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2007年08月29日

武庫川治水問題で申し入れ

8月29日、日本共産党兵庫県議団は井戸敏三知事に対し、武庫川の治水問題について以下の申し入れを行いました。



武庫川治水問題についての申し入れ


 武庫川治水対策のあり方については、この間、県議団として常々繰り返し問題点を指摘し、種種の提案をしてきたところですが、現在、基本方針案が、県より流域委員会に提案されていますが、この内容は、今後の武庫川治水計画に関して看過できない問題点を含んでいます。
 以下に、問題点の指摘とともに、疑問点を示しますので、文書にて答弁を求めます。
 
県の基本方針案では、計画基準点甲武橋として基本高水のピーク流量4610、洪水調節施設による調節容量910、河道への配分流量3700、参考として流域対策による流出抑制量80(単位:立方メートル/秒)としています。
 県はこれらの数値は確定した数値をして扱っていますが、重大な疑問点がまったく解明されないままであり、到底確定した数値とみなすことはできないと考えます。

1.流出量についての疑問が解明されていない。

 県は、100年確率による降雨を想定し、その際、流域での流出抑制量はわずか80立方メートル/秒とし、甲武橋基準点でのピーク流量は、4610立方メートル/秒としていますが、これは流域の実態を無視した過大なピーク流量です。
上流中流域での大量の貯留・滞留現象が生じることが解明されていない
(1)武庫川渓谷以北の武庫川本川、さらに「武庫川の支流の天王寺川、天神川のほとんどの区域、有馬川、有野川」(以下、『盛土堤防型流入河川』と称す)などの武庫川本川に合流する地域などは、盛土堤防(あるいは半盛土堤防)となっており、また、「武庫川渓谷以北の武庫川本川、さらに『盛土堤防型流入河川』に流入する雨水幹線や小河川、水路は、100年確率どころか、多くは10年確率にも満たない整備状況です。

(2)県が想定する100年確率の降雨が、これらの『盛土堤防型流入河川』に流入する雨水幹線や小河川、水路の流域に降った場合、雨水幹線、小河川、水路はことごとく溢れ、しかも、流入すべき各河川の盛土堤防に妨げられて、すべての降雨が、『盛土堤防型流入河川』に直ちに流れ込むことはできずに、結果として、武庫川下流に直ちに流れ込むことはできません。
すなわち、一定の時間、これらの各流域に雨水の滞留状態が起きます。いわゆる内水問題が発生します。
これらの流域は、武庫川流域の上中流にとって、相当大きなエリアですが、これらの流域の降雨のよる洪水量の下流へ到達は、県が想定するピーク時間より相当大きな時間のずれがおき、ピーク流量が県が想定するよりも相当下がることが当然想定されます。

(3)したがって、100年確率における県の流出量の想定は、このような武庫川上流・中流域の実態を無視したものであり、全面的な再検討が必要と考えます。
内水問題が、まったく解明されていない
(4)県の見解の中には、基本方針レベルでは、流域の河川改修を見込んだ想定をしているから滞留はないとの見解がありますが、これは市も含めて行政当局に雨水幹線、小河川、水路についてまでも100年確率で整備する計画がまったくないことを無視した暴論です。100年確率の降雨の際にはこれらの地域に相当の内水問題が発生することは明らかです。

(5)我々が現在知る所では、以上の点について、県が調査検討をした形跡がなく、報告もありません。以上指摘した点は、「武庫川渓谷以北の武庫川本川、さらに『盛土堤防型流入河川』」流域の住民にとっては、重大な内水被害問題であり、この調査も分析も方針もないことは、武庫川流域の治水基本方針として重大な欠陥と考えます。

(6)また、下流域住民に対する基本方針としては、過大なピーク流量の設定などで、本来力を入れるべき治水対策に誤りを生じて禍根を残すことになりかねません。

(7)H16台風23号における流域の実際の浸水あるいは湛水記録は当然把握した上でモデルを作るべきと考えますが、実際の浸水あるいは湛水記録の内容はどういう内容か、県が想定しているモデルにおける浸水あるいは氾濫データはどういう内容になっているのか、さらに100年確率の降雨の際には、流域でどのような湛水状況が生じるのか、以上の点についてすでに把握しているのであれば、その詳細を明らかにすること。

(8)指摘した流域での湛水問題を調査検討し、流出量、ピーク流量の再検討、内水被害対策の検討をおこなうこと。

(9)上流が洪水の被害対策すれば、下流がそのしわ寄せを受けるという従来型の対策は本来の解決になりません。内水被害対策についても、下流に洪水の付けを押し付けるやり方でなく、流出抑制・総合治水を柱にして取り組むこと。

2.下流の流下能力についての疑問も解明されていない

解明されていない矛盾=同じ武庫川で、3年前の23号台風では、最大2900立方メートル/秒の洪水が流れたと実測しながら、台風時よりも1メートル高い水位でも2500立方メートル/秒しか流下能力がないと県が言う
 現在の県の武庫川治水計画の根拠とされているのが、3年前の23号台風ですが、3年前の23号台風では最大毎秒2900立方メートルの洪水が下流で流れたとされています。
しかし、一方、武庫川下流についての流下能力算定では、県は、計画水位で毎秒2500立方メートルしか流下能力がないとしています。
日本共産党県議団が再三要求する中で、この23号台風の時の洪水水位の資料がようやく明らかにされましたが、そこで明らかになったことは、県が2500立方メートル/秒しか流下能力がないとしているにもかかわらず、その水位よりも1メートル低い水位で、3年前の台風時は、2900立方メートル/秒流れたと言うことです。
さらに、その後、県が明らかにした資料では、台風23号時の洪水から逆算すれば、県の計画水位(2500立方メートル/秒しか流下能力がないとしている水位)では、3千数百立方メートル/秒も流れることが判明しました。この差は、武庫川ダム一個分に相当します。
ところが、この重大な問題がきちんと解明されていません。

(1)県は、このことについて、3年前の台風の洪水時は、鉄砲水が流れたからだとあたかも特異現象が起きたかのように説明しています。しかし、水が静かに普通に流れている通常の時に対しては「特異現象」ではあっても、洪水時ではいつも起きる現象ではないのかの疑問についてなんら納得できる説明がなされていません。

(2)しかも、鉄砲水が流れて河底がえぐられたためだとしていますが、洪水時には河底の砂が深さ数十センチにわたって巻き上がり洪水流と一体となって動くことはよく言われていることであり、特異現象ではなく、河底の土砂が巻き上げられ、水流と一緒に流動することは洪水時ではいつも起きることではありませんか。
新規ダム一個分の誤差を放置して、治水計画は決められない
(3)新規ダム一個分に相当する問題が、なんら解明されないまま、基本方針における数値の決定がおこなわれることは、超長期方針の信頼性にも関わる問題です。
計画水位よりも1メートル以上も低い所で、2900立方メートル流れたという厳然たる事実と、計画水位でも2500立方メートルしか流下能力がないとしか算定しないという県計画との間の矛盾は、県がどのように口で弁明しようと、まったく説得力を持ちません。
この重要な疑問点を解明した上で、超長期の方針決定をすべきです。
公共事業の再検討が叫ばれている時に、疑問点を放置してダム推進に進むべきでない
(4)ダム一個分に相当する疑問を解明しないままことを進めるということは、ダム一個分の無駄な投資を引き起こす道をつくることともなりかねず、県政と県民に数百億円もの無用な投資を押し付けることになります。県においても行革が叫ばれ、無駄な投資をなくせとの県民の声が世論となっている時に、以上指摘した点を無視して進めることは、不用不急の投資は避けよの声に反するやり方を県が未だに踏襲していることとなります。そのような膨大なむだな投資をすすめる方向を決定付ける基本方針の決定はすべきでありません。

3.想定を超える洪水が起きても人命に影響を与えないことを治水基本方針の大原則とすべき。それには、堤防の決壊防止が不可欠。

 想定を超える大洪水が起きても人命には影響を与えないことを治水計画に貫くべきです。超長期の治水基本方針ともなればなおのこと当然です。
堤防を決壊させないことを治水の大原則になぜしないのか
(1)堤防の決壊が人命を奪う悲惨な被害を生み出していることにかんがみ、どのような洪水が起きても堤防の決壊は絶対にさせないを、治水基本方針の大原則とするべきと考えますが、いかがですか。
堤防決壊の三つの原因すべてをなくす取り組みをしないのか
(2)しかし、県が武庫川下流で行なっている現在の堤防補強策は、堤防への水の浸透による堤防決壊を防止するための対策に止まっています。
堤防の決壊の原因は、
1)堤防への水の浸透による堤防崩壊だけでなく、
2)堤防そのものが洪水流で削り取られて堤防が決壊に至る問題、
3)堤防を洪水が乗り越えて、堤防を宅地側から削り取っていき堤防の決壊を生み出す問題があります。
想定以上の洪水が起きる可能性があると言いながら、堤防を削り取ったり、乗り越えていく洪水への対策はやらないのでは、県が本当に真剣に洪水対策を考えているのかと言う問題に発展します。
2)と3)の対策も直ちに検討すべきと考えますがいかがですか。早急に必要な対策工事も実施すべきと考えますがいかがですか。
基本方針で、2)と3)に関する堤防補強を実施することをなぜ、明記しないのですか。また、2)と3)に関する堤防補強についての調査と検討を直ちに実施すべきと考えますが、なぜ取り組まないのですか。
減災のためにも、被害の分散が不可欠=洪水の危険を集めるダムは、被害の分散思想になじまない=流域全体での総合治水を基本方針の柱としてに明記を

4.できる限り被害が集中することを減らすことが大切ですが、そのためには、治水基本方針の考え方の基本は、(1)洪水の付けを下流に集中し、下流にしわ寄せするやり方はしない。(2)洪水の被害は全流域に分散させること=流域全体での総合治水を治水基本方針の柱にすべきです。

仮に武庫川渓谷に新規ダムをつくることを前提とした治水対策を立てるとなると、新規ダムの効果を発揮するためには、上流からの洪水を新規ダムに集めなければならず、そのため、洪水を武庫川ダムに集めることが治水計画の目的となってしまいます。これは、(1)と(2)の考え方に逆行します。
結局、ダムを成功させようとすれば、洪水被害を分散させる取り組みをおろそかにすることとならざるを得ません。それは、実現時期を定めない=いつ実現するかわからないという超長期方針の基本方針においてでさえ、流域対策による流出抑制量をわずか80立方メートル/秒しか見込もうとしないことに端的に表れています。要するに、100年経っても、流出抑制量は、広い武庫川流域で、80立方メートル/秒しか生まれないということですが、これは常識ある市民が納得できるものではありません。
以上から、上記の(1)と(2)を治水基本方針にすべきと考えますがいかがですか。100年経っても広い武庫川流域で、流出抑制量は、80立方メートル/秒しか生まれないとする計画数値は撤回し、再検討をすべきと考えますがいかがですか。

5.基本方針の前文では「河川の流出抑制を促進する」とか「流域内の保水・貯留機能の確保対策を促進する」などと記載されていますが、これを実際に実施すれば、基準点でのピーク流量を引き下げる役割を果たします。しかし、その一方で、この基本方針が決定されれば、その後は、前文の記述にもかかわらず、流出抑制量やピーク流量、洪水調節施設による調節量などは、「基本高水のピーク流量等一覧表」で決定され、固定されたものとの扱いです。これでは、いったい何のための前文かということになります。


(1)前文での取り組みが数値にも反映されるように当然すべきで、そういう意味では、幅を持たせた数値、あるいは、前文の取り組みによって数値が変動していく構造の数値の決め方にすべきと考えます。

(2)基本方針は、理念、超長期の方針、「あくまでも時間軸のない方針」とし、実現する時期を定めないとしながら、実際においては、決定された数値が固定され、例えば、超長期にわたっても「流域対策による流出抑制量は80立方メートル/秒」しか実現不可能、一方「洪水調節施設による調節流量910立方メートル/秒」が必要⇒ダム建設へのレールとなるなど、その数値にもとづいて整備計画を立て、工事を進めるというのがこれまでの通例です。
いわば、基本方針で決定された数値が、前文とは関わりなく一人歩きしていくのが実態です。
その数値がどのように不確定要素を持っていても、いったん決めたら数値が一人歩きという従来型の公共事業は改めるべきです。そのためにも、前文と数値とをリンクさせた基本方針にすべきです。
むだを排除し、不断に見直しをしていくことがこれからの公共事業のあり方ではありませんか。そうしてこそ、武庫川らしい基本方針ではありませんか。

6.武庫川を、川らしい川に取り戻すためにも、鮎の遡上できる武庫川とすることを基本方針に明記すること。


以上

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