議会報告

  • 2025年03月26日
    本会議

    第370議会 請願討論 庄本えつこ

    私は、日本共産党県会議員団を代表し、上程されている請願、第36号、第38号について不採択ではなく採択を、第37号について不採択を求め、その主な理由を述べます。

     

    まず、請願第36号「選択的夫婦別姓制度を導入することを求める意見書」を国に提出する請願第37号「旧姓の通称使用の法制化を求める意見書提出の件」についてです。

     

    現在、世界で夫婦同姓を法律で義務付けている国は日本だけです。憲法で個人の尊厳、法の下の平等、婚姻の自由、夫婦両性の本質的平等権利を掲げながら、実際には女性の96%が夫の姓に変えているという現状があります。2022年3月の内閣府の調査では、変えた側に不利益があるとの回答が6割にも上っています。現状では、改姓による不利益を被っているのはほぼ女性であり、これは明確な女性差別であり、女性が個人の尊厳を傷つけられているということです。

     

    結婚による望まぬ改姓、事実婚などによる不利益や不都合を強いられている人が多数存在しています。通称使用を拡大すればよいとの意見ですが、正式な本人確認手段となるのは戸籍名で、法的根拠のない「旧姓の通称使用」は根本的解決にはなりません。通称使用はダブルネームを認めることですが、個人には使い分ける負担が大きく、社会にはダブルネーム管理のコストや個人識別の誤りのリスクを増大させます。現実的なシステム改修の問題でも、旧姓使用を拡大するためには、膨大なシステム改修費用が必要になります。多くの金融機関は、システム改修に費用がかかるとして、旧姓併記を導入していません。また、法的根拠のない姓の使用が広まると本人確認が困難にもなります。

     

    特に、世界的には日本独自の「旧姓使用」は理解されず、海外で仕事をするうえでのトラブルやキャリア断絶が起こっています。海外に赴任したり国際業務をしたりする場合、国際規格では法的氏名を使用します。パスポートに旧姓が併記されていてもこれは日本独特のもので、電子記録には旧姓は使われていないため、国際会議等では通用しないのです。国際機関で働く女性が途中で改姓すると、それまでのキャリアが実績として検索されなくなります。また、女性研究者が旧姓で発表した論文も、国際的には法的氏名しか認められず、検索しても旧姓時の実績が認知できないなど、多大な不利益を被っています。

     

    そして何よりも婚姻の際に姓の変更を望まない当事者にとって個人の人格、アイデンティティーに関わる本質的根源的な問題は、旧姓の通称使用の拡大をしても何も解決はできません。憲法13条の個人の尊厳と幸福追求権を冒すものであり、24条2項では婚姻に関して法律が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めています。通称使用では女性の人権、尊厳を侵していることになります。

     

    家族のあり方は多様化し、夫婦・家族のかたちはさまざまです。と同時に、離婚や事実婚で親子の姓が違うことも多々ありますが、それで親子関係が崩れることなどありません。例えば、自分の子どもが結婚し姓が変わったからといって、自分と子どもの関係が悪くなるのでしょうか。さらに言えば、姓の同一を求める戸籍法は明治憲法下で成立したものです。それ以前は夫婦別姓の日本でした。

     

    以前、別姓の子どもたちの言葉を紹介しましたが「何の不都合もない」「両親、子どもも仲良く信頼しあっている」などがありました。また、前出の内閣府の調査での「家族の一体感が弱まるか」との質問に、6割が「影響ない」とし、20代以下では7割以上が「影響ない」としています。同じ姓でないと「家族の一体感がなくなる」というのは、明治時代の民法や家父長的家族制度の残滓であると指摘します。家族の在り方は、姓の問題ではなくお互いを認め合い、尊重し信頼によるものです。

     

     国連の女性差別撤廃委員会は日本政府に対し2003年以降、繰り返し法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別であり、民法及び戸籍法をただちに改正すべきと勧告しています。昨年2024年の勧告でも「2年以内に選択的夫婦別姓について実施状況の報告を」と強く求めています。また国連人権理事会等の国際機関も勧告を繰り返しています。

     国民世論ではすでに7割以上が選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しています。若い人ほど賛成が多くなっている現実があります。

    さらに言えば、多様性を尊重する社会実現に向けて、「夫婦別姓の選択肢」がないことは、女性だけでなく、男性にとっても人権問題であるといえます。

     

    今、約7割の国民が婚姻後の姓の自由な選択を望んでいます。通称使用の法制化は、議論が進んでいる選択的夫婦別姓導入を先延ばしにすることにもなりかねません。

     

     結婚し、どちらかの姓を名乗ることができる、それぞれの旧姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度を一日も早く導入すべきであり、請願36号について採択を求め、請願第37号には賛同できず不採択を求めます。

     

    最後に、請願第38号「訪問介護の介護報酬引き下げの撤回を求める意見書提出の件」についてです。

    東京商工リサーチによると、2024年の介護事業者倒産件数、休廃業・解散件数は過去最高784件で、そのうち訪問介護は67%の529件です。訪問介護事業所は、コスト高や介護人材不足に加えて、報酬のマイナス改定があり、事業継続が難しくなっています。収益確保のため集合住宅に併設されている事業所が増え、郡部など1軒1軒回っている事業所が休止・廃止となっているなど、非常に危機的な状況であり、在宅の高齢者が生活を維持できなくなります。

     

    国は訪問介護の基本報酬を引き下げても、処遇改善加算で最大24.5%取得できるように設定していると説明しますが、既に加算を受けている訪問介護事業所は、基本報酬の引下げ分をその加算で補えず、減収となる可能性は否定できません。処遇改善加算取得要件を満たすことができない、事務手続きが煩雑であるという問題もあります。

    このように既に厳しい経営状況にある訪問介護事業所に追い打ちをかけるような介護報酬改定は、更なる人材不足や訪問介護事業者の倒産を招き、ひいては介護崩壊につながるおそれがあります。

     

    「訪問介護費の引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に求める」請願・陳情は2月26日現在、全国223自治体で採択され、国への意見書は215本まで広がりました。都道府県議会では13県議会で訪問介護の報酬引き上げや財政措置を求める意見書が採択されました。訪問介護の窮状が深刻に受け止められています。
     本県においても訪問介護の基本報酬引下げの撤回と、介護報酬引上げの再改定を早急に行う必要があるため、本請願の採択を求めます。

    議員各位のご賛同をお願いし、私の討論を終わります。ありがとうございました。

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