議会報告
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私は、日本共産党県議会議員団を代表し、上程されている議案のうち、第106号議案ないし第109号議案、第122号議案、第129号議案、第145号議案の計7件に反対、第146号議案については継続に反対し、主な理由を述べます。

まず第106号議案「本人確認情報の提供、利用及び保護に関する条例の一部を改正する条例」第107号議案「本人確認情報の提供、利用及び保護に関する条例及び個人番号の利用、特定個人情報の提供等に関する条例の一部を改正する条例」についてです。
日本共産党は住民基本台帳ネットワークシステムの導入当初から、国民一人ひとりに住民票コードを付与し、氏名、生年月日、住所等の個人情報を全国的なコンピューター網で一元管理することは「国民総背番号制」につながるものであるとして一貫し反対の立場をとっています。また、窓口申請の負担軽減、利便性、コスト削減、業務の効率化が図られますが、一方で、これまでのように住民基本台帳の個人情報の漏えい事件やネットワークの停止が起きれば、社会全体の信頼を失います。
住民票コードが今はマイナンバーへ移行しました。マイナンバー制度は個人情報を容易に照合できる仕組みであり、プライバシーの侵害や個人情報が流出したときの被害は甚大であり、この制度についても反対しています。住基ネットは現在マイナンバー制度の基盤システムとして活用されています。本議案は、個人情報、マイナンバーのさらなる利用の拡大につながるもので賛成できません。
次に第108号議案「インターネット上の誹謗中傷、差別等による人権侵害防止に関する条例」についてです。
この種の条例を兵庫県でつくるさい、昨年の知事選挙などで行われた人権侵害行為などを繰り返させないためなど、条例制定の趣旨、立法事実が必要ですが、その記述がなされていません。さらに、人権侵害行為に対する削除措置の要請(9条)、指導又は助言(10条)については、その主体者が知事となっていますが、知事が適正な執行を行うことを担保するための専門機関や第三者機関によるチェック体制が全く規定されていないことも問題です。知事が削除措置などの基準を定めるとされる第11条について、パブリックコメントへの回答では、「表現の自由その他の国民の権利を不当に侵害しないように留意し、有識者の意見等、専門的な知見を踏まえて法的に整理する」としていますが、そのことを条例で明記すべきです。また、有識者や専門機関などをどのように選定、選任するのかも、定められていません。これでは、知事による削除要請や、指導・助言が、何を基準になされるのか、定められているとはいえません。
文書問題に関する第三者調査委員会は、知事や県幹部職員が、職員の公益通報を恣意的に誹謗中傷だととらえ、公益通報者保護法で禁じられている通報者の探索、不利益取扱いなどを行ったことに対し、違法で無効であると指摘しました。しかし、知事は、これらをいまだに認めていません。その知事が主体者となり、正しく人権侵害行為として判断しうる保障は、どこにもありません。以上の点から、本議案に反対します。次に第109号議案「兵庫県住宅再建共済制度条例の一部を改正する条例」についてです。兵庫県住宅再建共済制度、いわゆるフェニックス共済は、阪神・淡路大震災で、住宅再建に大きな困難が生じ、その結果、コミュニティや地域経済の復興、関連死など、被災地域全体の復興にも影響が及んでしまったことから、その経験・教訓を踏まえ、災害後の速やかな住宅再建を支援するため、住宅所有者が平時から負担金を持ち寄って備えることで、自然災害で被害を受けた住宅を再建する際に最大600万円の給付を受けられる「助け合い・共助」の制度として創設したものです。県は、いざというときの安全・安心のために、小さな負担(年額5,000円)で大きな安心(最大600万円)を確保でき、国の被災者生活再建支援法による公的支援や地震保険加入と合わせることで、住宅再建の目途が立つと謳っています。しかし、本議案は、フェニックス共済への加入者が1割と少なく、現時点での貯蓄額が150億円であり、南海トラフ地震が起きた場合など、加入者全員に支払えない等の理由で、貯蓄限度額を超えた被害が出た場合、県が一時的に損失補填をすることをやめ、加入者への支払い上限を設けることにしようとするものです。これでは、「住宅再建や関連死の苦しみを繰り返さない、だれ一人取り残さない」の阪神・淡路大震災の教訓を捨て去るものになります。加入者が少ないからという理由でフェニックス共済の役割を狭めることには賛成できません。
加入者を増やす努力ともに、防災・減災施策をさらに進めること、また、県として恒久の被災者生活再建支援制度を創設することを求めるものです。
次に第122号議案「公の施設の指定管理者の指定(兵庫県立東播磨生活創造センター)」、第129号議案「公の施設の指定管理者の指定(姫路港網干(あぼし)沖小型船舶係留施設)」についてです。
これらの議案は、いずれも利用料金制により、議会の承認を経ることなく利用料金を値上げをします。兵庫県立東播磨生活創造センターは、2026年10月から5年間で段階的に引き上げるとしています。姫路港網干(あぼし)沖小型船舶係留施設は、物価高騰などで運営が困難という理由で、現行料金を税込み20%の値上げです。
地方自治法第96条は「使用料の徴収については議会の議決事項であり、公の施設の使用料については、それぞれの施設管理条例によって議会の議決が必要」としています。しかし、県の指定管理の利用料金制は、議会で議決した使用料に対し、指定管理者が0.5~1.5を乗じた額の範囲内で知事の承認さえあれば、議会の議決がなくても利用料金を設定することができるとしました。これでは議会のチェック機能が果たされず県民の負託にこたえることはできないことから反対です。次に第145号議案「公立学校教育職員等の給与に関する条例等の一部を改正する条例」についてです。
本議案は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法の改正によるものです。教職調整額を給与月額に100分の10を乗じて得た額に引き上げますが、東京大学の本田由紀教授は給特法改定案についての意見陳述において、時間外労働に対する適切な報酬額に達しない、小学校では20.5%、中学校では29%必要と試算しており10%引き上げでは足りません。そもそも教職調整額は本給に組み込むべきです。また給特法は特別支援学校教員の調整額を引き下げ、学級担当手当を対象外にしており問題です。超過勤務手当については、正規の勤務時間以外の時間に勤務することを命ぜられた職員に対して支給するとあります。残業命令は、校外学習、修学旅行その他学校行事、職員会議、災害時緊急等と限定されています。しかし現場の実際は、成績づけや翌日の授業の準備などで残業しており、全日本教職員組合による教職員の時間外労働(残業)に関するアンケート結果では97%が定時に退勤できず、過半数が校内で1時間半以上、1割が3時間以上の時間外労働をしています。このような状態は包括的残業命令が出されていると司法も判決しおり、労働基準法違反です。残業代制度は、残業に割高な賃金支給を義務付けることで、使用者のコスト意識に訴えて長時間労働にブレーキをかけようという、世界共通のルールです。ところが学校のなかでも公立学校だけ、給特法によって、このブレーキが外されていることは問題です。そして義務教育等教員特別手当の上限を500円引き下げ、学年学級担当手当の廃止、夜間学級担当手当の支給対象から県費負担教職員で事務職員及び学校栄養教員を外すことは教職員の処遇を更に悪化させるものであるため本議案は認められません。
第146号議案「知事及び副知事の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」についてです。 条例案には、知事及び副知事の給与減額を行う理由として、「県保有情報漏えい」「秘密漏えい疑い」の2つの第三者調査委員会報告書を踏まえ、情報が適切に管理されなかったことに対する責任を明確にするためと記述されました。しかし、秘密漏えいに関する第三者調査委員会報告書は、県職員の情報漏えいについて、『知事が指示した可能性が高い』ことを明らかにしたもので、管理責任が問われているのではなく、知事の主導による情報漏えい行為そのものが問われているものです。また、この件については、地方公務員法違反として刑事告発がなされており、その捜査も途上です。
そうした状況の中、2つの報告書を踏まえるとしながら、知事の情報漏えい指示責任を、『管理責任』に矮小化し、幕引きを図ろうとするもので、賛同できません。もちろん、審議継続にも反対です。
齋藤知事は、第三者調査委員会報告書が指摘する、情報漏えいの指示責任を明確にし、その行為が招いた事態の重さを鑑み、自ら知事職を辞して、責任あるけじめをつけることをあらためて求めるものです。以上、議員各位の賛同をお願いして私の討論を終わります。