井戸県政3期目、はじめての予算案は、公立高校の授業料無償化など県民の願いが実現した内容が含まれているものの、昨年の知事選挙で大きな批判を受けた「新行革プラン」を継続し、公共事業はダムや高規格道路など2000億円の枠を維持しながら、福祉や医療を削減し、教職員も3割削減計画にそって減らしています。
私は、福祉や医療、教育など県民サービスを削る「新行革プラン」はやめ、県民のいのちとくらし、雇用を守る県政に転換をするために、以下、8項目について質問します。
被災者支援の継続と拡充について
■質問■ まず、災害被災者支援についてです。
阪神・淡路大震災から15年。くらしと営業の再建を置き去りにした復興が進められ、命とくらしが脅かされる「3次災害」ともいうべき事態が引き起こされています。
そのひとつは、被災高齢者の問題です。
復興住宅の高齢化率は47.6%にものぼり、ここ10年で568人が孤独死しています。
この間、LSA(生活援助員)やSCS(高齢世帯生活援助員)が配置され見守りが行われてきました。
県は、復興基金事業の継続を決めまたものの、高齢者の見守りについては、コミュニティ支援中心の「ひろば」事業へ移行し、SCS事業は廃止の方向です。
あるSCSのほうは「ひろばの設置は大切だが、そこに出て来られない人こそ重大な問題を抱えていることがある」と指摘しています。公的な見守りであるSCS事業は廃止でなく継続し、人員を充実することが必要です。
ふたつには、商店街や地域経済の衰退を招いたことです。
新長田駅南地区の復興にあたり、県と神戸市は、住民の意見も聞かず、震災直後の3月に都市計画決定を強行しました。面積20ヘクタール、総事業費2710億円と言う全国的にも最大規模の再開発事業、収入の半分を保留床の処分でまかなうという、ただでさえ見通しのない計画を、復興事業としておこなうことに、わが党は警告を発しましたが、事態は危惧したとおりになっています。
店舗や業務用の4万1500平方メートルの内、営業しているのは20%にすぎません。完成したばかりの再開発ビルでも、地階は、献血ルームだけ、2階も2、3軒の飲食店などがあるのみで、残りは一度も入居したことがない店舗で、まるで新品のシャッターの見本市のようなありさまです。
被災業者は、家も店も失い、完成するまで移転のたびに借金を重ね、何重もの苦しみです。新規に再開発ビルに入る場合は復興基金事業による家賃補助や開設支援がありますが、元からいた業者には補助はありません。そのため廃業が相次ぎ、戻ってこられたのはもとの半分にすぎません。
被災地域経済の衰退、商店街の不振は、単に不況が引き起こしたのでなく、再開発・大規模プロジェクト中心で個人の営業への補償はまったくなしという「創造的復興」の失敗がまねいたものです。
また、国の生活再建支援法ができたものの、昨年の台風9号による水害でも、被災店舗・設備への補償はまったくなく、商店が再開できないなど同じ問題が続いています。
そこで、SCS事業の継続とともに、一般財源による拡充も含めて高齢者見守りの人員増や被災業者への補助など復興支援の拡充をおこない、県の担当部署を増員し体制を拡充すること。また、国に対して、中小業者が生活するための生業にかかわる施設・設備への支援を盛り込むことを含めた被災者生活再建支援法の改正を行うよう求めますがいかがですか。
▼答弁▼井戸知事: まず、阪神淡路大震災被災者支援についてです。震災からの復興にあたっては、単に震災以前の状態に戻すのではなく、成熟社会にふさわしい創造的復興を目指して、ハード、ソフト両面にわたって取り組みをすすめて、復旧復興のステージを乗り越えてきました。しかし、復興フォローアップ委員会でも指摘されているように15年を経過した現在でも、まだ高齢者の自立支援や町のにぎわい、経験と教訓の共有化などの課題は続いています。
高齢者の自立支援については、SCSによる巡回方の見守りだけでは、認知症や閉じこもり等の課題の発見などに限界があるため、地域住民等と連携したスタッフ常駐の高齢者自立支援広場への移行をすすめております。広場事業ではSCSの巡回型の見守りに加え、健康づくり、コミュニティづくりなど地域と連携してより手厚い支援を行っています。今後はスタッフのさらなる能力向上や、コミュニティ支援アドバイザーの配置などにより、マンパワーを拡充し広場の充実強化を図ります。
広場としては、来年度は、58増えますし、スタッフも88人〜89人増やしますし、アドバイザーは12名配置することにいたしております。街のにぎわいづくりについては商店街等の空き床、空き店舗などが生じていることから、事業再開のための家賃補助や利子補給に加え、今後は町のにぎわいづくり一括助成事業の拡充を始め、新たに商業施設魅力アップ支援事業や、商店街新規出店開業等支援事業、商店街町再生整備事業等を実施して支援策の充実強化を図ります。
これらの復興課題に対応するため事業の執行に必要な県の体制としては、引き続き「復興支援課」を存置させますとともに、現場の評価を踏まえた提言をいただき、復興フォローアップ委員会の活動を継続していただくことにしています。
また、台風9号災害においては商店街の復興のため、コンサルタントの派遣などまずその実情に即した助言を行うとともに、復興再建のために資金の貸し付けや利子補給などの支援を行っています。なおご指摘の制限のかかる施設設備への支援を盛り込む被災者生活再建支援法の改正については、都道府県の合意形成が不可欠であります。知事会の災害対策特別委員会での検討が必要となります。そこでも検討はまだされておりません。
こども医療費の無料化について
■質問■ こどもは、社会の宝です。こども医療費の無料化は、子育て支援の重要な柱のひとつとして、子育て世代の切実な願いにこたえるものです。
こども医療費の無料化は全国的に広がり十県が自己負担なし、なかでも群馬県は中学3年まで無料、所得制限もありません。県下でも、各市町が上乗せを行い、西宮市や小野市で今年7月から通院・入院とも中学卒業まで無料となるのをはじめ、宝塚市でも通院は4歳まで、入院は中3まで無料にします。
県は、これまで小3まで対象だった乳幼児医療費助成に加え、やっと、今年4月から、小4から中学3年生までを対象に、入院についてのみ自己負担の3分の1を助成するこども医療費助成制度を実施します。
いっぽう、親が高すぎる国保料を払えず、こども達が必要な医療にかかれないこどもの無保険が大きな社会問題となり、中学3年生以下のこどもには無条件で短期被保険証が交付されることになりました。
ところが、昨年行なった兵庫県社会保障協議会の自治体アンケートでは、保険証が交付されず各市町の窓口に留め置きとなっている数は、昨年7月現在で1万7302件にも上り、こどもの留め置き件数はわかっているだけでも96件もあり、複数の市町では未集計や不明など全く把握されていないというのが実態です。無条件で交付されるべきこどもの保険証の留め置きが、把握もされていないのは大問題です。
通知を出し、県も市町を指導しているといわれますが、直ちに留め置きの実態を調査し、保険証が届くようにすべきです。
そこで、県としてこども医療費助成の対象を通院・入院とも中学3年生まで無料とすること。また、短期保険証の留め置きの実態調査と、保険証が全てのこどもに届くよう市町への指導を徹底すべきと考えますがお答えください。
▼答弁▼久保健康福祉部長: 私からは子ども医療費の無料化についてご答弁申し上げます。本県では、安心して子育てができる環境の充実をはかるため、全国的に高い水準にある乳幼児等医療費助成制度に加え、小学4年生から中学3年生について、入院医療費を対象とする子ども医療費助成制度を創設することにしています。この制度は通院に比べ精神的経済的負担が大きい入院医療を対象としています。また、低所得者には自己負担限度額が制限されるよう十分な配慮を行っているところでございます。外来通院まで制度を拡充することにつきましては現下の厳しい財政事情から見て困難であると考えております。保険証の未交付は、保険証の更新の際に保険料の滞納等により何度連絡しても市長の窓口を訪れないため、保険証が交付できない状況が生じているものであります。高校生以下の子どもについては、今国会で市長に対して6ヶ月以上の保険証の交付を一律に義務づける法案が審議されており、本年7月1日の施行が予定されているところです。このため、県としては市町に対し中学生以下の子どもに対する交付促進に加えまして、高校生以下のこどもについても法律に基づき保険証交付が適切に行われるよう助言してまいりたい。このように考えております。
県立塚口病院と尼崎病院の統合再編について
■質問■ 県は、地元住民も参加する「検討委員会」を設置、1年に及ぶ議論を経て、このたび、新用地に新病院を建設することを基本とした、尼崎病院と塚口病院の統合再編基本構想を策定しました。
これに対し地元では、新病院建設に一定に期待がある反面、本当に構想どおりの病院ができるのか、また、塚口病院が担ってきた医療は今後どうなるのか、などの不安が強まっています。
基本構想では、「救命救急センター」を設置するなど、高度医療を実施するとしていますが、現在の2病院で許可病床数900床から新病院は700床へと200床もの削減で、公立病院の縮小そのものです。説明会でも、「統合により病床数が減り、在院日数が短縮され在宅へと負担が押し付けられるのではないか」など、不安の声も出されています。
もともと、財源とする25億円の地域医療再生基金は、自治体病院の再編を進めることが前提で、さらに、看護師、技術職、事務職を3割削減するなど、県立病院も新行革プランにそったコストカットを進めており、今回の統合再編は、医療費抑制の方向といわざるをえません。医療の充実を言うのであれば、少なくとも新病院の人員は「行革」の対象からはずすべきです。
また、医師確保の問題でも、県は、新病院になれば医師が集まってくると言われますが、阪神南圏域の地域医療再生計画でも内科・神経内科・産婦人科の医師確保の困難が指摘されており、容易ではありません。
もう一つは、県立塚口病院の跡地の問題です。
県立塚口病院は、約40年間、現在でも年間、通院・入院含めて25万人が利用する地域医療の中核病院として大きな役割を果しています。この地域には、民間病院も少なく、塚口病院がなくなれば、地域医療に重大な影響を及ぼすことは必至です。
基本構想では、「200床程度の病床を活用することを基本とした医療機関や、福祉施設の、誘致に努める」というものの、入院機能や診療科など、どのような病院にするのかまったくわかりません。旧県立加古川病院の跡地も、地域の要望を受けて医療機関を作ることを条件に売却しましたが、買ったのはスーパー業者で、肝心の病院は決まっておらず、心配の声が聞かれます。
そこで、統合再編計画は、県の「行革」にそった県立病院の職員の削減を行なわないこと。また、県立塚口病院が果たしてきた地域医療の役割を担う病院を、県の責任で存続させることを求めますがお答えください。
▼答弁▼前田病院事業管理者: 県立塚口病院と県立尼崎病院の統合再編についてお答え申し上げます。尼崎病院と塚口病院の統合再編基本構想において、新病院は総合的で充実した診療体制のもとで医師を確保し、24時間365日体制による小児救急救命医療の提供、ハイリスク分娩や未熟児への対応などの周産期医療の強化、3次救急医療の提供やER総合診療部門の設置による救急医療の充実等、阪神地域の基幹病院として高度専門特殊医療を中心とした政策医療を提供するため、新たな用地を確保して整備することを基本方針といたしました。また基本計画で明らかにすることとしていますが、新病院においては診療機能の提供に必要な病床数は確保することとしており、単に、削減を行うものではありません。先般実施したパブリックコメントではこの構想の内容に期待や賛意を示す意見が多く寄せられました。統合再編に充当する地域医療再生基金は、医療機能の強化や医師確保など地域の医療課題の適切な解決を図ることを目的としており、単なる病院の再編や縮小を前提として利用するものではありません。県立病院の職員の定員は新行革プラン等で定めたのは、一般行政部門に準ずる職員についてでありまして、医師、看護師等医療職員につきましては、法令、診療報酬制度等に定められた、配置基準を基本として業務量に応じた適正配置を行うとしており、新病院においてもこの方針は堅持いたします。なお、旧加古川病院の跡地に必要な診療機能を確保することとしたと同様に、尼崎、塚口両病院の跡地についても地元尼崎市や医師会とも協議し必要な医療や福祉機能の確保に努めることといたします。医療者と患者さんの視点の違いなどがあるのは、よく理解しておりますし、みなさんの理解が得られるようにすすめたいと思いますので、ご理解賜りますようによろしくお願いいたします。
安定した雇用の確保について
■質問■ パナソニックが、尼崎市工場に続いて、2350億円で建設したIPSアルファテクノロジ姫路工場は、今年7月から本格稼動します。現在、派遣会社パナソニック・エクセルプロダクツ(株)が、オープニングスタッフを100名募集し、3ヶ月更新で最長3年の契約社員を派遣しています。面接に行った青年によると将来は「請負」になるということです。フル稼働では1000人規模の雇用となるようですが、パナソニックは、これまでも偽装請負などで問題となった企業で、さらに、不安定雇用を増やそうとしていることは許せません。
わが国のGDPが極めて低く深刻な経済危機となっている大きな要因が、企業が非正規雇用を調整弁にしたことにあります。
労働者派遣法の見直しにあたり、政府は、製造業の登録型派遣は禁止するが常用型派遣は例外にしようとしています。これではIPS姫路工場の場合なども規制からはずれ、これまでと何も変わりません。抜け道をつくらずに、登録型でも常用型でも例外なくきっぱりと禁止すべきです。
また、資本金10億円以上の大企業は、この10年間で内部留保を142兆円から229兆円に大きく膨らませました。
パナソニックの内部留保額は、09年で2兆6400億円、大阪に本社がある大企業では第1位であります。ほんの1%出すだけで、年収500万円で5280人の雇用ができます。知事は、IPSに対して、非正規雇用でなく、正社員を雇用するよう、自ら本腰を入れて強く求めるべきではないでしょうか。
また、企業立地補助として、IPSに70億5000万円、尼崎のプラズマ工場を合わせると、総額で218億円もパナソニック一社に支援を予定していますが、大企業の誘致が地域経済に貢献するという口実はもはや通用しなくなっています。投資額50億円以上の大企業むけ企業立地補助は廃止すべきです。体力の強い大企業を応援するより、県民生活を応援にまわすことこそ、内需を拡大して兵庫の経済発展への道だと考えますが、知事の答弁を求めます。
▼答弁▼高井産業労働部長: 私から安定した雇用の確保についてお答えいたします。現下の厳しい雇用情勢に対応いたしまして県として、主要経済団体に対して、特に派遣労働者の直接雇用化、あるいは非正規労働者の正社員への登用を強く要請しています。また、産業集積条例に基づきます支援を行う企業に対しても企業の将来を支える基盤人材の確保や意欲と能力を十分発揮できる就業機会の確保という観点から正社員雇用のいっそうの拡大に対する積極的な対応を要請してきたところでございました、ご指摘のIPSに対してもかねてより同様の要請を知事名で行ってきておりますが、今後も引き続き要請を行ってまいります。産業集積促進補助によって促進される新たな企業立地は設備投資や雇用を初めとする直接の効果に加えまして部品等の発注による生産誘発効果、関連企業の進出や厚みのある物造り産業の集積、さらには地域のイメージアップなど本県経済全体への大きな貢献が期待できます。産業集積条例が施行されました平成14年から20年までの7年間で合計で562件の立地、総投資額が約1兆3000億円、従業者約3万人の雇用が予定されているなど、企業活動が誘発され本県経済に大いに貢献しているところであります。今後も産業集積促進補助を活用しながら企業立地を促進し本県経済の活性化に努めてまいります。
武庫川水系河川整備計画について
■質問■ 1月26日、県は、当面「ダムなし」で、河川改修や総合治水をすすめる、20年間の河川整備計画(原案)が示されました。
県が「ゼロベースからの検討」(2000年9月)を約束してから10年。住民の声、運動団体、武庫川流域委員会での議論の反映であり、一貫して「ダムありきでなく、総合治水を」「武庫川の自然保全、再生」を主張してきたわが党としても、一定の評価をするものです。
ただし、原案が、「新規ダム建設」も検討するとあることは見過ごせません。
知事も記者会見で「ダムを止めたとか、中止したとか、凍結したとか、消滅したとかということではありません」と、発言しています。
この知事の発言は、「現行武庫川ダム計画は、原案が同意された段階で、消滅する」と言う県当局の説明と食い違っています。住民との信頼関係にも影響する問題であり、現行の武庫川ダム計画は、原案には位置づけられていなのですから、きっぱりと中止することを明言すべきです。
さらに、この整備計画を進める上で、さらに検討、推進すべきことを数点、提起します。
第一に、「流域対策」についてです。
整備計画(原案)は、目標流量のうち流域対策の配分を30トンにしていますが、少なすぎます。これは、県がダム必要論に固執し、基本方針でも流域対策で80トンを上限に固定しているからです。流域対策の他の方法、水田や森林、開発に伴う防災調整池など、流域での流出抑制に真剣に取り組み、整備計画や基本方針に反映させるべきです。
第二に、堤防の問題です。
堤防の決壊・破堤による洪水被害が、被害の拡大、人命の重大な危険を及ぼすことは、昨年夏の台風9号による佐用町の被災を見ても明らかです。これまで県の堤防強化は浸透への対策はおこなっていますが、堤防を乗り越えた洪水(越水)が裏側から浸食し、堤防を壊すことへの対策は無視されており、極めて不十分なものです。
また、想定以上の洪水には、たとえダムがあったとしても、堤防が決壊すれば、被害は防げません。繰り返し指摘してるとおり「ダムよりも優先すべきは堤防補強」です。
2008年6月26日付河川局防災課長の文書では、「耐越水堤防(巻堤)」の実施を促しており、国も、災害復旧ではありますが、越水対策を認める方向に変わってきています。県としてもさらに、国に強く補助制度の創設などを求めるべきです。
以上、現行の武庫川ダム計画は、きっぱりと中止を明言すること。流域対策のさらなる拡大、越流も含めた堤防補強対策の実現について、知事の積極的な答弁を求めます。
▼答弁▼井戸知事: 武庫川水系河川整備計画についてです。武庫川は沿岸の人口飛散規模が国管理河川の上位クラスと肩を並べる重要な河川であります。下流部築堤区間における流下能力の低い区間の安全性向上が喫緊の課題です。そのために早期に治水効果が発現する河床掘削、堤防強化等を進める河川整備計画原案を作成して流域委員会に提示しています。新規ダムの建設や千刈ダムの治水活用は合意形成に多大な時間を要し、完成までの十数年間は整備効果が発現しないことから原案には位置付けていません。
しかし、基本量水の目標数量4690トンに対して原案では3510トンを目標としており1180トンの不足があります。この対策としては、ダムが必要になると考えています。また昨年発生した佐用川の未曾有の大洪水等を踏まえるとさらなる安全度の向上を検討する必要があり、ダムの必要性、実現可能性の検討を継続し具体的な方向性が定まった場合には、計画上の取り扱いについて検討することを原案に明記しております。
河川整備計画の策定により、平成5年度に着手した国庫補助事業としての武庫川ダム建設費用は一旦位置づけがなくなりますが、千刈ダムの治水活用や新規ダムについては、検討を継続するということにしており、従って将来にわたり中止消滅したわけではありません。
流域対策は、学校、公園、ため池への雨水貯留について、流域市をはじめとする関係部局と協議調整を重ねた結果、20年の計画期間内で実現の見込める量として30トンとしたものです。
堤防強化対策については、計画高水以下の洪水を対象にドレーン工法等による堤防強化対策をすすめていきます。一方、計画高水を上回り、堤防を越える越流対策については、現時点では、確実な安全性が担保できる工法が確立されていないという課題もあります。河川整備計画の実施にあわせて検討してまいります。なお、ご質問にあった国から文書は2008年11月7日付の通知により廃止されております。検討にあたっては、巻堤も含めて検討してまいります。
今後は流域委員会や流域市町等の意見を聞き、国土交通大臣の同意を得て、河川整備計画を策定するとともに、河川改修工事等に早期に着手し武庫川の安全性向上に努めてまいります。
■再質問■ 1180トンの不足があると言われましたけれども、先ほど言いましたようにもっと流域対策をもっと本格的に取り組むべきだと思うのが1点。もう一つは、堤防補強の問題ですが、やはり越水対策を基本とした堤防補強をするということが必要だというふうに思っております。国が通知は廃止をしたと言っていますけれども、国においても何度も同じ様な基準の提起がされているわけですけれども、技術的にもその対策が確立されているわけですから、県として人命を守るというのであれば、より安全な工法をこの武庫川の整備計画に対応できるように国に求めるべきだということを、再度お願いしたいと思います。
▼答弁▼井戸知事: まず武庫川の流域対策につきましては、できることを盛り込んだつもりでありますが、さらに可能かどうかは引き続き検討してまいります。それから越流対策については巻堤等は検討してまいりますが、越流対策というのは、基本高水以上の水がでた場合の対策でありますので、それを一般化するのはいかがだろうかという意味で通知も廃止されたと承知しておりますので、工法等も検討はともかく、基本高水を超えるような越流対策を武庫川全部についてやるということは難しいのではないかと、このように考えております。
私立学校の授業料軽減について
■質問■ 現在、高校へは97%の子どもが通う状況となっています。また、日本の公教育は、公立学校と私立学校を車の両輪としてきました。学費を気にすることなく公私立のいずれの高校をも選択することができる状況をつくることは、高校教育全体にとって重要な意味を持っています。
国も高すぎる学費の問題を解決するため、来年度から、公立高校の授業料の無償化の実施を決めました。私立高校にも国の就学支援金制度ができ、これに、県単独の補助が加算され、その結果、年収250万未満世帯には、県内私立高校の平均授業料【約31万円】相当額が、生活保護世帯については、全国平均授業料【約36万円】などが補助されます。
ところが、この私立高校授業料補助の県負担の総額は、今年度12億1400万円から新年度6億2169万円へと約半分に激減しています。県は、「行革」前の2007年度までは、対象を年収700万円以下までとしていたのに、対象をせまくしました。今回も県予算を減らすことは、「学費の心配なく学びたい」という生徒の切実な願いにそむくものではありませんか。
しかも、県外校に通う生徒は、県内校の半額しか補助されません。同じ兵庫県に住みながら県外、県内で格差を作るのは、とうてい納得できません。
また、県は補助の対象を授業料の範囲にとどめていますが、学費の負担はそれだけではありません。
2009年文科省の調査でも、昨年度の県内私立高校の授業料、入学料、施設整備費の平均は、およそ84万円、全国4位の高さで、公立高校の約7倍にもなります。
今回、広島県では、助成の対象を授業料だけでなくその他の学費、納付金などに拡大しましたし、京都府では、補助を最高64万円まで拡充しています。
そこで、県の私立高等学校生徒授業料軽減補助の県負担の総額をせめて昨年並みにもどし、公立高校同様、無償化に向けて、授業料以外にも拡充すること。また、県外通学と県内通学の格差をなくすべきと考えますが、知事の決断を求めます。
▼答弁▼井戸知事: 私立学校の授業料軽減についてのお尋ねがありました。私立学校の授業料軽減については、今回新しく国の就学支援金制度が創設されたので、県としてはこれを補完することとして、県の単独加算措置を行うことにしたものであります。結果として、平均授業料無償化の対象を年収約250万未満世帯にまで拡大し年収約570万未満世帯に対しても県単独で補完措置を講じるなど低所得者世帯に重点化した授業料軽減措置としました。その結果、全ての世帯において従前より相当手厚い授業料軽減措置が図られています。また本県では、これまでも授業料を対象としてきております国の就学支援金が、授業料のみを対象としていること、大半の府県も授業料のみを対象としてきていること等から、今回の見直し後の制度についても、従前通り授業料を対象としました。県外進学者の補助については県下の高校進学者数が減少している中で、県内私立高校の受け入れ枠も一定程度改善されてきているという実情があります。また、大阪や京都など隣接府県の全てが県外進学者にたいする補助を実施しておりません。新たに国の就学支援金が支給されることになったことなども勘案して県内進学者と同様見直したものであります。本県としては独自の建学の精神により兵庫県の公教育の一翼を担っている私立学校の役割はたいへん重要なものと考えています。経常費補助に授業料軽減補助を加えた高校生一人当たり予算単価では本県は35万4098円となり、大阪府や京都府を上回っています。今後とも私立学校に通う生徒の就学確保をはかるとともに、兵庫私学の振興に勤めてまいります。
■再質問■ いろいろ言われたんですけれども、高校に学費があるのは日本を含めて世界で4カ国という状況の中で、やはり私学の授業料がたいへん負担になっているということありますので、もっと県が補助を減らさなければ恩恵を受ける生徒が増えるわけですから、やはりこの授業料が払えなくて高校中退をせざるを得ないとか、高校へも行けないというこどもたちの気持ちをぜひ考えていただいて、増額を再度求めます。よろしくお願いします。
▼答弁▼井戸知事: 国の施策として所得にかかわりなく11万8000円が支給され、県のさらに単独での上積み措置はどうするかということで検討した場合に570万円以下の低所得者層に対して重点を置き、しかも250万以下の低所得者に対しましては、授業料が全て負担できる水準の助成をしたものでありますので、私としては今再質問で言われたような低所得であったりあるいは授業料が払えない層に対する施策としては機能を十分発揮する水準である。このように考えております。
少人数学級の拡大について
■質問■ こどもをとりまく状況は、年々深刻となり、どの子にも行き届いた教育の実現が、一日も早く求められています。切実な県民の要望を受け、小4まで35人学級が実現しました。
全国的にも、少人数学級は大きな流れとなり、福島県や神奈川県など5県は小・中を通じて全学年で完全に少人数学級を実施しており、小学校低学年だけでなく、高学年から次第に中学校まで拡大されつつあります。国で40人学級の見直しに向けた準備をしているうごきもあり、県としても少人数学級を広げるチャンスです。
県教育委員会は、中学生になって教科担任制になじめずに学習意欲が低下するので、慣れさせるという理由から、今年度、小学5・6年生に国語と算数を中心に、少人数授業と合わせた兵庫型教科担任制を導入しました。
現場の教師にお聞きすると、「特に国語は生活指導や他の科目との関係が深いのに、クラス担任が担当からはずれるとクラスのこどもたちの全体が見えにくくなる」、「算数は少人数授業をしているので、クラスの半分のこどもたちには、10時間以上も接することができなくなり、問題がおこっていてもすぐに対応できない」など問題点も指摘され、現に、1年間実施してきた結果、来年度は止めるという学校も出てきています。
小学生は特に、学習と生活指導が一体となって教育効果をあげるものです。県教育委員会は、兵庫型教科担任制は学習面では、少人数学級と同様の効果があると言われますが、一クラスの人数を少なくしてこそ、きめ細かく、一人一人に目が行き届くような教育環境が整うのではありませんか。少人数学級を拡大し、その上で、各学校の状況に応じた柔軟な取り組みを応援するシステムを考えるべきです。
そこで、少人数学級を拡充してほしいという県民の切実な願いを受け止め、新行革プランで教職員定数を削減するのではなく、教職員を増やして、県独自で小学5、6年生、さらには中学校まで少人数学級を拡大するよう、教育長の決意を求めます。
▼答弁▼ 大西教育長:私から少人数学級の拡大についてお答え申し上げます。小学校5、6年生では基礎学力の向上や中学校への円滑な接続を図る観点から、国語、算数での教科担任制と、算数、理科での少人数学習集団を組み合わせました「兵庫型教科担任制」に本年度から取り組みますとともに、中学校では基礎学力の着実な修得を図る少人数学習集団の編成に取り組んでいるところでございます。
兵庫型教科担任制の実践研究校からは、専門性を生かした授業が出来たや、多面的な児童理解による生徒指導ができたなどの高い評価を得ており、また、評価検証を行う評価委員会からも学習指導や生徒指導の充実に加え、中学校への円滑な接続に効果的な指導システムであるという評価を得ております。一方で生活指導など学級経営の充実を図る観点から、国語などの実施教科の弾力化を希望する意見もございます。このため新年度は国語、算数、理科の中から教科選択によります弾力化を図り実践研究校を113校から242校に拡充するなど積極的に実践研究に取り組み、今後市町や学校現場の意見も踏まえ、工夫を加えながら平成24年度完全実施を目指してまいりたいと考えております。
なお、少人数学級の拡大につきましては、義務教育の根幹である教育の機会均等とその水準の確保および無償制を補償する責務を有する国において必要な措置を講ずるべきものと考えております。今後国において本格的に検討されます35人学級などの学級編成や教科課題に対応した定数改善の動向を注視していきたいと、このように考えておりますのでご理解をよろしくお願い申し上げます。
アジアとの平和・友好について
■質問■ アジアでは、アセアン共同体実現への協力や、TAC(東南アジア友好協力条約)の加入がEU諸国やアメリカを含む52ヶ国にのぼるなど、平和の地域共同体をつくる動きが大きく前進しています。
国どうしだけでなく、多地域間の交流・協力も進みつつあり、中国・日本・モンゴル・韓国・ロシア・北朝鮮の69自治体が加入する北東アジア地域自治体連合には、兵庫県も参加しています。
しかし、従来の日本政府が、たびたび過去の侵略戦争と植民地支配を反省しない態度をとり、誠実な対応を欠いてきたことが、アジアと世界から批判され、真の平和と友好を築く上で壁になっています。
とりわけ、今、日本軍による性暴力を受けたいわゆる「慰安婦」問題の解決を求める世論が高まっています。国際的には、国連の勧告が出されたり、一昨年から昨年にかけて米下院、オランダ、カナダ、EU、韓国、台湾議会などで決議があがっています。国内では、宝塚市議会で初めて解決を求める意見書があがって以来、15自治体の議会で意見書が出されています。
1991年に韓国ではじめてキムハクスンさんが名乗り出て以来、被害女性たちは日本の誠実な謝罪と補償を求める切実な声をあげ、日本政府は、いわゆる河野官房長官談話で旧日本軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題だと認め、お詫びと反省の気持ちをどのようなかたちであらわすか今後検討すべきだとしています。
しかし、その後も、政府による補償は行われていないばかりか、まるで被害女性たちが自らのぞんで「慰安婦」になったかのような政府関係者の発言があとを絶たず、教科書からもこの問題の記述は消えてしまいました。
私は、韓国の被害女性とお会いし、「命のあるうちに誠実な謝罪を」と求める痛切な声を直接お聞きしこの必死の声にこたえなければならないと感じました。
国会には、これまで8回、日本共産党・民主党・社民党の合同で「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」が提出されましたが、廃案となっています。いまこそ法を制定し、日本政府が自ら補償を行うことが被害者への謝罪の証となります。
自治体どうしの交流を基礎に相互理解に即した信頼関係をつくるために、県としても積極的な役割を果たしていただきたいと考えます。
県として、政府に対し、戦時性的強制被害者への補償をおこなう法律をつくり公式の謝罪をおこなうなど、問題の解決を求めていただきたいと思いますが、いかがですか。
▼答弁▼井戸知事: アジアとの平和友好についてのお尋ねがありました。今後も多岐にわたるアジア地域との交流を積み重ねていくことは、本県にとっても必要であると考えておりますが、お尋ねの戦時性的強制被害者への補償等の問題に関しては戦後処理の問題の一貫として国において対応がなされるべきものと考えます。
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