【安保関連法について】
安倍政権のもと、貧困と格差は広がり、安保関連法の具体化で、命と安全がおびやかされようとしています。県民の命と安全、福祉、医療を守る防波堤として、県政の役割はますます求められています。
以下7項目について質問します。
初めに、安保関連法、いわゆる戦争法についてです。
安倍政権が強行した戦争法の成立後、戦争する国づくりが着々と進められています。海賊対処行動を目的に開設されたジブチ基地は、海賊事件が昨年は1件もなかったのに、基地を置き続け、東京の横田基地には、日米の統合司令部とも言える同盟調整メカニズムの実行組織も設置されました。
その中で、差し迫った重大な危険は、南スーダンPKOアンミスへの自衛隊派遣です。
国連PKOは、この20年間で任務が大きく変化しています。以前は、停戦合意されている国を中立の立場で監視することでしたが、1994年のルワンダ内戦問題から武力を行使しての住民保護が主要任務になり、今回の改定PKO法では、自衛隊の任務が、安全確保業務、駆け付け警護、任務遂行のための武器使用等に拡大されています。
南スーダンは、2013年12月以降、大統領派と副大統領派の武力衝突により住民と兵士が入り乱れた激しい内戦状態にあります。そのような南スーダンで自衛隊が拡大された任務に就けば、戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すことが現実となってしまいます。これは明確な憲法9条違反です。重大なのは、南スーダンでは11歳から17歳の子供が多数、少年兵として戦わされていることです。日本の自衛隊が少年兵を殺すことになるかもしれません。
国連の機関や世界のNGOと協力し、難民、食料、医療、教育支援や児童保護など非軍事の人道支援、民生支援に徹することこそ、憲法9条を持つ日本の貢献ではないでしょうか。
国民世論は、戦争法は廃止すべきが約4割、廃止に向けた新しい運動も全国津々浦々で行われています。廃止を求める署名に、これから派遣されるという自衛隊員の妻が行ってほしくないと署名しています。2月19日には衆議院に野党5党が安保関連法廃止法案を提出しました。
知事は、国の専管事項と言い、これまで明確な答弁を避けておられますが、南スーダンには伊丹の自衛隊駐屯地から派遣されています。その自衛隊員が戦後初めて外国人を殺す。しかも、それは11歳の少年かもしれない。戦死者を出す現実的危険が生まれている安保関連法戦争法の廃止を国に求めるべきです。お答えください。
○知事(井戸敏三): まず、安保関連法についてのお尋ねがありました。
昨年9月、国会で成立した安全保障関連法ですが、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している状況におきまして、国民の命と平和な暮らしを守るために、あらゆる事態を想定し、切れ目のない体制の整備を行うものとされているものと承知しています。この3月末までに施行されることになっています。
ご指摘の国際連合平和維持活動、いわゆるPKOのあり方を含め、安全保障政策については、防衛、外交に関する事項でありますので、国際社会における国家の存立に関わる事務として、国において対応がなされるべきものであると基本的な考え方であります。
本法につきましては、しかし、今なお国民の間でさまざまな意見があることでありますから、政府においては国民理解を深めるための努力を継続していただきたい、このように願っています。
また、2月19日に衆議院に、民主、共産、維新、社民、生活の党が共同提案された安全保障関連法を廃止する法案や2月18日に衆議院に共同提案された、民主、維新の領域警備法の制定、周辺事態法の改正等を内容とする法案が今国会に提出されております。
今後、国会において、これらについて議論がなされることになりますので、国民の皆様それぞれがこの論議に注目していただくことを期待しておきたいと思っております。
【中小企業支援について】
次に、中小企業支援についてです。
安倍政権は、大企業のもうけが、いずれは家計に回るというトリクルダウンの立場に立ち、アベノミクスの名で大企業応援の政治を推進し、大企業は連続して過去最高の利益を上げ、内部留保も3年間で38兆円積み増しています。一方、国民の暮らしは、実質賃金でマイナス5%、非正規雇用は増えても、正社員は増えていません。トリクルダウンの立場に立ったアベノミクス破綻の事実を認め、庶民の家計を直接応援し、中小企業・小規模企業の振興による内需拡大、地域経済再生に転換することが、今こそ求められています。
昨年、中小企業振興条例が制定され、初めての予算案が提案されていますが、期待できるものになっているでしょうか。
県は、設備投資などに備えるとして、中小企業向け新規融資枠を500億円増の3,500億円としていますが、融資枠を増やしても、融資条件が厳しく借りられないというのが実態です。今回の条例で光が当たることとなった小規模事業者支援では、がんばる小規模事業者等支援事業などの施策が予算化されていますが、従来型で十分なものとは言えません。現計画であるひょうご経済・雇用活性化プランが、成長産業支援が中心で、地域で事業を継続して行っている小規模事業者を評価し、その持続的発展を支援するとした小規模基本法の目的、県の振興条例に沿った全面的なものになっていないからです。
県は、地場産業や中小企業に対するヒアリング調査、ひょうご産業活性化センターの中小企業経営動向調査などを通じて実態把握し、各種施策に反映していると言いますが、例えば、小規模事業者への県の官公需発注実績一つとっても、発注額さえつかんでいない状況です。これでは支援の具体的計画を立てる際に、実態にかみ合うものになりません。
東京都荒川区では、区内事業者の悉皆調査が実現し、荒川区製造業実態調査経営支援事業実施報告書としてまとめられましたが、事業を廃止・清算予定が33.9%にも上り、後継者に承継の30.2%を上回ることが明らかになり、小規模事業者経営力向上支援事業の創設につながったと言われています。また、民商・全商連は、政府の小規模企業白書の調査を上回る7万4,906者のサンプルに基づき、経営・暮らし・健康の向上調査を行っています。小規模事業者は、ワーキングプア並みの収入を年金や副業で補填しながらも、地域に貢献したいとの使命感を持ち、事業継続への強い意欲を持ち続けています。
中小企業振興条例に基づき、計画が条例どおり、小規模事業者を重視したものとなるよう、県独自に小規模事業者の悉皆調査を市町の協力も得ながら行うことを求めますが、いかがでしょうか。
○知事(井戸敏三): 本県では、国や日銀、ひょうご産業活性化センター、中小企業団体中央会等の各種調査や商工会、商工会議所等の経済団体、経済・雇用活性化プラン推進会議等の有識者あるいはいろんな関係者から意見を伺い、中小企業、小規模事業者のニーズを把握してきました。また、広く中小企業者の生の声に応じた支援につないでいくために、今年度、ひょうご産業活性化センターのよろず支援拠点を拡充いたしましたし、専門人材相談センターを新設するなど、ワンストップの相談機能を強化しました。これらを通じて、中小企業者のニーズに応えた支援策を行ってまいります。
新年度は、県と神戸市の相談機能の統合を図り、より中小企業に寄り添った支援を行ってまいります。新事業展開への支援、充実を求める意見を踏まえまして、継続的なフォローアップを行うがんばる小規模事業者等支援事業を創設しましたし、技術力、将来性はあるが信用力不足等の理由で融資が受けられない課題に対しましては、中小企業技術・経営力評価制度の運用を拡充することにいたしました。実績不足により潜在能力に見合った受注機会が得られない企業に対しましては、創業者等取引拡大支援事業を新設しました。
官公需対策も前年度を上回る82.7%の目標を設定いたしておりますし、新設しました創業10年未満事業者への発注目標も全国を上回る水準、本県35億円に設定しています。
なお、平成26年度の中小企業への発注実績額は1,466億円であります。
中小企業制度融資の前向き資金について、利率引き下げを実施するなどの支援も行うことにしています。
悉皆調査をやれということでありますが、その悉皆調査の結果は、本県内の状況だけで、全国的な比較・分析はできない。時間とコストが相当必要になるなどの課題があります。経済、社会情勢が著しく変動する今日においては、必要に応じ弾力的に実施できるサンプル調査をはじめとしたさまざまな手法でニーズを把握することで、より有効な中小企業支援につないでいくことができるのではないかと考えておりますので、ご理解ください。
【県営住宅の整備について】
次に、県営住宅の整備についてです。
現在、兵庫県住宅審議会では2016年度から2025年度までの兵庫県住生活基本計画等を審議中です。その中間報告案では、有効求人倍率は上昇しているものの、非正規雇用率は高まっている。世帯年収区分においても200万円未満の世帯の割合が上昇するなど、所得水準が低下しているとし、高齢者世帯についても、年収300万円未満の世帯が全体の半数を超えているとされています。
公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするとあります。貧困と格差が拡大し、住民福祉を守り増進させる県営住宅の役割が求められています。また、2014年度の県営住宅応募倍率も高い水準で、阪神地域では4.4倍ないし21倍にもなっています。今議会では一定の条件のもと、県外からの県営住宅応募も可能となる議案が提案されるなど、その期待と役割はますます高まっています。
しかし、県は、2006年度から5年間で約1,900戸、2011年度から4年間で約1,200戸の県営住宅管理戸数を削減し、第3次行革では、現在の約5万2,700戸から4万5,000戸へ削減を検討しています。
さらに、県営住宅入居者からは、外壁が落ちるなど、命の危険に及ばない限り必要な修繕工事をしてくれない、3年も4年も空き室状態が続いている、早く応募を掛けてほしいなど、切実な声も寄せられています。
県は、入居者退去後、補修費が50万円を上回る空き室について、速やかな補修工事を行っておらず、長期にわたり空き家期間が続く状態も発生しています。これでは、県民の財産を有効に活用しているとは言えず、県民からの県営住宅への期待にも十分応えているとは言えません。必要な予算を付け、長期間の空き家期間を是正し、速やかな維持補修工事を求めます。
また、低所得者が増え、県営住宅への期待が高まる中、管理戸数の削減ではなく、県民の期待に応える県営住宅の整備を求めますが、ご答弁ください。
○まちづくり部長(笠尾卓朗): 県営住宅の整備についてお答えいたします。
市町営住宅とともに、低額所得者などに対するセーフティネットとしての一翼を担う県営住宅は、市町域を超えた広域需要への対応や大規模災害発生後における早期大量の住宅供給といった役割を有しております。
近年の低額所得者や非正規社員の増加は認識しておりますが、阪神・淡路大震災から一定期間が経過した中、世帯数は平成32年度をピークに減少に転ずると見込まれること、空き家が増加していること、県営住宅の総住宅に占める割合が、全国平均を依然として上回っていること、一方で、地域創生やグループホームの活用など、近年の政策需要への対応の必要があることを総合的に検討した結果、平成37年度の目標管理戸数を4万8,000戸程度とさせていただいたところでございます。
なお、目標管理戸数の達成に当たっては、神戸、阪神間などにおいても、郊外部などには利便性が悪く、応募倍率が低い団地も存在するため、これら需要が低い団地などを廃止候補団地の対象としているところでございます。
また、県営住宅の適正な維持・管理については、所要の予算を確保した上で、外壁補修など修繕工事は、自治会や入居者からの要請に対し、必要性、緊急性の有無を速やかに判断し、実施しております。
空き家期間の短縮につきましては、毎月募集や常時募集を行うとともに、入居決定後は補修金額にかかわらず、速やかに空き家補修を実施しております。
今後も引き続き、県民ニーズに対応した、より質の高い県営住宅の整備・管理を推進するとともに、民間賃貸住宅の適切な利活用なども図り、重層的かつ柔軟なセーフティネットの構築に努めてまいりますので、ご理解賜りますようお願いいたします。
【女性と子どもの貧困対策について】
次に、女性と子供の貧困対策についてです。
女性と子供を巡る貧困は、とりわけ深刻です。独り親家庭の子供の貧困率は54.6%と経済協力開発機構加盟34ヵ国で最悪の事態になっています。
県内の就学援助認定率も、小学校で15.2%、中学校で18.9%、西宮市内では50%を超える学校もあり、学校関係者の話では、新しいズボンがなく、穴が開いたズボンで登校する児童、雨降りでも穴の開いた傘を差して登校する生徒、給食のない夏休みなどに十分食事がとれず、体調を崩す子供たち、その深刻な実態をお聞きしました。経済的に困難な家庭の子供たちに食事を提供しようと、西宮でも子ども食堂が昨年12月からオープンし、見学してまいりました。
親の経済状態の悪化が子供の健康に影響を与え、子供の健全な成長が保障されない状況が広がり、国も2013年に子どもの貧困対策推進法と、それに基づく大綱で、都道府県にも貧困対策の計画策定を求め、県も子ども・子育て未来プランを計画として位置付けています。しかし、兵庫県を含め、多くの自治体で計画策定の前提である貧困の実態調査が進んでいません。そんな中で、沖縄県は、沖縄子供調査の中間報告を発表し、調査結果に基づき、今年度中に子供の貧困対策推進計画を策定するとのことです。
子供の成長、発達を応援するのが県政の役割です。しかし、それに逆行しているのが井戸県政です。2014年7月からひとり親家庭医療費助成事業の対象者が第3次行革で所得制限が厳しくなり、低所得者層に重点化された結果、対象者が大幅に削減されました。アルバイトで懸命に働き、年収約200万円で助成が打ち切られ、一気に医療費窓口負担が3割になり、病院に行きたくともお金がないので行けず、お子さんの通院もためらう状況です。
第3次行革プランで削減したひとり親家庭の医療費助成事業の所得制限を撤廃すること、併せて、沖縄県のような子供の貧困に着目した調査を行い、ひょうご子ども・子育て未来プランを子供の貧困対策を推進する計画に改定することを求めますが、お答えください。
○健康福祉部長(太田稔明): 私からは、女性と子供の貧困対策についてお答えを申し上げます。
母子家庭等医療費助成事業につきましては、経済的支援を必要とする世帯に対して、医療保険制度の自己負担額を軽減することがその趣旨でございますことから、所得制限は必要と考えております。
第3次行革プランにおいて、所得基準の見直しを行いましたのは、子供については、乳幼児・こども医療費助成事業の充実を踏まえますとともに、親御さんにつきましては、母子世帯等と同程度の所得水準でございますほかの子育て世帯との均衡を図りますため、対象を経済的不安の大きい低所得者に重点化したものでございます。
県におきましては、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づきまして、ひょうご子ども・子育て未来プランに子供の貧困対策を位置付け、福祉、教育、労働等の各分野横断的に施策を推進いたしております。具体的に申しますと、NPO法人や社会福祉法人、地域団体等と協働いたしまして、生活困窮世帯・ひとり親世帯への相談支援、就労支援や貧困世帯の子供への学習支援等を行っております。
新年度には、これまでの支援に加えまして、いわゆる子ども食堂を立ち上げるNPO法人等の支援や学習支援と合せた食事提供等も実施をすることといたしております。
ひょうご子ども・子育て未来プランは、平成23年度に県が実施をいたしましたひとり親家庭等実態調査、あるいは毎年調査をいたします生活保護世帯の高校進学率・高校中退率、就学援助の状況等、子供さんの貧困実態を踏まえて策定をいたしております。引き続き、このプランに基づき、子供の貧困対策に係るさまざまな施策を推進してまいります。
今後とも、市町とともに関係団体等との支援ネットワークを構築し、支援が必要な生活困窮世帯の子供さんを早期に把握して、共に支え合う地域づくりを推進してまいりたい、さように考えております。
【公立高校の入試制度について】
次に、公立高校の入試制度についてです。
県教育委員会は、学校選択の幅が広がる、希望する学校に行けるなどとし、今年度、通学区域の拡大を行い、複数志願選抜を全県に導入しました。
県教委が全日制高校の全新入生と複数志願選抜実施校の新入生保護者及び県内の全市町組合立中学校校長を対象に行ったアンケート調査の結果では、高校の選択肢が増えたことに対し、よかったと感じた生徒は、全県平均で約50%、旧西宮学区は43.1%という低さです。
高校の魅力・特色を選択の理由にした生徒の割合は約77%、しかし、重視した魅力・特色の内容で、最も多かったのは、通学の利便性で約3割、その他通学時間、電車やバスの利便性、通学費用を考慮したことがアンケート結果に表れています。通学の利便性は、県教委のいう高校の魅力・特色なのでしょうか。
県教委が2011年度まで出していた複数志願選抜と特色選抜の検証結果では、複数志願選抜の第1志望校を決めた理由で多かったのは、校風・学校の雰囲気、大学等への進学や就職の状況でしたが、今年度は通学の利便性が上回りました。また、私学への併願や私学専願が増えたという声も聞かれました。尼崎市に聞くと、過去3年間と比較し、公立高校への進学率は3.7%減少、一方で、私立高校への進学率は3.9%増加。このうち、私学専願は2.4%増加。確実な進路決定のため私学専願にせざるを得なかったというのが実情のようです。
西宮市のある中学校教諭の話では、進路対象の高校が8校から34校に増えたことで、どの高校を受けたらいいか、生徒、保護者、教師とも非常に悩んだと語っています。その他校がなくなり、単位制や総合学科まで複数志願選抜になったことでより不安になって、ほぼ全ての生徒が私立高校を受験し、公立高校受験前に進路確保をせざるを得なくなったとのことです。県教委のアンケートでも、どの高校を選ぶか悩む生徒が増えたは、全県平均約66%より高い80%となっています。
結局、大多数の生徒は、通学区域が広がる中、通学が可能かということ、塾などが出す各学校の偏差値で合格しそうな学校を選んだというのが実態ではありませんか。県教委のいう、増えた選択肢から行きたい高校を選べるという姿からかけ離れたものになったのではないでしょうか。
入試選抜の結果について総合的な検証をするために、公立高校新入生だけでなく、全中学校卒業生の進路に関しての調査を行い、どのような影響があったのかを把握する必要があると考えますが、いかがですか。
また、今回の学区再編の検討委員会委員長を務めた梶田叡一氏は、昨年3月27日付けの神戸新聞で、どの範囲まで負担なく通学できるかは保護者や生徒が考えることで、行政が過保護に決めることではない。将来的には全県1学区にすべきではないかと述べています。不安と混乱、遠距離通学を強いる通学圏のこれ以上の拡大はやめ、特色づくり競争でなく、基本的な学力を保障すること、地域に根差した公立高校の充実にこそ力を尽くすべきだと考えます。お答えください。
○教育長(高井芳朗): 公立高校の入試制度についてお答えをいたします。
今年度の通学区域における入試を検証するために、ご指摘のようなアンケート調査を実施しました。ちょっとお断りしておかなくてはならないのは、従前の調査は、八つの選択肢の中から選ぶという方法でしたが、今回は、できるだけ子供たちの学校選択の際の考え方を知りたいということから、16の選択肢のアンケート調査という形にしました。
このため、従前は、校風ですとか学校の雰囲気ですとかというふうな形で選ばれていたものが、制服がどうだとか、国際交流どんなことやっているかとか、どんな先輩が活躍しているか、いろんな選択肢の中で答えたものですから、それが結果として分散をされてしまって、その結果、「通学の利便性」がトップに躍り出たというふうな図式かなというふうに認識をしています。
その中で、そうはいっても、一番に躍り出たわけなので、それを考えてみますと、従来から自力で通える範囲の学校に行きたいという子供たちの思いは同じだと思いますが、これまで学区が狭かったものですから、それほど考えなくても、どこでも通学は可能ということだったのが、随分と広がったものですから、どこまでの範囲に通学できるんだろうかということで、そこに意識が高まったのではないかなというふうに認識をしています。
ほかにもカリキュラム、部活動など、さまざまな要素を生徒が考慮したということは、魅力・特色づくりが意義あるものと評価されたというふうに考えています。
本県では、かねてから魅力・特色づくりを推進していますが、アンケート調査でも、生徒が魅力・特色について関心を持つようになったと感じた中学校長が多かったといったこと、それから、どの高校を選ぶか悩む生徒が増えたというのも多かったんですが、これは積極的に高校を選択しようとする前向きな行動と捉えておりまして、今後ともオープンハイスクールの早期実施とか複数回実施などを通して、積極的な情報提供に努めます。
それから、私学への志願が増えたというご指摘でしたが、今年度は初年度でありましたので、どういう形に生徒が流動するかということが分からなかった、生徒自身も不安があったと思いますし、進路指導担当の先生方もそういった不安があったのではないかということで、併願が増加したのではないかというふうに考えているところです。
今後とも流動状況などの結果を適切な時期に提供してまいります。
それから、就職者や私学へ進学した生徒等への調査は行っておりませんが、これは中学校長への調査等により、その傾向は把握できるものと考えています。
今後とも、関係機関との情報共有などを通じて、適切かつ円滑に入学者選抜を実施しますとともに、引き続き検証を行ってまいります。通学区域のあり方は、将来の検討課題というふうに考えています。
【武庫川の総合治水対策、河川整備について】
次に、武庫川の総合治水対策、河川整備についてです。
武庫川水系河川整備計画による事業は、2011年度から20年間を計画期間と定め、戦後最大の洪水に相当する毎秒3,510立方メートルのうち、武庫川の河川内に毎秒3,200立方メートルの流量を流すこととしています。現在、下流部の築堤区間で河床の掘削や拡幅、浸透・侵食対策などの堤防強化対策工事が順次実施され、私も現地を見て回りました。
計画に対する進捗率は、河道掘削については、事業費ベースで約15%、浸透対策対象箇所及び侵食対策対象箇所は、延長ベースで約84%、約10%という現状で、今後5ヵ年で実施される計画となっていますが、異常気象による集中豪雨の降雨量が絶えず観測史上を更新し続けるという昨今、住民の中にも不安が広がっています。
現に武庫川流域の船坂地点では、一昨年8月の台風11号が接近した際、2日間で約460ミリという過去最大の降雨量を記録、西宮北部地域で浸水被害が発生し、南部地域でも堤防が土手構造の小曾根の観測点において、約2メートル60センチ下がった位置まで達し、強い雨が降り続いていたら、甚大な被害に見舞われるところでした。
この間、鬼怒川における堤防の決壊・氾濫も起こり、国の検証が行われましたが、堤防決壊の原因として、記録的な大雨により堤防高を上回る越水が発生し、市街地側の堤防下部の洗掘が進行して決壊に至ったとされています。
武庫川も国道2号南の小曾根線周辺で大きく東へ蛇行し、豪雨で水位が上昇すれば濁流が集中し、尼崎側の洗掘の不安も指摘されています。県は、計画高水位以下の洪水にドレーン工法等による堤防強化対策を進めていますが、計画高水位を上回り、堤防を越える越流対策については、確実な安全性が担保できる工法が確立されていないということで、2030年度までの計画には含まれていません。
しかし、県の発行したパンフレット「武庫川の川づくり」には、橋脚の影響により、流れが乱れやすい橋梁上下流部や、水位が上昇しやすい湾曲部等の治水上特に注意が必要な箇所では、計画高水位以上の洪水に対しても堤防を決壊しにくくするため、浸透対策、侵食対策及び巻堤等による越水対策について検討し、可能なものから実施するとしています。実際に、佐用川、円山川の一部でも輪中堤や巻堤などの対策が実施され、新年度も中上流域で過去に越水した実績のある箇所等で対策が取り組まれようとしています。
武庫川の想定氾濫区域内の人口や資産は、全国第10位と、国管理河川の上位クラスと肩を並べています。武庫川における堤防強化対策を一刻も早く進め、計画高水位を上回る越流対策についても次期計画以降の課題というのではなく、全国、県内の最新の知見に基づく対策も検討し、国に地方交付金の創設を求め、越水しても崩れない堤防づくりを求めますが、いかがですか。
○県土整備部長(田中 稔): 武庫川の総合治水対策、河川整備についてお答えいたします。
武庫川の仁川合流点以南の築堤区間は、河川沿い地域が高度に市街化し、ひとたび堤防が決壊し、氾濫いたしますと、甚大な被害が想定されますことから、安全性向上が喫緊の課題であります。この区間では、河川整備計画に基づきまして、戦後、最大洪水と同規模の流量を安全に流すことを目標に、低水路拡幅や河床掘削による河川断面の拡大に加え、堤防強化対策を進めています。
堤防強化対策につきましては、計画高水位以下の洪水を対象に、堤防の土質や宅地との高低差等により、洪水が堤防に浸透するおそれが高い区間で、ドレーン工法などの浸透対策を実施しています。また、洪水により堤防が削られることを防ぐため、堤防の川側のり面にブロックを張る侵食対策を行っています。平成26年度までに浸透対策が必要な両岸計約7.3キロのうち約6.1キロを、また、侵食対策が必要な両岸計約6.2キロのうち約0.6キロを完成させておりまして、引き続き平成32年度の完成を目指して進めてまいります。
流れが乱れやすい橋梁上下流部など、治水上、特に注意が必要な箇所では、計画高水位以上の洪水に対しましても、堤防を決壊しにくくするため、技術的な検討の進捗状況などを見ながら、対策を検討していくこととしています。現段階では、これに対する新たな交付金を求めることは困難と考えております。
県といたしましては、まずは計画高水位以下の洪水に対する安全性を確保するための低水路拡幅や堤防強化等を進めていきます。加えて河川整備計画で、効果量を見込んでいます校庭貯留等のほか、田んぼダム、森林保全などの流域対策や手作りハザードマップ作成支援、降雨量・水位・河川監視カメラ画像等のリアルタイム情報の発信などの減災対策にも取り組んでいきます。
今後とも武庫川流域の総合治水対策を着実に進め、県民の安全・安心の確保に努めてまいります。
【UR借上げ住宅問題について】
最後に、借上住宅問題についてです。
県は、URとの借上契約期間20年が満了することを理由に、借上復興公営住宅の入居者のうち、2016年度に期限を迎える135世帯を対象に継続入居申し込みを開始し、申し込んだ87世帯のうち、85世帯を継続入居可、2世帯を継続入居不可とすると発表しました。継続入居の可否判定については、医師や弁護士ら第三者委員で構成される判定委員会で審査され、可否判定については一定の基準は示されているものの、知事自身も、これまで入居者の実情等に応じ、きめ細かく弾力的に対応すると、入居可否判定については柔軟な対応をすると述べておられます。今回の87世帯中85世帯が継続入居を認められたものの、柔軟な対応を貫かれた結果だったでしょうか。
今回、継続入居不可とされた方の一人、64歳男性の例です。私も直接お会いし、お話をお聞きしましたが、2013年に脳梗塞を発症し、右下肢麻痺、不眠症、発作性心房細動、腰部脊柱管狭窄症などがあり、要支援2であることが医師の意見書に記されています。トイレや風呂場に手すりを設置し、しびれや痛みが増す中、人の3倍近く時間を掛けて近くのスーパーに買い物に行き、ひとりで生活されています。Oさんは、15年住んで、病院、デイケア、買い物と、この場所にやっとなじんできた。中央市民病院、眼科、歯科、整形外科など、足腰が弱った自分でも歩いて行ける。デイサービスも、ようやく介護関係者や利用者の皆さんとも話せるようになってきた。なのに、また他のところへ移るとなると、精神的ストレスはいかほどであるか考えていただきたいと話されました。
知事は、議会答弁や記者会見で、典型的な事情には当たらないが、個別の事情を積み上げてみるとかなり問題だという方もおられるでしょう。その辺をきちんと判定していくことが基本姿勢であるし、そのような第三者委員会での取扱を期待したい。一律に決めてかからないのが我々の姿勢などと繰り返し表明しておられます。
しかし、この方のように、住替えを勧めるのが柔軟な対応と言えるでしょうか。さらに、ある入居者は、担当者から、あなたは年齢も要介護も障害も該当しないから、判定委員会に申し込んでも無駄ですよと説明され、最初から住替え先のあっせん住宅への応募を促されたとのこと、これは、県のこれまでの住替えを強要しない、きめ細かく対応するという発言と矛盾するのではありませんか。
知事、私たちは借上住宅入居者の希望者全員の継続入居を求めてきましたが、現段階で、少なくとも判定委員会で柔軟な判断がされるよう、いま一度県の態度を明らかにすべきです。年齢などで機械的に線引きするのではなく、あくまでもその方の実情に応じて、健康状態や生活、コミュニティなど、実態からよく判断し、文字どおり柔軟な姿勢を貫くという県の態度を改めて表明していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。知事の誠意ある答弁を求めます。
○知事(井戸敏三): UR借上住宅問題についてのお尋ねがありました。
UR借上県営住宅については、原則として、契約期限までに都市再生機構に返還することとしています。期限後は県営住宅として提供できないことになりますので、入居者には他の県営住宅に円滑に住み替えていただくことをお願いしています。
高齢や障害などにより住み替えが困難な方については、一定の基準に基づき、継続入居を認め、また75歳未満の世帯についても、義務教育期間中の子供がいる世帯や近隣に介護が必要な親族がいる世帯など、事情がある場合には、一定の条件のもとに継続入居を続けていただくこととして、入居者にも丁寧に説明しています。
継続入居の可否については、借上期間の1年前に第三者機関である判定委員会で判定することにしています。判定に当たっては、画一的な基準で判定するのではなく、昨年12月に行った28年度に期限を迎える世帯の判定でも、心身の状態をはじめ医療、介護、福祉サービスの利用状況、地域コミュニティの依存度や関係性など、入居者の個別の実情も十分に勘案した上で、総合的に判定させていただきました。
対象となりました来年度期限の来る世帯は135世帯でありますが、そのうち住み替えることになりました方が48でありましたけれども、87世帯の方々が判定委員会に申請されました。そのうち継続が難しくなった方が2世帯であります。85世帯は何らかの事情等を勘案して、継続入居と判定されたものであります。
議員ご指摘の男性は、判定委員会で個人的属性を十分検討し、審議した結果、住み替え可能な状態と判定されたものです。また、その住み替え先については、バリアフリー化された県営住宅の方が、室内での安全が確保できると判定委員会から提案されたものでありました。今回、再判定の申し出を受けましたので、改めて住み替えが困難かどうか、丁寧に審議されることになります。
今後とも入居者の事情を第一に考え、きめ細かく弾力的な対応を進めてまいりますので、ご理解いただきたいと存じます。
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