赤穂市の被災実態はいまからでも災害救助法の適用が必要
■毛利委員■ 平成15年現在も大震災以降、災害対応、被災者支援が課題となっています。そこで質問に入ります。
まずはじめに、9月29日台風21号で大きな被害を受けた赤穂市の災害救助法の適用問題についてお聞きします。
この問題は、今議会本会議で代表質問、一般質問と繰り返し取り上げました。本会議の答弁では「被災所帯の大半が自宅で日常生活を続けている状況にある」と述べられ、「適用するのは困難」と言われました。
しかし、被災地の実態はそのような認識とは全く異なります。私は昨日、赤穂東有年の現地で、直接お話を伺ってまいりました。
床上90センチの浸水を受けたあるお宅は、病弱で高齢の夫と姫路の娘の家に避難している。家に入れていただいたんですが、畳がない状態で床板は砂にまみれています。使える家具もほとんどなく、とても住める状況にはありません。再建のためにどうしたらよいか途方に暮れていらっしゃいました。
また、別のお宅では、まだ畳も入らず2階で高校生の息子と3人暮らし。ふとんもなく主人の会社からもらった、においがひどいので戸を開け放して暮らしている、寒くなったのに暖房器具もないと切々と訴えられました。
その他、被災直後と変わらない生活を送っている家庭がたくさんありました。浸水被害は流れ込んだ泥や水のため、乾くまで修理に手がつけられず、畳を入れるにも壁も崩れているので入れられない状態の家が多いのです。
さらに、70日も経つのににおいがなくならず、戸を閉め切るとにおいが充満しとても暮らせる状況にはないとのことです。
県は「現在は救助が終了している」と言いますが、とてもそのような状態ではありません。いまこそ救助が求められているのです。このような現実のもとで県は被災者が日常生活に戻っていると言われるのでしょうか、お答え下さい。
■木村防災企画課長■ 災害救助法は災害直後の緊急対策を適切に実施することを主目的とした制度でございます。そういう観点から、赤穂市の例につきまして「救助が終了している」と申しているわけでございまして、現状の見方につきましては、いろんな捉え方があろうかと思いますが、われわれと致しましては赤穂市等から情報を得ている限り、すでに救助は終了しているというふうに考えておるわけでございます。
■毛利委員■ 「現状をどうとらえるか」ではありません。「現状はどうか」ということが問題なんです。今、行政が現場主義というこの行政姿勢が非常に問われている。
そんな中で、理屈でもって、しかも実態を見ない理屈でその被災地や被災者の立場に立っていない。そんな県当局に厳しい目が注がれています。
例えば、現場問題として12月2日に発表された赤穂市の被害は、全壊9、大規模半壊17、半壊150、床上浸水64です。このように災害救助法の適用基準を大きく上回る被害を受けていながら、兵庫県は迅速な適用ができなかったのです。その点では、赤穂が9月29日に台風被害を受けてから今日まで、災害救助法を適用する機会がなかったかと言えば、そうではありません。私たち日本共産党県議団は、被災直後の10月4日の本会議で災害救助法を適用してほしいという市民の切実な声を取り上げ、その後もちゃんと被害調査を行えば、全壊や半壊がでるから救助法の適用基準はクリアできると要望や議論をくり返してきました。
11月20日の朝日新聞の読者の投書「赤穂も被災地 見捨てないで」の中で、「避難勧告も出されず命からがら逃げた、弱者を忘れない政治をこころからお願いします」との悲痛な声は胸をうつものです。
県当局は「市から応援要請がなかった」と言われますが、被災者の立場に立って災害救助法を積極的に活用するために、市といっしょになって被害調査を行い、適用に向けて努力すれば迅速な適用ができたのではないかと残念でなりません。
災害救助法第2条は、「現に救助を必要としている人に救助を行う」とあります。赤穂の現実は先ほど述べた通りです。生活物資にも困っている状況で、応急住宅の提供も必要でしょうし、畳・床の修繕などの応急修理も必要とされています。
被災者が現に求めている救助があるわけですから、ぜひ適用して救助を行うことを強く求めますがいかがですか。
■木村防災企画課長■ ご指摘もございまして、赤穂市の12月2日に発表した数値、これにつきましては、県が被害認定基準の運用指針を弾力的にするという観点から、県版の指針を示しました。それに基づいて県内関係市町において今現在再調査が実施されております。赤穂市においてもそういう再調査が実施されておりまして、その結果に基づいて、結果として、現在それが事実なら救助法適用基準に該当するということでございますけれども、それは別に赤穂市に限った問題ではないというふうに考えております。
それから10月4日、ご質問で赤穂市に救助法を適用していただきたいというご指摘がございまして、このときは確か被害調査を再度県も積極的に関与して実施して、そういう意味の再調査を実施してほしいという主旨だったと思いますが、それにつきましては、その後、西播磨県民局等ともいっしょになりまして、実態を見てそういう体制をつくったと。現に上郡町あるいは上月町につきましては、再調査、県も協力した再調査の要望がございました。従って10月下旬にそれを実施したわけでございます。赤穂につきましては、そういう要望などはございませんでした。
それから、10月の中旬ごろ、県議のご指摘お話等もございましたので、私どもも赤穂市と何回か連絡をとりました。しかしそういう中で現に救助が継続しているんだというような話は、私としては理解できなかった。そういうふうな状態じゃなかったというふうに考えております。
■毛利委員■ いろいろ言われましたけれども、災害救助法はご承知のように知事がその責任を負うものです。大きな内容を持っているんですね。
今、内容的には災害救助法が適用されると、赤穂市に限ったことではないというふうな言いかたをされましたけれども。基準にあっているんならば、その立場で市がその姿勢でなかったという市の責任にしているようですけれども、あくまでも県がどういう姿勢に立って被災者を救うかなんです。
先ほども言いましたように、病弱な方のお話をしましたけれども、脳梗塞で倒れた後遺症をもってられる方です。毎日その東有年の家に帰りたいと奥さんにいわれて、姫路から毎日かよってられるんです。その住めなくなった家を眺めて涙している。こういうふうにおっしゃるんです。
こういう方には応急的な住宅だって与えること出来るんです。救助法が本当にこの基準通り行われれば。そういう意味では、やはり冷たい対応だと思います。
この問題は、本当に県民の命を守る立場ですから、立場の問題ですから、引き続き私はこの問題ではこの場で終えるということはいたしませんけれども、本当に考えていただきたいと。真っ正面から向かってですね、さきほどの事例の被災者の方に、顔を上げてみなさんの答えがいえるのかということを再度言っておきたいと思います。
被災者生活再建支援法の運用 「世帯」の取扱い
■毛利委員■ 被災者生活再建支援法を運用するにあたりまして市町や被災者にとって対象となる具体的条件が分かりやすいものでなければなりませんが、先の、11月19日付けで内閣府から、県にその運用にかかる「Q&Aの項目追加について」との文書が送られてきました。そこでは世帯の取り扱いがかかれています。表現はちょっとわかりにくいのですが、要するに、同じ家に住んで台所やお風呂などもいっしょに利用・生活しているけれど、祖父母家族の家計、若い夫婦家族の家計が別々であれば、必ずしも住民票上で世帯分離をしていなくても、おのおのの複数世帯と見てよいということでしょうね。これを確認したいと思うんです。
解説では認定にあたって個別・具体的に状況を確認されたいとあります。また県独自の住宅再建等支援金においても同じ捉え方になるのかについてもお聞きをします。
■木村防災企画課長■ 11月19日の内閣府から送付されました救援項目の追加で、世帯についての考え方でございます。
住民票・保険証等が従来は一つの目安として運用されて、別所帯か同所帯か目安として運用されていたわけでございますが、さまざまケースがあるので具体的に判定してかまわないという主旨でございます。
それから、仮にこの被災者生活再建支援法で法上「別世帯」というふうに取り扱われることになりましたら、県の単独措置につきましても同一の考え方で運用されるというふうに聞いております。
■毛利委員■ 今の説明もちょっとわかりにくいところがあったんです。要するに私が今説明したことというのは間違いないというふうに理解してよろしいですね。
■木村防災企画課長■ 必ず別所帯かといわれましたら必ずしもそうじゃないと思うんですが、必ずしもおっしゃたような状態であるから同一世帯になるとは限らないというふうに思います。
■毛利委員■ 支援法の適用基準に「所帯合計の年収」というのが条件になっていますから、この所帯の捉え方によってせっかく支援が受けられるのに、自らがその理解の仕方を誤って条件に該当しないとしてあきらめてしまうこともなりかねないということで、実際この問題では私たち多くの質問を受けているほどですし、今の質問でもなかなかわかりにく部分があろうかと思います。
そこで今私が申し上げたような、本当に市町にまずこの徹底をはかることが大事ですし、被災者にも直接分かってもらう、いわゆるインターネットや県広報紙などを使った広報媒体、あるいは手段あらゆる手を使って、掲載したり見るような場があったり、よくわかるように周知徹底をはかるべきだと思いますが、いかがですか。
■木村防災企画課長■ 内閣府の救援につきまして11月19日かなり遅い時間だと思いますが、ファクスで送りました。直ちに衛星ファックスで一斉同報で各市町に送付をいたしました。その後も紹介等には丁寧に対応しているところです。
■毛利委員■ 丁寧にしているといってもまだこういった質問があるわけですから、今、言いましたように、県は広報する責務もありますしその手段を持っているということで、ぜひ、いろんな意味でみんなに分かるように。これもまた県の姿勢が問われています。親切心があるかどうかと。この制度利用はあくまで申請制度なんです。自らが申請しなければならないわけですが、そういった点ではくれぐれもご利用いただきたいと思います。被災者を救うための法ですから、様々なケースに応えられるよう徹底していただくことを再度要望して、今具体的には何に載せますということは言いませんでしたが、丁寧なと言う中に入っていると理解させていただいて、次に移りたいと思います。
300万円の台風被災者むけ貸付金の「貸し渋り」の是正を
■毛利委員■ 最後に、被災者生活復興資金貸付金についてお聞きをします。申し込みの受付が始まった11月1日から40日が経過をしました。相談窓口をしている市町にお聞きしますと12月2日現在の数字ですが、豊岡が596件、洲本377件、上月町21件、上郡町13、赤穂市23となっています。この数字は市町が確認欄に押印した「資金の使途申立書」の数で、そのすべてが金融機関で貸し付けを受けたわけではありません。
複数の人が銀行の貸してくれなかったといって窓口に来られたので、市の制度を紹介したと洲本市や赤穂市は言っております。また、豊岡市等では過去にローンを組んで延滞したことがあったのでダメと言われた、低所得者の人ほど借りにくいなどと実際に借りられなかった例が多く聞かれました。このような実態は、つかんでおられますか。
■木村防災企画課長■ 被災者復興生活資金貸付金につきましては、われわれの方で11月末現在で金融機関の方から約600件の融資決定があったというふうに聞いております。
■毛利委員■ ということは「貸し渋り的なものは聞いていない」ということなんでしょうか。そういう実態はつかんでいらっしゃらないということですか。
■木村防災企画課長■ お話としてはそういう事例もあるというふうに聞いておりますが、具体的に何件であったかということまでは把握をいたしておりません。
■毛利委員■ 実績の数字から言ってもかなり差があるわけですから、どんな事業もそうなんですけれども、せっかく県が被災者のために創設した貸し付け制度ですから、今回はとりわけ実績や実態を具体的によくつかむ必要があるというふうに思います。
状態がどういうふうになっているのか、今あまり実態は聞いていらっしゃらないようですから。被災者に果たして喜ばれているのか、事業がスムーズにいっているのか、どこか改善点がないのか、こういったことです。その点でさきほど述べたように被災者が金融機関に断られている実例が本当に多く生まれています。この貸付を希望される方は、台風被害をうけて、家具や電化製品、自動車など、いまの生活にもご苦労されている方であって、比較的低所得の方が条件になっていますので、金融機関が判断することになれば、返済能力が低い、信用能力が高くないという判断になってしまいます。そうなっては何のための制度かということになっています。
被災者の立場に立って早急な改善が必要です。県として金融機関によく話をされて、被災者の実状を考慮に入れて貸し付けをすべきことを働きかけるべきだと思いますがいかがでしょう。金融機関への働きかけです。
■木村防災課長■ この制度、もともと家屋被害だけでなく自動車被害も対象にするとか、あるいは所得の基準を年間総所得金額ですね所帯人員にかかわらず一律730万円、これ実質収入にしたら940万円程度になるわけでございますけれども、高収入の世帯を除き、おおむね全世帯数の3分の2程度の世帯をカバーする制度として設置をしております。
それで金融機関等ともこの主旨を十分に説明をいたしまして、円滑な運営のための協力を求めるため、数回にわたって協議の場を持つこともいたしましたし、日々そういう電話連絡等でもしているわけでございますし、受付開始後も連絡を密にしながらいろんな申し込み案件をできるだけ弾力的に対応するよう依頼をしているところでございます。
今後ともこの制度の周知に努めまして、返済能力にあった適切な貸し付けが行われるように、引き続いて金融機関に徹底をはかってまいりたいと思います。
■毛利委員■ 連絡を密にしているとか数回にわたって話し合いをしているあるいは弾力的にということですが、「返済能力にあった」というその貸し方、確かにいろいろ実例いくつも聞いているので言いたかったんですが、一つだけ。こんなのもあったのですよ。内容的には省きますが、最終的にはJAが対応した職員が「災害とはいえ資金を貸すのは私のところや。県は言っているだけや」とこういうふうな言葉まで出しているんですね。
現実にこの県が出した被災者生活復興資金貸付金、これを見ますと結局どう書いているかというと、融資対象に「次のすべてに該当し」ここまではいいとしても、この中にも該当するのが一つね「信用情報に不安のないこと」というのを入れているんですよ。もう一つは、「取り扱い金融機関が認めた方が対象となる」と。どこがつくったんだと言いたいんです。県がリスクをしょっているんですよ。もし返済的にもいろいろ問題が起きてきたら金融機関は10%、県は確か90%の損失補償ですよね。そういう意味では県がもっとイニシアチブもたないといけないんです。それなのにそうなっていない。だから私は再度この責任ある立場で、課長じゃなくて答弁いただきたいと。改善をするということで県がやっていることだということで、本当に県が責任をもってやるという立場に立っていただきたいと思います。いかがですか。
■北林防災局長■ この制度につきましてはすでに先ほどから課長がお答えしておりますけれども、われわれ金融機関とも何回も話をしております。ただ、金融機関の方もやはり県と共同でやるとしても、やはり向こうにとってもリスクというのかそれはあるわけですからそういう点についても向こう独自のチェックをするというのはやむを得ない部分もあるのではないかと。
それから、先ほど課長お答えしましたけれども借り受け者の返済能力に見合った適切な貸し付けと、こういうふうにお答えしたと思うんですけれども、やはりなんでもかんでも貸すということになりますと、後になってお返しするほうが、仮にですねお困りになることがある。やはりその部分においては、適切な部分というのも考えられるということもこれは必要ではないかと、われわれの方としましてはそういう点も考えているところでございます。
そういう点すべて考慮してこういう制度になったということで、われわれとしましてはこの制度が、今回特に21号関係から23号にかけて実施をしたわけでございますけれども、非常に住民の方からも多くの応募をいただいてしている制度であるというように、われわれとしては評価しているところでございます。
■毛利委員■ これはあくまでも通常と違う被災をした時に創設をされたという、その精神を生かしていただきたいというふうに思います。
いま、こういう状況の中で、本当に被災者をどう救うかということです。それも助成でなくて融資ですから、いろんな意味もあるだろうというふうに思いますけれども、今の答弁では本当に県が責任を持ってやっているというふうには私は聞き取れませんでした。これもまた引き続いて議論をしたいというふうに思います。 |