台風災害対策、被災者支援
■質問■ 東日本大震災と原発危機、連続する台風災害、災害から住民の命と暮らしをいかに守るのか、地方自治体のあり方や施策を根本から見直すことが迫られています。被災者が一刻も早く元の生活に戻れるよう、また、県民の切実な願い実現に向けて、以下7項目にわたって質問いたします。
まず、台風災害についてです。
犠牲になられた方々のご冥福と被害に遭われた方々へ心からお見舞い申し上げます。兵庫県における被害は決して小さいものではありません。台風12号、15号では、一人が亡くなり、家屋の被害は合わせて全半壊6棟、一部損壊20棟、床上浸水1549棟、床下浸水5922棟に上り、浸水家屋数は近畿で最多となっています。河川、道路や農業、農地被害も深刻です。
日本共産党県会議員団は、高砂、加古川、西脇、淡路市、多可町などで現場調査を行い、被災者の声をお聞きし、緊急要望も行ってきたところです。
杉原川では家屋が流され、全壊する被害が出、護岸が大きくえぐられ、堤防が崩落した箇所が数十ヵ所も生じています。周辺の田んぼでは、収穫寸前の稲が、流れ込んだ土砂で埋まっていました。
高砂市では、600棟以上が床上浸水し、法華山谷川では以前から河川内の土砂の堆積が問題になり、住民が繰り返ししゅんせつを要望してきましたが、県から「行革で予算がない。待ってほしい」と言われたとのことでした。
淡路市では、300棟以上が浸水した志筑地区を訪ねました。どのお宅でも総出で畳や家財道具の運び出しに追われ、1階で美容院を営み、床上浸水に遭ったお宅では、100万円のエアコンなどが壊れ、散髪いすも衛生上、もう使うことができず、家財道具も使うことができません。裏山が崩れて、半壊とされたお宅では、ライフラインを土砂が直撃、土砂を撤去し、傷んだ家を修復し、家財道具を買い直すには何百万円ものお金がかかります。
ところが発表された補正予算では、被災者に渡されるのはわずかに全壊で20万円、半壊10万円、床上浸水5万円の見舞金のみです。今回は全壊、大規模半壊であっても、被災者生活再建支援制度の対象にならず、被災者が何の公的支援も受けられずに、借金を背負うことになりかねません。
また、県は、2年前の北西部豪雨災害のときには、半壊25万円、床上浸水15万円の独自支援を、金額は5年前より減らしたものの、曲がりなりにも行いましたが、今回はそれも盛り込まれていません。被災者一人一人にとっては、住宅や生活手段を失った重みは、これまでの災害と同じです。法の要件に合わないことや、住宅再建共済制度を理由に県が支援しないことは、自然災害からの住宅と生活再建を自己責任に逆行させるものです。公的支援がないもとで、被災者の生活再建がどんなに大変か、ひいては地域経済への打撃につながることを兵庫県は身をもって知っているはずではありませんか。
そもそも、なぜ県は災害救助法を活用して、被災者を救助しようとしなかったのでしょうか。災害救助法は、法による救助を行うのは都道府県知事と定めています。今からでも浸水被害の大きい市町に、災害救助法の適用を行うとともに、台風12号、15号による全壊、大規模半壊の被災者に、被災者生活再建支援制度と同等の支援と、半壊、床上浸水には、それぞれ50万円、25万円の支援を県として行うことを求めます。知事の真摯な姿勢をお答えください。
▼答弁▼井戸敏三:まず、台風災害対策被災者支援の強化についてお尋ねがありました。被災者の生活再建は、自らの自立的な復旧・復興に向けた自助努力、県民相互の助け合いによる共助、そして、これらを支える公助が相まって実現されることが基本であると考えています。
本県では、平成16年の台風第23号等の災害後、住宅再建共済制度を創設し、平成21年の台風第9号による被害を教訓に、家財再建共済制度を追加創設しています。これらは共助の精神に基づき、県民が自然災害から自己防衛できる仕組みとして創設したものであり、生活再建に向けた県民の自助を支える共助の仕組みとして創設し、運用させていただいています。
このたびの台風災害では、兵庫県独自の災害援護金の支給を行いました。また、住宅の補修、自家用車、家財の買い換え等を対象にした被災者生活復興資金の無利子貸し付け、住宅災害復興ローン貸し付けなどの公的支援に加えまして、住宅再建・家財再建共済加入者には、所定の給付金が支給されることになります。
県としては、被災者に対する必要な措置は、今回の災害に応じて講じたものと考えております。なお、平成16年、平成21年には、県内で被災者生活再建支援法が適用されたため、一部の要件該当者に支援金が支給されたこととのバランスを考慮して、特別な給付金制度を設けましたが、このたびは被災した全壊戸数が基準に満たないなど、県内に被災者生活再建支援法の適用がありませんので、このような状況から、特別な措置をとらなかったものです。
また、今回の台風災害では、災害対策基本法に基づき、被災市町により適切な救助が行われています。災害救助法の適用についてお尋ねがありましたが、この災害救助法の適用の基準被災世帯数に唯一達した高砂市、これにおきましても、床上浸水で3戸がありますと、全壊1戸に換算するという機械的な基準ですが、その基準に唯一達した高砂市におきましても、9月4日未明に1時間69ミリの短時間豪雨が降りまして、その2時15分に避難勧告が発令されましたが、午後にはもう水もすっかり引き、避難者もその12時には52世帯、114人が避難していましたが、17時には2世帯7名になり、翌日にはすべての避難所が解消されておりまして、応急仮設住宅の設置や救護所の開設、仮設トイレの設置など、災害救助法に基づく救助を必要とする状況に幸いにも至りませんでしたので、災害救助法の適用はしないこととし、高砂市とも十分協議の結果、判断したものであります。
自然エネルギーの本格的導入
■質問■ 野田民主党政権は、原発推進と原発再稼働を進める方向を表明し、国連演説では、「福島第一原発の放射性物質の放出量は400万分の1に抑えられている。年内の冷温停止をめざす」と述べ、原発の海外輸出を念頭に、日本の原子力発電の安全性を最高水準に高めるとして、世界に向けて新たな安全神話を振りまきました。
しかし、原発事故発生から半年が過ぎた今も、収束とは程遠い状況です。原子炉の内部は、誰も正確に確認できておらず、放射性物質の状況も分かっていません。何をもって400万分の1か、その根拠も示されず、仮に冷温停止に成功しても、知見で広島型原爆の20個分と言われる放出された放射性物質の土壌などの除染は始まったばかりで、汚染物質や土壌の保管場所も全く見通しが立っていない、これが現状です。
一方、避難生活を余儀なくされている住民は、家も仕事も、地域社会とのつながりも奪われ、耐え難い生活を強いられています。今回の原発事故は、他の事故とは全く質の異なる危険なものです。原発が存在する限り、この危険と常に隣り合わせであり、全国で脱原発、原発縮小の世論は大きく高まっています。
原発をめぐるこの重要な局面において、兵庫県知事として県民の命と財産を守る立場から、原発からの撤退の立場を明らかにして、国や関西電力、そして県民に働きかけるべきではないでしょうか。
6月議会での我が党の質問に対し、知事は、国が新たな安全基準を明示し、基準に照らして電力会社の対応の適否の判断をすべきだと答弁されました。しかし、国や東京電力による福島第一原発の事故原因の究明は明らかにされておらず、安全性を保障するものなど何ら示されない中で、再稼働は到底認めることはできません。
そこで、改めて関西電力の美浜原発1号機など、停止中の原発再稼働を行わないよう、政府と関西電力に申し出を行うことを求めます。
一方、自然エネルギーの導入に向けた県としての本格的取り組みが求められています。県は、新兵庫県地球温暖化防止推進計画の中で、グリーンエネルギー10倍増作戦を展開してきました。しかし、目標に対する2009年度までの達成状況は5割程度、目標達成が難しくなった主な理由の一つは、風力発電の設置計画が、人体や野生動物などへの悪影響が懸念され、住民の同意が得られなかったこと、もう一つの太陽光発電の設置については、国、県の補助制度がそれぞれ中断され、一貫性がなかったことなどを指摘しなければなりません。
そこで、グリーンエネルギー10倍増作戦の次期計画として、目標を抜本的に引き上げた総合的な計画を早期に策定し、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの各目標と具体的推進プログラムを作り、県の推進体制も現在の「エネルギー対策室」から「推進課」等へ充実を図ること、具体的には太陽光発電について、特に民間住宅の場合、補助単価を大幅に引き上げるとともに、県内業者へ発注した場合の補助増額など、広範な県民や中小業者が参加できる制度へ拡充を求めるものです。
また、小水力、小型風力発電導入が進まない最大の問題は、初期投資が大きいため、市町も民間も踏み出せないのが現状です。初期投資を大幅に引き下げるための技術開発が不可欠です。県として、小水力発電、小型風力発電の技術開発のため、地元中小企業、工業技術センター、大学等が連携して取り組めるよう支援を行うことを提案したいと思いますが、どうでしょうか。原発からの撤退についての知事の立場と、関西電力の停止中の原発再稼働に関する件と併せて答弁願います。
▼答弁▼井戸敏三:原発からの撤退と自然エネルギーの本格的導入に向けた取り組みについてです。
原子力発電は、これまでも地域における産業の発展や住民生活を支える電源として重要な役割を果たしてきました。しかし、一たび事故が起これば、長期間、広域的で深刻な影響が生じます。そのため、安全性と信頼性が確保されて初めて運用することができるものです。
今回の事故の原因究明とこれへの対策を含めた安全基準が明確にされ、これがクリアされることが原発再稼働ための前提条件となると考えています。したがって、今直ちに再稼働が認められるものではなく、国における厳密な審査に待つべきものと考えています。
また、原発の是非についても、そうした明確な安全基準と国の中長期のエネルギー政策のもとで、国民的議論がなされるべきであり、今は原発自体の適否を決める段階にはない、このように考えています。
一方、過度の原発依存は課題があるものと考えます。したがいまして、再生可能エネルギーの導入など、エネルギー源の多様化と自給率を高めることが必要であります。しっかりとしたエネルギービジョンのもとに、国、地方を挙げて取り組む必要があります。
当面、こうした枠組みがない中でも、県としてできることはできることとして対策をとることが必要だと考えています。具体的には、太陽光発電設備への住宅への補助、低利融資制度などの財政支援や太陽光発電相談指導センターを設置して、相談に乗らせていただいていますし、住民出資型の太陽光発電設備導入事業を検討しています。また、技術革新に向け、工業技術センターにおいては実証研究を行うこととしています。再生可能エネルギー導入の壁となる規制を特区などによりまして改善することや、普及の鍵となります買取価格などの適正水準を国に強く働きかけるなどいたしまして、現時点での可能な取り組みを進めてまいります。
こうした取り組みを全庁的体制で推進するため、エネルギー対策推進本部を強化し、この事務局を担い、総合調整を行うエネルギー対策室を設置することにしたものです。さらなる事務局体制の充実については、関連事業の推進状況に応じて検討していきます。
今後とも県民、事業者とともに多様なエネルギーの創造につながるよう、国のエネルギー基本計画の見直しの動きも見ながら取り組んでまいります。
こども・子育て新システムに反対を
■質問■ 子供はどんな地域、どんな家庭に生まれても、すこやかに育つ権利がひとしく保障されなければなりません。しかし、政府が来年の通常国会に提出する「子ども・子育て新システム」は、児童福祉法第24条に基づく市町村の保育の実施義務をなくして、保護者と保育所の直接契約方式にし、保育料は所得に応じた負担から、保育時間の長さやサービスなどに応じた応益負担にするなど、保育を市場原理に委ね、公的保育制度を解体するものです。
経済効率が優先されるため、できるだけ手のかからない子供が優先され、障害のある子供などが排除されて、必要な支援や保育を受けられなくなることが心配されています。今、保育現場では、発達障害の子供が増えていることや、家庭に問題がある子供も増えて、対応に苦労されています。また、食物アレルギーも増えて、除去する食物もさまざまで、調理器具や配膳も別にするなど、本当に大変になっているのです。
西宮市のある保育所では、定員弾力化で子供が増え、職員がその負担などで体調を崩し、次々と療養休暇に入り、職員体制で困難がずっと続いていることもお聞きしました。
このような大変な現場に保育もお金次第で格差を持ち込む「子ども・子育て新システム」が導入されたら、保育が必要な子供たちのすこやかな成長の場が奪われると危惧する声が大きく広がっています。
兵庫県議会でも、昨年12月議会、「児童福祉施設としての保育制度の維持と改善を求める意見書」が全会一致で採択されました。全国47都道府県中33の府県で、次々と現行の公的保育制度を解体させてはならないとの意見書が採択されています。
政府は、待機児童解消策として、これまで定員を増やして、保育所に子供たちを押し込んできました。1948年に策定された我が国の保育所面積最低基準が、世界水準から見ても低いにもかかわらず、西宮市など土地の価格が高くて、待機児童が多い地域に、国が保育所面積基準を暫定的に緩和できる特例措置制度を作り、さらに、子供たちを詰め込もうとしています。
保育所整備を進めるために、国や県の責任で積極的な財政支援を行うとともに、現行保育制度を堅持し、公的保育制度を解体する「子ども・子育て新システム」導入を撤回するよう、知事は国に求めるべきです。答弁ください。
▼答弁▼井戸敏三:子ども・子育て新システムについてお尋ねがありました。
子ども・子育て新システムは、子ども・子育て家庭を社会全体で支えるため、幼保一体化を含め、制度、財源、給付について市町村を実施主体とした包括的・一元的な制度と改め、これを国、都道府県が重層的に支える仕組みとなっています。また、この仕組みでは、待機児童がいる場合や、障害者やひとり親家庭などには市町村が施設と利用調整し、サービスを受けられるようにする仕組みが設けられております。また、低所得者等の利用者負担のあり方が検討課題とされ、現在、子ども・子育て新システム検討会議の基本制度ワーキングチームで検討されております。
県としては、基本的には、このシステムは、保育に欠ける、欠けないにかかわらず、就学前の全ての子供が保育サービスを利用できる幼保一体化の実現に資することから、有益な制度であると考えています。
このため、さらに保育の質を高め、地域の実情に応じた制度となるよう、地方裁量の拡大と財政措置の充実、特に都道府県の財源措置が明瞭ではありませんので、そこを明確にすることなど、国に対し提案しています。併せて、全国知事会を通じて国と地方の協議の場等においても、県の提案の実現を図ってまいります。
なお、この制度が創設されるまでの間につきましては、安心こども基金の拡充・延長を国に提案しております。これにより、保育所等の整備を着実に進めてまいります。
いずれにしましても、子ども・子育て新システムによる課題は解決を図りながら、原則として、よりよいものにしていく、そのような基本姿勢で臨んでまいりたいと考えています。
こども・障害者医療費の所得制限の強化の撤回を
■質問■ 私たちは、次代を担う子供は社会の宝であり、子育て支援の大きな柱として、こども医療費を中学卒業まで自己負担、所得制限なしで無料化することを一貫して求めてきました。
この間、県民の世論と運動で、兵庫県ではこども医療費助成対象を、入院は、昨年4月から中学3年生までに、あす10月1日から、通院を小学6年生まで拡充することとなりました。その一方で、世帯合算方式へと所得制限が強化されると、子供の医療費だけでなく、重度障害者、乳幼児合わせて県全体で約5万7000人が新たに助成の対象から外され、制度の重大な後退を招きます。
全国では2010年度、子供の医療費助成で所得制限がないのは14府県、また、重度障害者の医療費助成で所得制限がないのは8府県です。兵庫県の現在の所得制限基準は、自立支援医療制度を準用し、特別児童扶養手当、もしくは特別障害者手当を準用している21都道府県と比べて、今でも厳しいものとなっています。
県は、「福祉医療助成の趣旨は、支援が必要な者に対して、医療保険制度の自己負担を軽減することなので、患者一部負担も所得制限も必要である」という立場です。しかし、日本の国民皆保険は、いつでも、どこでも、だれでも、医療機関を受診できることが理念であり、社会保障としての公的医療制度が本来の姿です。
日本医師会は、日本の患者一部負担は重過ぎて、そのことが受診抑制を起こしていると警鐘を鳴らし、かねてから患者一部負担引き下げを提案し、特にこども医療費については、親の所得に関係なく、中学卒業まで無料化すべきであるとしています。
私の地元、西宮市では、安心して子供を産み育てるには、子育て世帯の経済的負担を軽減することが重要であると、子供の医療費を昨年7月から中学卒業まで、通院、入院とも無料化しました。「いつでも子供を病院に連れていけて安心」など、市民に大変喜ばれています。西宮市以外にも、小野市、相生市、赤穂市、たつの市、福崎町が、中学卒業まで通院、入院とも無料化しました。小野市に引き続き、たつの市も所得制限が撤廃され、県下7市町が所得制限そのものを撤廃しています。
市町が県の制度に上乗せをして行っている施策の充実に、県が後押しすべきではないでしょうか。市町の頑張りに水を差し、子育て支援に逆行する福祉医療費助成の所得制限の世帯合算方式への強化の中止と撤回を強く求めますが、知事の心ある答弁を求めます。
▼答弁▼久保修一健康福祉部長:私からは福祉医療費助成の所得制限についてご答弁申し上げます。
福祉医療制度は、支援を必要とする者に対し、医療保険制度の自己負担を軽減することを目的としておりますことから、所得制限は必要であると、このように考えております。乳幼児医療、こども医療、障害者医療の所得制限は、一般医療に比べ、より医療の必要性の高い更生医療等を対象とする自立支援医療制度との均衡を考慮して設定したものでございます。所得の判定単位につきましては、世帯合算で行う方が世帯の実力を測る意味からも望ましいと考えておりまして、自立支援医療費や老人医療費に準じ、より公平性を図る観点から見直しを行うものであり、撤回することは考えておりません。
市町の独立措置は、それぞれの地域の実情に応じて設けられたものでございまして、県の制度は全ての市町に共通する基盤の制度としての実施を行っているところでございます。また、子育て支援の観点を踏まえ、こども医療費助成事業の通院の対象を小学6年生まで拡大したところでございます。福祉医療制度は、県民の安全・安心の基盤の制度として大きな役割を果たしているため、将来にわたり持続的で安定した制度として維持することが適切であると、このように考えております。
高校の学区拡大を白紙に戻す
■質問■ この6月30日、兵庫県教育委員会の諮問機関である県高等学校通学区域検討委員会は、通学区域を現行の16学区から5学区に統合、全学区で複数志願選抜を導入し、2014年度、現在の中学1年生の受験時から実施するとした素案を発表しました。これに対し、県下各地から反対の声が広がり、9月16日の検討委員会では、最終報告の取りまとめを次回に持ち越す事態となっています。通学区域や選抜方式は、生徒の進路、保護者の教育権にかかわる重大な問題です。
県民の傍聴や参加を認めない非公開・密室で審議を行い、7月に実施した2362通に上る県民のパブリックコメントに至っては、最終報告がまとまるまで公開できないと、再三の公開要求を拒否し、一切、県民にいまだに明らかにされていません。
説明会では、「高校が遠くなって通えなくなる」、「通学費の負担が増える」、「地域の高校がなくなるのではないか」、「選択肢を広げるというが、広がるのは一部の生徒だけ、複数志願で成績中・下位の生徒は選択肢が限られる」等々の不安や疑問の声が相次いで出され、その後の梶田叡一検討委員長が出席した説明会でも異論が噴出しています。
市町議会、市町の首長・教育委員会による反対の発言、動きも相次いでいます。明石市では、市長自ら説明会に参加し、「半世紀ぶりの改革をなぜこんなに急ぐのか」などと発言、7月には市議会議長・教育長と連名で、学区再編に反対し、明石学区の維持を求める要望書を提出、但馬地域では、8月に開かれた知事を囲む地域づくり懇話会で、豊岡市議会議長は、「地域住民の願いを尊重していただきたいという私たちの要望が全く生かされておらず、素案に大きな驚きとショックを受けている」などと批判、宝塚市も9月、多くの課題が解決されない中での実施について、「到底受け入れることはできない」との要望書が県教委に提出され、反対や慎重審議を求める意見書は既に19市町議会に上り、神戸新聞の41市町の教育長へのアンケートでも、32%が反対の意思を表明する異例の事態となっています。
このように、県民合意が全く得られていない状況で、今回の素案を10月にも最終報告として、通学区域の変更等を2014年度に実施することは、到底認められません。県教委は、学区を広げれば、選択肢が広がるなどと言っていますが、2006年に全県1学区に広げた滋賀県では、選択肢が広がるどころか、高校統廃合の検討が始まっているではありませんか。選択肢を増やすことよりも、希望する全ての生徒に、地域に根差した十分な高校教育を保障する条件整備こそ急がれるのではないでしょうか。
公立高校の通学区域を現行の16学区から5学区に統合・拡大する等の素案を一旦白紙に戻し、計画を中止することを強く求めます。明確な答弁を求めます。
▼答弁▼大西 孝教育長:私から、高校の通学区域拡大案についてお答え申し上げます。
今回の通学区域の見直しは約半世紀ぶりの見直しでございますことから、検討委員会におきまして、3年にわたり慎重に審議をいただいております。委員会の運営についてご意見をいただきました。さまざまな視点から自由闊達で忌憚のない委員の意見を保障するため、委員会におきましては、会議は非公開とされておりますが、その審議内容につきましては、逐一県のホームページで公開をさせていただいております。
さらに、昨年4月には途中段階で中間のまとめを公表し、広く県民の方々に広報させていただきまして、意見をいただきながら、検討することとしておりまして、ご指摘のように、密室の審議とは考えておりません。
この6月の検討委員会報告素案の公表後の周知につきましても、県内各地域での説明会に加えまして、市町PTA単位でも土日、夜間も含めた説明会を順次実施しておりまして、今後とも取り組んでいきたいと考えております。
なお、検討委員会が行われましたパブリックコメントのことにつきましてもご意見をいただきました。パブリックコメントでは、2300件以上の意見をいただいておりますが、自由記載ということもございますので、それを分類して、そして適切に評価しながら、これを最終報告に反映させるため、過日開催されました第9回検討委員会におきまして最終報告とあわせて公表することとされたところでございます。
最終報告とあわせて公表するということは、当初から決めておりまして、この点につきましても、ご理解をいただきたいと思います。
また、素案の撤回というご意見もちょうだいいたしましたが、現在、検討委員会におきまして慎重にご審議をいただいているところでございます。今後、検討委員会からの報告を待って、十分にこれを踏まえ、県教育委員会として検討を行い、方針を決定することになりますが、さまざまな課題等に適切に対応しながら、県民の理解、地域の実情を踏まえながら取り組んでまいりたいと考えております。どうかご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
西宮北有料道路(盤滝トンネル)の無料開放を
■質問■ この問題では、昨日も質問がありました。私も昨年から市会議員団とともに県当局や道路公社に通行料無料化と市の12億1500万円の無利子貸付金返還を求めてきました。その中で、この7月から通行料無料化の前倒しのための市と県との検討会での協議も始まり、大いに歓迎しているところです。
西宮北有料道路は、盤滝トンネルを含む西宮市山口町船坂から越水までを区間とする道路で、総事業費128億円で2004年に供用開始され、北部住民にとって南部地域を結ぶ今やなくてはならない生活道路となっています。
しかしながら、この不況のもとで、普通車で片道250円、往復500円の通行料の負担は、住民の暮らしに重くのしかかり、通行料金無料化の声は、市民多数の声となっており、一昨日も西宮市議会決算特別委員会建設分科会で、早期無料化を求める意見書が全会一致で採択されたところです。
もともとこの事業は、料金徴収期間の30年間、つまり料金収入による事業費償還が終わる9年半後の2021年3月に無料化されることとなっていました。しかし、当初の予想より交通量が増え、供用開始1年目で料金収入は6億9100万円、5年目以降、毎年10億円以上と、大変収益性の高い有料道路となっており、2010年度決算では償還準備金の額は100億円を突破し、昨日、知事から、「2021年まで無料化を延ばそうとは思っていない。3年とか5年とか短くしていきたい」旨の答弁があり、無料化が前倒しされることとなりました。
私は、さらに、これに加えて早期無料化に向け、損失補てん引当金の扱いについても着目をし、活用を求めたいと思います。現在、損失補てん引当金が公社全体で221億円に上り、これらの活用で早期償還は可能です。県は、道路公社全体の経営の中で活用できるとの方針です。公社が扱う他の赤字路線に比べ、料金収入への貢献度が高い本有料道路の無料化の前倒しのために充てることも含めて、全国的な事例を研究することも必要ではないでしょうか。市民の切実な願いである西宮北有料道路の早期無料化を求めます。前向きな答弁を求めるものです。
▼答弁▼濱田士郎県土整備部長:西宮北有料道路は、西宮市の南北をトンネルで結ぶ利便性の高い道路でございまして、償還準備金は計画を上回っている状況にございます。ご指摘の損失補填引当金は、あらかじめ予測できなかった交通量の減少や災害等に対しまして、公社内の路線相互間でリスク分散を図り、補助し合うことを目的として道路整備特別措置法施行令等に定められている制度でございまして、毎年、料金収入の約10%を積み立てております。損失補填引当金を特定路線の無料化に前倒して活用することは、制度の趣旨に反するものでございまして、兵庫県道路公社におきましても、この趣旨に沿って適切に活用することとしてございます。
なお、全国の事例でございますが、全国の35の道路公社に損失補填引当金の活用方法を聞き取り調査したところ、赤字路線を現在所有しておりまして、過去に黒字路線を無料開放したことのある8つの公社全てで無料化の前倒しに損失補填引当金を充当した事例はございませんでした。
今後は、本年7月に設置いたしました県、西宮市、道路公社で構成いたします検討会の中で、今後の利用交通量や施設更新を見極めた収支見通し、無料化後の課題と対策等について今年度内を目途に取りまとめ、早期に無料化できるように取り組んでまいりますので、よろしくご理解賜りますようお願い申し上げます。
西宮の御前浜橋(はね橋)の通行改善
■質問■ 御前浜橋、通称「跳ね橋」は、1995年の阪神・淡路大震災後、西宮浜埋立地と内陸部の通行機能を確保するため、歩行者・自転車用の橋として企業庁、兵庫県、西宮市が費用を出し合い、建設されたものです。建設に当たっては、船舶の通行を確保するとして、水路横断部分を跳ね橋形式とし、現在、市が管理しています。
西宮浜埋立地には、阪神・淡路大震災の被災者のための震災復興住宅などが建設され、その後も開発が進み、約2500世帯、7600人が住み、東部には産業団地もあり、そこで働く人が日常的にこの跳ね橋を利用しています。特に、お年寄りや自転車利用者にとっては、なくてはならない生活道路となっています。
ところが、ほとんど船舶の航行がないのに、土曜、日曜、祝日は10時、12時、15時、17時と4回にわたり跳ね橋がその都度20分間開き、住民が足止めされています。現在、マストの高いヨットは、跳ね橋を通らなくとも西宮大橋から湾岸道路の下をくぐって外海に出ています。西宮市から提出された船舶の航行記録でも、橋を開かねば航行できない船舶は、月に2隻か3隻しか航行していません。船舶の航行が激減する一方、1日当たり、例えば土曜日では自転車、歩行者合わせて約2600人の通行があり、跳ね橋は歩行者、自転車利用者にとって大変利便性の高いものとなっています。この間、我が党が繰り返し取り上げる中で、5月から10月の夜間については、開閉が中止されてきました。しかし、状況が大きくさま変わりしていても、ヨットなどの船舶の航行がなくとも、約20分間、市民の通行を止めている状況です。跳ね橋のような可動橋は尼崎市にもありますが、通行する船がない場合は開橋していません。住民の生活の利便性を確保するため、西宮市と協議し、ヨットなどの船舶が航行するときだけ開くなど、その改善を求めますが、いかがでしょうか。
▼答弁▼濱田士郎県土整備部長:御前浜橋は、西宮市が港湾水域を占用して設置したものでございまして、市が管理主体となってございます。利用者が渡りやすいように高さを低く抑えてありまして、その高さでは周辺に係留している小型船舶が通過できないことから、跳ね橋構造となっております。この跳ね橋の開閉につきましては、西宮市が小型船舶の所有者などの港湾利用者と調整の上、航行が多い土・日・祝日のあらかじめ定められた時間、1日4回、各20分間でございますが、その時間に限定しております。
市といたしましては、現地に時間を表示した看板を設置するなど、市民及び港湾利用者に周知を図っておりますが、橋の利用者からの要望を受けまして、今後、橋の開閉回数の見直しについて港湾利用者等と協議していく意向を示しております。
西宮ボートパーク、民間マリーナなどが立地いたします西宮浜周辺には、多くの小型船舶が航行している一方で、2ヵ所の公共埠頭がある東側には多くの貨物船が航行してございます。港湾管理者である県といたしましては、西側に小型船舶の安全な航行空間を確保するため、海上保安部の意見も踏まえまして、航行に支障がないよう、橋の開閉は必要であると、このように考えております。県といたしましては、跳ね橋の管理は市が責任を負っていることから、今後も西宮市が橋の開閉に係る港湾利用者との協議を行っていただいて、その協議結果を尊重いたしまして、住民の生活利便性と船舶の航行安全性の両立を図っていきたいと考えておりますので、ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
■再質問■ 今答弁をいただきました。本当に納得できない答弁ばかりです。それで、私は再質問を1点だけ知事にさせていただきます。
それで、今、知事は、この台風災害の被災者に対して、やるべきことはやったんだと、こういうふうに申されました。しかし、例えば災害救助法の要件の問題について見ましても、この要件というのは、国の手当の範囲をやっぱり示したものであって、県民を本当に救うという、その気があれば、知事がこれを決められるわけです。
それで、現実に台風12号被害のときに、岡山県とか鳥取県が県内の市町に対して、滅失戸数にこだわらずに適用しているんです。それで、和歌山県とか奈良県へ、兵庫県は支援をされておられます。私は本当に大切なことだと思うんですが、でも、足元の県民を救わないで、やっぱりどうするんでしょうか。私はやはり知事が、県民生活の被害は本当に大きなものでございましたから、県民の被災を本当に知事が救うんだという立場に立って、この災害救助法、今からでも遅くありません。これの適用をぜひ決断していただきたいということを知事に求めます。(拍手)
▼答弁▼井戸敏三知事:災害救助法を適用して何を救済するのかということを考えてみる必要があります。避難所は、もう必要ありません。そして救援物資も必要ありません。災害救助法でメニューとして挙げられている事々が、今の段階で、あるいは高砂のケースの場合に、必要とほとんどされていなかったわけでありますので、そのような実態に応じて災害救助法の適用を見送ったということでありますので、ご理解いただきたいと存じます。
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