※未定稿です。
日本共産党県会議員団のいそみ恵子です。一括にて質問させていただきます。
7月の県知事選挙は、井戸敏三知事の5選という結果となりました。しかし、その得票は、初めて100万票を割り、得票率も過去最低の51.24%にとどまり、対立した3候補の得票は、約90万票です。現県政がすすめてきた「行革」が県民の福祉・くらし、教育を切り捨て、そのことが国の悪政と相まって、さらに地域を疲弊させ、壊していることに、県民の強い批判が寄せられたものです。今こそ、県民の声に真摯に耳を傾け、県政の転換をはかることが必要です。
憲法改悪の動きが強まる中、これにきっぱりと反対し、国の暴走政治に対し、憲法と地方自治法に基づき、住民の生命と安全を守る立場で県がその役割を果たすことを求め、以下6項目にわたって質問します。
1.農業支援について
まず、兵庫の農政についてです。
兵庫県では、全経営耕地面積に占める中山間農業地域が全国平均38%に対し、56%にもなり、国が推進する農地大規模化・コスト削減による「強い農業」への転換には限界があります。
例えば、中山間地の多い兵庫では、中間管理機構を通じた農地の担い手への集積・集約化事業でも目標に対する「機構」の寄与度は4%に留まり、全国平均13%を大幅に下回っています。
また、平成12年度から国の施策として、中山間地域等直接支払制度が実施されています。この制度は、5年間の協定期間中に農業生産活動が行われなくなった場合には、原則交付金の全額を返還しなければならないというペナルティがあります。
県内では、約7,672haが中山間地域等直接支払制度の対象用地となっていますが、補助金交付面積率は、5年毎の前回更新期と比較すると72.1%から68.3%へと大幅に低下しています。生産者が制度から撤退した圧倒的多くの理由が「高齢化によって5年間も続ける自信がない」としています。一部、新温泉町では制度からの撤退後、耕作放棄地となっています。この5年間の耕作放棄地の増減率は全国平均7%増に対し、県では20%もの増となり、国が掲げる「美しく活力ある農村」とはなっていません。
米60kgあたりの生産費でも全国平均15,390円に対し、兵庫県は21,340円と、5,950円ものコスト高となっています。国の農業競争力強化基盤整備事業の内では、TPP対策として取り組む地区については、一定規模以上の農業法人を対象に米の生産コスト60kgあたり9,600円を下回る事等を目標としていますが、中山間地の多い兵庫では大規模化に限界があり、大規模化によるコスト削減は、極めて困難です。
2018年には、米の生産調整が廃止されるため、TPP、FTAなどの国際間競争だけでなく国内での産地間競争も激化することが懸念されています。国が競争力強化として推進している農地の大規模化とコスト削減では、兵庫の農業は立ち行かなくなってしまいます。兵庫の農業の特徴でもある中山間農地を守る県独自の施策が今こそ求められているのではないでしょうか。
先日お伺いした新潟県では、「稼げる農業」だけでなく「暮らせる農業」の実現のため、国の中山間地域等直接支払制度の対象となっている集落を対象に1haあたり15万円を上限とした所得保障制度を始めました。
また、他産業並みに年収を436万円と設定し、助成によりその8割を確保することを目指しています。新潟県の米山隆一知事は「攻める農業、稼げる農業も大切だが、その前に暮らせる必要がある」として、今年度から所得保障制度である「公的サポート事業」を実施しました。新潟県は事業の成果を国に示し、全国的な制度化を訴えるとしています。
国が推進する「強い農業」「稼げる農業」に追随するだけでなく、地域創生の観点からも、地域・農村で「暮らせる農業」としての支援が必要です。国に対し、価格保障を導入し、所得補償を復活させることを求めると同時に、兵庫でも新潟県に学び独自の所得保障制度創設を求めます。
答弁 井戸知事 本県農業は、第2種兼業農家が7割を占め、1戸あたりの経営耕地面積が全国の半分以下であり、米の生産コストも高い状況です。このため、本県では農地集積による規模拡大や低コスト技術の導入等による生産コストの縮減を進めており、60kgあたり12,000円を下回る生産コストを実現している経営体も出てきています。今後も、こうした取組をさらに進めて、所得向上に取り組んでいきます。ただ、これは米作という分野での議論です。兵庫の場合、米作に依存しすぎているということが農業の課題であると考えています。
また、本県は中山間地域が多いことから、条件不利地域対策も必要です。中山間地域等直接支払制度や機械・施設整備事業、基盤整備事業の優遇措置などによりまして振興を図っています。この直接支払制度のペナルティについては、返還規定の緩和を国に要請しています。
さらに、県独自の対策として、まず中山間地を含めて不耕作農地を解消して、農地の有効活用を農協等の法人が行う地域農地管理事業を創設しました。農地利用図の作成や農業機械の導入支援、人材確保支援など、これらの支援を活用して農地の利用を下支えしていこうとするものです。また、中山間地での農地集積を促す条件不利農地集積奨励事業などと併せて、養父市での中山間農業改革特区における先導的な取組を進めています。これらにより、コスト面の改善を含めて平地との生産条件の格差を埋めていきたいと考えています。
これらに加えまして、都市近郊である本県農業の強みを活かし、米作だけではなく葉物野菜や温室栽培、大規模な施設園芸などの大消費地のニーズに応える農業への転換を進めていくとともに、地域の特色を活かした特産品のブランド化など付加価値の高い農業を推進していきます。
このような取組を着実に進めるため、小規模農家も参画する集落営農の組織化や法人化などの推進、個人から団体へと地域農業の担い手となる経営体の育成も引き続き支援していきます。
併せて、自然災害だけでなく価格低下による収入減少を補てんする新たな収入保険制度が国において制度化されました。今後は、この農業者の所得を保障する国の施策を効果的に組み合わせることにより、本県農業の力強さを確保していきたいと考えています。
2.介護基盤整備の充実と介護職員の処遇改善について
次に、介護基盤整備の拡充と介護職員の処遇改善についてです。
「医療保険改革法」にもとづいて、都道府県が策定する「国保運営方針」「医療費適正化計画」「医療計画」「地域医療構想」「介護保険支援事業計画」が互いに「整合性を確保」するよう明記され、2018年度からいっせいに始動します。
国保の財政管理と国保行政の指導、医療給付費の総額抑制、基準病床数の認定と管理、病床機能の再編・淘汰、介護基盤の整備、これら権限を都道府県に集中させ、国の指導のもとで給付費抑制を一体的に推進させる内容です。
昨年10月に策定した「地域医療構想」では、2025年の在宅医療等の需要は約3万人の増加を見込み、内12,700人は、軽度の患者を在宅医療や外来通院で対応することにより生じるとしています。その内、4,000人は外来医療で対応、後の8,700人の内、約1,800人はあらたな介護医療院へ、約1700人は訪問診療、約5200人は介護施設へと「川上」から「川下」へ「押し出す」内容です。
医療費削減・病床削減ありきの「構想」「計画」で、本当に在宅介護・医療の受け皿ができるのでしょうか。
在宅介護では24時間定期巡回・随時対応型訪問介護看護が広がらず、県内41市町の内15市1町、わずか36か所にとどまり、「在宅療養支援病院・診療所」は都市部では比較的多くあるものの、全くないのが2町、3施設以下というのは10市町もあります。
施設では「第6期介護保険事業支援計画」に基づく昨年度の特別養護老人ホームの整備計画数は1,123床でしたが、実際は開設数732床にとどまり、2016年度末で25,066床です。県の特養ホームの待機者は、入所要件が重度に限定されてもなお、約15,000人とされています。現計画自体、全く需要に見合ったものになっておらず、それさえ到達していません。
介護の担い手は、どうでしょうか。神戸新聞8/5付で“全国的な傾向だが、兵庫県内でも介護人材が足りず、空きベッドがあっても、待機者の受け入れができない施設が少なくない”との報道がありました。西宮の特別養護老人ホームに伺い現状をお聞きすると、「入所要件が要介護3以上になって待機者は、減ったものの、まだ200人の方が入所を待ちのぞんでいる。しかし介護を支える福祉介護職は、なかなか応募がなく、ようやく職に就いても定着が難しく、慢性的な不足状態。新しい処遇改善加算は、昇給の要件が厳しい上に、対象が介護職員だけで、チームで働く看護師、作業療法士等は対象外であること。そして何より、加算が継続する保証がなく、給与の引き上げに踏み切れず算定できない」とのことでした。施設に利用者を受け入れる空ベットがあっても、慢性的な人材不足で受けられない状況です。
そこでお伺いします。現在、改定作業中の「第7次保健医療計画」「第7次介護保険事業支援計画」案では、病床数の削減、介護サービス受給者の絞り込みなどを行わないこと、特養ホーム整備について、現計画数さえ到達していない現状からも抜本的増設を求めます。また、介護労働者全体の社会的地位向上のため、加算でなく介護報酬本体の引き上げを国に求めるとともに、県独自で福祉介護職の処遇改善を緊急に図ることを求めますがいかがですか。
答弁 福祉部長 特別養護老人ホームの整備状況は、第6期介護保険事業支援計画における平成29年度末までの整備計画数26,591床に対し、本年9月末時点で25,375床、率にして95.4%が開設しており、現在793床が整備中です。これらを含めると99.7%となっております。ご指摘の平成28年度の開設数732床には平成28年度の整備中698床が含まれておりません。今後、計画達成に向けて、整備を予定している市町に早期着工を促していきます。
昨年10月に策定した地域医療構想は、各医療機関の自主的な病床機能の転換の取り組みと在宅医療の充実等により「地域完結型医療」の提供体制を整備することを目的としており、病床削減ありきの計画ではありません。
現在、平成30年度から適用する第7期介護保険事業支援計画の策定にあたり、病床機能の見直しにより新たに生じる在宅医療等の需要増なども踏まえ、特別養護緒老人ホーム入所申込者数約15,000人のうち、入院中や介護老人保健施設・サービス付き高齢者向け住宅等他施設に入所中の方々を除いた、緊急度の高い在宅での待機者約3,000人を2020年代初頭で解消することをめざして特養整備計画の見直しを行っているところです。今後とも地域包括ケアシステムの深化・推進に向け、施設、在宅介護のバランスのとれた介護基盤の整備に努めていきます。
また、介護職員の処遇改善につきましては、平成29年度に臨時の増額改定が行われたところであり、県としては、国に対して介護職員の処遇改善に反映する加算制度のさらなる拡充などを求めるとともに、約1割の加算未取得事業所に対して、加算制度の積極的な活用を働きかけていきます。
3.高校の入試制度検証と県独自の給付制奨学金について
次に、公立高校の入試制度の検証と、県独自の給付制奨学金制度創設についてです。
県教育委員会が「学校選択の幅が広がり、希望する高校に行ける」として、通学区域を拡大し、複数志願選抜を全県に導入し、3年が経過しました。
県教委の2017年度のアンケート(全日制高校の全新入生と複数志願選抜実施校の新入生保護者及び県内の全市町組合立中学校校長を対象)でも、生徒が高校選択で重視したポイントは、「通学の利便性」28.1%、保護者の子どもへの高校選択のアドバイスでも通学の利便性50%と依然高く、通学費用は考慮したかの問いに「考慮しなかったとあまり考慮しなかった」33.7%に対し「考慮と少し考慮」は66.2%と倍近い結果でした。
また、「兵庫県教職員組合学区問題検討委員会」の中学校進路担当者等へのアンケートでは、生徒がどのような理由で高校を選んだのかの問いに「合格の可能性(学力)」との回答が選択肢の高位を占め、県教委の言う「行きたい学校」というより、「合格できそうか」「通学の利便性」が前提であることが示されています。
私の地元西宮の中学2年生のお母さんは、「入試制度の改変で高校の序列化、競争の激化で私学を併願せざるを得ない。塾にいくのは、当たり前で、月額3万円 夏季集中期間の塾代だけで20万円。パートで働いても追いつかない」と悲鳴をあげています。さらに深刻なのは、全県で2000人をこえる生徒が不合格となり、大部分が併願した私学、定時制、通信制等へ進学。縁故就職などの進路を選択せざるを得ない実態です。県教委がいう「増えた選択肢から行きたい高校」を選べるという姿からかけ離れたものとなっています。
日本共産党県議団は、入試選抜の結果について総合的な検証のためにその影響把握を求めてきました。県教委は、新通学区域と複数志願選抜による生徒の動向について非公開の「高等学校通学区域検証委員会」を設置し、今年度中にも検証を行うとのことです。総合的な検証のために、県民に公開し、公立高校新入生だけでなく全中学校卒業生の進路調査も含め、どのような影響があったのか。その検証を求めますがいかがですか。
先の県教委のアンケートで通学時間片道1時間半以上の生徒は、640人にのぼり、通学費負担も大変です。養父市では、バス3か月定期代8万円の内、35000円を補助し、さらに鉄道利用生徒の負担も軽減。南あわじ市も舞子までの高速バス定期代の3割補助等を実施。香美町では、遠距離等通学困難な生徒の下宿費用で月額4万円を上限とする補助を行っています。交通費補助等について市町が様々な支援をしていますが、県の施策では、「高等学校奨学資金貸与事業」として通学交通費分あるいは、通学用電動アシスト自転車購入分も上限10万円の貸与でしかありません。地域創生というのであれば、こうした「高校生通学費補助」等を行っている市町こそ応援すべきです。
「高等学校通学区域検証委員会」での検証は、県民に公開し、高校新入生だけでなく全中学卒業生の進路に関しての調査と、その影響についても検証を行うこと。「高校生通学費補助制度」含めた県独自の給付制奨学金制度創設を求めますがいかがですか。
答弁 教育長 高校の入試制度の改編に係る4点の質問をいただきました。
まず、「通学区域検証委員会の公開について」でありますが、委員会の開催にあたり、会議の公開の可否について各委員にご議論いただきましたが、その地域ごとの具体的な課題や具体的な学校名を挙げて議論する可能性が高く、委員の自由闊達な意見交換を保障する必要があるということから、議論の内容については非公開とすると決定されたものです。
それから、アンケート調査の対象の拡大についてのご提案がありましたが、通学区域再編以前には、新制度への不安感から私学への進学が増えるのではないかというご指摘もありましたが、結果として再編の前後で高校進学者、公私間比率には殆ど変化がなく、定時制への進学や就職などの人数においても変化はありませんでした。これらを踏まえると、他の進路を選択した者にまでアンケート調査の対象を広げずとも、公立高校全日制生徒を対象としたアンケートで十分に課題等の検証ができると考えているところです。
通学費補助については、この通学区域変更以前から6市で補助制度を有していることは承知しています。県としては、通学区域再編に伴って通学交通費貸与限度額を月額3万円から4万5千円にまで拡大したところですが、結果的にこの3年間で限度額まで貸与されている者は2名しかおりません。また、電動アシスト自転車は10万円で充分購入可能であるため、現行制度で問題はないものと考えています。
給付型奨学金の創設については、国の就学支援金や奨学給付金により、低所得者の場合、年間最大で25万円程度が支給されていることに加えて、県の無利子奨学金制度もあることから、高校就学への経済的な障壁は著しく低くなっており、県単独で給付型奨学金を創設する必要性は低いと考えています。
4.神戸製鋼石炭火力発電所増設計画について
次に、神戸製鋼の石炭火力発電所新増設計画についてです。
この間、神戸製鋼が提出した計画への環境影響評価準備書には、495通、1199件の意見が寄せられ、神戸市公聴会では、39人すべてが新増設に反対しました。
知事は、計画に対し「二酸化炭素総排出量の増加に見合う削減方策をおこない、施設の稼動に伴う二酸化炭素総排出量を増加させないこと」との意見を提出されましたが、準備書は、これにこたえていません。
準備書は、発電所新増設により年間692万tのCO2を新たに排出するとしています。神戸製鋼は、CO2排出の間接勘定方式を採用し、所内分34万t、送電分658万tとし、排出量の大部分を関西電力の削減努力にゆだねていますが、これは排出源としての神戸製鋼自らの責任を棚上げするものです。県の温暖化対策は、直接排出方式にたって、神戸製鋼自身に692万tの削減策を提示させるべきではないでしょうか。
関西電力の対策として、再生可能エネルギー増加分で288万t削減としていますが、消費者が、再生可能エネルギーをふやしてきたこの間の努力が、新たなCO2排出で、打ち消されるもので、削減策とするのは、きわめて不当です。LNGなどの既設火力発電稼働抑制で490万t削減するとしていますが、LNGなどからCO2排出係数がより悪い石炭火力発電所におきかえるというもので、とても削減策とはいえません。神戸製鋼は、削減策が不十分だとの指摘をうけ、地域資源活用とし、水素ステーションをつくり、水素自動車を走らせる新たな提案をしていますが、それならば、新たに環境影響評価をやり直す必要があるのではないでしょうか。まともなCO2削減計画が提出されていないこの増設計画は、認められません。
県の地球温暖化対策推進計画では、2030年度に、温室効果ガス排出を2013年度比26.5%削減を目標に、CO2排出を増やさないことが大前提です。環境大臣は、「現在の日本各地の石炭火力発電所の建設計画が実現すると、2030年度のCO2排出削減目標は6600万t超過する」とし、愛知県の武豊火力発電所リプレース計画の見直しを求めています。神戸製鋼の建設計画も超過分6600万tに含まれます。このまま計画を認めれば、国、県の温暖化対策を後退させ、ひいては日本と世界に深刻な存亡の危機をもたらすと、国際社会からの批判は免れません。
大気汚染についても住民の不安がひろがっています。準備書では、二酸化窒素などのばい煙は、現状からすべて時間排出量が減少、汚染物質は減るかのように説明しています。しかし住民の要求で提出されたばい煙の年間排出量は、二酸化窒素は現状936〜1328tの排出に対し、最大1457tとされています。建設予定地周辺は、昭和53年環境庁告示第38号の二酸化窒素に係る環境基準で「現状程度の水準を維持し、これを大きく上回ることとならないように努めるものとする」とされる国道43号線付近の地域を抱え、ディーゼル自動車等運行規制の対象地域として、汚染物質の削減努力を行ってきたところです。この間の努力を無にし、今でも、ぜんそくで苦しんでいる住民の多いこの地域にさらなる汚染物質を加算させる汚染源をつくることは許されません。
神戸製鋼の石炭火力発電所新増設計画は、県の地球温暖化防止対策を後退させ、環境保全配慮もなされていない極めて不十分な計画です。知事、本計画に反対の意思を表明し、中止を求めるべきと考えますがいかがですか。答弁を求めます。
答弁 環境部長 本計画は、二酸化炭素や大気汚染物質の排出量も大きいなど、環境保全上大きな課題がある計画であると認識しています。
二酸化炭素については、省エネ法やエネルギー供給構造高度化法による国の方針等を踏まえた上でさらに十分な対策を求め、窒素酸化物等の大気汚染物質についても、この施設が都市部に設置されることを踏まえて、最高レベルの低減措置を求めるなど厳しい対応が必要です。
本計画は、環境影響評価法に基づく環境アセスメントの手続中ですが、平成27年11月には環境影響評価方法書に対する知事意見を経済産業大臣に提出しています。
発電所の温室効果ガス排出量は、国ルールでは、発電所の自家消費分のみが算定されますが、方法書意見では、このルールを超え、売電分を含めた二酸化炭素総排出量を増加させないこと、そして削減方策を売電先の関西電力における対策も含めて定量的に明らかにすることなど、本計画の特性を踏まえた、大気汚染防止対策等を含めた、環境対策を行うよう求めています。
現在、環境影響評価審査会で審査中の環境影響評価準備書では、年間約692万トンの二酸化炭素を排出し、うち658万トンが関西電力卸供給分となっています。そして、関西電力は、相生火力発電所のLNG化で80万トン、再生可能エネルギーの取組で288万トン、既設火力発電所の稼動抑制で490万トンを削減し、合計で排出量を上回る858万トンを削減することとしています。
県としては、環境影響評価審査会において、こういった対策が適切か審査いただき、審査会答申を踏まえ、公聴会における住民意見も勘案の上、適切な知事意見を形成し、経済産業大臣に提出していくこととしています。
5.武庫川の総合治水対策について
次に、武庫川の総合治水対策についてです。
近年、記録的集中豪雨が頻発し、あらためて洪水対策が急がれます。
武庫川水系河川整備計画には、戦後最大の洪水に相当する毎秒3510立法メートルを目標流量と定め、河川・流域・減災対策の3つの対策を柱とする総合治水対策と、自然環境保全も位置付けられています。
私たちは、目標流量を早期に達成するためにも千苅ダムの治水活用をはじめ、流域対策の目標流量が毎秒30立法メートルとあまりにも少なすぎる流域対策の強化、越水対策を含む堤防強化対策などを強く求めてきました。
千苅ダムの治水活用は、神戸市との協議が進み、今年度から事業が本格的に位置づけられたことは大きな前進です。洪水期の7〜9月の3か月間、事前放流しダム貯水位を1メートル低下させることにより100万立法メートルの治水容量を確保できるもので、神戸市民の飲み水として、事前放流した時の水質や水量を確保するかなど課題に丁寧に対応しながらも、一日も早い稼働が求められます。
一方、河川対策として下流部の築堤区間で河床掘削や低水路拡幅、浸透、侵食対策の堤防強化工事が順次行われているところですが、計画に対する2016年度末の進捗率は、堤防強化の浸透対策が95%で今年度やっと完了予定であるものの、侵食対策は32%、低水路拡幅は42%にとどまり、さらに潮止堰撤去については、いまだ工事が実施されていません。
潮止堰は、武庫川河口から2.5キロメートルの地点に転倒堰として建設され、日本共産党県議団は、地下水の利用の激減、高潮の遡上には事実上機能していない、土砂の堆積が流れを阻害している、汽水域が遮断されアユ等の回遊性水生生物の往来に障害となっていることなどを指摘し、その撤去を求めてきたところです。
2014年8月の台風11号の豪雨で、武庫川流域の船坂地点で2日間で約460ミリもの降雨量を記録し、西宮北部地域で浸水被害もおこり、最近の線状降水帯の発生状況を見ても、対策を急がねばなりません。武庫川水系河川整備計画の計画流量を一日も早く確保すること、そのためにも潮止堰の撤去を求めます。
また、リバーサイド住宅の跡地は、現在、武庫川渓谷の希少種の移植実験が行われていますが、洪水対策施設として活用の可能性があると考えますが県の検討を求めます。
新規ダムに頼らない武庫川の総合治水対策を抜本的に拡充し、流域にすむ県民の安全安心を確保するため、早急な潮止堰の撤去と千苅ダムの早期治水活用、リバーサイド住宅跡地の洪水対策施設としての活用検討を本格的に進めることを求めます。
答弁 県土整備部長 武庫川の河川対策は、喫緊の課題である下流部築堤区間の安全性を向上させるため、河川整備計画に基づき、河口部からJR神戸線橋梁付近まで約5q区間の低水路拡幅や河床掘削による河川断面の拡大を進めており、それに伴い潮止堰の撤去や橋梁の改築を行うこととしています。また、ドレーン工法による浸透対策や堤防法面にコンクリートブロックを張る侵食対策等の堤防強化も進めています。
潮止堰につきましては、下流から順次進めている低水路拡幅工事にあわせて撤去することとしています。先行して潮止堰のみを撤去しても、治水上の効果はなく、工事の手戻りも生じることから好ましくないと考えています。なお、潮止堰を撤去し、河床掘削で河床が下がれば、塩水が遡上するため、予め潮止対策矢板を施工し、周辺地域の地下水利用に影響が及ばないようにしています。
千苅ダムの治水活用については、今年度、土質調査や放流ゲートの概略設計を実施しています。事前放流に起因して、水道用水の不足や、水質悪化が生じた場合の具体的な補償方法等について、早期に神戸市の合意を得て、来年度の工事着手を目指していきます。
また、リバーサイド住宅跡地は、目標流量を安全に流すために必要な河道断面を確保する目的で買収した用地です。洪水調節施設等の他の治水対策に活用する考えはありません。
今後も、武庫川の総合治水対策を着実に進め、県民の安全・安心の確保に努めていきます。
6.核兵器禁止条約と非核平和兵庫県宣言について
最後は、平和の問題です。
「ノーモア ヒバクシャ」この言葉は、「世界中の誰も、永久に、核兵器による惨禍を体験することのないように」との被爆者の心からの願いを表したものです。その願いがこの夏、世界を動かし、7月7日、人類史上初めて核兵器を違法化する「核兵器禁止条約」を生み出しました。「核兵器禁止条約」は、核兵器を使うことはもちろん、持つことも、配備することも禁止し、国連加盟国の6割を超える122か国の賛成で採択されました。
ある被爆者の方は、「被爆者にとってあの日は決して消え去らない。この世の終わりそのものでした。被爆から72年にしてやっとここまで来ました。条約は、核兵器の終わりの始まりです」と語られました。
一方、唯一の戦争被爆国である日本政府が「国連会議」に参加せず、安倍首相の「署名、批准を行う考えはない」という姿勢に、被爆者からは「あなたは、どこの国の総理か。私たちをあなたは見捨てるのか」との失望と怒りの声が寄せられています。
政府は「北朝鮮が核開発をしている時に禁止条約に賛成できない」という議論を押し立てていますが、国際社会が核兵器を違法化し、「悪の烙印」を押すことは、核開発を進める北朝鮮を孤立させ、核兵器を放棄させる大きな力になることは間違いありません。
日本国内の96.7%の自治体が加盟する平和首長会議は、8月9日、長崎市内で総会を開き、安倍首相に対し、「核兵器廃絶にむけた取り組みの推進について」の要請を採択し、日本政府が本気になって行動をおこすことを呼びかけました。
兵庫県下で人口の90%にもおよぶ37市町が非核平和都市宣言を行い、「非核神戸方式」が存在する県が「非核平和兵庫県宣言」を行うことは、まだ「宣言」に至っていない東京都はじめ、残る5都県の「宣言」を促すことになります。
9月20日から「核兵器禁止条約」への参加署名が国連本部で始まり、「本条約」は、初日だけで成立要件の50か国が署名し、批准を経て90日後に効力を発揮することとなりました。署名を各国に迫る世界同時行動「平和の波」も世界各地で引き続き行われています。
知事、核兵器廃絶を願う被爆者の思いに賛同し、「ヒバクシャ国際署名」に署名された県知事として、いまこそ「非核平和兵庫県宣言」を行い、国に、「核兵器禁止条約」への署名を働きかけることを強く求めますがいかがですか。ご答弁下さい。
答弁 井戸知事 我が国は、唯一の被爆国です。私も、昨年9月に核兵器廃絶を願う被爆者の思いに賛同し、核兵器廃絶国際署名に知事名で署名しました。
但し、外交・条約締結に関することは、国の専管事項であります。核兵器禁止条約の対応については、核兵器国と非核兵器国の協力を得て、現実的かつ実践的な取組を積み上げ、核兵器のない世界を実現させていくという政府の基本的な考え方の下、国において、適切に判断されるべきものと考えます。政府には被爆者の思いを汲み取り、国際社会の中で核兵器国と非核兵器国との橋渡しの役割をしっかり担っていただきたいと考えます。
非核平和宣言については、県民全体の意思を統一して表明することが基本であると認識します。本県においても、県民の代表である県議会のご判断やご意見を十分にいただきながら、対応すべきものと考えています。
なお、本県としては、国と国との関係とは一線を画し、地域と地域との草の根の交流による相互理解を深め、国境の壁を低くして、多文化共生づくりを進めていくことが国際平和に貢献することになる、このように考えて国際的な交流も進めていきます。
以上
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