後期高齢者医療制度の保険料、保険者証の交付について
■新町みちよ■ 後期高齢者医療制度について伺う。
年齢によって受けられる医療を差別する後期高齢者医療制度は、一刻も早く廃止が必要だというふうに思う。政権交代になったが、後期高齢者医療制度廃止という約束は先送りされてしまった。高齢者からは、3年も4年も待てないと怒りの声が上がっている。
この制度は、医療費の増、また75歳以上の人口がふえるということになると、これが直接保険料にはね返る、こういう仕組みになっており、保険料が際限な
く引き上げられる。政府は、次期の保険料値上げを防ぐため、国庫補助を行うというふうに言っており、通知まで出していたのに、その約束もほごにされてし
まった。
そのため、兵庫県では保険料の値上げが予定をされている。現行より1054円のアップで平均7万1095円となる。これでも、ほっておけば10%近
くの値上げになるところが、広域連合の剰余金約67億円を活用する、また県の財政安定化基金21億円を取り崩すことにより、約1.5%の値上げに抑えられ
たということになる。
しかし、この平均の保険料は、全国では6位と大変高い額となり、大変な負担となる。先日の広域連合議会では、あと10億円財源があれば据え置き可能と、
値上げをしないという説明が、それが可能だという説明がされている。現在予定の21億円に10億円を加え、合計31億円取り崩しても、安定化基金は25億
円残るという見込みである。さらなる保険料の軽減のために、基金の取り崩し額をふやしていただきたいと考えるが、いかがか。
■医療保険課長(森 博城)■ お尋ねの後期高齢者医療制度における兵庫県の保険料率は、去る2月22日の兵庫県後期高齢者医療広域連合の議会において既
に決定されている。その内容は、いわゆる被保険者全員で負担する均等割額4万3924円は据え置き、所得に応じて負担する所得割率を8.07%から
0.16ポイント引き上げ、8.23%とするものである。
委員ご指摘の基金であるが、基金本来の設置趣旨は、保険料の収納率の低下、さらには予測を上回る医療費の高騰に備えた上で、今回、広域連合の協議を受け、最大限の取り崩しを行ったものである。
■新町みちよ■ 基金の役割はもともとそういうことだと思うが、今回、保険料の上昇を抑えるために基金を使いなさいと、国もそんなふうに言ってい
る。県も条例改正をするのだから、その前提は崩れていると思う。もう少し値上げを抑えるために使っていただいてもいいと考える。全国的に見ると、8県は引
き下げをしている。10県では据え置いている。高齢者の暮らしが本当に大変になっている中なので、もう一息頑張っていただきたい。本当は、国が保険料引き
下げのために国庫補助を行うと言ってきたのだから、約束を守るように県としても強く求めていただきたい。
あわせて、先送りにせずに、後期高齢者医療制度廃止をするように求めていただきたい。
■医療保険課長(森 博城)■ 国庫負担の関係だが、我々の当初の段階では、国の要請ありならば国庫負担すべしという考え方は当然持っていた。しかしなが
ら、現実問題、国庫補助がその特別枠ではなかったわけだが、当該この基金はそもそも3分の1の国庫補助が入っており、実質的には国も財源措置を行ったとい
うふうに考えている。
また、制度の関係では、現在、国においては高齢者医療制度改革会議というものを設置し、一つには地域保険としての一元的運用、二つには年齢で区分するこ
との問題の解消、三つには市町村国保などの負担増への配慮、四つには市町村国保の広域化など、六つの基本的な考え方に基づき、高齢者医療制度の廃止に伴う
新たな制度の検討を進めていることから、本県としては、国民健康保険の構造的な課題を解消し、将来にわたり国民皆保険が維持できる制度となるよう、必要な
意見や提言を行っていくこととしており、改めて廃止の要望を行うことは考えていない。
■新町みちよ■ 後期高齢者医療制度は本当に先に差別を年齢で行い、そしてこれが改悪をされるのが全年齢世代というか、そういうところに広げていくような先例ではないかと思う。
保険料が高くて払えない高齢者が出てきている。納付が滞ると、正規の保険証ではなく有効期限の短い短期被保険者証が交付されて、兵庫県では昨年の10月
1日現在、4446、これは厚生労働省の調べであるが、全国一発行数が多いと報道されている。このままでいくと、期限が切れて無保険になる、こういう高
齢者がたくさん出るのではないかと非常に心配である。
県下でもいろいろ事例が出ており、ある病院では短期保険証を持ってきた88歳の男性だが、軽い認知症にかかっており、短期証がわからないと。保険証に期
限があるということを病院の方が何度説明をしても、理解ができなかったという状況もある。心臓疾患のある70代の男性も、短期保険証がわからない。保険料
の督促状が何度か来ていたけれども、その保険証と督促状の関連が全くわからずに、病院が説明してわかったというときには本当に滞納額が一遍には払えないと
いうほどたくさんたまっていたということになる。
高齢者にとっては、本当に理解のしにくい制度のもとで、保険料を払いにこなければ保険証を渡さない、こういう機械的な対応をされては、本当に大変困るということになる。市町の窓口でとめ置きにならないように、高齢の県民の健康を守るという立場で働きかけていただきたい。
■医療保険課長(森 博城)■ 委員ご指摘の被保険者資格証明書、保険証にかわるものとして交付されるものは、法律には特別な事情がなく1年以上保険料を
滞納している被保険者に対して交付するとなっている。国は、十分な収入等があるにもかかわらず、保険料を納付しない場合であって、被保険者資格証明書を交
付しても必要な医療を受ける機会が損なわれないと認められる場合を除き、原則として交付しないとの運用方針を示しており、本県の広域連合においてもこの方
針を踏まえ、現時点での交付の実績はない。
また、ご指摘の短期被保険者証は、昨年8月1日に6ヵ月の短期被保険者証を交付し、その期限が1月31日、2月1日には新たな短期被保険者証を交付しており、広域連合に確認したところ、一切、とめ置きはないということである。
この短期被保険者証については、保険料を滞納している被保険者との接触を図り、納付相談につなげていくために交付するもので、滞納者対策としては必要な措置である。
さらに、広域連合は機械的に交付するものではなく、交付対象を3期以上の納期分の滞納者に限定するとともに、交付するまでの間は、滞納者の収入、生活状況等に応じて電話や臨戸訪問等のきめ細かな取り組みを行うなど適切に対応している。
県としては、広域連合や市町に対して、滞納者との接触の機会を確保し、実情を把握の上、交付事務については、適切な取り扱いを行うよう、今までも助言してきたところであり、引き続き、制度の適正な運営が確保できるよう、必要な助言を行っていく。
明石の地域医療の確保について
■新町みちよ■ 適切にされているということだが、先ほど挙げたような事例もあるので、高齢者は手元に保険証がなければ、本当に死にもつながりか
ねないという大変な事態になる。保険証というのは、本当に命綱であるので、ぜひきめ細かく、高齢者に寄り添ったやり方を進めていただきたい。
次に、地域医療の確保について伺う。
自治体病院を取り巻く情勢というのは、財政健全化法、公的病院のガイドライン、それから医師不足、まるで三重苦の様相を示している。
明石の市民病院でも独立行政法人化の答申を出し、検討がされている。昨日の企画県民局審査で独立行政法人化では一体どうなるのかということで、経営優先、効率化優先では、市民病院としての役割が果たせないということが明らかになった。
そこで、地方独立行政法人に経営形態を変えた場合、今ある問題、とりわけ医師が確保されるのか、また看護師・薬剤師などの職員が確保されるのか、地域医療が守れるのか、こういうことが大きな課題、疑問だと思うが、県としての所見を伺いたい。 ■医務課長(毛利好孝)■ 地域医療の確保においては、一つには医療機関の間の適切な機能分担や連携とそれに対する住民の理解、二つには医師等医療従事者
の継続的な確保、三つには医療機関の安定的な運営という視点に立ち、公立病院、また民間病院などの経営形態を問わず、限られた医療資源を効率的・効果的に
活用した医療提供体制を検討する必要がある。
このため、県としては、昨年度、保健医療計画との整合性を図りながら、2次医療圏域ごとに公立病院等のネットワーク化について検討を行い、現在、明石を含めた東播磨圏域においてもその内容を踏まえ、病院間の具体的な連携方策などに取り組んでいるところである。
明石市立市民病院の独立行政法人化については、病院開設者である明石市が、地域において必要な医療を安定的・継続的に提供する視点に立って、当然、医療従事者の確保も含め、判断するべきであると考えている。
県としては、明石市から、医療機関における具体的な機能分担や連携、明石市民病院の担うべき役割、こういったことについて地域医療を確保・継続していく上で具体的な相談を受けた場合は、適切に助言を行っていきたい。
■新町みちよ■ 市が判断するものだというお答えだったが、実際に独立行政法人化したところではどのようになっているかということだが、2006
年4月独法化した大阪府立病院、これは公務員型だが、スタートのときには60億円の負債を引き継いだ。そして、初年度、13億円以上の黒字にした。しか
し、それは17億円の人件費の削減が大きいと思う。収入を確保するために、紹介状のない患者の初診時の負担増、それから分娩料の引き上げなど、患者の負担
が増加をしている。また、手術の件数や検査件数の目標を高く設定をされたために、医師や看護師、検査技師などの過重労働になって、看護師の退職が相次い
だ。そして、五つの府立病院では200人の年間看護師が退職をして、そして年齢制限を引き上げたけれども看護師が集まらないと、毎月募集をしていると、こ
ういう状況の中でいつ医療事故が起こっても不思議でないということが職場で言われるという状況になっている。
結局、独立行政法人化では、医療の質や安全性が低下する、医師も確保できない、病院が成り立っていかなくなっている、収益を重視すれば患者負担の増加、不採算部門の縮小、住民サービスの低下、雇用や勤務条件の悪化につながっていると考える。
明石の市民病院というのは、明石だけではなくて、東播磨圏域で2次医療、2次救急を中心的に担って、2次救急輪番としても年96日、小児救急も救急患者
の受け入れも市内でも一番多く行っている。不採算部門を担う役割が縮小されるようなことになれば、救急医療も確保できなくなる。命がこれで守れるのか。県
の計画にも逆行するのではないかと思うが、いかがか。
■医務課長(毛利好孝)■ 明石市立市民病院については、先ほど委員からご指摘のあったように、小児医療あるいは救急医療、そしてまた保険医療圏域で言う
と、脳卒中の急性期あるいは心疾患の急性期、がんの専門治療、糖尿病の急性増悪時の治療、さまざまな役割を現在2次医療圏の中で担っていただいている。私
どもとすれば、先ほど申し上げたようにこういった地域医療の中で、今明石市立市民病院が持っている機能を継続していただくという視点に立ち、具体的な相談
を受けた場合には適切に助言を行っていきたいと考えている。
■新町みちよ■ 県下の自治体病院を守るために、県としても不採算部門等に対する国の支援強化を求めていただくことも必要ではないか、その大もとにある公的病院のガイドラインもやめるように求めていただきたいということを申し上げて、質問を終わる。 |