社会保障の充実、安定した雇用、くらし応援の政治を
■質問■ 私は日本共産党県会議員団を代表して平成20年度補正予算について質問します。
まず補正予算の基本的姿勢についてです。
日本経済は「構造改革」「規制緩和」で大企業や大資産家のもうけはどんどん増える一方、庶民のくらしはいっこうによくならず、外需頼みで景気の後退がいわれています。社会保障の費用負担増や不安定雇用の拡大、原油の高騰などで「貧困と格差」のひろがりが社会の重大問題となっています。
さらに米国発の金融危機が世界や日本経済に深刻な影響をおよぼしつつあり、実体経済の4倍にも膨れ上がっている投機マネーの暴走が県民のくらしや営業に大きな打撃を与えています。
いまこそ、くらしに犠牲を押しつけるのではなく、経済の軸足を家計応援に置き、社会保障の充実、不安定から安定雇用へと、暮らしを応援することが緊急に求められています。しかし国の補正予算の内容は、あくまで従来の経済政策にしがみつき、多少の取り繕いをしたものの全く不十分なものといわねばなりません。それは補正予算が通ったとたんに、政府はまた、経済対策としての2次補正を組もうということからも明らかではありませんか。
県の補正予算も、国にならったもので、補正総額498億円のうち、中小企業の融資を除くと、実質24億円程度しかありません。また今回の補正の収入の「地方税等減収補てん臨時交付金」は、国の予算審議で、政府・与党が、暫定税率の廃止と道路特定財源の一般財源化を求める広範な世論を踏みにじったことによって生じたもので、道路特定財源の地方減収分を穴埋めしようとするものです。 道路特定財源は、五月には一般財源化を閣議決定しています。地方に補てんするとしても、使途を限定しない一般財源として交付し、福祉、医療など自由に使えるようにすべきです。
いま補正予算に求められている第一は、社会保障の充実です。
国の補正予算をみると融資保証を除いた予算額、1兆8千億円があれば、国民健康保険料の一人当たり1万円の引き下げ、就学前のこどもの医療費無料化、障害者の「応益負担」の撤廃など実現可能です。しかし、これら国民の切実な要求は盛り込まれておりません。そればかりか、国民の不安と怒りが集中した後期高齢者医療制度が廃止でなく、存続することを前提としています。
後期高齢者医療制度は、この10月15日に年金から4回目の天引きで、新たな怒りがひろがっています。収入も限られ、病気も増える高齢者だけを別枠にする保険は世界でも例がありません。保険料も二年ごとに上がり続けます。国民的な批判の前に、見直しがいわれていますが、小手先の手直しでしかなく、いずれも医療抑制の拡大につながりかねません。後期高齢者医療制度は、存続すればするほど国民を苦しめるものであり、先の国会では参議院で野党4党が提出した廃止法案が可決されています。社会保障の充実のためにも、後期高齢者医療制度を廃止する補正予算とすべきです。県としても県民の切実な声を国に届けるべきではありませんか。知事の答弁を求めます。
▼答弁▼井戸知事:後期高齢者医療制度は、高齢化の進展に伴い今後ますます増加することが見込まれる75歳以上の後期高齢者の医療費を、国民全体で支えることにより、将来にわたり安定した制度とするため、独立した制度として創設されたものと承知しています。
国においては、本県の提言も踏まえまして、保険料の軽減措置や口座振替の選択拡大措置を行いましたが、高齢者の心情に配慮し、法律に規定してある5年後の見直しを前倒しして、よりよい制度の改善するため、与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチームや、厚生労働省の検討会において、見直し検討が行われております。県はすでに広域連合にたいして、医療給付費や保険料軽減分にたいする財政支援として、総額430億円を負担することにより、制度の安定的運用を支援しています。今後とも、国の検討状況を注視しつつ、県として必要な提言・要望を行うこととしていますが、いまただちに国にたいして、この制度の廃止を求めることは考えておりません。
■質問■ 第二に、必要なのが雇用の安定です。
兵庫県でも働く人の36.8%が非正規雇用です。そのため、勤労者の所得も全国平均を大きく下回っています。不安定雇用解消のためにも、労働者派遣法を1999年の原則自由化以前に戻すことをはじめ、抜本的な対策が早急に求められています。
県が2006年、松下プラズマディスプレイの第3工場に対し、雇用拡大を目的とした雇用補助金を2億4540万円、242人に対し出しています。
そこで雇用された労働者はほとんどが派遣で、コラボレートが偽装請負で業務停止となった後は直接雇用となりました。しかし身分は2年3ヶ月の期間工でしかなく、最初に直接雇用となった人たちが、来年1月末で雇い止めとなります。 私は、尼崎工場で働く労働者の方からお話をお聞きしました。第3工場と第4工場ではおよそ1400名の労働者がいますが、正社員への登用は、10月5日の発表で462人だけです。正社員でもS1、S2などとランクが分かれており、時給制で1700円から1800円、一時金も退職金もありません。しかし、所属課の班長から声がかからなければ正社員の試験を受けることができず、正社員になりたくてもなれないと労働者から批判があがっています。これでは、働く人たちの圧倒的多数は期間工をくりかえすことになります。
県はこれまで「安定した雇用、期間のさだめのない正規雇用がのぞましいと考えている」「正規社員といった安定した雇用の促進」を働きかけるとされてきました。また。平成19年度には、雇用補助金については、「直接かつ継続的に雇用される」ことを目的として、これまでわが党が要求してきたとおり、正社員に対象が限定されています。
松下プラズマディスプレイに対し、雇用補助金を出した県として、責任を持って、希望するすべての期間工に対し、正社員へ登用するよう、知事自ら強く働きかけるべきではありませんか。正社員への登用ができれば、大きな雇用効果を生み出します。知事の真摯な答弁を求めます。
▼答弁▼中村産業労働部長:産業集積条例に基づきます雇用補助の基準は、立地企業に対するインセンティブとして、操業開始語後6ヶ月までに新たに雇用した人数に応じて補助を行っている。この補助制度は、より安定した雇用創出を図るため、平成19年度から正規雇用のみに補助対象を限定している。また正規雇用の拡充をはかるために、経営者団体等に対する要請活動を行いますとともに、当初予算におきまして、新たに企業の理解を求めながら、不安定就労者の正規雇用機会の拡大を図る企業説明会を開催する経費を計上しているほか、これまでから立地企業にたいして、より安定した雇用と県内雇用を働きかけている。
今後も、これまで同様に、様々な機会をとらえまして、立地企業にたいして、より安定した雇用の促進を働きかけていきますとともに、労働局や労使団体等との連携を深めながら、不安定雇用の解消にとりくみを、さらにすすめてまいりたいと考えております。
■質問■ 第三には、家計や中小企業業者、県民のくらしを応援することです。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、生活が「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた割合は、57.2%で、八年連続で増加しています。景気が後退しているのは家計に元気がないからです。実質国内総生産(GDP)の55%をしめる個人消費は4月から6月期で前期比0.5%減。所得の低迷が個人消費を落ち込ませています。勤労世帯は4ヶ月連続実収入がマイナスの上に、物価高が追い討ちをかけています。
兵庫県商工団体連合会が今年7月から10月まで実施した「原油・原材料高騰アンケート調査」では、ガソリン価格の高騰は建設業、製造業や運送業は言うまでもなく全業種で深刻な影響をおよぼしています。鉄材、鋼材、塗料などの資材も40%〜50%高騰し、小売やクリーニング業でも資材すべてがまた、飲食店でも、油や小麦粉やバターなど大幅な値上げとなっています。そのため収益については「大きく圧迫」と答えた人が55.6%、「やや圧迫」を含めると95.2%が影響をうけています。「未払い」「資金繰り困難」「廃業」も発生しています。
県の補正予算では、国に合わせ、中小企業の貸付の対象を545業種へ拡大や要件が緩和され、これまでの中小業者の要求に沿うものですが、すべての業種を対象とすることをはじめ深刻な現状に対し、直接補助などの抜本的な中小業者支援が求められています。
これらの状況からも家計を応援することが最も必要とされますが、「新行革プラン」はこれと逆行しています。福祉医療の切捨てをはじめ、事務事業の3割削減、県職員の給与や人員の削減、地域事務所の集約など、今年度で1100億円も削減しておいて、実質24億円の補正予算では、とうてい暮らし応援といえるものではありません。
「県民の生活不安を確実に受け止め、安全安心を確保する」といわれるなら、県民のふところをあたため、暮らしを応援するために、福祉、教育や医療の充実など、本来、件としてやるべきことやる、県民のねがいを実現する補正予算とすべきと考えますがいかがですか。ご答弁ください。
以上で質問をおわります。ありがとうございました。
▼答弁▼井戸知事:行財政構造改革の取組みは、震災復興の過程で相当の無理を重ねてきた本県財政の改善をはかり、県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政構造を確立しようとするためのものであります。
改革を着実に実行していくことにより、県民生活の安定を確保し、元気で安心な兵庫の実現が可能になるものと確信しています。
このたびの補正予算は、きわめた厳しい財政状況にあっても、県民の生活不安を確実に受け止め、安全安心を確保するため、現行予算を活用して9月に実施した緊急対策に加え、国の補正予算を活用して中小企業の経営安定や、防災安全対策、環境省エネルギー対策、医療体制確保に取り組むものであります。
国において、国民生活のさらなる安定をはかるため、追加補正を行う検討がされている。県としてもこれを注視しています。追加補正が行われる場合には、県として、適切に対応してまいります。
ともあれ、行財政構造改革を着実に実行するとともに、経済情勢や県民生活の動向を踏まえて、さらに機動的な政策展開に柔軟に取組み、行財政構造改革とあわせて、県民生活のいっそうの向上をはかってまいりなければなりません。具体の予算編成にあたりましては、選択と集中を基本に、メリハリをつけて、必要な施策にたいしては、積極的に対策を講じてまいりたい。
■再質問■ ぜひ知事からご答弁をいただきたいんですが、松下プラズマディスプレイ、兵庫県が補助金を出しましたね。そのはじめての対象の人たちが、今度1月末に雇い止めです。いま期間工の労働条件というのは、1時間の単価が1350円。月収は20万円ぐらいにしかなりません。それから夜9時に出勤して、朝の9時まで12時間の勤務です。そのうち、休憩が食事休憩が2回、45分づつあります。そして、休憩が15分が2回、実質10時間30分の勤務です。
この期間工をいま、このまま続けさせていくのかどうか、兵庫県が雇用補助金を出したわけですから、「正社員(が望ましい)」ということも兵庫県もおっしゃっているわけですから、この期間工を正社員にすすめていただきたいと思います。ぜひ知事の答弁をお願いします。
▼答弁▼井戸知事:松下プラズマディスプレイの雇用関係につきましては、私も社長とお会いしたときに、「適切な対応をしてください」という要請を既にいたしているところでございます。
現在の雇用条件が、どのような形で1月に改定されるのかにつきましては、つまびらかではありませんが、先ほども部長が答弁いたしましたように、できるだけ正規雇用としての確保が図られますよう、要請をしていきたいと考えております。 |