台風災害 現場の声届け県動かした兵庫県議団
ことし全国を襲った台風災害。兵庫では16、18、21、23号と大きな被害を受けました。「せめて京都や福井なみの公的支援を」「応急修理制度を知らずに補修をした人も対象に」など被災者の生の声をとりあげ、県議会で知事に迫ったのは日本共産党県議団だけです。そのなかで多くの成果をかちとりました。原動力となったのが、被害の直後から党市・町議、支部とともに13市17町の被災現場に入り、調査や要望を聞く活動を続けてきたことでした。おもな成果を紹介します。
住宅再建支援金の上乗せ 国の被災者生活再建支援法による支援制度(最高300万円支給)への住宅再建支援金の上乗せは、新潟県、京都府など全国の流れになりつつありますが、兵庫県では井戸敏三知事の姿勢が壁となってきました。 日本共産党は、阪神・淡路大震災から個人補償を一貫して求めてきた党として、台風被災者の住宅と生活の再建には国の支援法の枠では不十分であり、県独自の支援金をと強く求めました。知事は当初、「財政的負担が大変」「床上浸水にまで拡大することはなじまない」(9月議会の答弁)と、苦しむ被災者の願いとかけ離れた姿勢でした。県の対策も、床上浸水被災者にはわずか3万円の見舞金だけでした。 しかし、日本共産党がくりかえし被害現場の声をとりあげ、「現場で実態を見ていただきたい」と知事につめより、知事に被災地訪問させるなど奮闘してきました。 こうしたなかで県の台風対策の拡充が始まり、12月議会で、国の制度と合わせて全壊最高400万円(生活支援金含む)、大規模半壊175万円、半壊50万円、床上浸水25万円の住宅再建・補修への支援が実現しました。
収入基準や「世帯」の運用改善 支援金は、対象が基本的に年収500万円未満という収入制限があるため「被害認定を受けたが受け取れない」という例が多く、日本共産党は従来から収入制限の撤廃を求めてきました。今回県は、前年の年収800万円にまで対象を広げ、一定改善されました。 また、収入は「世帯合計」となっていますが、その「世帯」の認定が国の通知によって緩和されました。健康保険証などの証明書類があれば、同居している親と息子・娘などが別世帯と認定でき、それぞれが支援金の対象世帯となって収入制限もクリアできるケースが生まれます。被災者に知らせることが求められています。
住宅被害判定の改善で全半壊が増える 11月初めからの被害住宅再調査で、全壊が12倍の772世帯、半壊は16倍の7656世帯(うち大規模半壊1505世帯)になり、被災者再建支援法が全県適用されました。 ここでも、「共産党の成果といってもいい」と県当局が認めるほど、議会をリードした徹底した論戦がありました。9月議会で、被災市町の現場では、3年前に改定された国の基準にもとづいて被害判定がなされていないことを指摘し、党県議3人が連続して本会議質問でとりあげ、知事の「市町の再報告は尊重する」「必要なら県としても協力」という答弁を引き出したのです。 日本共産党は10月の政府交渉でも、判定基準緩和を要求。10月末に内閣府が浸水被害で弾力的な判定を指示した通知を出し、11月には一定改善された県独自の被害判定マニュアルがつくられます。市町で、弾力的な判定がすすみました。
住宅応急修理「工事終了も対象に」と迫る 災害救助法に定められた住宅応急修理は、阪神・淡路大震災のときは、制度はあるが中身も対象も一部の適用にとどまっていました。 しかし、ことしの災害では、新潟県がその弾力的運用を国に認めさせたことが契機となって、兵庫でも台風23号被害に適用され、利用世帯や修理の内容が広がりつつあります。 日本共産党県議団は、新潟県の経験から、「工事が完了していても制度の対象にすべき」と議会で迫り、その後、県が国と協議し、「工事代金清算前」はもちろん、11月16日以降は「清算後」も対象になることが市町に伝えられました。 現在、党県議団と被災市町の党市町議(団)は、申請期間を延長し、来年になっても受け付けるよう要望。被災者に申請もれがでないようよびかけています。
洪水対策約束させる 今回の台風被害の教訓として、どのような洪水対策が求められているのか、党県議団はいまの治水対策の問題点を指摘し、建設的具体的な提案をおこない、成果に結びつけました。 一つは、堤防の補強問題です。堤防を越える洪水(越流)によって決壊・破提が起き、多数の人命が奪われる大きな被害が広がった教訓から、これまでの国基準にはない、越流対策も含めた堤防対策の検討と、堤防の土質も含めた調査をすることを県に約束させました。 二つは、「ダムありき」の姿勢で、武庫川の武田尾や西宮リバーサイド地域など、必要な河川の危険箇所を放置してきた県の責任を追及し、護岸道路のかさ上げや宅地の移転補償もふくめた抜本的な対策を求め、「かさ上げや川幅を広げるなど、今後の計画で検討する」と約束させました。 ほかにも、被災業者むけの無利子融資の拡充、被災した豊岡かばんの零細業者へのミシン貸与事業などが実現し、農業被害でも融資の拡充や野菜被害補償、さらに風倒木の処理にたいする市町負担の軽減などが実現しています。
これからの課題も 多くの成果の一方で、課題もあります。 住宅再建支援では、京都や福井に比べて支援金額が低く、収入制限が残ること、床上浸水の損害割合10%未満は対象外という不公平さなどの問題点が残されています。 住宅被害判定は、被害が大きくても全壊や大規模半壊が少ない市町があるなど市町間でアンバランスがあり、被災者が納得できるような再調査が必要です。中小企業への無利子融資枠のさらなる拡大、風倒木の調査の徹底や、災害に強い山・森林をどうつくっていくかなど、様々な課題があります。 浸水被害では、床下が土砂や泥流でどろどろになり、いまも床板を外したままで乾ききっておらず、補修もままならない被災者が多くいます。住宅と生活の再建は、文字通り始まったばかり。支援策のさらなる拡充を国や兵庫県に求めて、党県議団は奮闘します。
(10月27日、28日付「しんぶん赤旗」より) |