国の地方財政措置について
■杉本ちさと■ まず、来年度の地方財政、国の措置について確認したいと思う。
国は、社会保障関係の自然増分を8400億円増額したと説明しているが、地方財政計画の歳入歳出一覧では、その中身を見てみると、歳出では一般行政経
費の単独でわずか316億円の増額になっている。これには、井戸知事も今年度並とされたため、結果として地方の主体的な事業にしわ寄せが及んでいると言わ
れている。
また、歳入では、東京など不交付団体の税収増加分700億円を差し引いた水準経費を除く一般財源も、わずか187億円増だけとなっている。
結局、社会保障関係の自然増など、地方自治体の行政経費が増大しているにもかかわらず、それに見合った財源保障がされていないというのが実態ではないかと考えるが、県としてどのように考えているか。
■森安秀和広域行政課長■ 一般財源総額の充実の観点から、地方財政措置についてどのように認識しているかということについてお答えする。
平成23年度の地方財政計画では、国が昨年6月に示した中期財政フレームのとおり、地方一般財源総額が今年度並みとされている。こうした状況に鑑み、全体としてはおおむね地方財政運営に必要となる最低条件を満たしていると認識している。
まず、地方財政規模については、三位一体改革前の平成15年度と比較すると3.7兆円の減額、地方一般財源は2兆円減額されており、地方の歳出規模は依然として抑制されている。
委員ご指摘のとおり、社会保障関係費等が増加する中での地方財政規模の抑制は、結果として地方の主体的な事業にしわ寄せを及ぼすものと考えている。
また、地方交付税については、22年度に比べて0.5兆円増額されたところであるが、臨時財政対策債を含める実質的な地方交付税は22年度に比べて1兆
円減額されており、難病治療研究や義務教員給与など、義務的経費の算入不足や、乳幼児医療費補助など全国的に実施している地方の事業の未算入等の状況が解
消されたとは言えない。
また、子ども手当については、国の制度であるにもかかわらず、来年度も地方負担が継続されている。
一方、財源については、一次的な財源である今年度補正予算における交付税特会への1兆円の繰り入れ分の活用や、来年度税収見込みの増収分によるところが大きく、税弱な地方財政の体質が改善されたとは言い難いものとなっていると認識している。
県予算と第二次行革プランについて
■杉本ちさと■ 必要な地方一般財源総額を確保すべきだと思う。
このような国の地方財政措置のもとで、県の予算編成と第2次行革プランについてお尋ねする。
県は、新行革プランとして2008年から2018年までの計画を作っていたが、3年目の総点検と国の方針によって目まぐるしく説明が変更してきた。新聞
も国の方針で二転三転と報道している訳だが、特に収支不足額が変わっている。最終的に1740億円の収支不足額のうち、1180億円を県で対策し、国
の中期財政フレームによる収支悪化分560億円は、国に解消を求めるとしている。
国に解消を求めるということだが、なぜ国に解消を求めるのか、その点について答えてほしい。
■森安秀和広域行政課長■ 私の方から、収支不足の解消策についてお答えする。
国の中期財政フレームにより、委員ご指摘のとおり地方一般財源総額は、平成23年度からの3年間は平成22年度と同水準とされた。しかし、今後とも毎年
7000億円程度の自然増が見込まれている社会保障関係経費等については、地方財政計画の策定を通じて、国の責任において、必要な財源が当然措置される
べきものと考えている。
このため、引き続き行革努力により歳出削減に努める一方、兵庫県知事が委員長を務める全国知事会地方交付税問題小委員会として、地方財政の確立と地方交
付税の復元・増額について提言を取りまとめるほか、関西広域連合としての活動や県選出国会議員への県政説明会、さらには県地方分権推進自治体代表者会議等
を開催するなど、地方税財源の充実確保について、さまざまな機会を通じて適宜適切に国に働きかけていく所存である。
特に、地方消費税の引き上げなど、税源の偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系の構築による地方税財源の充実については、本年6月までに基本方針が示
されることになっている社会保障と税の一体改革の議論の場を通じて、全国知事会等と連携して積極的に国へ提案していくこととしている。
■杉本ちさと■ 国の財政運営戦略や中長期試算の慎重シナリオに沿って計算すると、収支悪化しているということの説明であるが、この560億円は
県行革にとっては穴あき状態を残していることになる。県の歳入歳出の努力で埋めないということにはどのような意味があるのか。国の経済財政中長期試算で
は、昨年6月時点では県行革と同じ慎重シナリオで2020年、基礎的財政収支で21兆7000億円の不足だったが、ことし1月時点で計算し直し、23兆
2000億円に増えている。県行革の560億円の穴あき状態、これは国の収支不足の23兆2000億円と密接に関係しているように思われるが、その点
はどうか。
■藪本訓弘財政課参事兼資金公債室長■ 今回お示したプランにおける560億円の収支不足額についてであるが、先程答弁したように、要調整額として国へその解消を求めている。
従来、新行革プラン策定後においても、リーマンショックに端を発する世界同時不況が進行し、国、地方を通じて大幅な税収減となった。こういったものにつ
いては、国、地方全体としての財政措置により、一定の対策が行われることも勘案し、本県のみでは現行制度の範囲内では解決できない部分もあることから、要
調整額として国に地方財政対策の充実を求めながら、その一方、毎年度の歳入歳出対策収支対策により解消を図ることとしているので、今回も要調整額として対
応することとしている。
■杉本ちさと■ 新行革プランの当初の計画では、2018年の最終年の収支不足はゼロという取り組みになっていた。今回は560億円ということで、国の収支不足と密接に関係があるのではないかと私たちは見ている。
次に、国の地方財政措置では、給与関係費も4170億円も削減となっている。これまで、小泉自公政権のもとで、集中改革プランということで、地方公務
員の削減、非正規拡大などが強行されてきた。そして、民主党政権のもとでも給与関係経費の削減など、これまでと同じ変わらない方針を引き継いでいるという
ことが明らかとなっているが、県においても県行革で県職員の削減、給与カットも同様の方向で進めようとしている。
今、日本経済が非常に疲弊している。そして、行き詰まりが顕著になってきたこの中で、こういった賃下げ社会でいいのかという声が上がっている。
一つ紹介するが、昨年10月、ある労働組合の会合で富士通総研のエコノミストが来年の春闘は4%の賃上げをめざせと題して講演を行った。そこでは、10
年以上も賃金が下がり続ける国は、先進国の中で唯一日本だけである。その結果は、内需の低迷、勤労者の労働意欲の低下など、経営側にとっても好ましいもの
ではない。企業は、200兆円もの現金をため込みながら、成長のための投資や適切な分配を忘れているとずばり指摘している。
今、賃下げ社会でいいのか、そういった声が上がっているもとで、削減路線が繰り返し行われているその点についても、抜本的に見直していかなければ、経済がさらに疲弊してしまう方向につながると私たちは考える。
給与削減や県職員削減ではなく、正規の職員を増やしてこそ、採用枠を減らしている県下の企業に対しても模範となるのではないか。景気回復にもつながると思う。ぜひ、そのような立場に転換していただきたいと思うが、どうか。
■片山安孝人事課長■ 私ども地方公務員の給与、勤務条件については、地方公務員法第14条で社会一般の情勢に適応するように、随時適当な措置を講じなければならないとされており、民間の状況については、人事委員会が詳細に調査して勧告を行っている。
職員の給与については、これに基づき、いわゆる民間準拠方式により決定しているところであり、景気に対する影響を考慮して決定する、あるいは景気刺激で決定すると、こういう仕組みとはなっていないところである。
■杉本ちさと■ 県職員の給料は、兵庫県経済にも多大な影響を及ぼすという点を改めて認識していただきたいと思う。
次に、菅内閣は財源が不足していると言いながら財界の要望を受け入れて法人税を実質5%減税する予算案と関連する法案を提出している。大企業への1兆
5000億円のばらまきになるのだが、これは経団連の米倉会長も雇用や設備投資に結びつくかどうか確約できないと言っている。
今こそ、大企業にため込まれている巨額の資金を、賃金や中小企業への単価の引き上げなどを通して市場に還流させ、国内経済を豊かにすることで経済も財政
も立て直していく、回復をめざすことが大切になっていると考えるが、この大企業への法人税の5%減税について、県はどのように認識しているのか。
■松田直人税務課長■ 政府の平成23年度の税政改正大綱においては、委員ご指摘のとおり、グローバル化の進展の中で、国内企業の国際競争力の強化と
外資系企業の立地の促進ということから、雇用と国内投資を拡大するという観点で、法人の実効税率を引き下げるということが明記されている。
具体的には、法人税率を4.5%引き下げることにより、国税、地方税合わせた法人の実効税率を5%引き下げるものである。
これが地方財政に与える影響については、法人県民税が減収となる一方で、課税ベースの拡大、例えば減価償却制度の見直しや、大法人について欠損金の繰越
控除を一部制限する等の課税ベースの拡大による租税特別措置の見直しがあり、法人事業税が増収することから、地方法人課税全体では減収とはならないもので
ある。
いずれにしても、法人課税の今後のあり方は、税政抜本改革の一環として、個人と企業の税負担のバランスなどを総合的に勘案し、幅広い観点から議論がなされるべきと考えている。
「社会保障と税の一体改革」について
■杉本ちさと■ 大企業の減税をするということよりも、先程言ったが、大企業にため込まれている内部留保金、これを社会に還元していく、そういった税政のあり方、あるいは経済対策のあり方が本来求められているということを改めて主張したいと思う。
次に、社会保障と税の一体改革のために設置された、社会保障改革に関する集中検討会議が開かれ、そこでは与謝野大臣が出席した財界3団体と改革の大きな
方向性が共有されていると語り、その共有とは消費税の増税と社会保障給付減、負担増であった。さきに述べた国の財政運営戦略や中長期試算での収支不足23
兆2000億円は、消費税では10%に相当するものである。社会保障を口実にしながら、給付減や負担増を求める財界の言うとおりになって、もし仮に消費
税を増税しても法人税の減税分に消えてしまい、財政再建にも役立たず、社会保障の財源になる保障もない。
消費税を増税すれば、家計と消費に大打撃を与え、景気を冷え込ませ、その結果税収や年金など社会保険料の収入も減り、結局財政危機をもっとひどくさせ、社会保障も成り立たなくさせてしまう。
庶民には増税、景気回復の足を引っ張るだけになってしまう方向ではないか。県は、地方財源の充実のために、税政の抜本改革を求めて、とりわけ消費税の増
税についても求めておられるが、この地方消費税の偏在性のない重要な税金だというふうな認識は改めるべきだと、消費税の増税は求めるべきではないと考える
が、どうか。
■松田直人税務課長■ 消費税の件だが、地方は、危機的な財政状況のもと、徹底的な行革努力を行うとともに、増嵩する社会福祉
関係施策の支出に他の施策を犠牲にして対応してきた。しかしながら、今後の福祉、医療など、住民生活に不可欠なサービス支出はさらに増嵩するものと見込ま
れる。
国の財政状況も、国債が税収を上回るなど、大変危機的な状況である。行政の無駄の排除だけでは抜本解決には至らないという状況である。
少子高齢化が進む中、将来にわたる社会保障財源の安定的な確保のためには、国、地方を通じた歳入増が不可欠であり、消費税・地方消費税などの引き上げを含む「所得・消費・資産」のバランスがとれた税制抜本改革を早期に実現すべきである。
このような観点から、本県としては、税と社会保障の一体改革の成案が得られるのは6月ごろということだが、地方消費税を地方の基幹税として充実強化するよう、全国知事会とともに国に強く求めていく。
内需型で中小業者支援の県予算を
■杉本ちさと■ 今、兵庫県でもそうだし、日本でもそうだが、暮らし最優先の経済成長こそ求められていると思う。それでこそ財政危機も打開できる
のではないか。税金は所得の再配分が基本的役割であるが、日本はその役割が最も低い国になっている。消費税増税ではなく、負担能力に応じた負担を求めてい
く税制改革が必要になっている。消費税増税は、そういった経済を持続的に発展させていく、健全に発展させていく、財政再建の危機を打開していくという点で
も逆行しているということを改めて指摘して、次の質問に移る。
来年度予算では、新時代の経済社会を作ると最初の柱にしてやっている対策だが、企業立地支援の予算も一向に見直しをされていない。従来からの施策が中心
で、一部の大手企業が栄えれば地域経済が良くなるという方式を変えてはいない。融資や貸し付けを除く実質的な中小企業の良さも私たちの計算では数十億円に
しかすぎない。これでは、事業所の99%、雇用の約8割を占める中小企業の支援にふさわしいものとはなっていない。福祉医療を削る県行革ではなく、暮らし
を支え中小企業応援の県予算と言えるような重点を持った予算にすべきではないか。企業立地補助金を廃止し、暮らしや中小企業のための予算に回すべきではな
いかと考えるが、いかがか。
■秋吉秀剛産業労働部総務課長■ 産業集積促進補助によって促進される新たな企業立地については、設備投資や雇用を初めとする直接効果に加え、部品等
の生産誘発効果、従業員による消費の拡大、関連企業の進出と厚みのあるものづくり産業の集積、さらには地域のイメージアップにもつながるなど、本県経済全
体への大きな貢献が期待できるものと考えている。
産業集積条例が施行された平成14年から21年までに616件の企業立地があり、約1兆4000億円の設備投資、約3万2000人の雇用創出など、企業活動が誘発され、内需の拡大に大いに貢献していると考えている。
また、中小企業の振興については、雇用と経営を守るため、内需拡大の経済対策に加え、中小企業の経営安定が不可欠と考えている。このため、中小企業の資
金繰り支援として、中小企業融資制度の融資目標額4500億円を確保し、経営円滑化貸付、借換貸付などの拡充を行うとともに、企業の新たな挑戦を応援す
るため、設備投資促進貸付で1.2%の最優遇金利を適用することとした。
また、専門性を備えた総合相談、処理体制の整備による中小企業の経営安定支援、下請のあっせん、相談、商談の開催など、中小企業の受注機会拡大の対策も講じている。
さらに、新たに策定する経済・雇用プログラムでは、中小企業を「地域経済循環を促進する雇用・投資・消費の基盤」ととらえ、小売業・生活関連サービス業の支援や、地産地消型の中小企業の育成、地域密着型の金融支援等の施策を戦略的に展開していく。
併せて、県民生活の安定を図るために、乳幼児子育て応援事業や、こども医療費助成事業などの社会保障についても充実していく。
指定管理者制度について
■杉本ちさと■ 今、菅政権に対する厳しい批判、政権交代したのにむしろ政治が悪くなった、自民党時代と変わらない大きな
怒りが起こっている。その中で、兵庫県が県民に対してどのような姿勢で臨むのか、どのような予算を編成するのかが問われているが、私は、県行革や国の抑制
方針に沿って、また消費税の増税レールにも沿って進むことは、県民のためにならないということを改めて強調したいと思う。
そして、最後の質問だが、指定管理者の問題についてお聞きする。
総務省が昨年12月28日に通知を出した。そこでは、指定管理者は、価格競争による入札とは異なるとして、住民の安全確保に十分に配慮すること、労働条件への適切な配慮がなされるように留意することなどが留意点として書かれている。
指定管理者が行革などとの関係で、余りにコスト削減に力点があったことへの反省の意味があって今回の通知になっている訳だが、我が党も国会で国や自治体
の業務で受注した団体や企業の労働者が、ワーキングプア状態にあることを指摘し、発注者としての責任を果たすべきと質問していた。兵庫県としても、この通
知の趣旨をどのように受けとめているのか。
■四海達也事務改革室長■ このたびの通知については、各自治体が指定管理者制度を活用する中で、制度の趣旨を十分に踏まえた運用を行うとともに、特に施設利用者に対する安全の確保に十分な配慮を要請するため発出されたものと認識している。
通知においては、制度の趣旨や基本的な考え方について改めて明記されているほか、指定期間や選定のあり方、施設運営に必要な体制、リスク分担、損害賠償
責任保険等への加入といった協定に盛り込むべき事項、さらには指定管理者において配慮すべき労働法令の遵守などが記載されている。
本県としては、通知に示された観点は、制度を適切に運用していく上で必要であると認識している。
■杉本ちさと■ 認識がされているということだが、私はこの機会に、兵庫県の指定管理者の実態把握を行い、施設のサービスや労働者の雇用条件などをチェックすべきだと思うが、その体制をとってチェックされるということについてはどうか。
■四海達也事務改革室長■ 本県では、指定管理者の募集から指定及び協定の締結等に至るまでの基本事項や留意事項を取りまとめた「指定管理者の公募に
関するガイドライン」を定めている。このガイドラインには、先程の総務省通知の観点を基本的に網羅しており、制度の適切な運用に努めているところである。
一方、施設のサービス水準を確保するため、「指定管理者制度導入施設の管理運営の評価に係るガイドライン」を定め、定期的な事業報告を求めるほか、所管
部局による現地調査や施設利用者のアンケートによる満足度調査を実施し、指定管理者が主体的に業務改善に取り組める仕組みとしている。
また、年度終了後は年度報告の中で指定管理者による自己評価を行うとともに、所管部局による総合評価を行うなど、多面的な評価を行い、施設のサ一ビス水準の維持、向上に努めている。
なお、指定管理者が雇用者に対し、労働法令を遵守することは当然のことであり、県としては、指定管理者において適切な雇用条件の設定等が行われているものと認識している。
■杉本ちさと■ 改めてチェックをすべきだという質問には十分にされていという答弁だが、通知が昨年の年末に出ている。きちんとできているということだけではなく、チェックを改めて行うことを求めたいと思う。
そして、さらに第2次行革プランでも公募の指定管理をさらに増やす中身になっている。経費削減をねらっているとも十分受けとめられる中身であるので、総務省の通知に逆行することのないように、すべきことを指摘して私の質問を終わりたいと思う。ありがとうございました。 |