私は、日本共産党を代表し、請願第45号、第46号、第48号ないし第51号、第53号ないし第57号、第59号は不採択でなく採択を、請願第24号は継続でなく採択を、請願第52号は採択でなく不採択を求め、討論を行います。
はじめに、請願第45号および第46号、「消費税増税反対」の意見書提出を求める2件の請願についてです。
両請願が指摘するように、増税に反対する世論はいっそう強まっています。
2011年の民間平均給与は、ピークだった1997年と比較して1世帯当たり102万円も落ち込んでおり、国民の所得が減り、消費が落ち込み、内需が冷え込む、「デフレ不況」の悪循環が進行しています。こんな大不況のもとで、消費税大増税を強行すれば、国内消費がますますおちこむことは明らかです。
また、消費税は中小企業にとって、もともと苛酷な税制ですが、デフレのもとで価格への転嫁はいっそう困難になります。さらに請願が指摘するように、消費税増税は、被災地の復興に冷水を浴びせるものです。
以上のことから、消費税増税反対の意見書提出を求める2件の請願の願意は当然であり、不採択でなく、採択を求めます。
次に、請願第51号「原発再稼動中止を求める意見書提出の件」についてです。
わが党は、福島原発事故の被害が拡大し続けていること、原発稼働を続ける限り処理方法のない「核のゴミ」が増え続けること、原発再稼働の条件も必要性も存在しないこと、パブリックコメントでも8割が「即時原発ゼロ」を求めたことなどを踏まえ、「すべての原発からただちに撤退する政治決断をおこない、『即時原発ゼロ』の実現をはかること」を提案しています。
「政府は、「電力不足になる」という脅しで大飯原発の再稼働を強行しましたが、関西電力は、再稼働をしなくても“猛暑の夏”を乗り切れたことを認めました。また、政府は、「原発ゼロで電力料金が2倍になる」などと脅していますが、政府が根拠とした試算でさえ、「原発ゼロ」でも全原発を稼働させても、電気料金はほとんど変わりません。それどころか、ひとたび事故が起これば、ばく大な経済的損失が発生し、電力会社の負担も巨額になり、もっとも高コストなのが原発です。
敦賀原発では、原子炉建屋直下の「破砕帯」が活断層であるということがわかり、原子力規制委員会も再稼動を認めない方向です。大飯原発では、すぐ近くの三つの活断層が連動した場合に、「想定」されている最大のゆれをうわまわることが、電力会社自身によって明らかになっています。日本全国、稼動できるところはどこにもありません。
よって本請願は不採択でなく採択を求めます。
請願第53号「南海トラフ巨大地震への防災対策として県立こども病院のポーアイ移転計画の撤回を求める件」についてです。
県立こども病院を人工島であるポートアイランドに移転する計画について、防災上きわめて問題が多いとの指摘に対し、県は大丈夫だとしていますが、災害の想定はまったく不十分です。
たとえば、アクセスの確保は港島トンネルが新たに整備されているといっていますが、港島トンネルは現行の2倍想定の津波高で、トンネル取り付け部から冠水する可能性があることが、3/31県発表の浸水区域図でも、その後8月に内閣府が発表した国の有識者会議の検討結果でも明らかになっています。
また、2期は十分な地盤高があるといっていますが、ポーアイ1期の西北側は、護岸が損傷しなくても、2倍想定の津波により浸水すると、県当局も認めています。1期西北部から浸入してきた場合、津波が引き波としてポーアイ2期を通過するとの指摘もあり、防災上とても安全とは言えない立地です。
兵庫県医師会をはじめ医療団体がこぞって反対しているような計画は見直しが必要との見解を厚労省が表明している事、現地建て替えも不可能ではないとの建築専門家の意見があることから考えても、ポートアイランド移転ではなく安全な場所で建て替えるよう求める請願の趣旨に賛同し、不採択でなく採択を強く主張します。
請願第54号「年金削減法を廃止し、年金の2.5%削減中止を求める意見書提出の件」についてです。
歴代政権のもとでの改悪により年金支給額が年々減らされ、年金だけではとても生活できないという不安と怒りが広がっています。
そこに、さらに今後2年間で2.5%の年金引き下げが、わずか5時間ほどの審議で国会で強行されました。国民年金(満額の場合)で年2万円、厚生年金(夫婦で月23万円の場合)で年7万円も引き下げになります。
請願が指摘するように、物価が下がっているといっても高齢者の生活に関連する物価はほとんど下がっておらず、介護保険料や後期高齢者医療保険料の値上げは考慮されていないなど、「特例水準」の解消には、なんの道理もありません。
年金引き下げにより消費と地域経済をさらに冷やすことからも、2.5%削減を実施しないよう求める請願の願意は当然であり、不採択でなく採択を求めます。
請願第57号「子ども・子育て関連法(新システム)」を実施しないことを求める意見書提出の件です。
同関連法案には、公的保育を破壊するものとして、強い反対の声があがり、本県議会も、児童福祉施策としての保育制度を維持することを求める意見書を提出しましたが、8月に国会で民主・自民・公明の三党合意によって成立が強行されました。一定の手直しはされたものの、児童福祉法第24条に基づく市町村の保育の義務をなくして、保護者と保育所の直接契約方式にし、保育料は所得に応じた負担から、保育時間の長さやサービスなどに応じた応益負担にするなど、保育を市場原理に委ね、公的保育を解体する本質は変わっていません。保育の市場化、営利化は、保育をお金次第とするもので、子供のすこやかな育ちを保障することとは相容れません。
また、請願も指摘するように、待機児童は全く解消されていないのに、新システムでは建設の補助金がないなど、いっそう困難な状況が予想されます。
以上から、子ども・子育て関連法(新システム)を実施しないよう求める願意は当然であり、不採択でなく採択を求めます。
次に、請願第59号「借り上げ復興住宅への継続入居策と早期解決を求める件」についてです。
借り上げ住宅は、阪神淡路大震災で住宅を失った被災者に対し、県が公営住宅を建てて提供する代わりに、現UR等から借り上げ、災害公営住宅として入居を認めてきたものです。本請願は、県が20年の契約期限を盾に入居者に住み替えを迫っていることに対し、希望する人に、今後も継続入居を認めるよう求めているものです。
当時は、契約期限について当局の十分な説明も行われないまま、多くの人が「終の棲家」として移り住みました。この点について、弁護士の団体である自由法曹団は、自治体が、入居者に借上げ期間満了での明け渡しを求める場合には、「入居期間満了で直ちに明け渡しが必要となることを高齢者にも分かるように充分に説明」しておくことが必要だと指摘しており、「入居のしおりに記載していた」というだけでは十分な説明とはいえません。
入居者は、17年余前に自宅を失い、避難所、仮設住宅、そしてやっとの思いで災害公営住宅に入居できました。震災からまもなく18年を迎えますが、その住宅をまた出なくてはならないのなら、被災者はいつまで苦難を強いられればよいのでしょうか。
いま入居しているのは、高齢に加え、病気、障害、体調不良、様々な生活困難をかかえる方ばかりです。「若い人もいる」と知事は述べましたが、借り上げ公営住宅入居者のうち、世帯主が66歳以上64%、単身世帯が70%を占めており、さらに若い人たちが転居することになれば、住宅のコミュニティは成り立たなくなります。
今住んでいる住宅にそのまま住み続けたいという、せめてもの願いに応えて、希望する全ての人に継続入居を認めるべきです。
以上の理由から本請願は、不採択でなく採択を強く主張するものです。
請願第55号および請願第56号「教育予算を増額し、豊かな障害児教育の実現を求める件」についてです。
本請願は、1万6650名もの署名が寄せられた切実な請願です。
請願にある「障害者の権利条約」は、障害のない市民との平等性や公平性を繰り返し強調しています。
しかし、障害児の教育条件の現状はまだまだ遅れています。県の「第一次振興計画」にもとづいて、特別支援学校が新設されましたが、とくに知的障害をもつ児童・生徒の在籍数は増え続け、教室不足が深刻な状況で、一刻もはやい改善が求められています。
また、わが国では、障害のある人の就労は非常に困難で、所得水準が低く、多くが家族へ依存しなければ地域生活が成り立たたないという状況です。
たとえば、全国の作業所などでつくる団体「きょうされん」の調査では、就労支援関係の施設・事業所を利用する障害者1万人のうち、10代から40代前半までの約6割が親と同居しており、年収は100万円以下が56%、200万円以下が99%を占めました。県内でも、グループホームなど生活の基盤整備は遅れ、作業所などいわゆる福祉的就労の場も限られ、一般就労も進まない状況にあります。
こうした状況をなくし、誰もが自由で豊かな人生を地域で送ることが出来るインクルーシブな社会実現のために、条件を整えるべきだとする願意は当然です。よって不採択でなく採択を求めます。
請願第50号「教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求める件」についてです。これは4万8266名からの切実な願いです。
請願要旨にあるように、少人数学級は国により小学校2年生まで35人学級となり、さらに、全国的には、多くの自治体の努力で中3まで広がっています。
兵庫県においても、小学校4年まで実施されているところであり、さらに少人数学級拡充を求める声が広がっています。
その実施は本来国が行うべきですが、県として小4まで実施し、教育効果も認められているなかで、県の責任で中3まで、さらに高校まで実現してほしいと教職員・父母・県民は強く願っています。すべての子どもたちの学習権を保障する立場から、30人学級実現や教育無償化の前進のために教育予算を増額することを求める本請願の趣旨は当然であり、不採択でなく採択を求めます。
請願第48号「教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する件」および第49号「教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求める件」についてです。
公立高等学校の無償化が実施され、私立学校でも就学支援金制度により、かなり経済的負担が軽減されてきました。
しかし、県が県単独の予算を減らしているために、上乗せ部分がうすく、生活保護世帯でさえも授業料負担が一部残され、実質無償化は実現していません。
また、請願にあるように、公立にくらべ、入学金等の学費負担はひきつづき重く、兵庫県内の平均の初年度納入金は85万円となっています。県は補助を授業料相当分しか見ていませんが、京都や広島では低所得者には納付金全額を補助する制度にしており、県の制度の改善が求められています。
実質無償化で父母負担を減らすとともに、経常費補助や耐震補強の予算を増額し、条件を整備することを求める請願の趣旨は当然であり、両請願は不採択でなく採択を求めます。
次に、請願第24号「社会保険診療報酬に係る消費税非課税制度の是正を求める意見書提出の件」についてです。
公的医療は高度の公共性を持つことから、医療費に対する消費税は非課税とされていますが、医療機関が医療機器や薬品を購入したり、病院施設の増改築のときには消費税がかかり、その分は医療費に添加はできず医療機関の自己負担となっています。日本医師会の試算では、医療機関の損税は2,330億円に上ると言われています。
従来、国は、診療報酬に上乗せして損税を補てんしているとしてきましたが、この間の社会保障と税の一体改革の議論の中で補てんが不十分であることを認め、解消にむけた検討の場を設けるとしています。しかし、その方向は、診療報酬の中で対応するという従来の延長線上であり、損税を全額補てんするものではありません。損税の発生が税制上の欠陥である以上、税制によってのみ抜本的に解消されることから、本請願が求める仕入れにかかった消費税を全額控除する、すなわちゼロ税率の導入が一番ふさわしいと考えます。国の検討を待つのではなく、本請願は継続ではなく採択を求めます。
最後に、請願第52号「尖閣諸島等の領土の実効支配を推進するための法整備を求める意見書提出の件」についてです。
わが党は、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当であるという見解を明らかにしています。
第一に、日本は、1895年1月に、尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは「無主の地」の「先占」――持ち主のない土地を先に占有するという、国際法上正当な行為でした。
第二に、中国側は、尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないということにあります。
第三に、尖閣諸島に関する中国側の主張の中心点は、「日本が日清戦争に乗じてかすめ取った」というものです。しかし、日清戦争によって日本が不当に奪取したのは、台湾とその付属島嶼(とうしょ)および澎湖(ほうこ)列島であり、尖閣諸島はそのなかに含まれておらず、中国側の主張は成り立ちません。
問題は、歴代政府が、問題を棚上げにし、「領土問題は存在しない」との立場だけを繰り返してきたことから自縄自縛に陥り、領有の正当性を主張してこなかったことにあります。冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張することがいまこそ求められます。請願が求めているような、物理的対応の強化は、問題をこじれさせ、理性的な解決の道を閉ざす危険な道につながると考えます。よって同請願は採択でなく、不採択を主張します。 |