行財政構造改革特別委員会 意見表明
きだ結
わたしは、日本共産党兵庫県会議員団を代表して、「第三次行財政構造改革推進方策」(第三次行革プラン・第一次案)について、意見を表明いたします。
まず、今回のプランは、国の「骨太方針」や「社会保障と税の一体改革」との整合を図ると述べており、実際に、消費税増税分を財政フレームなどに反映しています。 安倍内閣は、来年度の予算案のなかで、地方財政では、リーマンショック後に上乗せされてきた「別枠加算」を6100億円とし、4割をカットする方針です。安倍首相は、「平時モードに切り替え」と言って廃止する方針ですが、地方交付税はもともと小泉内閣の三位一体改革による数兆円の削減があり、圧縮されていることを考えれば、景気が回復すれば、「平時」としてなくせばいいというものではありません。 地方財政の充実を求めるのは当然のことですが、知事や兵庫県のように、その財源として、国民・庶民に重い負担となる消費税を財源として求めることには反対です。日本共産党は、「消費税に頼らない財政再建の道」を提案していることを指摘しておきたいと思います。
次に、プランの具体的な内容について、意見を述べます。 ■第一に、福祉医療などの分野についてです。 ・老人医療費助成事業では、国が70才〜74才の医療費負担を1割から2割に増やす方針にあわせて、県単独の事業である老人医療費助成の低所得T、現在1割負担の1万3千人が、2割負担にし、低所得U、現在2割負担の8千人への助成を廃止するというものですが、西宮市などからも「今回なくす低所得者Uは低所得者Tの対象外となる低年金者の救済措置であることから、引き続き受給対象とすることを要望」していると聞いています。 企画部会案からの変更として、「実施時期については、市町での円滑な事務手続きに配慮」と書き込みましたが、時期をずらすだけでなく、多くの市町は、内容そのものの撤回を求めています。わたくしも、撤回を強く求めたい。
・また、単位老人クラブへの活動強化費の削減、単価を4400円から3500円に引き下げる問題については、先日19日に開かれた神戸市老人クラブ連合会と知事のさわやかフォーラムでも、「老人クラブの会員増強運動をすすめ、組織を広げようとするこの時期に、なぜ補助の削減か」とか、「老人クラブへの社会への期待は大きい。削減を見直し、温かい支援を」などを発言され、「現行水準の維持」を求める要請書が知事に手渡されました。 地元のある老人クラブ会長さんにお聞きすると、小学校の授業として行われる昔遊びへの会員の派遣、ふれあいまち作り協議会主催の盆踊りへの協賛団体として踊り子の派遣、地蔵盆として子どもたちに配るお菓子の準備、体操教室、3世代輪投げ大会、など、市や県から地域のコミュニティ作りの役割を任せられ、健康作りを地域の仲間と行うのが老人会の活動の趣旨であり、これまでの補助金は5000円から現在の4400円に削減され、今回の3500円への削減は、三度目となります。 神戸市議会でも、この問題が議論となり、市当局の答弁で、「支えあい、子育て支援など大きな役割を持っており、行政として支援する必要がある。県においては実態を踏まえて現行程度の支援継続を求める」としています。そのほかに、尼崎市、明石市、西宮市、芦屋市、加古川市、宝塚市、三木市、養父市、朝来市、宍粟市も同様の要望をしています。日本共産党としても、現行制度を堅持することを求めます。
・次に、母子家庭等、ひとり親家庭医療費助成についても、所得制限を強化し、現在の対象者・約10万人の内、養育者3万1千人、子ども2万6千人、合計5万7千人を対象から外そうとしています。 今回の質疑のなかで、住民税非課税のような厳しい所得制限をしている県はめずらしく、山口県のみであり、全国的にみても、もっとも厳しい所得制限であることが明らかとなりました。 神戸市の福祉局からも、「所得制限がかなり厳しくなる。これによって現行の適用者の半数以上が適用除外になることも予想され、非常に厳しいので賛成しがたい」という意見が出されています。
この2つの制度の改悪により、老人医療と単位老人クラブで合計約4億2千万円、ひとり親家庭が約6億円、合計10億円を超える県予算の削減額を見込み、市町分の削減が実施されれば、さらに多くの県民負担増が見込まれます。 4月からの消費税増税と社会保障の改悪から県民生活を守るどころか、追い打ちをかける形です。兵庫県として、県民にたいする姿勢が、冷たすぎるのではないかと思います。
第二に、教育の分野についてです。 ■私立高校への支援、授業料軽減と経常費の補助については、 第二次プラン時に経常費補助を11億円を削減したのにつづき、来年度から3年間で4億円を削減する案を示しています。 授業料軽減補助については、910万円の所得制限、生活保護世帯など低所得者に重点化する文部科学省案にもとづき、今年度県内平均授業料(37万9千円)までは制度を拡充する一方、県単独の上乗せ部分については、全体として1・7億円の予算を削減する案となっています。 県単独制度の内容を詳しく見ると、250万円以下だけがプラス1万2000円と増額されている以外は、のきなみ減額されています。さらに、近隣府県の県外通学者にたいする半額補助を、兵庫県内の高校通学生への補助を実施している京都府をのぞき、補助を打ち切る方針です。 兵庫県の私立高校は、授業料と入学料などをあわせて、実質的な「学費」は61万5千円にもなります。全国4位の高い学費です。 県予算の削減する今回の提案は撤回し、支援の充実の方向へすすむべきです。
第三に、県立病院や県営住宅などについてです。 ■特に、県立こども病院は、先日ポートアイランドで起工式を行いましたが、これまでも繰り返し述べてきたとおり、南海トラフの地震想定や防災計画の見直し前に移転を決め、それも、県医師会や多くの県民からの反対署名が提出されたことからもわかるように、県民の意見を聞いていないことが根本的な問題点であると思います。 病院局側は、キャリーオーバー患者や、総合病院との連携などをメリットにあげましたが、県議会の質疑のなかで、結局「これから協議すること」「全国的にも実例がない」という、きわめて不確かなものだということが、明らかになっています。国の交付金や医療産業都市構想などを優先し、患者や医療関係者を置き去りにした移転計画は、今後も大きな問題を残していくことを強調したい。
■県営住宅、特に、UR借上県営住宅についても、繰り返し求めていますが、被災者の終のすみかから追い出す方針は、年齢などの線引きで、追い出される人、残る人と、コミュニティーをバラバラにするもので、許されません。 井戸知事は、「杓子定規にはやらない」と言われますが、実際に入居者への対応を、そのような約束通りにすることが求められています。入居者、被災者の不安の思いをくみ取った温かみのある対応、さらに、根本的には買い上げや契約延長などをすべきであることを主張します。 ・県営住宅全体についても、将来的に、大幅な管理戸数の縮小をめざす方針は、公営住宅への県民の強い要望に逆行するもので、反対です。
第四に、県職員の関係です。 ■県職員の3割カットや非正規職員の200人削減計画は中止し、「行革」にもとづく給与の独自カットは、早期に回復すべきです。 県職員の削減による「悪影響」が様々な分野ででてきています。 決算特別委員会では、土木事務所の職員削減で、十分な点検・管理ができていないことを指摘しましたが、それを民間活力で補う方針を示していますが、インフラの建設から維持・点検まで、民間任せになって、採算優先で安全性が後退する懸念があります。これ以上の職員削減はやめるべきです。 ■試験研究機関も、「行革」の対象とせず、研究者・職員の増員、世代継承をすすめるべきです。 最近は、「官から民へ」とか、「公務員を減らせ」とよく言われますが、地元・兵庫県に愛着を持って働く人を自治体の職場で育てていくこと、その仕事を通じて養った経験や知識を、県民のために役立てることは、本来、県民の幸せに結びつくものであることを強調したいと思います。
第五に、ムダ・過大な事業や問題のある事業についてです。 ■わたしたちは、福祉や教育の削減よりも、むしろこちらの方の改革こそ、優先すべきことを従来から、訴えてきました。 これまでの「行革プラン」のなかで、金額的には減ってきたものの、まだ類似府県よりも高い水準です。今回のプランでは、「地方財政計画にあわせる」として、補助と県単独あわせて1590億円の投資事業水準を確保するとしています。 いま、次期の「社会基盤整備基本計画(骨子案)」を示されていますが、その中身を見ますと、安倍内閣の「国土強靭化」の方針に沿って、「広域ネットワークにおけるミッシングリンクの存在」と言って、高規格道路の整備をすすめるとあります。東播磨南北道路を北にのばす路線や、名神湾岸連絡線、大阪湾岸西伸部、播磨臨海地域道路、山陰近畿自動車道などがあげられています。人口減少社会をむかえるなかで、過大なストックとなる可能性の高いこれらの事業は、以前の古い国土軸にもとづく高速道路計画を踏襲したものです。 このような事業の見直しを図り、防災や維持・管理に思い切って重点を置く方向に転換することを求めます。 また、但馬空港の利活用の「検討委員会」は、空港の在り方そのものを問うことも視野に入れて、県民からの公募委員のメンバーを入れるなど、県民の目線で検討ができるようにすることが必要です。
■企業庁の地域整備事業については、地域ブロックごとでなく、各プロジェクトごとの収支等、県民への情報公開を行った上で、今後の事業全体の縮小、未造成地の活用方法とあわせて検討することを求めます。
■塩づけ土地(長期保有土地)は、日本共産党として、それぞれの土地の、当時の取得依頼状などの資料を全部提出してもらい、県自身の開発計画を理由として、取得を依頼している土地がほとんどであり、その計画が失敗、行き詰まって、長年の未利用地となった経緯が、はっきりとしています。 今回、民間売却の処分を「基本方針」で明確にしたのですから、これまで県民の莫大な税金を投入してきたことから、県としての反省と総括が必要です。同時に、現在の土地ごとの「時価評価」なども、県民むけに公表すべきであると考えます。
■また、企業立地補助金(新事業・雇用創出型産業集積促進補助)については、「行革」の対象にすらなっておらず、いわば「聖域」となっています。 パナソニック尼崎工場の全面撤退の教訓を踏まえ、制度を廃止し、中小企業や地域経済の振興に貢献できる新しい制度を検討することを求めます。
最後に、パブリックコメントが行われていますが、本当に、県民に広く知らせるつもりがあるのか疑問に思います。年末年始をはさんで、12月18日から、1月7日まで、市町にたいしても急な意見照会であったし、関係団体からの意見も十分に聞いていない。 パブリックコメントの募集期間を延長し、広範な県民や関係者、市町からも十分に意見を表明する機会を保障すべきであることを指摘して、日本共産党県会議員団の意見表明を終わります。 |