性暴力被害支援について
■庄本えつこ■ 日本共産党の庄本えつこである。
通告に基づいて、性暴力被害支援について、質問を行う。
今年6月16日、国会において、110年ぶりに刑法の性犯罪規定を改める、刑法改正法が成立した。日本の性犯罪の現状、2015年の警察による強姦罪認知件数は1,167件。過去20年間で見ると、2003年の2,472件をピークに、全体としては減ってきている。検挙率は95%と他の犯罪に比べ、高い水準とされている。しかし、この数字が現実を反映しているかというと、それは言えない。性犯罪は被害届を出せない、つまり被害暗数が極めて多いのが特徴である。
2014年の内閣府調査で、異性から無理やりに性交された経験がある女性は6.5%、15人に1人が経験し、そのうち7割は顔見知りからの被害であり、未成年者の被害は4割にも上っている。そのうち警察に連絡・相談した人は、わずか4.3%にすぎない。どこにも、誰にも相談しなかった被害者は67.5%に上る。
今回の刑法の主な改正は、強姦罪の構成要件の見直しと罪名の「強制性交等罪」への変更、被害者を男性にも広げること、「強制性交等罪」などの法定刑の引き上げ、監護者であることによる影響力に乗じたわいせつな行為等の処罰規定の新設、非親告罪など、今回、性犯罪は被害者の心身に多大な苦痛を与え続けるばかりか、人格や尊厳を著しく侵害する悪質な重大な犯罪と規定された。この警報改定について、しっかりと県が受けとめて、県の施策をそれに見合ったものにしていくべきだと考えているが、いかがであろうか。
■地域安全課長(小藤智代美)■ 今般の刑法改正で性犯罪が厳罰化されたことは認識している。今回の改正により、性犯罪の潜在化しやすい傾向に、歯どめがかかるものと考えている。今年4月に開設した「ひょうご性被害ケアセンターよりそい」は、警察に相談できない性被害者の支援を目的としており、相談者を男女ともに対象とするほか、被害者の申告が起訴条件となる親告罪規定の撤廃など、性犯罪の厳罰化を想定して設置している。
■庄本えつこ■ 性暴力に遭った被害者は、恐怖や屈辱、混乱の中で、ひとり苦しみを抱える。日常生活が突然、一変されて、心と体に深い傷を負う「魂の殺人」とも言われているにもかかわらず、誰にも相談できない被害者が多いことはさきにも述べたが、しかし、回復できる環境があれば、自ら回復できる力を持っていると考えている。
被害者に、被害直後から二次被害を受けずに1ヵ所で総合的支援を行う「ワンストップセンター」が必要となり、内閣府は2011年、「第2次犯罪被害者等基本計画」のもと、2012年に性犯罪・性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター開設運営の手引き」を作成し、ワンストップ支援センターを、性犯罪・性暴力被害者に被害直後からの総合的な支援、緊急避妊ピルや性感染症検査などの産婦人科医療、相談・カウンセリング等の心理的支援、捜査関連の支援、法的支援などを、可能な限り1ヵ所で提供することにより、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図るとともに、警察への届け出の促進、被害の潜在化防止を目的とするものと規定した。そして、2017年、本年4月に、先ほどおっしゃっていただいたように、ひょうご被害者センター内に、「ひょうご性被害ケアセンターよりそい」が開設された。
そこで、被害者の立場に立った支援について伺いたいと思う。
県は、「よりそい」を、警察に相談していない人の受け皿と定義しているが、その位置づけだけでは狭いのではないかと思う。警察に一度、相談をかけたが、被害届を出す勇気がない人たちは、たくさんいると思うし、また、性犯罪は性暴力のほんの一部であることを踏まえると、「よりそい」の役割は、大変重要であると考える。ただ、性犯罪被害者については、加害者をしっかり罰することは大事なので、被害者の心に寄り添い支えながら、被害届を出すことなどを促すことも大事かと思っている。しかし、被害者が、何度も被害の状況について、同じ話をするのは大変苦痛であるし、警察に対しては「よりそい」からきちんと伝える方法をとるなど、配慮と工夫が必要であると思っている。「よりそい」と警察、またときには、司法などとの関係を密にすべきと考えるが、いかがか。よろしくお願いする。
■地域安全課長(小藤智代美)■ 「ひょうご性被害ケアセンターよりそい」は、もともと、警察に相談できない性被害者を対象にしている。また、警察に相談した場合と、ほぼ同じ支援を受けることができる。
被害届を出された方というのは、警察に相談いただいた方ということになるが、そうじゃない方、相談しにくくて「よりそい」に電話をいただいた方も、まず第一義的には、警察のほうに相談をされないかということを、まずお聞きして、もともと「よりそい」のほうには、警察へ相談しにくいという方が電話されてきているので、「いや、警察のほうには」とおっしゃった方には「よりそい」のほうで、ほぼ同じ支援を受けていただく。被害者の方の誰にも知られたくないといったような思いを、最大限に尊重しながら、支援をしていきたいと思っている。必要なことにおいては、本人さんが警察への相談とかいうことも可能で、そのことについては一応、確認とかをとってもいいというような、本人の御希望を踏まえたその上で、警察のほうへの連携というものはとるべきものと存じている。
■庄本えつこ■ ぜひ、よろしくお願いする。
また、警察に相談に行った場合、初回の診療と処置についての費用は、医療費助成がされるが、被害届を出さないと、それ以降の感染症検査などの助成制度が受けられないということに、今、なっている。今、おっしゃっていただいたように、被害届をなかなか出せないという場合、その後「よりそい」に相談に行った場合は、感染症検査などの医療費助成の対象にならないというふうな声が寄せられているが、説明を聞いたら、そうではないというふうに理解したが、その辺、はっきりとお答えいただきたいと思う。
「よりそい」から、警察に状況などを確認し、それ以降の検査を受けられるようにすべきだと思っているが、確認したいと思う。よろしくお願いする。
■地域安全課長(小藤智代美)■ 「ひょうご性被害ケアセンターよりそい」で受けられる医療費助成は、警察に相談した場合と、ほぼ同じ支援内容となっている。本年4月の開設以降、医療費助成を希望した被害者の方は、まだ1人もいらっしゃらないので、現段階では仮定の域を出ないが、今後、被害者が警察への被害届とかを取り下げるような状況が生じた場合の医療費助成については、本人さんのご意向をくれぐれも尊重した上で、警察と必要な連携をとりながら、被害者本人の希望を最大限に尊重して、その方の心身のケアということを最大限に尊重するという形で、適切な対応をしてまいりたいと考えている。
■庄本えつこ■ ぜひ、よろしくお願いしたいと思う。
さて、兵庫県内では「よりそい」が設立される前、2013年、神戸市西区の「なでしこレディースホスピタル」において、兵庫で初めて「性暴力被害者支援センター・神戸」が設立された。相談者に性虐待も含め子供も多く、男性や障害者などもいることから、2014年には虐待対応に力を入れていた「県立塚口病院」との連携を図るため尼崎に拠点を移し、名称も「性暴力被害者支援センター・ひょうご」に変更し、2015年7月からは「県立尼崎医療センター」内に開設し、性暴力被害者支援を行ってきた。急性期の医療的支援を中心に当事者に寄り添い、本人の意思とペースを尊重しつつ、心理的支援、法律的支援、生活支援など必要なサポート先につなげる活動をしている。
2014年から3年間、内閣府性犯罪被害者等のための総合支援モデル事業の委託を受け、さまざまな事業を展開し成果を上げている。本年4月には、特定非営利活動法人を取得したところである。また、2016年からは内閣府モデル事業の委託を受け、検索サイト「性暴力被害者のためのバーチャル・ワンストップ支援センター」を立ち上げ、管理をしている。
「よりそい」との関係でも、県が3月、4月に配布した広報資料の中で、「兵庫被害者支援センター」と「性暴力支援センター・ひょうご」が連携して運営するとなっている。「支援センター・ひょうご」代表の田口奈緒、県立尼崎総合医療センター産科部長は、「よりそい」の事例検討会にスーパーバイザーとして参加し、指導や援助も行っている。
2016年3月23日、内閣府男女共同参画局の資料には、行政が関与する「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」として、「性暴力被害者支援センター・ひょうご」が掲載されていたが、現在はその一覧に「支援センター・ひょうご」が掲載されていない。内閣府が、県に確認して掲載するというものだが、内閣府のこの一覧に「性暴力被害者支援センター・ひょうご」が掲載されていない理由は何なのか、教えていただきたいと思う。
■地域安全課長(小藤智代美)■ 国のホームページの一覧表に、「ワンストップ支援センター」というのを国のほうが独自に、今、各県ではどこという形で、47都道府県の分を、これまでずっと挙げてこられていたが、このたび4月1日で兵庫県のほうで、先ほどの田口奈緒先生がいらっしゃるNPOのセンターひょうごを含めて、被害者支援センターと3者一緒に協力する形で、兵庫県の性犯罪被害者支援センター「よりそい」を設立させていただいた関係で、それを内包したという形で、県のしているものという形で国からの補助金も受けるので、そこの部分は国のほうで兵庫県の「よりそい」が、そこの名前に挙がっているものと考えている。
■庄本えつこ■ 今年の4月23日付、毎日新聞の連載でFメールというのがあるが、そこに田口ドクターが、「残念ながら兵庫のほうは県の委託を受けることができなかった。その理由は、法人格がない任意団体であるということと、尼崎に拠点があるので電話番号が「078神戸」ではないというふうに説明を受けた」というふうに言っているが、そのことはともかくとして、国の方針としては2020年までに、各県に最低1ヵ所のセンター設置を目標としている。最低ということは、2ヵ所でも3ヵ所あってもいいということだと思う。国連は、女性20万人に1人の割合でセンターを設置するということを求めているところだと思う。現に、島根県では、運営に行政が関与していないとのただし書きをつけて、民間のセンターもちゃんと内閣府の一覧表の中に掲載をしている。被害者に、相談者に選択肢があるということ、つまり選ぶということができるということは、やはり相談者のエンパワーについてもつながるのではないかというふうに思っている。また、4年間の活動実績がある「支援センター・ひょうご」を、ぜひ、一覧表に掲載ずべきだと考えているものである。要望しておきたいと思う。
「支援センター・ひょうご」は、産婦人科のある県立尼崎総合医療センター内にあるという有利性を生かして、ワンストップセンターとして大きな役割を果たしている。各地のワンストップセンターの経験から、「病院拠点型ワンストップセンター」が望ましいとの声も上がっているところである。昨年は、兵庫被害者支援センターから委託を受け、神戸中央市民病院や淡路総合医療センターなど、6ヵ所で出前講座による研修も行っている。
しかし、今年度は委託契約がまだ行われておらず、要望があるのにもかかわらず、出前講座ができない状況になっている。「支援センター・ひょうご」を県として位置づけ、早く委託契約をするべきと考えるが、いかがか。
■地域安全課長(小藤智代美)■ 県は既に委託を済ませているが、NPOとの契約は、被害者支援センターとの委託契約になるため採択をするものと考えているが、時期等の詳細までは承知していないので、適切に対応をするよう伝えたいと思う。
先ほどの、尼崎のほうが電話番号が違うからとか、それはちょっと、そういう話には全くなっていなくて、どういう経緯でそういうことになったのかというのが、出どころがよく分からないというような状況もあるが、国のほうのリストに挙がっているのは、国の判断で書かれているところがあって、私どものほうでここを消してほしいとか、ここを挙げてほしいというようなことを、特段、取り上げてそれは申し上げてなくて、自主的に国のほうで書かれているものである。なおかつ、田口先生のなさっているNPOは、自分のところの活動というものを独自で持っておられるので、その分は継続していきたいということで、当然、一般の住民の方から言われると、いろんな活動をされている団体がそれぞれあるほうが、複数あるほうが支援もそれにふさわしい、自分の合ったところで受けられるというようなメリットもあるので、そのことについては、どこか一つだけというようなことでは思っていなくて、たくさんの複数のところが、今後とも出てくるような形でそれぞれ活動して、皆さんの、性被害に遭われた方の支援ができたらというふうに思っている。
■庄本えつこ■ 一覧表については、内閣府が県のほうに聞いて、その確認で一覧表に載せているというふうに、内閣府が言っているので、どういう状況になって、今の形になっているのかが、私も確認はできていないが、そういう状況なので、ぜひ、この「支援センター・ひょうご」のほうも載せていただけるように、もう一回、要望しておきたいと思う。
尼崎は局番が06であるが、それは田口先生が毎日新聞に書いていることなので、そういうふうに説明を受けたと本人がおっしゃっているので、多分そういうふな話があったのかと思っている。
それでは、この性犯罪・性暴力被害者支援については、今後の法改正も含めて、まだまだやるべきことがあると思っている。24時間体制の支援や公的資金の拡充も必要。何より、性犯罪・性暴力を生まない社会にするために、暴力は許さないという社会的認識の形成が必要だと、本当に考えている。
被害者保護の充実、加害者への適正な処罰はもとより、加害者更生の取り組み拡大による再犯防止、子供の頃からのジェンダー平等教育、性教育の充実、性犯罪を助長するようなアダルトビデオや児童買春を社会的に批判していくことなどの取り組みを強化していかなければならないと思う。本当にこの問題は、社会全体で取り組んでいく必要があると思っている。これからも、ぜひ、その立場で取り組んでいただくようお願いして、私の質問を終わる。
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