです。医療分野でも、経営や経済という算術が強調されればされるほど、基本的に同じ結果を招くということを、押さえておくべきだと思います。
 そして医療現場で働く人たちの処遇に関してはどうでしょうか。看護職員を例に少しみておきたいと思います。
よく給与水準をみるときに、自治体職員の給与が引き合いに出されます。県立病院の看護 職員給与と、ある民間病院で働く看護婦さんの給与を比較しました。
 2000年度の統計で、県立病院の看護婦さんは年齢35歳、経験年数11年が平均で、基本給は約33万5000円です。一方、民間の方はどちらにも符号する数字はなかったのですが、同年齢でみると約29万円で、4万5千円の差、経験年数では約27万円と、6万5000円の格差がありました。看護婦さんの仕事内容から言えば、その水準でも「割に合わない」かもしれない。民間では、その水準では経営にならないという言い分も出てくるでしょう。
 また、配置基準についても、今の厚生労働省の基準は低すぎる。労働組合が、看護婦さんが週休2日で有給も消化し、医療事故など起こさないような体制という当たり前のことを実現するのに必要な看護婦数を試算すると、県立病院ではあと860人ほど増員する必要があるという結果になりました。
 つまり、私が言いたいのは、ひとつは、県立病院の民営化で、あるべき医療職員の処遇水準指標が失われるということ、ふたつには、いまの診療報酬体系のもとで民間病院が県立病院の医療や労働水準を維持することは、ほとんど不可能だということ。
結論として、患者サービスの向上どころか、現状維持すらきわめて困難だということです。

(5)当局のいう「利点」は現行体制で十分可能

 その他、「機敏性」や「柔軟性」など、「地方公営企業方全部適用」の「利点」をあげています。これらは今の病院局、局長も部長の現体制でも十分に確保できます。現に今回の「改革」では。こんなにすばやい対応ができるのですから。なにより管理責任者である知事の姿勢で、十分変えられる課題です。
 また、税金の無駄遣いを戒めるということも、それこそ自治体労働者としての教育と自覚で、適切に対応できるものです。


3、全国の流れ

 私から最後に報告したいのは、今回の提案が、小泉医療「改革」の流れの中での提案だということです。
 小泉内閣による医療改悪は、具体には窓口負担割合の引き上げや保険料値上げ、老人医療の対象年齢引き上げなどや、診療報酬引き下げなどが挙げられますが、これらをまとめた特徴は、患者の負担を増やすことによって受診を抑制し、同時に、医療提供の側にも痛みを押し付けて、供給も抑制しようとしていることです。そして、医療など社会保障を削減しながら、無駄な公共事業への税金投入は温存しています。
 マスコミなどは国債発行額30兆円以内を実行したと評価していますが、そのために社会保障費が削られています。一方、公共事業予算は来年度予算案では1兆円削減しましたが、同時に今年度の補正予算では2兆5000億円積み増ししています。
 兵庫県は、老人福祉医療や乳幼児福祉医療助成制度の一部を改悪し、対象者を減らしたり一部負担を導入したりする中で受診を抑制し、このたびは、県立病院への補助金をカットし、民営化への努力で医療サービスを抑制しようとしています。その一方で、公共事業予算は、例年通り3900億円を確保しようとしています。
 私は、ここに税金の逆立ちした使い方が象徴的に示されていると思います。しかも、それが、「金の切れ目が命の切れ目」という、当の昔に克服したはずのばかげた話を、現在に復活させようとしている県の姿勢に、強い危機感をもちます。


4、日本共産党県会議員団の基本的見解と対案

 「地方公営企業法全部適用」は、一般医療部門を独立採算のもとで黒字にすることで、民間経営が可能であることを示し、将来的に民間売却するための条件づくりに他なりません。「全部適用」は、全国でもわずか7県です。
 何より県民のみなさんは、県立病院は「県立」であってほしいと願っておられます。
 ある県立病院についてのアンケート調査でも、「民間の方が良い」「条件付移譲やむなし」が2%しかないなど、県民の要望は明確です。
 私たち日本共産党県議団は、「地方公営企業法全部適用」は撤回し、「あり方基本方針案」について、県民参画を得るために十分な時間を保障し、十分な検討を要求するものです。
 そして、県立病院のあり方について、それぞれ病院毎に、地域の皆さんなども参加する、「地域病院運営協議会」のようなものを設置するなど、運営への県民参加の保障、こども病院附属診療所の展開など、県内小児救急医療体制を充実させ、それぞれ特徴をもたせながら、地域ニーズに応えた医療提供が可能な県立病院へ、発展・拡充の方向で、県が主体となって責任を果たすことを提案します。


5、今後の展望

 この問題での取り組みは、まさしく県民参加が「かぎ」です。その教訓は塚口病院をはじめとする取り組みの中にあることは、この報告でも述べさせていただきました。
 地域自治体の意見も大いに注目したいと思います。
 民間病院も「不採算部門担当」「診療報酬問題」などで、一致していただける可能性は大いにあると思います。
 そして何より、医療の大改悪を許さず、県民不在の医療供給体制変更にストップをかけ、県民の皆さんの願う県立病院づくりを重ねて呼びかけて、報告を終わります。

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