議会報告
-
私は日本共産党議員団を代表し、上程されている請願第51号ないし第53号、第55号ないし第57号、第22号、第34号について不採択ではなく採択を求め、討論いたします。
まず、請願第51号「物価上昇を上回る年金引き上げを求める意見書提出の件」についてです。

2025年度の年金額改定は3年連続してマクロ経済スライドを適用し調整分0.4%を削減し1.9%のプラス改定になりました。物価との関係でみれば実質的には0.8%減額です。特に女性の単身者は年金が少ないため、年金だけでは生活ができません。2024(R6)年度の高齢社会対策総合調査において、高齢者が仕事をしている理由は、「社会参加」や「技術の研鑽」「社会貢献」などは少なく、収入のためが最も多く55.1%です。年金問題は高齢者だけの問題ではありません。今の年金支給状況では若年世代も老後の生活に不安が募ります。物価以上に上昇しやすい医療費・介護費負担、物価上昇による光熱費や食料品などの負担は高齢者を直撃します。高齢者の生活を守り、若者も将来安心して暮らすためには、物価上昇を上回る老齢基礎年金引き上げは、当然、必要です。よって本請願の採択を求めます。
次に第52号「福祉現場の人材確保と物価対策に関する意見書提出の件」についてです。
介護事業の有効求人倍率は全職業の平均より依然として高い水準で推移しており、2025年は3.41倍です。介護事業所では介護補助者や外国人労働者を雇用していますが、それでも究極の人手不足に陥っています。人材派遣会社に多額の費用を支払って経営破綻に陥った事業所もあります。早期退職者も多く、退職理由では「給料が安い、仕事量が多い、労働時間が長い」が上位に並んでいます。
これまで介護事業所に対する賃金引上げ政策として処遇改善加算やベースアップ等支援加算が創設されてきましたが、基準を満たさない事業所は算定できないため、介護労働実態調査では、算定した事業所は75%、基本給引き上げは4割でした。そもそも2024年度介護報酬改定1.59%の微増では、全産業に比べて1か月の賃金が7万円は少ない介護職員の賃金引き上げにはつながりません。介護報酬の少なさから賃金引き上げができていないだけでなく、経営が厳しく、特に訪問介護事業所では全体の35.1%が赤字経営です。通所介護事業所や入所施設では物価の高騰により食費など自費に当たるものは値上げをせざるを得ない状況です。
障害福祉サービスの全体の報酬改定率においては2024年度1.12%の引き上げではありますが、基本報酬は減額です。特に生活介護では利用者規模によりますが、基本報酬は年間数百万円の減収となります。報酬改定では職員の人員配置や重度者支援の加算などを細分化し、それで対応できるとしていますが、多くの加算が「要件や事務量」を課せられ、小規模事業所ほど取得できない現状です。2023(R5)年の障害福祉事業所の「職員不足の実態調査」で回答のあった1,047カ所の事業所のうち、8割が2022年度に正規・非正規職員を募集したけれども、採用できた正規職員数の充足率は53.5%と半分にとどまっていました。また介護事業所、障害者福祉事業所での現職員配置基準では利用者に対応できない状況があり、特に入所施設の夜間業務においてはハードワークが強いられています。以上のことから、職員確保ができる、待遇改善、職員数配置の引き上げ、福祉事業所への補助金創設は必要であるため本請願の採択を求めます。
続いて第53号「OTC類似薬の保険適用除外を行わないことを求める意見書提出の件」についてです。
厚生労働省は市販薬と成分や効果が似る「OTC類似薬」について、保険適用を維持したまま患者に上乗せ負担を求める案を検討するとしました。しかし患者に上乗せ負担を求めることは言語道断です。そして、もしOTC類似薬が保険適用外になれば、患者はこれまで1〜3割負担で済んでいた薬を、全額自己負担で購入しなければならなくなります。特に高齢者、低所得者、慢性疾患を抱える人にとって、これは大きな負担になります。その結果、「お金がかかるから薬を買わない」「我慢してしまう」といった受診・治療の抑制が起こり、症状の悪化や重症化を招く恐れがあります。これは医療費の削減どころか、将来的に高額な医療費を生む逆効果の政策です。「短期的で表面的な削減」にすぎず、根本的な医療費問題の解決にはなりません。
OTC類似薬は名前こそ市販薬と似ていますが、医師の診察を通じて処方されることで、本当にその人に適した薬が、安全な用量で使われてきました。保険適用外となれば、自己判断で市販薬を選ぶ人が増え、誤った薬の使用、飲み合わせの危険、副作用の見逃しなど、重大な健康被害につながるリスクが高まります。医療の「専門性」と「安全性」を軽視する政策だと言わざるを得ません。
また、日本の国民皆保険制度は、「誰もが平等に必要な医療を受けられる」ことを理念としてきました。しかし、OTC類似薬が保険適用外になれば、お金のある人だけが十分な医療を受けられる社会になってしまいます。これは、皆保険制度の根幹を揺るがす重大な問題です。よって本請願の採択を求めます。
次に第55号「教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する件」についてです。
兵庫県の教育費支出は、「統計でみる都道府県のすがた2025」によると47都道府県中46位です。このことから兵庫県が子どもたちに冷たい県だと言わざるを得ないのではないでしょうか。県として教育予算を増やして私立学校への経常費補助金を増額し、学費負担軽減と私学の学費負担の自治体間格差解消が求められます。北欧の教育大国のスウェーデンは私立高校の学費が無償です。小学校から大学まで授業料が無料で学生の居住費や低収入の課程の学生の生活資金をカバーする奨学金給付制度も充実しています。教育の機会均等からも子どもたちにゆきとどいた教育のため、教育費負担の公私間格差をなくす本請願の採択を強く求めます。
続いて第57号「全ての子どもたちへの行き届いた教育を目指し、35人以下学級の前進、教育費の軽減、教育条件の改善を求める件」についてです。
全ての子どもたちへゆきとどいた教育を行うためには当然、教員の適正配置が必要ですが、いまだ教職員の未配置は解消されていません。先読み加配の拡充や正規職員を増やすことが求められます。少人数であるほど学習意欲が積極的になり、子どもたちの人格形成や人間的成長にとっても効果があることは世界的にも実証されている少人数学級は、子ども全員が主体的に参加するなど授業のありかたを変える、学級の雰囲気が落ちつき安心が広がる、インクルーシブ教育への可能性がうまれるなど、教育に新しい可能性をもたらします。しかし兵庫県での35人学級については中学校で進んでいないのが現状です。また、県立高校の統廃合については子どもや保護者、地域住民と合意形成がなされておらず、反対や不安の声が上がっています。すでに統廃合を行った地域の影響検証もできていません。そして家庭における経済格差が子どもの教育格差にならないよう保護者負担の軽減を図る必要があります。これらのことから請願にあるように、教員未配置解消、少人数学級の実現、小中学校の給食費の無償化、高校の学費・通学費及び諸経費の無償化、給付型奨学金制度の創設、特別支援学校の増設・設備整備は必要です。国が行わなければならないのはもちろんですが、県が先行して行うべきです。よって、本請願の採択を強く求めます。
続いて第22号「高等教育の学費無償化に向けた教育予算拡充を求める意見書提出の件」についてです。
日本の大学生は、「法の下の平等」「教育を受ける権利」があるにもかかわらず、全学生の4分の3は授業期間中にも日常的にアルバイトをしており、時間的にも肉体的にも勉強ができないのが現状です。フィンランドやスウェーデンは国立大学も私立大学も、学費の家計負担はほぼゼロです。他にもフランス、ドイツ、ポーランド、オーストリア、ギリシャ、スロベニアなども公立大学の授業料は無償です。デンマークは学費無償化だけではなく、アルバイトなどをせずに勉強に専念できるようにと学生への生活費を補償しています。世界と比較しても日本の教育予算があまりにも少なく、2023年の世界の公的教育支出・教育費の対GDP比率国際比較統計・ランキングによると1位はキリバスの16.39%ですが日本は128位の3.24%です。日本は教育予算を拡充させ高等教育の学費無償化を行う必要があると考えます。よって本請願の採択を求めます。
最後に第56号「障害児の豊かな教育のための整備を求める件」、第34号「障害児の豊かな教育のための条件整備を求める件」についてです。
障害があっても生まれ育った地域で、ともに学べるインクルーシブ教育の浸透が必要ですが、特別支援学校で教育を受けたいというニーズも多くあります。兵庫県は特別支援学校の新設や改修を進めていますが、未だ教室不足、運動場がない、体育館にエアコンが無い、設置から40年以上経過した学校では雨漏り、壁の破損など老朽化が進んでいます。医療的ケアが必要な子どもも通う特別支援学校において、体育館の冷暖房未設置は命に係わる問題であり、各設備の老朽化はもちろん、バリアフリーでない状況は合理的配慮に欠けます。設備の整備が早急に求められます。また、特別支援学校では教員に加えて看護師やセラピストも必要ですが、不足しているのが現状です。余裕のない人員配置を定める教員定数は20年変わっておらず見直しが必要です。給特法改定では特別支援学校は調整額を引き下げ、学級担当手当を対象外にしました。これでは教員の処遇改善から逆行しています。障害児の豊かな教育のためには教職員不足の解消も求められます。障害を持った子どもたちにとって、充実した教育環境を整えるのは県の責務であることから本請願の採択を強く求めます。
以上、議員各位のご賛同をお願いし、私の討論を終わります。