国の出先機関「丸ごと移管」とは?
〜関西広域連合と財界のねらい
民主党政権のなかで、すすめられている「地域主権改革」のなかで、議論されている「国の出先機関改革」(国の地方における出先事務所、国土交通省の近畿地方整備局など)。いま関西広域連合(連合長=井戸敏三兵庫県知事)で、全国に先駆ける動きを強めています。 関西広域連合で、国出先機関の「丸ごと移管」を担当しているのが、橋下大阪府知事。2012年の通常国会での法案提出、2014年に事務・権限委譲をめざしています。
「丸ごと移管」とは?
国の出先機関のなかでの、当面の最大のターゲットにしているのは、「近畿地方整備局」「近畿経済産業局」「近畿地方環境事務所」の3つ。それは、公共事業の計画と執行にかかわる権限と予算がねらわれているからです。 関西広域連合の動きの背景には、関西財界のねらいがあります。 関経連が今年5月に出した「関西版ポート・オーソリティー構想」は、「グローバル化した国際競争に関西が一丸となってたちむかう」ために、「関西広域連合が関西の一元的なオーソリティー(管理主体)として事業会社と連携し、広域交通・物流基盤を一体的に運営する機能を担う」と強調。 その「基盤」とは、港湾・道路・空港などで、関西の主要な広域交通・物流基盤の管理主体となって、それを「民間事業会社に行政財産を貸与し事業運営を委託する」とあります。なお、この構想では、国管理部分だけでなく、都道府県や政令市の管理する重要港湾なども、対象とされています。 つまり、国・地方を含めた関西のインフラを関西広域連合で「ひとまとめ」にして、民間会社に管理を任せる方式を提言しているのです。財界の好きなようなインフラ計画をつくり、その管理も担う。まさに「財界の自作自演」「財界主役」とも言える内容です。 このような仕組みをつくるのは、「国際競争力」「東アジア市場」のため、ベイエリアにハブとなる港湾・道路・空港に集中投資するためです。
国民の安心・安全よりも、企業のもうけ優先
「台風災害での土砂ダムを監視する近畿地方整備局」・・・テレビで報道されるように、地震や台風災害など、災害列島の日本では、被災者を支援する知事や自治体の長の責任とともに、国の期間が重要な役割を担っています。 「丸ごと移管⇒民間まかせ」によって、公共事業が、国民の安心・安全を守るという観点よりも、「国際競争に貢献するか」「インフラビジネスの成長」の観点が重視され、不採算部門の切り捨てがいっそうすすみ、安全性が脅かされる危険性があります。 また、全国どこで暮らしていても、一定水準以上の行政サービスが受けられる(ナショナルミニマム)が、国の国民にたいする大事な責任ですが、「地方に自由にまかせればうまくいく」という議論のもとで、地域間格差がされに助長される可能性もあります。 「国から地方へ」「管から民へ」という小泉構造改革を引き継いで、民主党の「地域主権改革」がすすんでいますが、関西広域連合で実際にすすめられていることは、財界・一部の企業が主役、港湾・空港・道路などのインフラをビジネスの儲け口という、露骨な「ねらい」です。国民・県民のための「改革」とは、縁もゆかりもありません。
公務員リストラも
「国の組織の行革は、喫緊の課題。丸ごと受けてから我々がやる。国ができないことを地方ができることを国民に知ってもらう」(橋下大阪府知事・国出先機関政策関委員会委員長、西広域連合議会、2011年2月)と、公務員リストラをすすめることを宣言していますが、国民にとって必要な人員まで削減される心配があります。 日本共産党は、県議会での関西広域連合設立の議案に反対した討論で、「関西財界は、主に、大手企業・多国籍企業向けの、大阪湾ベイエリアを中心としたインフラ整備・ハード整備のテコにしようとする「ねらい」です。橋下大阪府知事の「関西州」のイメージ図には、大阪湾部の大規模公共事業に財源を集中的に投資するとなっています。・・・広域計画の規定もありますが、これで関西の浮揚が図れるのでしょうか。過大なインフラがどこに行き着くかは、関西国際空港2期事業の累積債務を見れば、はっきりしています。これでは反省なく、昔の古い手法で、さらに大規模で同じ過ちを犯すことになります」(2010年10月6日)と警告しましたが、その警告通りの方向をすすんでいるのが、現在の関西広域連合の動きです。 広域連合の議会が、各都道府県議会から数人の参加で、知事などの会議に比べて活発でなく、まともなチェックが働かない中、関西広域連合の危険な動きを、兵庫県や関西全体で注視・チェックして、取り組みを強めていくことが求められています。 (10月23日付「兵庫民報」より) |