私は、日本共産党県会議員団を代表し、上程中の議案の内、第100号、第102号、第105号ないし第108号、第113号、第115号の8件に反対し、以下その主な理由を述べます。
消費税増税にともなう県税条例改定に反対
まず第100号議案、兵庫県税条例等の一部を改正する条例の件です。
これは、社会保障と税の一体改革関連法で消費税を2014年には8%、2015年には10%へと引き上げられると同時に、地方消費税の税率を上げることを条例として定めるものです。
知事は、消費税は「地方財源の安定財源」として必要と言いますが、消費税が増税されれば、消費が冷え込み、その結果税収減となるのは、消費税が5%に引き上げられて16年、国と地方合わせた税収が減り続けていることからも明らかです。また、増税による新たな税収を、無駄な大型公共事業へ使うことが附則に付け加えられており、財政危機打開のためという理由も成り立ちません
所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性は、消費税の根本的欠陥のひとつです。民主党政権も消費税の逆進性を否定できず、当初の政府案では「低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を導入する」としていました。これが民自公3党の談合によって検討課題にされ、また当初の政府案には「税体系全体の再分配機能を回復」させるとして、わずか5%ながらも所得税と相続税の最高税率を引き上げる条項を盛り込んでいましたが、これらもすべて削除されました。
また、消費税のもうひとつの根本的欠陥である、販売価格に消費税分を転嫁できずに身銭を切らされることによって生じる中小企業の「損税」は少しも緩和されません。
消費税増税は暮らしと経済、財政を破壊し貧困と格差を拡大します。逆進性と「損税」の矛盾を激化させる消費税増税は中止すべきです。
国民の所得を増やす経済改革とともに、むだの一掃と大企業・富裕層への適正な課税、累進課税の強化を段階的にすすめれば、消費税に頼らなくても財政危機を抑えながら社会保障の再生・充実を図ることができます。
消費税増税を前提にした本条例改定案には同意できません。
収納率強化の危険のある国保県調整交付金
次に第102号議案、国民健康保険調整交付金の交付に関する条例の一部を改正する条例の件です。
これは、財政支出の削減を目的とした国保の広域化の促進をねらった国保法の改定によるもので、扶養控除の廃止による税収の増加分を財源に県が調整交付金として交付する率を2%増やし、その分定率国庫負担をこれまでの34%から32%へと2ポイント引き下げるものです。
1984年に国庫負担の大幅削減が行われ、その後も国庫負担が減らされ続けた結果、保険料が払おうにも払えないほど高くなっており、保険料を滞納している世帯が県下で2割にのぼっています。こうした状況のもとで、さらに定率国庫負担を減らせば、市町の国保財政に更なる影響をもたらします。いま必要なことは、定率国庫負担を増やし、高い保険料を軽減することです。
これまで、県の調整交付金は国保料の収納率を高める取り組みなどを行った市町に多く配分される仕組みになっています。今回、都道府県調整交付金の割合が高くなることから、ますます収納対策の強化が予測されます。もちろん収納率を高めるために努力することは必要ですが、“そもそも負担が重すぎて払えない”という根本問題を放置したまま、保険証の取り上げや差し押さえなど滞納者を締めつけるだけでは、収納率が抜本的に改善するはずはありません。生活困窮者を医療から排除し、苦難に追い打ちをかけるだけです。ますます弱者切り捨てにつながることが懸念されることから、この件については反対いたします。
国営事業、問題のある事業などの市町負担に反対
第105号議案、「国営加古川水系広域農業水利施設総合管理事業についての市町負担額の決定」、第106号議案、「国営土地改良事業についての市町負担額の決定」の件は、国が行う水利施設の管理事業と施設整備、国営土地改良事業について、市町と農家負担を求めるものですが、もともと広域的な事業で、本来、国で一元的、総合的に行うべきものであり、市町負担そのものに反対です。
議案第107号、「県が行う建設事業についての市町負担額の決定」は、県が行う急傾斜地崩壊対策事業、街路事業、流域下水道事業などの建設事業についての市町負担額を決めるものです。
尼崎市内を東西に走る園田西武庫線の街路事業は、三菱電機の敷地内909mを総事業費174億円、1m当たり1900万円かけて整備するものです。この総事業費の内、約6割の100億円は、三菱電機に対する用地買収と工場内の物件を玉突き移転する補償費で、余りにも高い補償費です。昭和21年に戦災復興事業として都市計画決定され、50年近く凍結されていた事業を、阪神・淡路大震災の復興事業として位置づけを変えて再開されたものですが、わが党は、当初から指摘したようにこの財政難のおり、莫大な補償費を支払ってまで進める必要はなく、市町負担に反対です。
宍粟市の広域基幹農道は、ライスセンターへ行くのに市街地の渋滞を避けるとして、谷筋1.8キロメートルの農道を約20億円もかけて整備するものですが、地元の反対もあり、必要性に疑問がある道路です。国の事業仕分けで予算が大幅削減されたため、昨年10月、県はトンネル部分の工事契約締結直前に事業を凍結したにもかかわらず、トンネルに続く道路建設については、再検討も行わず工事を続けてきたことも問題です。
基幹林道千町段ヶ峰線は、生態系の分断や破壊が問題で、地元負担の合意もありません。これらの不要不急の事業が含まれていること、急傾斜地など防災に関わる事業や広域的な事業は県が行うべきで、市町負担は認められません。
議案第108号は、国営明石海峡公園整備事業についての地元神戸市の負担額を決めようとするものです。
今回の事業は、神戸側の入り口、「あいな口」のエントランス部分を整備するもので、事業予算は約6億円、その内、神戸市に約1億円の負担を求めるものです。
しかし、もともとこの国営明石海峡公園整備事業は、神戸地区と淡路地区をあわせて、約1千億円を投じて330haもの巨大な公園整備が進められているものですが、その隣接地には、同様の広大な公園施設である神戸市の「しあわせの村」がすでに整備されており、事業そのものの必要性がありません。また、国直轄事業は、地元負担を求めるべきではありません。
問題のある県立大学の独立行政法人化
第113号議案、「公立大学法人兵庫県立大学定款の制定」の件です。
公立大学の法人化は、構造改革路線の一環で、経済的利益を生むかどうかを物差しに、大学予算の削減と一部の大学だけを残すという、競争を押し付けたものであり、学術の発展そのものが危ぶまれるものです。
県立大学の法人化も、教職員と予算の削減を目標とした第二次行革プランの中に位置づけられています。
教員の身分は、非公務員化となり評価制度が持ち込まれ、不安定な身分となることや、人員削減等で学術研究にも支障が出ることが懸念されます。
大学運営費も、授業料、入学料、外部資金等の大学の独自財源と、県からの運営交付金でまかなうとされています。授業料は、上限を決めた範囲で法人が自由に決めることができることから、授業料値上げが予想されることなど、今でも学費が高すぎて学生の学ぶ機会を奪っていることが問題となっており、これ以上の値上げは許されません。
理事長が学長を兼務することについても、強大な権限を与えられた理事長と、理事長が任命する教育・研究に直接関与しない学外者による経営審議会で大学の運営方針が決められることにも危惧があります。本来、経営と学問は分けて、大学の発展を追求すべきです。以上の点から同意できません。
議案第115号、一般国道178号、浜坂道路余部・新桃観トンネル工事請負契約・締結の件です。
この国道178号浜坂道路についても、鳥取・宮津自動車道の一部区間を高規格道路として整備するものですが、わずか6分の短縮のために、9キロの浜坂道路全体で、245億円投入する総事業費は,過大であることから反対です。
保育水準の向上こそ
最後に、第99号議案について、一言指摘しておきます。
これは地域主権一括法により、社会福祉法、生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、障害者自立支援法及び介護保険法で定める社会福祉施設等に関する基準について、県の条例で定めるものです。この中で特に「保育施設の設備及び運営に関する基準の条例化」について、兵庫県保育協会や兵庫県保育所運動連絡会などから、複数回にわたり、基準の条例化に向けての提言、陳情も出されているところです。今回の県の条例化では調理師の配置や医務室の設置などは条例化されたものの、保育の充実や安全を保障する、保育士の配置基準の上乗せ、乳児室の面積基準の上乗せ、障害児の受け入れを進めるための職員の加配などの措置については、国からの財源移譲がなく県の財政負担が発生するとの理由で今回は条例化が見送られました。本来、ナショナルミニマムとして全国どの地域でも豊かな保育が保障されるよう、以上の項目は必要なことでありますし、国が財政措置をすべきですが、県が条例化することになった以上、県下の実情を踏まえて出された提言の趣旨は最大限尊重されるべきで、国には引き続き財政措置を求めつつ、県としての財源確保の努力を求めます。今後、これらの基準の上乗せが条例化されるよう、議会全体での努力が求められます。
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