日本共産党県議団の杉本ちさとでございます。県民のいのちと暮らしを守る兵庫県政を求めて、以下、6つ柱で質問します。
【阪神淡路大震災から20年、被災高齢者の支援強化】
まず、はじめは、阪神淡路大震災20年をむかえてです。
1つめの質問は、被災高齢者の支援強化についておうかがいします。
井戸知事は、「被災者をはじめ、支援者も一体となって創造的復興の歩みをつづけてきた」と述べ、「創造的復興を国連会議でも提言する」と言われていますが、被災者の思いとはギャップがあるのではないでしょうか。
「創造的復興」、「単に元に戻すのではない」と強調してなにが行われてきたのでしょうか。 90年代の開発優先の経済政策が、震災復興計画に反映され、従来あった開発計画がてんこ盛りに入り込み、震災復興費17兆円のうち6割の10兆円が「多核ネットワーク都市づくり」に投入されました。 その一方で、被災者一人ひとりの生活の再建、仕事、商店の営業の再建が遅れてきたことは、わたしたち日本共産党も議会で繰り返し指摘してきたことです。こうした問題は、宮城県をはじめとする東日本大震災の被災地でも問われています。被災者の生活再建こそ、復興の第一義的課題でなければなりません。
阪神淡路大震災では「創造的復興」のもとで、被災者は避難所、仮設、復興住宅と移行する度に、バラバラにされコミュニティーが分断されてきました。 その結果として、一般県営住宅の高齢化率30%と比べて、復興公営住宅の高齢化率が50%を超える事態が、県の政策によってつくられてきました。 現在、県は災害公営住宅に「高齢者自立支援ひろば事業」・56箇所、生活援助員(LSA)105人の支援を行っていますが、県の災害公営住宅の入居者1万3500人の被災高齢者対策として、とても十分とは言えません。 被災高齢者対策の拡充・強化が必要です。
さらに、兵庫県自身がいまもコミュニティーを分断し、高齢化率を引き上げているのがUR借上げ住宅です。「20年期限だ」として、行政の都合で、住み替えさせる「追い出し」は、せっかく築いた入居者のつながりを壊し、あらたな入居者募集も中止するなかで、高齢化率は50%どころか6割を超えています。 被災高齢者への対応が逆さまではありませんか。
そこでお尋ねします。 震災20年の教訓を踏まえた被災県の知事として、LSAの増員など被災高齢者支援を強化すること、そして、UR借上げ住宅の住み替え方針を撤回し、継続入居を約束することを求めますが、知事の答弁を求めます。
○井戸知事:日本共産党議員団の杉本ちさと議員のご質問にお答えいたします。
まず阪神・淡路大震災20年を迎えて、被災高齢者への支援強化についてのおたずねがありました。創造的復興をめざし、ハードの復旧とともに、震災復興の中に、被災者の生活復興を明確に位置づけ被災者復興支援会議の開催や生活再建支援金の支給など、先導的な取組みをすすめてきました。
高齢者への支援については復興基金を活用して、生きがいづくりを含めた見守りの拠点としての高齢者自立支援広場事業などを実施しております。このひろば事業については来年度も継続実施することとしています。加えて、LSA等による地域の見守り体制については市町に対してその充実を働きかけています。被災者復興住宅における共益費の指定管理者による徴収代行も拡充してまいります。
また、UR借上げ県営住宅については、契約期限までに都市再生機構に返還することが基本です。入居者には円滑に住み替えていただくことを原則としながら、高齢や障害などで住み替えが困難な方については一定の基準にもとづき継続入居を認めていきます。
継続入居の可否について、事前相談体制を充実し、継続入居可能性を協議し、入居期限の一年前には継続入居の可否を決定していきます。継続入居の判定に当たりましては、第三者機関である判定委員会において、入居者の実情等も十分勘案した上できめ細かく弾力的に対応していきます。
震災20年で復興が終わるわけではありません。今年度実施している復興提言事業の成果も踏まえながら、高齢者の自立支援をはじめとする残された課題にひきつづき取り組んでまいります。
【防災、住宅耐震化の促進】
震災20年の2つ目は、民間住宅の耐震化の促進についてです。
阪神淡路大震災で亡くなられた神戸市内3875人のうち、8割以上が住宅や家具の倒壊による窒息や圧迫であり、倒壊要因の火災も含めると95%とも言われています。 2013年4月の淡路島地震でも、私たちも調査に入りましたが、耐震性のない古い住宅の被害が顕著でした。
2003年、阪神淡路大震災から8年目の1・17臨時県議会の質問で、日本共産党は横浜市や静岡県の例をあげて、住宅耐震の補助制度の創設を知事に迫り、その年にスタートしたのが「住宅耐震化改修工事補助制度」でした。2010年に私も本会議で「実施戸数が少なく、耐震化促進のために、さらなる支援が必要」と指摘をしました。 この度、来年度予算案で、改修補助の金額を100万円に増額したことや、建替えによる耐震化にも踏み出すことは評価したいと思います。しかし、増額したと言ってもその予算枠は、改修と建替え合わせて470戸で、500戸にもなりません。
災害弱者にとって住宅耐震化は、経済的負担が大きいのが現状です。そのため、静岡県では、高齢者に市と共同して20万円を上乗せ補助して、毎年度1500戸程度の実績をあげています。 また、横浜市では、非課税世帯に補助額を上乗せするなどの施策がとられています。
また、東京・江戸川区や愛知・一宮市などでは、相談を待っているだけではなく、居住者に直接働きかける訪問と、相談会を積極的に行って成果をあげている経験もあります。一般的な広報やPRに加えて、より身近に説明を聞ける、きめ細かな耐震改修などの相談体制をつくっていくことが大事ではないでしょうか。
そこでお尋ねします。 震災での倒壊家屋をなくし、犠牲者を少なくする住宅耐震化をすすめるために、来年度予算で、戸建て1000戸を大きく上回る予算をつけ、さらに市町や地域の団体などと協力して、居住者への相談会や訪問も含めた丁寧な働きかけをすすめる提案しますが、いかがですか。
○大町まちづくり部長:私からは防災・住宅耐震化についてお答えいたします。平成15年度から実施しているわが家の耐震改修促進事業は平成25年度末までの類型補助件数が約3千件と全国第4位の実績でありますが、耐震化率は平成20年度時点で82.4%と27年度末に97%とする目標達成は非常に厳しい状況にあります。
そのため、来年度予算案では、ひとつに、耐震改修工事に対する補助限度額の80万から100万円への増額、ふたつに、シェルター型改修など部分的な改修工事に対する補助メニューの設置、3つに、耐震建て替え工事への補助制度の創設、4つに防災ベッド設置への補助制度の創設を行い、住宅耐震化の制度を抜本的に見直したところです。これにより、全国的にも例のない多様なメニューを有する全国トップの補助制度になったと考えております。
当初予算における補助対象戸数については、戸建て住宅・共同住宅あわせて平成25年度までは500戸、平成26年度は650戸としてきました。来年度は戸建て住宅470戸、共同住宅334戸の合計で804戸と戸数を上積みして計上しております。
別枠で防災ベッド設置40台も計上しております。
今後とも県民ニーズに的確に対応しながら、補助実績を積み重ね、さらに対象戸数を拡大していきたいと考えております。
県民への耐震化の働きかけについては、これまで市町や民間事業者と連携した相談会や講習会、兵庫住まいサポートセンターによるアドバイザー派遣等を実施してきました。今後は市町との連携をより密にし、県民からの相談にきめ細かく対応できる体制整備や、ダイレクトメールなど積極的な取組を検討していきます。
今後も引き続き、地震による家屋倒壊から一人でも多くの県民の命が守れるよう、住宅耐震化を推進してまいります。
【くらし・福祉優先の県予算に】
次に、来年度県予算についてです。
震災20年の県政運営で、防災・安全の確保と並んで強調されているのが「地方創生」です。今議会の冒頭で審議された補正予算でも指摘しましたが、国の補正予算は、地方経済の再生と住民の暮らしの向上につながるものになっていません。そもそも、働く人の賃金が下がり、消費税増税による負担増を押しつけられたまま、「消費喚起」策と言われても、効果が一時的なのは当然です。
さらに、安倍政権が、社会保障の負担増と給付減によって、高齢化などに伴う自然増を、概算要求の8300億円から4200億円に半減させることは、地方にも深刻な影響をおよぼします。実際に県は、「平成27年度の財政環境は、好転したとは言えない。きびしい財政運営を余議なくされる」として、「第三次行革プラン」の方針を堅持し、地方財政計画全体がプラスになったもとでも、5年連続のマイナスの県予算となっています。
住民の福祉向上に努めることが、地方自治体の役割です。 そして、県民の福祉や教育、暮らしを応援し、住民のふところを温めることこそ、本当の意味で地域創生への道です。
国の社会保障の自然増分を削る方向は、地方財政にとっても、必要なサービスをしていけば、財政の穴埋めが大きく負担となっていくことになります。 県は、国の方針にそって社会保障を削減する立場でなく、社会保障を充実し守る立場にたち、国の改悪から県民の暮らしを守る「防波堤」の役割を果たすことが求められています。
「県行革」の財政フレームでは、起債残高のピークは平成28年度で、その後は下降する見込みです。 臨時財政対策債をのぞけば平成24年度にピークを過ぎています。この間の「行革」で、福祉医療の自己負担増、対象者削減がつづき、私学助成などの教育分野の予算を削減してきました。私たちは、そのやり方に、一貫して反対してきましたが、一人ひとりの県民のくらしがよくなってこそ、兵庫県経済もよくなります。
「第3次行革」の期限の平成30年度が近づくなかで、行革路線を見直し、福祉や暮らしの予算を増やす暖かい支援が求められています。
そこでおたずねします。 県民にとっても、地方財政にとっても大問題である、国の社会保障の自然増を大幅削減する路線に反対し、「県行革」で削減した福祉医療などを、元に回復する県予算に転換すべきと考えますが、知事の見解を求めます。
○井戸知事:くらし・福祉優先の県予算というご指摘がありました。社会保障・税一体改革により、社会保障の機能の充実を目的として消費税率が引き上げられました。その増収分はすべて社会保障の充実・安定化にむけられることになっています。
本県におきましても、地方消費税の増収分を活用して、子ども・子育て支援や、医療・介護などの社会保障を充実させました。
平成27年度当初予算の社会保障関係経費は、平成26年度を338億円上回る2872億円となっています。
なお、平成27年度当初予算が平成26年度を下回っているのは、中小企業制度資金貸付金の融資枠見直しにともないまして、金融機関への預託が減少したなどによることが主因です。
ご指摘の第三次行革における福祉医療制度の見直しについては、老人医療助成事業では国における70歳〜74歳の自己負担割合が2割に見直されたので、65歳〜69歳の自己負担割合1割との逆転現象を解消するため必要な見直しを行ったものです。母子家庭等医療費給付事業については、乳幼児・子ども医療費助成事業の充実を踏まえ、母子家庭と同程度の所得水準である他の世帯との不均衡を是正するため、対象を経済的不安の大きい低所得者層に重点化しました。
見直し後におきましても、乳幼児・こども医療とあわせたカバー率は約7割となっています。行財政構造改革のとりくみは、持続可能な県民の期待にこたえられる行財政構造を確立するためのものです。平成30年度の収支均衡をめざし、創造と共生の舞台・兵庫の実現をはかるためにも、第三次行革プランの着実な推進をはかってまいります。
【中小企業応援の経済対策に】
次は、兵庫県の経済対策についてです。
安倍首相は「大企業が収益を上げれば、その果実はやがて雇用にも中小企業にも地方にも波及する」と、トリクルダウン理論で大企業応援の法人税減税や規制緩和、株高政策をすすめています。しかし、OECD(経済協力開発機構)が、「トリクルダウン理論は格差を拡大し、経済成長を阻害する」と報告をするなど、トリクルダウン理論の誤りが明確になっています。
知事も、議案提案説明のなかで、「地域の元気づくり」は、大都市やそこに立地する大企業の繁栄が、やがて小さな町や村も豊かにするというトリクルダウンとは正反対の、地域の自発的・内発的発展をめざすことが基本だと言われました。
しかし、兵庫県が実際に行っている経済対策は、大企業を誘致すれば地域も雇用もよくなるというトリクルダウンの誤りを続けているのではありませんか。 多額の補助金で誘致したパナソニック尼崎工場が、わずか8年で撤退したことで、破たんが明確になったにもかかわらず、姫路市でも経済効果が問題視されている姫路工場に、いまも多額の補助金を出しつづけています。 県は来年度予算で、地方創生を推進するためとして、工場誘致中心の産業集積補助から、産業立地促進補助に変更し、補助地域の拡大や、補助投資規模を引き下げたりしています。 しかし、パナソニック誘致補助金のような補助メニューはそのまま温存し、本質は変わっていません。 破たんが明確になっている大企業呼び込み型の経済対策はきっぱりと止めるべきではありませんか。
地域に根ざした中小企業こそ、地域の雇用を支え、地域経済再生の要です。しかし今、中小企業はアベノミクスによる円安政策で、原材料や光熱費が高騰し、消費税率8%増税で消費が低迷し、大変な不況に陥っています。帝国データバンクの「円安関連倒産」動向調査では、2014年の全国の倒産件数は前年の2.7倍に急増し、体力が限界に近づいている中小企業は少なくないと指摘しています。いまこそ、中小企業への直接の支援が必要です。
小規模企業も含めて中小企業は、安心・安全の街づくりや、祭り、伝統文化の保存・継承など地域社会で中心的な役割を担っています。 中小企業が中心になって、地域の農林水産業などと連携して、地域の特性を生かした振興策を推進することが、県民生活の向上と持続的な県経済の成長につながります。
県は、「ひょうご経済・雇用活性化プラン」で中小企業対策は十分だといわれていますが、トリクルダウンと大企業呼び込みが中心で、これまで地域で果たしてきた中小企業の力を、地域再生に結びつけることになっていません。 一部の地域や産業だけでなく、すべての中小企業・地場産業・商店街を視野に入れた振興・支援策に転換すべきです。
そこでお尋ねします。破綻した大企業呼び込み型の経済対策をやめ、中小企業を地域再生の主役と位置付けた中小企業振興条例を制定し、県民の所得を増やす対策として、中小企業の正規雇用に補助する制度の創設を求めますが、どうですか。知事の見解を求めます。
○井戸知事:中小企業応援の経済対策についてのおたずねがありました。
本県経済の安定と発展のためには、中小企業の振興が不可欠であることはいうまでもありません。昨年3月にご議決をいただいた「兵庫経済雇用活性化プラン」におきましても、中小企業の強みを生かした地域産業の発展、内発的な地域振興を定めています。めざす柱のひとつにかかげたところです。まず中小企業の経営改善や事業基盤の強化、第2に異業種交流など中小企業の連携による新商品開発等の支援、第3に事業の安定や新展開のための資金支援など、中小企業の持続的発展を支える施策を展開しています。
新年度でも、まず中小企業の設備投資などを支援するため、中小企業の制度融資の金利引き下げや保証料補助により、企業の実負担を軽減していきます。
また、産業立地に関する条例により、中小企業向けの要件緩和を行い、促進地域等での 工場・事業所等の立地について、法人事業税軽減や設備・雇用補助について活用を促しております。
また、商工会議所・商工会を通じた小規模事業者支援や中小企業支援ネットひょうごによる支援などを推進しています。あわせまして新事業展開についての異業種交流も行っております。
今後とも中小企業振興策を積極的に推進して、本県の持続的な経済成長につないでまいります。
なお、中小企業振興条例についてでありますが、ご議決いただいた兵庫経済雇用活性化プランに基づいて施策を展開してまいりますので、現時点では制定をする必要まではないのではないかと考えておりますが、その必要性を含めて今後の検討課題とさせていただきます。
【県のエネルギー長期展望と石炭火力発電所】
次は、県のエネルギー長期展望と神戸製鋼の石炭火力発電所についてです。
地球温暖化が進行し、かつて経験したことがない集中豪雨や暴風雪、竜巻、猛暑など異常気象が各地で頻発しています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書は、気候変動は全ての大陸と海洋にわたり、自然や人間社会に影響を与えていること、特別の対策がとられなければ、21世紀末までの温暖化は世界規模で、深刻で取り返しのつかない事態となると厳しく警告しています。 まさに地球温暖化対策は「まったなし」の喫緊の課題です。
地球温暖化の最大の要因は、石炭、石油、天然ガスなど化石燃料の燃焼にともなう二酸化炭素の排出であり、なかでも温室効果ガスを最も多く排出する石炭の使用を削減することが世界的な課題です。CO2排出量が世界第5位の日本、また、日本国内で第4位の排出県である兵庫県の、取り組みの強化が求められています。
ところが、昨年6月から「兵庫県エネルギー有識者会議」で検討されているエネルギー長期展望計画には、これと逆行する中身が含まれています。
有識者会議の報告案では、兵庫県のエネルギー政策について、原発や火力を重要なベースロード電源とする国のエネルギー政策を元にして、原発への依存度を下げるとしながら、臨海部の遊休地を活用して、低廉かつ安定的な電力供給が確保できる石炭火力発電を、ベースロード電源として立地推進すべきだとしています。 さらに、石炭火力発電所を早くつくりやすくできるように、環境アセスメントの合理化まで国に要望することを求めています。
おりしも今月16日、神戸製鋼所は新設する石炭火力発電所について、関西電力に応札し、落札したと発表しました。 応札したのは神戸製鋼所の1社だけで、出力65万キロワットの石炭火力発電所を2期新設し、2021年度からの供給開始を予定しています。
そして、おどろいたことに、兵庫県有識者会議のオブザーバーゲストスピーカーとして、関西電力と神戸製鋼、大阪ガスの代表のみが参加をしているではありませんか。 有識者会議が、石炭火力発電所の立地推進を兵庫県のエネルギー政策として検討していることは、まさにゲストスピーカーの関西電力と神戸製鋼の意向を直接受け入れていることは、明白です。 大企業の利益のために、兵庫県のエネルギー政策がつくられている。このようなことは認められません。
人間の命や環境よりも企業の利益を優先する兵庫県のエネルギー政策の検討は、根本から見直しすべきです。 そして、太陽光や地熱、風力、バイオ、小水力、潮力など再生可能エネルギーに大きくシフトし、再生可能エネルギーの開発に資金と技術を集中して促進する政策に転換すべきです。
有識者会議で検討している再生可能エネルギーの電源構成比率は、平成25年の 2.8 %から2030年目標は、4.7%とされているにすぎません。
そこでおたずねします。
持続可能な安全な社会をつくるために、知事が神戸製鋼所に石炭火力発電所増設計画の中止を要請することを求めるとともに、エネルギー政策は原発ゼロ、脱化石燃料を柱にして、再生可能エネルギーの2030年目標を40%に引き上げることを求めますが、知事の見解を求めます。
○藤原政策部長;私から、県のエネルギー長期展望と神戸製鋼の石炭火力発電所についてお答えいたします。
東日本大震災以降、電力需給が逼迫する状況の中で、本県をめぐるエネルギーの現状と課題、国への提言等について検討していくために兵庫県エネルギー有識者会議を昨年の6月に設置をいたしまして、議論いただいております。この会議ではこれまで需給両面から県内のエネルギーの展望をおこないまして、ひとつには、低廉で安定した電力供給のありかた、2つには再生可能エネルギーの導入促進策、3つにはまちづくりを含めたさらなる省エネの推進策、4つには、水素等、未来のエネルギーの実用方策等につきまして、今後提言を取りまとめていただく予定であります。
議論のなかでは低コストで安定的な稼働が求められますベースロード電源としましては高効率の石炭火力発電が最適でありますが、石炭火力につきましては、高効率といえどもCO”の排出量の増加が課題でありまして、その削減が必要であるという指摘をされております。
また、再生可能エネルギーにつきましては2020年までに出力ベースで155万キロワットを達成いたします、兵庫100万キロワット創出プランを着実に推進すべきであるとされております。今後これらの意見を踏まえまして、電力需給の安定等に向けた対策を進めてまいりますが、神戸製鋼の石炭火力につきましては、事業の必要性を認める一方で、環境アセスメント手続きにおきまして、第一段階の計画段階、環境配慮書に対する知事意見で示しましたように、CO2が増加しないように引き続き求めてまいります。
また、再生可能エネルギーにつきましては、小水力発電の調査支援等、導入拡大に向けた最大限の努力を行ってまいります。ただし、再生可能エネルギーを含みます電源構成比率は、県単位でなく国全体で決定すべきものであり、また、再生可能エネルギーの課題であります現在のコスト面や天候に左右される供給面の不安定さ等を考慮すれば、その発電量を飛躍的に高めることは困難であると考えております。
なお、ご質問のなかでご指摘のございました当会議の構成員でございますが、エネルギー問題に詳しい経済、環境、工学の各分野の学識者に加えまして、産業界、消費者の代表者で構成いたしております。
また、エネルギー供給の実態等を把握するためにテーマに応じて、関係企業であります関西電力や大阪ガス、神戸製鋼をゲストスピーカーにまねいておりますので、ご理解いただきますようにおねがいします。
【赤穂福浦の産廃処分場計画について】
次は、赤穂・福浦地区の産廃処分場計画についてです。
2月7日、赤穂市文化会館ハーモニーホールで「福浦地区産業廃棄物最終処分場建設反対赤穂市民の会」の決起集会に会場いっぱいの400人が集まり、「かけがえのない赤穂の自然を守るため、産廃処分場の建設計画に断固反対し、あらゆる手段を講じて阻止し、安心で安全な生活ができる環境を創っていく」との決議を満場一致で採択、「建設阻止に向けてがんばろう!」と気勢をあげました。 この集会には「赤穂の環境を守る会」や「赤穂食品衛生協会」など団体や赤穂市自治会連合会、赤穂市議会議員連盟、そして赤穂市市長と議長、さらに上郡町と備前市の首長と議長も参加し反対を表明しました。
福浦地区産業廃棄物最終処分場建設計画とは、赤穂市の西部、岡山県の県境に近い福浦地区の海岸沿いの採石場跡地に、同地で砕石事業を営んできた兵庫奥栄建設が、燃え殻、汚泥、廃プラスチック、紙屑、木屑、ゴム屑、金属屑、鉱さい、ガレキ類、ばいじん、動植物性残さ、石綿含有廃棄物など産業廃棄物204万立法メートルを、約9ヘクタールの敷地に25年間かけて埋めたてる、管理型の産業廃棄物最終処分場を建設するというものです。
同計画地の沖合には日生漁協が管理する漁場が大きく広がり、カキ養殖やアマモが生息する瀬戸内を代表する豊かな漁場で、風光明媚な景観を有し、希少動物のすなめりが時々顔を出す環境のよいところです。
一昨年の10月に、県の紛争予防条例に基づく住民説明会が、計画地に隣接する福浦と天和自治会で開催されたことで、住民ははじめて事業計画のことを知りました。 「赤穂の環境が汚染されたら取り返しがつかない」「産業にも観光にも悪影響が出る恐れがある」「事業者の説明は一方的で信用できない」と言った不安や怒りの声が大きく広がり、住民は238通の意見書と反対署名を西播磨県民局に提出しました。 続いて12月には、赤穂市連合自治会が福浦地区産廃処分場建設計画を許可しないよう知事に求める署名を、赤穂市民の過半数を超える2万6895筆集め、同県民局に提出しました。 また、岡山県の日生漁協も強く反対の意向を示し、備前市議会は、昨年12月、事業計画の中止を求める意見書を採択し、井戸知事に提出しました。 兵庫県だけでなく、岡山県にも影響する問題で反対の声が広がっています。
計画地は、大きな断層があり、岩石は脆く、いたるところで岩盤がボロボロと崩れています。 私たちといっしょに調査に入った専門家たちは、脆弱な岩盤は破砕帯そのものであり、大規模な地すべり・崩壊等の危険性が高いことや、熱水変質がみられる特異な断層であること、みず道が地下水や海水につながっている可能性が高いことなど、詳細な調査と資料をもとに、産廃最終処分場の計画地として「不適格」であると指摘しました。
そこで、質問します。 圧倒的多数の赤穂市民や岡山県備前市の市民が反対している福浦地区の産業廃棄物最終処分場建設計画について、知事はこの民意を受け止め、事業者に建設計画を中止するよう働きかけることを求めます。知事の誠意ある答弁を求めます。
○梅谷環境部長:私から、赤穂福浦の産廃処分場計画についてお答えいたします。
産業廃棄物処理施設の設置には廃棄物処理法の手続きに先立ちまして、紛争予防条例により、事業者が関係住民に事業計画の周知を行い合意形成をはかることを義務づけております。本条例に基づき、事業者が関係住民に対し、事業計画を周知したところ、多くの意見が提出されました。そこで、県民に正確な情報を提供するとともに、事業者に適切な指導を行うために、西播磨県民局において、地盤、災害、環境リスク等の専門家で構成する産業廃棄物最終処理場専門家会議を設置し、計画地の視察や課題の抽出等を行っております。
一方、生活環境への不安が住民に広がっていることから、現在、事業者に対して、市の意見をふまえ、住民への説明を十分におこなうよう指導しているところです。
もとより、産業廃棄物最終処分場につきましては、地震等の災害に対して構造上安全であることに加え、地下水や公共用水地の汚染を防止するための構造が求められるなど、生活環境保全上の措置を講じることが不可欠であります。
このため、今後とも専門家会議の意見を踏まえ、構造基準等の適合状況、事業者と関係住民等の調整状況などを総合的に判断し、県民の安全を確保できるように慎重に対応してまいります。
【介護充実と負担軽減について】
次に、介護についてです。
「医療介護総合確保推進法」が成立し、今年4月からの第6期介護保険事業計画期間中に、大きく制度が変えられようとしています。
その一つが、「要支援」の高齢者の通所・訪問介護が、市町が実施する「新総合事業」に変えられ、安上がりのサービスに置きかえられることです。全国一律の基準と単価で実施されてきた、予防給付の通所・訪問介護を、現行の報酬単価以下に市町に設定させるとともに、新たに、人員配置や資格などを緩和した基準によるサービスや住民ボランティアによるものなど「多様なサービス」をもうけ、一定割合の要支援者にこれらを利用させるというものです。
姫路市内のある通所施設では、現在、正規職員4人、パート2〜3人で、「要支援2」から認知症のある「要介護4」の方まで、10人程度を受け入れています。
しかし、介護報酬引き下げとともに、新総合事業の開始で要支援の単価が下げられたら、現在の職員配置は維持できそうになく、「気持ちはあっても経験や知識のないボランティアに職員を置きかえて、事故でも起きたら、誰が責任をとるのか」と話されました。
利用者にとっても、深刻な事態が心配されています。この施設に通う「要支援2」の90歳の女性の家庭では、同居家族がもう一人の高齢者をつききりで介護しています。同居家族がいるため訪問サービスが使えず、週2回のデイサービス利用で、どうにか本人も家族も生活を維持できています。しかし、「新総合事業」が開始され、「緩和した基準によるサービス」、例えばスポーツクラブなどによるサービスへの切り替えを求められたらどうなるでしょうか。なじんだ通所サービスを受け続けたいと思っても、利用料を全額自己負担するか、状態が悪化し介護度が上がるのを待つしかない、こんな事態になりかねません。
サービスが受けられなくなることで介護度が重くなれば、結局は介護費用も増えることになってしまいます。県は、「多様なサービス」の導入により、このようなサービス取り上げが起こることを防ぐべきではないでしょうか。
また、保険料・利用料の負担増の問題も重大です。
県内の、第6期保険料基準月額の見込みは、5576円と、11.9%の引き上げです。
さらに、利用料は、合計所得160万円以上の高齢者は、自己負担2割に引き上げられます。
ケアマネージャーさんたちは、「サービスを控えて負担を抑えようとする人が相当でてくる」と本当に心配されていました。
合計所得160万円は、決して余裕のあるくらしではありません。しかも、前年所得が基準となるため、働いていて急に倒れ介護が必要になった場合や、自宅を売った場合など、過大な負担を強いられることになりかねません。
そこで県におたずねします。
要支援の高齢者からの介護とりあげを防ぐため、少なくとも、現行相当サービスを提供する指定事業所に現行単価を下回らない報酬を保障し、職員配置等への財政支援を行うことと、現行相当サービスの利用を希望する高齢者に「多様なサービス」の利用を押しつけないよう市町に徹底することを求めます。さらに、2割利用者負担の軽減をはかる制度の創設を求めますがいかがですか。
○太田健康福祉部長:私からは介護の充実と負担軽減についてお答えをいたします。
要支援の高齢者に対します訪問介護あるいは通所介護は、市町が実施する地域支援事業に移行することになりますが、移行後のサービスのうち現在の介護予防サービスに相当するものの基準や単価は、国が省令で定める標準的な単価を勘案して市町が定めることになっております。有資格の介護職員の配置が可能となるような単価等が設定される予定であるとともに、必要な財源は介護保険制度のなかで措置されることとなります。
ご指摘のように、地域支援事業移行後も、現在の介護予防サービスに相当するサービスが必要と認められる要支援高齢者がサービスを継続して利用できるよう配慮する必要がございます。
県としては、市町が国の省令に基づき、適切なサービス基準を設定するよう、必要に応じ市町に助言をしてまいります。
また、利用者負担2割への改正につきましては、ひとつには負担の上限額が設定され、上限3万7200円となっておりますこと、また、二つには世帯の主たる生計維持者の収入が著しく減少した場合等、特別な事情がある場合は保険料等の減免措置を受けることができるなどのことから、現在軽減を図る制度の創設は考えておりません。
なお、利用者負担1割の対象者について所得上限が単身者で280万円、医療保険制度の現役並み所得で383万円と水準が異なっておりますので、高齢者にとって適切な所得水準を設定するよう国に提案いたしております。
【再質問 杉本議員】
ひとつは中小企業中心の経済対策についてですが、パナソニックに上限なしの多額の補助金を支払いましたが、尼崎工場で撤退する、姫路工場にはまだまだ支払っているということを指摘しているんですけれども、知事の答弁の中には、私は、大企業への呼びこみ型の補助制度はやめるべきだといいましたが、その回答がありません。やめるべきだということをお聞きしますので再度答弁をお願いします。もうひとつ中小企業振興条例についてです。中小企業の役割を地域再生の要とみなす戦略的な立場を明記した中小企業振興条例は全国で31道府県で制定されています。去年の4月の時点ですが。各地でつくられているときでありますので、ぜひ兵庫県でもきちんと位置づけをしていただいて、条例を制定していただいて中小企業を大いに支援していくという姿勢をあらわしていただきたいと思います。
もう1点は、福浦地区の産廃処分場の建設計画です。手続きに関する説明等は先ほど部長からお答えいただいているのですが、圧倒的多数の市民、また、岡山市民の世論が形成されて井戸知事に対して要望、また署名等も提出されています。住民のこういった声がさらに大きく広がっている下で、民主主義の視点から見て、世論をしっかりと受け止めてこの計画・手続きをすすめるという段階を踏んでいくというのではなくて、今、この計画についてあらゆる働きかけ、できることをやっていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
○井戸知事:まず、パナソニックに対する助成の件でありますが、尼崎工場の撤退に伴いまして、すでに返還をいただいておりますし、姫路の液晶工場については、現在も稼働されているわけですので、分割払いの原則にしたがって支出をしているところです。
県外からの有力な企業の誘致を進めていき、そして雇用や産業リンケージを高めていき産業の力を増すことは、兵庫県の産業振興にとって必要なことだと考え、今回も企業立地と県内の企業の新増設についての促進策を強化したところでございます。ご理解をいただきたいと思います。
それから、中小企業に関する条例をつくるべきかどうかでありますが、すでにおこたえ申し上げましたように、産業振興プランを議会のご議決をえて、中小企業対策も盛り込んだ形で、これに基づき、事業を実施しております。中小企業だけで兵庫県経済が成り立つわけではありません。中小企業も数の上で非常に大きな地位を占め、しかもそれが一定の役割を果たしているわけでありますが、これも、大・中・小、あるいは、農林水産、そして2次・3次と、バランスのある産業構造をつくっていくことが、兵庫の発展につながるわけでありますので、そのような意味からも私は産業振興プランをベースにした対応が今の時点では望ましいのではないかと考えてお答えを申し上げました。必要性については検討課題だと申し上げましたように、まったく意味がないといっているわけではないことをご理解いただきたいと思います。
福浦地区の産業廃棄物の最終処分場につきましては、もし、産業廃棄物法上の手続きに乗ってしまいますと、規則行為になりまして、柔軟な判断ができなってしまいます。民主主義の手続きに基づいて定められた法律にしたがって粛々と手続きが進んでしまうことになりますので、我々は事前にその調整をするための条例を制定して、地元の意見を聞いたり、いっしょに意見を聞いたりしながら事前調整ができるような仕掛けを持ったわけでございます。それに基づいて、手続きを中心としながらも、実態的な判断、お答えしましたように、構造上の安全性ですとか、地下水や公共用水の汚染防止のための構造がきちんとしているのかどうか等の物理的判断などを中心としながらも、慎重な審査を進めているということですのでご理解をいただきたいと思います。 |