出先機関の早期移譲のねらいと目的、意見書提出に反対
私は日本共産党県会議員団を代表して、意見書案第28号の「地方の自主性と自立性が確保された形での国出先機関の事務等の早期移譲を求める意見書」案に反対する立場から討論を行います。
国の出先機関の原則廃止について、現在検討されている移譲対象の内容などについて意見を国にあげるというものですが、わが党は、そもそも国の出先機関を廃止することに一貫して反対をしています。 自民党政権、自公政権の地方分権改革、それをひきつぐ民主党政権の地域主権改革は、80年代初頭の第二臨調の諸答申いらい、それまでの護送船団方式で利益をあげていた高度経済成長が終わり、低成長になるなかで、財界人が政府の諮問機関に自ら入って、利益を維持するために提言したことから始まったものです。国と地方の形を財界の利潤追求に都合のいいように根本から作り変えようと、国の形を「小さな政府」にして、国の役割を「外交、防衛などに重点化」し、「身近な行政はできるだけ身近な自治体で」と地方に役割分担し、最終的には都道府県を廃止して道州制に、市町村を広域自治体化にすることが目標です。
地方に自立性、自主性をなどといっていますが、実際には国民の社会保障や暮らしを守る国の責任を放棄して、国から地方への財政支出を減らすことを中心にすすめられています。 憲法は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し、どの地域に住んでいても一律の公共サービス(ナショナルミニマム)を保障し、国は国民に対してナショナルミニマムを保障する責任があります。 しかし、規制緩和とともにすすめてきた地方分権改革が、「三位一体改革」や「市町合併」などで、国から地方へ財政支出を削減し、地域間格差を作り出し、地域経済と住民の暮らしをいっそう疲弊させたことは明らかです。
身近な地方の判断と責任において行政運営ができることが、住民の福祉向上につながると説明していますが、国民の権利を守る国の責任がなくなれば、最低限度の国民の生活も保障されず、地域間の格差がいっそう広がり、住民の福祉はさらに大きく後退することは必至です。 日本国憲法と地方自治法の精神を踏みにじる、地方分権改革、地域主権改革の一環としてすすめられているのが国の出先機関の廃止です。
国の出先機関の廃止については、全国で4分の1を超える447人の市町村長が参加する「地方を守る会」は「国民の安全を軽視するものだ」と批判し、「拙速に国の出先機関廃止論を進めないよう」要望する決議を3月の総会で採択しました。
そこでは、「国の出先機関廃止の方針は不安でならない。廃止後の受け皿となる広域連合で、災害時に役にたつのか、国の出先機関改革に疑義を唱えていく」「最近でも東日本大震災や台風12号被害を受けて、復旧活動で、地方整備局の役割と重要性が改めて認識されている。」といった声がたくさん出されています。
全国の市町村長会からも、「整備局の地方移管は、国の責任をあいまいにする。国土を守ることは国の責任だ」「要望しているのは整備局の廃止ではなく機能強化だ」「国の出先機関廃止は止めた方がいいのではないか」といった声もあがっています。
兵庫県でも、「行革プラン」で地方の土木事務所や健康福祉事務所などが統廃合され、新型インフルエンザや豪雨災害の時などに、職員が災害現場に行けなかったり、県民からの相談の対応が十分にできなかったなど、県民の安全を守るうえで県の役割が果たせませんでした。 同じように、国の出先機関の廃止によって、国の責任、国民の安全を守る機能の低下が懸念されます。
また、関西広域連合が地方分権改革の突破口と位置づけて、国の出先機関丸ごと移管を求め、当面求めている「近畿地方整備局」と「近畿経済産業局」「近畿地方環境事務所」が移譲の対象とされていますが、これは公共事業の計画と執行にかかわる権限と財源を国から関西広域連合に移管し、自由に采配できることが狙いです。
そしてその中身は、関西財界が打ち出した「関西版ポート・オーソリティ構想」で、「グローバル化した国際競争に関西が一丸となってたちむかう」ために、関西広域連合が関西の一元的な管理主体として事業会社と連携し、広域交通・物流基盤を一体的に運営する機能を担う」と強調しているように、港湾・道路・空港など関西の主要なインフラを関西広域連合で「ひとまとめ」にして、民間会社に管理を任せて、関西財界のさらなる利益を確保することがあからさまに表明されています。
出先機関「丸ごと移管」は関西財界の経済戦略と一体のものであり、「丸ごと移管」後に、公務員のリストラも宣言されており、国民、県民の暮らしのための「改革」とは縁もゆかりもないものです。
国民の命や安全を守る国の責任を放棄する、地方分権改革、地域主権改革の一環としてすすめている国の出先機関廃止は認められません。
よって、国の出先機関の早期移譲などを求める本意見書案に反対です。
最後に、兵庫県議会の各会派政務調査会長会運営要綱の第6条で、政務調査会における協議又は調整にあたり、議会としての機関意思を表明する案件については、全会派一致を原則とすると取り決められており、さる6月7日の第1回各会派政務調査会長会で改めて確認されたところです。また、平成19年6月5日の議会運営委員会でも、意見書、決議の取り扱いの基本的な考え方として、意見書・決議は、議会として機関意思を対外的に表明するものであるため、最大限の重みを保持するよう、全会派一致によって議案を提出することが全国的にも先例となっており、兵庫県議会もこれを基本とすると確認されています。
しかし、本意見書案は、政務調査会長会でわが党が先に述べましたように理由を示して反対したにもかかわらず、自民、民主、公明の3党が合意して、緊急性、重要性を理由に、本会議に提出されました。
これは、一方的な立場からのものであり、全会派一致の原則をふみにじって強行されたことは極めて遺憾であり、抗議をします。また、活発な討論やチェック機能の強化など議会改革をすすめようとしている視点からもみても、このような運営は考え直す必要があると指摘して、今後このようなことがないように強く求めて、討論を終わります。
ご清聴ありがとうございました。 |