アスベスト対策、建物解体・廃棄物対策の強化と助成制度について
■宮田しずのり■ それでは、早速質問に入る。
アスベストを使用した民間建築物の解体、除去に関連した問題について質問する。
100名以上の犠牲者を出したJR福知山脱線事故から2ヵ月後、その事故現場から東へわずか2キロほど離れた株式会社クボタで、アスベストの暴露により クボタの労働者と周辺住民が多数死亡したという、いわゆるクボタ・ショックと言われる発表が行われ、あれから8年になる。
尼崎市では、クボタの従業員156人とクボタが認め救済金を支払った周辺住民225人、合わせて381人、株式会社クボタの関係だけで、約400人近い方が中皮腫等で亡くなっている。
また、他の工場や、あるいはいろいろな公害型と言われる暴露も含めて、尼崎市は中皮腫による死亡が2009年に21人、2010年が26人、そして2011年が43人と、昨年はまだ統計が出ていないが、年々死亡者が増えているという状況である。
全国的には、中皮腫による死亡者は労災認定された方が2011年3月末の現在で5,273人、また、いわゆる郊外型、職場以外で暴露して亡くなった方が 2012年の10月現在で7,147人と、合わせて1万3,605人が亡くなっている。現在も治療中の人、あるいはいつ発症するか分からないリスクを抱え た人が計り知れないほどおられる。
日本におけるアスベストの使用は、震災のあった1995年まで使用が認められてきたので、それまでの使用量、あるいは使用時期から換算して、2028年ごろまでに被害者は9万人に達するだろうという試算もある。
さて、このアスベストは、極めて微細な細い天然鉱物で、微細であるがゆえに、一旦吸い込むと肺に刺さったまま半永久的に劣化しない。そして細胞を刺激し 続け、潜伏期間は20年から40年と言われているが、最近、私たちが相談を受けた方の中には50年近くたって発症したという方もおられる。アスベスト特有 のがんである中皮腫や肺がんを発症すると、ほんの短期間に死亡に至るという非常に恐ろしい病気である。
アスベストは、取り扱った職場の労働者だけでなく、工場周辺の住民や、アスベストを運搬中に飛散したものに暴露した方もおり、本当にどこで暴露したか特 定できず、そういう被害者も相当数に上っている。そのため、県下では尼崎市だけではなく、神戸市やその他の市町でも大きく被害が広がっているのが現状である。
クボタ・ショック後、国では健康被害者救済法を制定し、極めて不十分ながらも救済制度が施行された。並行して、兵庫県もアスベスト健康管理支援事業とし て指定医療機関で精密検査を受けた結果、石綿の暴露歴があったり、あるいは暴露の可能性が高く、指定医療機関で要経過観察と診断された人に対して、健康管 理手帳を交付して、以後半年に1回無料で精密検査を受けられる制度を作り、平成24年度までに96人の方がこの手帳を交付されている。
一方、今後新たな被害者を発生させない、拡大させないための対策として、アスベストを使用している建物の解体時には飛散防止のため、大気汚染防止法と条例に基づく規制が今、実施されている。そこで、この解体時における飛散防止対策について質問する。
民間の建築物を解体する場合、建物の持ち主は事前に解体業者に依頼し、アスベストが含まれているかどうかについて調査を行い、飛散性、つまり吹きつけア スベストが使用されている場合は大気汚染防止法に基づいて、また、例えばカラーベストやスレート、厨房などの防火剤等、コンクリート、セメントなどと混ぜ て練り込んである非飛散性のものについては、80平米以上の建物の場合は、県の条例に基づいて届け出をすることになっている。そして、この法と条例に基づ き、解体し、そこから運搬して処分場へ行き、最後の処分場に至る各段階で規制基準が定められている。そして遵守が義務づけられており、違反した場合には、 条例で10万円から20万円の罰金が科せられることになっている。
そこでまず、この解体の届け出状況について、確認のためにお聞きしたいと思う。
2012年度における法律と条例に基づく届け出件数と、それに基づいた立入調査件数、飛散状況を測定するための測定件数、工事の中止命令など改善指導をした件数について、それぞれお答えいただきたいと思う。
また、県と尼崎市、西宮市、神戸市など6市の政令市にそれぞれ所管があり、分けて任務に当たっているので、分けてお答えいただければと思う。
以上、よろしくお願いしたいと思う。
■水大気課長(秋山和裕)■ 平成24年度の届け出件数であるが、法律では、県が97件、政令市が174件、計271件、条例では、県524件、政令市1,190件、計1,714件の届け出を受けている。
県では、届け出の審査及び現地立入検査を実施している。平成24年度の立入検査状況については、県が302件、政令市が690件、計992件を行っている。
また、そのうち測定については、県が73件、政令市が72件、計145件行っている。この測定を行った145件のうち、10件について指導基準を超過しており、直ちに工事の中止を指導している。
■宮田しずのり■ 2012年度の届け出件数が全県で1,714件ということだが、これは少ないのではないかと思うが、それはともかく、その内訳 は政令市6市の所管分が1,364件、それからそれ以外の分が621件、その中で立入調査をした件数は、政令市で690件で全体の届け出件数の51%、県 所管分については302件で49%、いずれも立入調査は50%前後で、半分しか行われていないということである。
法と条例の規制基準は細かく定められているが、この届け出のあったもの全てに、調査をして、現場を確認することが不可欠だと私は思う。尼崎市の例で言う と、2012年度、306件届け出があった中で、275件について現地で立入調査を行っている。90%調査をしているのである。この状況から見ても、県や 他の政令市でも届け出られた件数全てに立入調査をすることは十分可能だと思う。立入調査を全てすべきだと思うが、この点について、もう一度、お答えいただ きたいと思う。
■水大気課長(秋山和裕)■ 立入検査については、まずは大気汚染防止法対象である飛散性アスベストを使用している建物の解体を優先的に行っている。ま た、基本的にそういう建物については、解体時にアスベスト濃度の測定も行っている。工事が土・日曜日や夜間の場合もあるが、そのようなときにも調査分析機 関のキャパシティーの許す限り調査を行っている。
また、非飛散性については、アスベストのリスクがそれだけ少ないということであるので、廃棄物処理法等の関係法令に基づく状況を踏まえて、必要なものについてさらに調査をしているという状況である。
■宮田しずのり■ 県の飛散防止条例では規制基準を細かく定めており、遵守を義務づけている。
例えば、吹きつけなど飛散性のものは、解体現場を防じんシートで覆い、散水をして湿潤化して行い、搬出もろ過処理などの措置を行うと定めている。また、 非飛散性の場合も、切断または破砕を行わずに、原形のまま手作業で撤去し、搬出の際、車両の積み込みも飛散防止対策を行うなどの基準を定めている。
しかし、私がある解体業者に聞くと、施主さんからないしょでやってくれと頼まれたり、また、石綿を含んでいる建材が使用されているという届け出をしても、解体業者が現場でずさんな工事を行っていることもしょっちゅう見ていると言っていた。
例えば、カラーベスト、あるいはスレートなどを解体する場合、手作業で行うことになっているが、現場では、サンダーというので切り、そこら中にアスベストが飛び散ることもしょっちゅうあると聞いた。
したがって、届け出のあったものについては、少なくとも1回は現場に行き、作業内容を見て、そして問題があれば早い段階で改めさせて、そして、飛散を防止するということが必要だと思う。
そのため、もう一度お聞きするが、条例に基づくこの規制基準を完全に実施させるためには、立入調査は、全て行うべきだと私は思うので、ここでやるとは言えないと思うが、検討することをぜひお願いしたいと思うが、どうだろうか。
■水大気課長(秋山和裕)■ 建物の解体については、別途廃棄物処理法に基づいて立入検査も行っている。そういったものと情報を共有しながら、どれだけ調査ができるか検討していきたいと考えている。
■宮田しずのり■ これはまた引き続いて議論もしたいと思うが、次に、解体の際の費用に対する助成の問題についてお尋ねしたいと思う。
アスベストが使用されているかどうかわからないとき、検査を行うが、1件で10万円から15万円の検査料がかかる。解体費用は、吹きつけの場合は、面積 によって違うが、例えば処理面積300平方メートル以下の場合、1平方メートル処理するのに、2万円から、場合によっては8万5,000円かかると言われ ている。仮に100平方メートルの処理をすれば、1平方メートル5万円としても、全体で500万円かかる。それよりかなり小さい民家の場合でも30万円ぐ らいはかかると業者は言っている。
それから、非飛散性のカラーベストやスレートなどの建材の場合、2メートル、10メートル、あるいはそれ以上というように建物の高さによって値段が違う ようであるが、例えば10メートルの高さの建物の場合、1平方メートル当たり2,000円と言われている。それを100平米とすれば20万円かかることになる。
最終処分は埋め立てるが、解体した廃棄物を処理する費用として、1立米当たり3万2,000円かかる。2トンダンプ1台分で七、八万円、4トントラックになると1台分で10万円以上かかるため、1件を解体するのに何十万円、何百万円かかることになる。
この費用が高いために、闇でやってくれとか、何とか黙ってこのままやってくれないかということになる場合もあるという。尼崎市の場合は、無届けで飛散防止対策をせず工事をすることを防止し、法と条例を遵守させるために費用助成を行っている。
例えば、アスベストが含まれているか事前の調査をする経費に1件当たり上限25万円、アスベストの除去費用に対して、対象経費の3分の1以内の補助を 行っている。これはほかの市でもやっているところはあるということである。そこで、県としてもぜひ、吹きつけアスベストももちろんだが、飛散性のものにつ いても、法令を遵守させるためにも、この助成制度を検討していただけたらと思うが、どうだろうか。
■水大気課長(秋山和裕)■ アスベストによる健康被害問題は、そもそも国の規制が諸外国に比べて遅れていたことが大きな要因である。その対策は、基本的 に国が責任を持って取り組むべき課題と考えている。このため、国に対して、地方負担を伴わないアスベスト除去に係る支援措置を講ずるよう働きかけているところである。
今後とも届け出の審査、立入検査及び関係機関等との連携により、事業者に対するアスベスト飛散防止対策及び廃棄物適正処理を図っていくので、よろしくお願いする。
■宮田しずのり■ 今、いみじくもおっしゃったように、まさにこれは国の責任である。国は早くからアスベストの人体に対する影響、危険性を知っていた。しかし、それを震災の年、1995年まで使用を認めてきた。
また、企業もクボタをはじめ、アスベストの危険性について知りながら必要な対策を怠ってきた。そのため、今これだけの大被害を起こしているわけである。 だから、当然、国が責任を持っていろんな対策をすべきであり、そのために県としても要請されていることは、本当にそのとおりだと思うので、これからも引き 続いて国に対しては厳しく要望もしていただきたいと思うが、同時に、やはり国だけではなくて、県としても対応を考えていただきたい。
そういう意味では、健康管理手帳については、国に先駆けて、全国で初めて制度を作ったのであるから、費用の助成についても、全国に先駆けて、そして全国 の中でも一番アスベストが使われてきた被害の大きい県であるので、そういうことも踏まえて、今後一層対策を強めていただきたいと指摘をさせていただいて、 時間が来たのでこれで質問を終わる。 |