2017年度予算編成にあたっての重要政策提言(6)
第6.すべての子どもの命、成長発達を支える教育への転換を
18歳選挙権の実施に伴い主権者教育の充実が求められる一方で、政府は「高校生の政治活動の禁止・制限」など、教育への介入を強めている。 また世界的に高い学費の上、給付制奨学金もないなど、奨学金ローンが若者の未来を奪う異常な事態が広がっている。憲法と子どもの権利条約を生かし、教育予算を増額し、教育の無償化・負担の軽減、行き過ぎた競争教育からの脱却、上からの統制≠やめて、子どもの権利と自主性を保障する立場から、豊かな教育環境を確立することが求められている。 - 教育費の負担軽減・無償化をすすめること
- 義務教育は、無償が原則である。しかし、無償の対象は、授業料や教科書代などに限られ制服代、修学旅行費の積立などの負担が家計を圧迫している。義務教育に相応しく家計負担の解消を求めること。
また、就学援助の国庫負担制度を元に戻し、対象や支給額を拡充するよう国に求めること。学校給食費の無償化を目指し、当面、必要な免除措置をすすめること。
- 父母や教職員らの長年の運動を受けて2010年4月に始まった公立高校無償化に対し、2014年度から所得制限が導入された高等学校就学支援金制度となった。生徒たちの間に分断を持ち込み、「社会全体で学びを支える」という教育無償化の理念に真っ向から逆らうものであり、所得制限を撤廃し、公立授業料の無償化を復活するよう国に求めること。
- 私立高校の実質無償をめざし、私立高校就学支援金制度の所得制限を撤廃し、授業料補助単価の引き上げるよう国に求めること。
また、県の授業料軽減補助についても、低所得者世帯にしぼったものでなく、対象者すべてを軽減するとともに、県外通学者についても県内と同額に戻し、専門学校・外国人学校にも適用すること。 私学経常費補助については、国庫補助制度を堅持し、拡充を図るよう国に求めること。県としても拡充すること。
- 給付制の奨学金制度の創設を行うこと。
- 教育条件の整備をすすめること
- 小学校4年生でとまったままの35人学級について、中学3年生までひろげること。さらに、30人以下・少人数学級をすすめるために、国の抜本的な教職員配置・定数改善を求めること。
- 安全で豊かな完全給食を全ての小・中・特別支援学校で実施し、学校給食を柱とする食育を推進すること。未実施の中学校での給食導入に県の補助制度をつくるとともに、「全員喫食」を基本とした「実施計画」とするよう市町に強くはたらきかけること。また、すでに給食を実施している市町に対する運営費補助制度を創設すること。
- 阪神淡路大震災を経験した兵庫県での公立学校の耐震化の予算を大幅に引き上げ、早急に耐震化を100%にすること。
- 普通教室のエアコンの設置予算を増やし、計画を前倒し、すすめること。
- 「行革」により学校運営費が年々削減されてきた結果、「エアコンがあっても使えない」「図書も含め学校備品の購入ができない」など、学校教育に大きな支障がでている。県立学校の運営費を増額すること。
- 事故が多発している組体操については、危険を伴う高さを競うアクロバット的なものを見直し、安全な指導ができる専門性をもった指導者を育成するとともに、内容についても、安全確保を第一に、慎重に検討すること。
- 障害児教育をもっとゆたかにすること
- 特別支援学校や特別支援学級に在籍する子どもたちが急増している。「分教室」の設置など安易な対策でなく、設置基準を設けるよう国に求めるとともに、新たな施設整備を含め早急に改善すること。特に急がれる阪神間、神戸市東部に、分教室や既存学校への仮設校舎の設置で対処するのではなく、知的障害特別支援学校の新設を行い、過大・過密・長時間通学を解消すること。
- 特別支援学級を大幅に増設・充実し、一クラス6人以下の少人数にし、一人ひとりに応じて丁寧に対応ができるようにすること。
- すべての学校に通級指導教室を置き、自分の学校の通級指導教室で学べるようにすること。
- 安全な通学を保障するため、スクールバスの増車とともに、添乗は民間委託せず公的な介助員を配置すること。
- 「いじめ」対策の強化について
- いじめの兆候があれば様子見せずただちに全教職員、保護者に知らせ連携するなど、いじめの対応を絶対に後回しにしないこと。学校現場では子どもの自主的活動の比重を高め、いじめを止める人間関係をつくる学校づくりをすすめること。被害者の安全を確保したうえで加害者にはやめるまで対応する、被害者・家族の知る権利を尊重すること。
- いじめ・不登校を多発・深刻化させている受験競争など過度の競争と管理の教育をあらため、子どもの声をききとり、子どもを人間として大切にする学校をつくること。子どもの権利条約の普及に努めること。
- 学校で困難をかかえる子どもたちへの支援を一層強化するため、スクールカウンセラーの増員を図り、小学校での全校配置をすすめること。また、スクールソーシャルワーカーの人材確保のため、市町支援の強化を図ること。
- 教員の多忙化は、子どもたちと接する時間や授業の準備をする時間を奪っている。共同して問題解決にあたる教師集団作りのために、教員の多忙化解消を図り、教員評価制度をやめること。
- ネット・SNS(LINE等)を通じたいじめへの対策を強め、ネット上の言葉の暴力について、家庭まかせにせず、学校教育でもルールやモラルを教えること。
- 競争とふるいわけの教育をあらためること
- 公立高校入学試験の学区統合により、「地元の高校に行けず、遠距離が大変」「私立の専願が増えた」などの声が聞かれる。学区拡大における生徒の進路に影響を及ぼし、地域の高校を残そうと地域をあげた取り組みに逆行している。さらなる詳しい調査や検証を行うこと。全県1学区等の学区拡大を行わないこと。
- 業者テストである「進路選択支援機構」の中学生統一模試、および同内容の学習到達度テストを学校教育に持ち込ませないこと。
- 全国いっせい学力テストを廃止するよう国に求めること。
- 教育の自由と自主性を保障し、子どもの豊かな成長をささえるために
- すべての子どもに基礎的な学力を保障することを学校教育の基本的な任務として重視すること。暗記ではない自然や社会のしくみがわかる知育、市民道徳の教育、体育、情操教育などバランスのとれた教育をおこなうこと。
- 市民道徳の教育を、憲法にもとづき、基本的人権の尊重を中心にすえ、子どもたちが自らモラルを形成できるようにすること。子どもの納得を無視して「規範意識」を叩き込むようなやりかたは、反人間的・反道徳的なものであり強制はやめること。
- 教育振興基本計画については、「愛国心」の押し付けなど、教育の内容に介入するのではなく、行政は教育条件や教育環境の整備を責任もっておこなうこと。
- 18歳選挙権が施行されたが、生徒が自分の意見を養うために、学校現場が政治について、萎縮することなく自由に語ることができ、多様な意見にふれる場であることが肝要である。行政が「政治的中立性」の名目で、教育内容への介入や、教員や高校生が当然もっている思想信条の自由や政治的自由の権利を踏みにじることがないようにすること。
- トライやるウィークで自衛隊での職場体験は行わせないこと。
- 教職員の条件整備
- 定数内の臨時講師や非常勤教師など非正規の待遇を改善するとともに、早急な定数改善を国にもとめ、県としてもただちに正規化への取り組みをすすめること。
- 教師間の連携・協力を妨げ、教師の管理統制を目的とした主幹教諭制度をやめること。また教員免許更新制を廃止するよう国に求めること。
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