日本共産党議員団を代表して請願第9号ないし請願第15号について、願意に賛同し不採択ではなく採択を求めて討論を行います。
まず、請願第9号「県下の中小病院の看護師不足を解消するため「兵庫県看護学生奨学金制度」の創設を求める件」についてです。
高齢化社会をみすえた地域包括ケアシステムの中で、200床未満の中小規模の病院が地域のかかりつけ医療機関として、その役割は、ますます高まっています。 しかし、中小規模の病院においての看護師不足は、きわめて厳しい現状にあります。
急性期から慢性期、在宅まで地域密着の医療を持続的に担っていくためにも、新卒から看護師を養成していくことが重要です。ところが看護師を養成しようにも、厳しい経済状況のもとで学費の安い看護専門学校が減り、私立の看護大学では、4年間で700万円を超える学費の上に、実習費等々で看護師をめざす学生に大変な負担がのしかかっています。
奨学金制度を利用しようにも日本では、ほとんどが返済義務のある貸与型の奨学金制度で、そのため経済的に余裕がなくても奨学金制度を利用せずに、アルバイトで賄う学生など学業とアルバイトの板挟みに苦しむ学生が増えていることが、請願団体が取り組まれた「看護学生の学費や奨学金に関する」調査報告書でも明らかです。
委員会の質疑でも明らかになりましたが、2009年度で廃止された県の「看護師学生等修学資金」では、のべ6000人に貸し付けられた奨学金の内、約7割が返済免除となり、200床未満の病院などの特定指定施設での看護師確保につながっていました。
全国の41都道府県では、民間の中小規模病院などの看護師確保のために、奨学金制度をつくり、一定期間勤務すれば返済免除されるなどの施策を続けています。
県下の医療を守り、県の看護師確保対策の一環として「兵庫県看護学生奨学金制度」の創設を求める本請願について採択を主張します。
次に請願第10号「福祉予算の大幅増額を求める意見書提出の件」についてです。
政府の骨太方針は2020年度に「財政健全化」目標を達成するための「経済・財政再生計画」を盛り込み2016年度〜2018年度を「集中改革期間」に指定し3年間に社会保障費の自然増を1兆5千億円抑える姿勢を明記しています。これは小泉政権の年2200億円削減を大きく上回る社会保障切り捨てです。そのため子ども子育て支援新制度が実施される中で営利を目的とする民間企業が進出し、遊び場のないビルの一室や高架下に保育所がつくられ子どもの豊かな発展が二の次という現状です。保育の分野だけでなく、あらゆる分野で社会福祉が危機的な状況に追い込まれている中で「骨太方針」では軍事力を強化し、法人税減税を「早期に完了する」ことを強調し新成長戦略に「法人税の引き下げ幅のさらなる上乗せを図る」方針を盛り込んでいます。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とした憲法第25条に基づいてすべての国民が人間らしく生きるための福祉の充実を求め福祉予算の大幅増強を求める本請願の採択を主張します。
次に請願第11号・第13号「より豊かな障害児教育の実現を求める件」についてです。
障害者権利条約では障害者への「合理的配慮」が社会的責任となり、障害者差別禁止法で「合理的配慮の不提供の禁止」が、国や地方公共団体に法的義務として課されました。
教育の分野では、障害があっても、障がいのない子どもたちと同等に教育を受ける権利を保障するための「合理的配慮」をすすめ、インクルーシブな教育制度の実現が求められています。本請願は、インクルーシブ教育の実現に向け具体的な施策の充実を求めており、教育環境の過大過密の解消など教育条件の整備を求めています。
また、特別支援学校には小中学校、高等学校のように定員や面積などの設置基準がないために、詰め込みであっても容認されているのが現状で、結果、過大過密が大きな課題となっています。
また、障害児の社会参加の場としては、重度の障害児のための福祉施設は民間頼みでまだまだ不足しています。
障害児の放課後や長期休業中の支援サービスについては保護者の費用負担が大きく、郡部には施設そのものがありません。放課後等デイサービス・就労支援体制の充実、高等部卒業後の学びの場を広げることなどが求められています。
障害児の社会参加の場、教育の分野に対し障害者権利条約にもとづいた一人ひとりの成長を保障するための支援が必要です。両請願の採択を主張します。
次に請願第12号「所得税法第56条の廃止を求める意見書提出の件」についてです。
本請願が廃止を求める所得税法第56条は、「個人事業者と生計をともにする配偶者や家族が事業から受け取る報酬を事業の必要経費と認めない」、すなわち個人事業者の家族従業者に無償労働を押しつける差別的税制です。
この規定は、税制の民主化が進められた中でも、個人事業者に対しては所得を恣意的に分割したり報酬をつり上げたりして租税回避の手段として使われる恐れがあるとして、合算課税制度が残されたものです。
しかし、この規定から既に50年が経過しており、社会経済情勢の変化や個人の権利意識、家族関係が変わる中で、所得税法56条を合理化する理由はなくなっています。
本請願を審査した産業労働常任委員会では、青色申告との差別的取り扱いは受忍すべきとの議論もありましたが、現在、白色申告者に対する記帳義務が法制化されたもと、青色申告制度にのみ、特典として給料を必要経費として認めるのは、記帳義務の課された白色申告者との関係において、逆に不合理な取り扱いとなっています。これは本来経費性を有する専従者給与について第56条で規制し、青色申告の特典としていることに起因するので、この不合理を解消するためには第56条の規定を廃止し、親族間の取引であっても第三者間取引と同様に取り扱うことが必要です。
また、家族従業員に対する給与については法人税法における「役員の親族である使用人に対する給与の損金不算入規定」などと同様の制限規定を設ければ、親族間の取引の恣意性を排除することができます。
そもそも、業者婦人や子どもたちの働き分を税法上必要経費と認めない所得税法第56条は家族経営に対する差別と偏見に基づくものであり、業者婦人や子どもたちの役割を否定しその地位を低下させるものです。商売を子どもの代に継がせにくいことにも影響しています。
本請願と同趣旨の意見書は全国385自治体の議会から上げられており、また政府も所得税法第56条の見直しについて、国会答弁始め様々な場で繰り返し言及しています。兵庫県議会は、先の議会で議員発議による中小企業振興に関する条例を作ったのですから、県内企業数の86.5%を占める小規模企業者に光を当てて人間味あふれる家族経営を支えるためにも、所得税法第56条の廃止を求める本請願の採択を主張します。
次に請願第14号 「国の責任による35人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求める件」についてです。
学費をはじめ教育費の負担がまだまだ重いのが実態であり、教育無償化の観点からも、私学助成をはじめ教育予算を増やし、お金の心配なく学べる教育環境をつくることは当然です。
県では小4まで35人学級を実施していますが、私たちはかねてからこども達に目の行き届いた教育を実施するためにも小学5・6年生や中学校にも少人数学級を広げることを求めてきました。
また、国が財政問題を理由に教職員定数の削減を行おうとしていることは許されず、全国都道府県知事会らも教職員定数改善の要望が出されています。教育条件の改善は県民の切実な要望です。
本請願の採択を主張します。
次に請願第15号 教育負担の公私間格差をなくし、こども達に行き届いた教育を求める私学助成に関する件についてです。
2010年からはじまった就学支援金制度で私立高校の学費負担は軽減したものの、まだまだ学費の負担は重いものとなっています。
兵庫県では、入学金も含めた初年度平均学費は81万円余りで全国5番目に高く、国の就学支援金と県の学費補助をあわせても授業料以外の納入金はカバーできません。年収350万円以上の世帯は県の授業料軽減補助がなくなり、学費負担は相変わらず授業料無償化から遠ざかっています。授業料以外の学費負担を軽減してほしいという保護者、生徒からの要望は切実です。国の調査では、24府県が授業料以外の学費負担を実施しており、授業料軽減補助の世帯収入の上限を590万円以上としているのは16都府県にもなります。
また、県は、経常費補助について、「行革」で国の増額分を削減しました。削減しましたが耐震化を含めた増額こそ求められます。こども達の学ぶ権利を保障することは公私問わず求められています。本請願の採択を主張します。
以上で私の討論を終わります。議員の皆様方のご賛同を心よりお願い申し上げます。
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