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2005年06月09日

「県政検証 シリーズ対談 5」 治水とダム

対談者:
○つづき研二(県会議員)
○奥川和三郎さん(21世紀の武庫川を考える会代表)
○安留紘一さん(兵庫県勤労者山岳連盟自然保護委員)
○谷田百合子さん(武庫川を愛する会会長・武庫川流域委員会委員)

(つづき)きょうは武庫川ダム問題にかかわっているみなさんにお集まりいただきましたが、昨年、あいついで県内で発生した水害は、県のこれまでの治水対策の誤りを露呈させました。
 淡路の三原川上流には、60年に一度の大雨対策としてつくられた、5つのダムと1つの大堰がありました。それにもかかわらず昨年の台風でかつてない洪水がおこりました。下流では10年に一度の大雨対策もとられていなかったためでした。
 武庫川渓谷に計画している武庫川ダムについて、県民の反対運動と世論の高まりのなか、県は「治水計画を白紙から検討」「総合治水を検討」するといって、住民参加の武庫川流域委員会を発足させ、先月までに18回の委員会を開催。しかし、県は依然、ダム計画の白紙撤回を拒みつづけていますね。

≪机上の計算に基づく計画≫

(奥川)武庫川では、武庫川流域委員会への住民参加によって、これまで闇につつまれていた、計画の数式計算などが明るみに出てきました。これは一つの到達点だと思います。

(谷田)流出解析ワーキンググループで検討してそれを流域委員会で討議し、治水計画の基準となる基本高水流量を決めることになっていますが、計算式の係数をいくつに決めるのかということは、さておいて、遊水地や環境への影響など具体的な議論をもう少し進めなくてはならないと思います。

(安留)流域委員会で論議されている洪水流量は机上の計算だということが分かってきたわけです。県は、流域の森林の保水能力を調査していない、資料がないといいます。遊水地についても、実際にどういう土地がいいのか具体的な調査をしていません。吉野川でのように、まず実態に即して調査をすべきです。

(奥川)5月30日の第18回委員会で、学識経験者委員の奥西一夫氏が、(1)実測の流量データは貧弱だが、どこまで同定(確認)できるのか (2)県は流量データをとる必要性を感じているのか、今後、測定の努力をするのか (3)水位は観測されているが、これから流量を求められるのではないか―と質問したのにたいし、県は「データは隠していません」「今後どうするか計画はないが、努力する」「水位から流量を出す方程式はない」と答えていました。

(谷田)方程式は実測に合わせて、後からつくるものでしょう? いまは電波流速計で洪水流量を測れるそうですが、流量を実測しないものだから、どうしても雨量係数の計算の議論に入っていきます。
 しかし、時間雨量の実測値は、1955年以前は流域外の神戸海洋気象台一カ所のみです。武庫川流域の平均雨量は、56年から04年までの49年間について作成されています。アメダス名塩測定所でのデータも七八年以降分です。100年確率を類推するには、データが不足しています。

(つづき)県は、上流で大雨が降ったら、そのまま武田尾渓谷に流れてくると想定していますが、実際にそうなるのか、検証させなくてはなりません。
 上流の三田や伊丹など、10年に一度の大雨にたいしての治水対策となっていますから、県がいっているような百年に一度の大雨が実際に降ったら、上流で確実に溢れます。三田では武庫川は盛り土堤防になっていますから、溢れた水はすぐには川に戻ってこず、すぐには武田尾渓谷に流れ込みません。
 武庫川流域の実態はどうなのかを具体的に調査も検証もせずに、県は治水計画をつくろうとしています。ここに武庫川ダム計画の根本的弱点があると思います。

≪総合治水の観点で≫

(奥川)「流域対策」が弱いですね。第18回流域委員会からようやく県の農林水産部が出席するようになりました。いままでは河川計画課長が県の代表で、川の中だけ「河道主義」の論議をおこなってきました。
 河道主義は第17回の委員会で承認された「武庫川の河川整備基本方針・整備計画の審議についての経過報告」にも表れています。案では「環境の尊重」という表現になっていたので、私が「環境保全は新河川法では『目的』とされている。『目的』と『尊重』は違う」と指摘すると、河川計画課長が異議を唱えました。しかし、議論の結果「目的」と明確に修正させました。

(安留)総合治水の立場に立っていないんです。口では「総合治水」「ダム計画の白紙からの検討」といっているけれど、「ダムありき」の立場でやっているから、計算方法を変え何度やっても同じ流量計算(毎秒4800トン)になってます。
 溢れた場合、どのような措置が必要なのかなど、ソフト面での防災対策も必要だという議論も最初にありました。しかし、いま、流域委員会の議論は、そもそもの総合治水という点から離れていっているようです。

(谷田)流域委員会は2年の期限がきたら、いったんやめて、十分な調査をしてから、議論をやりなおしてはどうでしょう。

(安留)いまの状況ならそうせざるを得ないですね。

≪河川改修は緊急課題≫

(安留)昨年の水害では武庫川ダム予定地のすぐ下流にあるリバーサイド地域(西宮市)が被害を受けました。私たちは以前から、リバーサイドは流域委員会の議論から切り離し、緊急対策として移転を含めた検討を主張してきましたが、被害が出てから、やっと県は河川改修とそれに伴う移転をいいだしました。

(つづき)ここでは河川改修工事よりも、危険なところに建つ住宅を転居させるほうが安くつくのではないかと思います。

(谷田)他の地域でも、私有地だからといって河道内に鉄工所やガソリンスタンドが建っていますが、県は規制すべきですね。

(つづき)河川法上問題がある造成です。治水対策を担当する自治体はこういう造成を認めないのが常識です。リバーサイドも同様の経過で開発されたものでしょう。リバーサイドのすぐ下流でも、わざわざ川幅を狭めるような状況を許して、昨年の災害を招きました。
 円山川では、決壊個所の堤防材質が、堤防を乗り越えてくる洪水に弱いものだったことがわかりました。
 昨年の台風・水害は、まず、流下能力の乏しいところなど危険な個所をなくすこと、決壊がおきないように堤防を強化することが、県民の安全を守る上で、いま最優先にすべき課題であることを明らかにしました。
 また、県は、八鹿や但東など5カ所で「生活ダム」と称して新たなダム開発を進めています。わざと大きな費用のかかる河川改修方式を想定するなど恣意的な見積もりで「河川改修よりダムの方が安くすむ」として推進しているのです。
 ダムは大手ゼネコンの受注となりますが、中小河川の改修なら、地元の中小業者でできます。ゼネコンの仕事になるダム建設には力をいれるが、住民の命に直結する河川改修や堤防補強には力を入れない、兵庫県の姿勢を今度の知事選挙で変えなくてはなりません。

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