建設労働者の人材確保と賃金確保について
■庄本えつこ■ 日本共産党の庄本えつこである。建設業の健全な発展を求めて伺う。
国土交通省が2013年3月29日に建設業団体の長に宛てた通知、技能労働者への適切な賃金水準の確保についての一部を読み上げる。
ダンピング受注が激化し、そのしわ寄せが労働者の賃金低下をもたらし、若年入職者が減少している。このままでは熟練工から若手への技能承継がされないまま技能労働者が減少し、将来の建設産業の存続が危惧されるに至っている。ここで適切な対策を講じなければ、近い将来、災害対応やインフラの維持・更新にも支障を及ぼすおそれがある。若年者が建設業への入職を避ける一番の理由は、全産業の平均を約26%も下回る給与水準の低さであると、若年者不足による建設業界の危機的な状況が指摘されている。
重大事故が相次いだ新名神道路工事では、人手不足のもと、経験不足の労働者が工期優先で工事に当たらざるを得なかったことが背景にあるのではないかと指摘されている。兵庫県でもこうした現状を踏まえ、2014年度に兵庫県建設業育成魅力アップ協議会を立ち上げ、若年者の建設業界への入職促進、離職防止に努めているところであるが、この間の取組と効果について答えていただきたい。よろしくお願いする。
■建設業室長(堀内秀樹)■ 県では、建設業における次世代への技術継承を図るため、先ほど委員も言った平成26年4月に建設業者団体、兵庫県工業高等学校長会、兵庫労働局等の関係行政機関などで構成する兵庫県建設業育成魅力アップ協議会を立ち上げ、若年者の入職促進と建設業のイメージアップに取り組んでいる。
入職促進の取組として、工業高校生等を対象にしたインターンシップ、現場見学会などを実施している。また、建設業のイメージアップを図るため、若手技術者の活躍する姿や土木インフラの役割をPRするなど、建設業の魅力発信にも努めている。
定着促進については、県の入札契約制度において、建設工事入札参加資格審査申請時の社会保険加入の要件化、週休2日制モデル工事の試行による労働環境の改善等に取り組んでいる。
これらの取組の結果、兵庫県建設業協会の調査では、新規学卒者の採用数が平成28年には前年より33名増加したほか、新規学卒者の1年目の定着率は、平成28年は前年より3.7%改善するなど、一定の効果が現れている。
今後とも建設業界、工業高校等と連携して若い優秀な建設人材の確保、定着に取り組み、県内建設企業の発展に努めていく。
建設業者への立ち入り調査について
■庄本えつこ■ 今、一定の効果を上げたという答弁があったが、建設業協会の言う将来の建設業界の存続が危惧されるとした危機感を払拭する規模の効果が出ているとは考えられない。
例えば、2014年度は求人数360人に対し就職者は274人で、充足率75.7%だったものが、この充足率、年々低下して、2016年度には求人数1,011人に対し就職者数は377人で、充足率は37.3%まで低下している。また、兵庫県勤労統計調査では、事業所規模5人以上の建設業の離職率確定値は1.62で高止まったままとなっている。
2014年度に兵庫県建設業界が作成した建設労働者雇用管理状況等実態調査報告書によると、建設業界の定着率が悪い理由のトップが、休日が少ない、次いで賃金水準が低いとなっている。また、新卒者だけでなく、ベテラン職人からは、建設業界に見切りを付けたという離職理由が上がっている。
イメージアップの事業なども本当に重要だと思うが、やはり賃金引き上げ、休日の確保など建設労働者の労働条件の改善が進まなければ、建設業離れに歯止めがかからないことを示す結果である。であるから、県は、県の発注工事における建設労働者の労働条件の把握と改善にもっと積極的に取り組むべきではないだろうか。
そこで伺う。事前に聞いたが、2016年度県が発注した工事のうち、契約額5億円以上の低入札価格調査制度対象工事は15件、約200億円の契約がされたわけだが、そのうちの6件、約57億円が調査基準価格を下回り、調査の対象になったとのことである。
低入札価格調査制度とは、基準を下回る入札があった場合に、工事が契約どおりに履行されないおそれがあるとして、自治体が入札者の積算根拠等について調査を行うものである。調査対象工事では、入札価格が基準を下回っていることから、労働者の賃金が適正に支払われていないなど労働者の労働条件に悪影響を及ぼしている可能性があるが、この点についてどのような調査をしたのか伺う。
■契約管理課長(竹田安広)■ 県では、工事規模の大きな工事ほど技術力等によるコスト縮減を図る余地が大きいことから、契約予定金額5億円以上の建設工事について低入札価格調査制度の対象としている。
この制度では、調査最低制限価格以上で低入札価格調査基準価格を下回った価格をもって入札した者を契約の相手方とする場合には、一つには、ダンピングによる工事品質の低下防止、二つには、建設業者の健全経営支援のため、低入札価格調査により施工の確実性を確認している。
平成28年度発注の県土整備部所管建設工事では、契約予定金額5億円以上の建設工事15件あった。このうち6件について調査を行った。調査では、調査対象の入札者に対して入札金額決定理由書などの資料を提出させ、直接工事費、共通仮設費、現場管理費等について、調査最低制限価格の算定式における比率以上かなどの観点から、提出資料のチェック、事情聴取を行った。また、労務費については、労務者の確保計画を提出させ、それにより労務単価や員数等を確認するとともに、事情聴取を行うことにより、適正な労務費が算定されていることを確認している。
調査を経て契約した建設工事については、現在まで良好な工事成績で完了しており、特に支障を来していない。今後とも適切な低入札価格調査を実施することにより、労働者の労働条件の確保に努めていく。
■庄本えつこ■ 調査したとのことだったが、2006年に閣議決定され2014年に改定された公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針は、この低入札価格調査制度の活用に関して、都道府県知事宛てに、調査基準価格を下回った金額で落札された場合に、下請業者へのしわ寄せ、労働条件の悪化等の防止の観点から、建設業許可行政庁が行う下請企業も含めた建設業者への立入調査等の連携を図るものとするとしている。
つまり、県は少なくともこの6件の工事で下請業者へのしわ寄せや労働条件の悪化が起こっていなかったか調べることが求められているが、対象工事について、労働条件の悪化の防止の観点から、実際の賃金支払い状況はどうだったのかなど、立入調査には入ったのか。
■契約管理課長(竹田安広)■ この6件については、労働者等から賃金の切り下げとか不払いとか、そういった申し出がなかったので、私ども発注部局から建設業を所管している部局に対して立入調査をする必要があるのではないかとの申し入れは行っていない。
■庄本えつこ■ 立入調査はする必要ないということで、していないということだったが、そもそも5億円以上に限られているということも問題だと思っているが、この6件ですらこの程度では、実態はつかめないのではないかと思っている。県の発注工事で調査基準価格を下回る事例が発生していて、国も下請業者へのしわ寄せや労働条件の悪化が懸念されるからこういう指針を出しているわけであるから、立入調査をしていないということは、県の本気度が問われるのではないかと思っているので、ぜひ認識を新たにしていただきたいと思う。
国土交通省は2017年6月に建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する法律を施行し、都道府県にも基本計画作成を義務付けている。基本計画には、週休2日制の推進や適切な賃金水準の確保、これは決して最低賃金のことではない、などを求めている。
県は今後、基本計画を策定するとのことだが、基本計画策定に当たり、少なくとも指針でいう対象工事について下請企業も含めた労働条件の実態調査こそ必要だと思うが、いかがか。
■建設業室長(堀内秀樹)■ 平成29年3月に施行された建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律は、建設工事従事者の安全及び健康の確保に関し、施策を総合的かつ計画的に推進し、建設業の健全な発展に資することを目的とし、国が策定する基本計画に基づいて、都道府県でも計画策定に努めることとしている。国は本年6月に基本計画を策定し、安全及び健康に関する意識の向上や建設工事従事者の処遇改善、地位向上などの基本的な方針を示した。
今後の都道府県の計画策定に係る進め方などについては、国が主催する近畿ブロック建設工事従事者安全健康確保推進会議において示される予定となっている。推進会議での国の説明を踏まえ、他府県の動向も注視しつつ、建設工事従事者の安全及び健康の確保に適切に取り組んでいく。
■庄本えつこ■ 県内自治体では、例えば神河町では12.5%、香美町では11.5%、新温泉町で15.3%など、郡部では特に産業における建設業に従事する人の割合が大変高くなっている。地方創生と言うなら、もっと本気で建設労働者の賃金引き上げなど労働条件の改善に取り組み、育成に力を入れるべきだと考えている。
基本計画策定に当たっては、まずは労働条件の実態調査を求めたいと思っている。また、建設業への入職促進、離職防止、そして公共工事の目的の一つでもある地域建設業界の健全な発展のためには、建設労働者の賃金底上げがどうしても必要である。そして、そのためには、これまでも日本共産党は繰り返し求めてきたが、公契約条例の制定が必要だと考える。そのことを重ねて求め、私の質問を終わる。
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