私は日本共産党県会議員団を代表してただいま上程中の議案55件の内、第1号議案、第3号議案ないし第5号議案、第14号議案ないし第17号議案、第19号議案、第22号議案、第23号議案、第25号議案、第29号議案、第30号議案、第35号議案ないし第37号議案、第39号議案、第40号議案、第44号議案、第48号議案ないし第50号議案、第52号議案ないし第54号議案の計26件に反対し、以下その理由を申し述べます。
今議会開会日、知事の「提案説明」を聞いて私は耳を疑いました。
大企業を中心に景気が良くなったと言われていますが、中小零細企業のほとんどは回復していません。県民の生活実態をみれば、高齢者への「雪だるま式」負担増や、若者を始め働き盛りの人たちがいわゆるワーキングプアの現状に苦しんでいるなど、格差と貧困がますます拡大しているにもかかわらず、知事の1時間以上にわたる提案説明で、県民の実態を表す言葉はおろか、その認識すら語られなかったのであります。
地方自治体の長として、県民の暮らしに心しなければならない知事として実に残念な現状認識であり、このことが知事提案の新年度予算にも色濃く出ています。
わが党は、この予算を「県民の暮らし第一」へ転換するため、今回で7回目となりますが、今年も予算組み替え動議を提出したところであります。
この様な立場から、まず新年度予算案に関わる9件について一括して意見を述べます。
今回の予算案は、一言で言えば「格差是正対策がない上に貧困と格差の拡大に手を貸す予算である」と言わざるを得ません。
まず第一に、県民に対する冷たい施策です。
県民税については、第23号議案とも関連しますが、定率減税の縮小・廃止や昨年から強行された県民緑税など、個人県民税を中心に県民への新たな負担増が191億円にもなっています。その上、これらの増税に加えて介護保険料・国民健康保険料負担の増や利用料・医療費の窓口負担が増えています。保険料が払えない人に対して保険証を取り上げ資格証明書の発行が9500人にもなっているなどの深刻な実態を解決する県の具体的な支援策もありません。また、障害者すべてが願っている自立支援法の「応益負担」を解消する具体的な施策もまったくありません。
また、第22号議案とも関連しますが、県立高校等の授業料が3年ごとの見直しと言うだけで、何の理由・根拠も示さず値上げが行われます。「上げ幅はわずかだ」と言われますが収入が減り各種の負担増で生活が苦しくなっている家庭にとってその影響は大きく、「教育は無償」という世界の流れにも逆行するものであります。
雇用問題も、働いている人の三分の一、青年に限れば半分の人が「不安定雇用」でいわゆるワーキングプアの現状であるにもかかわらず、正規雇用を増やし、正社員化を目指す施策がほとんど無いばかりか、逆に不安定雇用を増やす県の雇用補助制度の改善もあまりにも不十分です。
さらに、農業においても「品目横断的経営安定対策」が新年度から実施されることに伴い、一部の大規模農家への支援に特化した施策が本格化します。これは大規模農家にとっても安心できる対策ではなく、ましてや零細な兼業農家等を完全に切り捨てるものであり、「農業つぶしの対策」と言われています。ところが本県の農業予算は、国の施策を追認するだけで、県独自の対策はほんのわずか、これでは本県の基幹産業と言われる農業の場においても「貧困と格差拡大」をすすめる予算と言わざるを得ません。
その一方で、ゼネコン、大企業、一部の高額所得者への至れり尽くせりの優遇策が盛り込まれていることが第二の問題点です。
1998年に景気対策として定率減税と同時に実施された企業への優遇減税は、定率減税が縮小・廃止されたにもかかわらずそのまま温存した上、これまで研究開発やIT投資等に対する減税に次ぐ減税に続き、今回も減価償却制度の見直しなど、大企業へはますます手厚くなっています。98年以降の企業減税を元に戻せば、来年度だけでもさらに563億円の増収となる計算です。しかも、史上空前の利益をあげている大企業にこそ応分の負担を求めなければならないときに、逆に「新事業・雇用創出型産業集積促進補助事業費」として新年度だけでも30億円も補助金を出すことにとうてい県民の理解は得られません。また、証券優遇税制の延長も一握りの高額所得者への優遇策であります。
第三の問題点は公共投資のあり方です。
総事業費4000億円をはるかに超えるとも言われている播磨臨海道路の調査費をはじめ第二名神高速道路事業費、神戸空港や但馬空港など空港関連への支出、金出地ダムをはじめ四つのダム建設や調査費、六甲山グリーンベルト事業、港湾改良事業、広域基幹林道事業等々、不要・不急、環境破壊につながる事業が相変わらず目白押しです。とりわけ、但馬空港路線運航対策費1億4400万円は、但馬空港の赤字分を今年度から初めて当初予算に計上し、さらに新たな赤字を作り出す羽田直行便を導入するための予算で認められません。
また、土木関係の県単独事業は具体的な新年度の事業内容を決めず、単なる予算の「ワク取り」方式であるため、予算審査において事業内容の是非が審議できません。県単事業においても他府県では実施している「必要な事業の積み上げ方式」を採用するなど、事業のあり方から見直しムダをなくすことが必要です。
同時に、和歌山県知事などによる「官製談合問題」が国民から大きな批判を受けている中、「談合防止に責任を持ち、業者を監督・指導する立場」にある国土交通省自身が「官製談合」を行っていたことが先日明らかになりました。深刻な状況と言わざるを得ません。こういう時だからこそ、一刻も早く入札制度の抜本的改善を行わなければなりません。本県でも2003年度〜2005年度で5億円以上の公共事業の平均落札率は96%にもなっています。また2006年度補正で出された「汚泥処理プラント」170億円の落札率も98.8%と異常なほど高率です。今議会では「入札のあり方」が多くの議員から質問がありました。談合防止のためには、今回の知事の提案はあまりにも不十分です。すべて一般競争入札にすれば、15%〜20%もの経費節減になることは明らかです。また、県幹部の関連企業への天下り問題も解決する姿勢に欠けています。
さらに、本県が先行取得してきた広大な「塩漬け土地」は、先の補正予算の討論で指摘しましたが森林動物研究センター(仮称)の実験調査フィールド用地を相場の38倍もの高額で買い戻ししなければならなくなったように、全国的に見てもあまりにも異常な状況であるにもかかわらず、まだ用地取得費が多額に計上されていることも問題であります。
なお、地域整備事業会計は一部を除き土地売却が進まないため、長年にわたり公的施設の建設すなわち一般会計の投入でつじつまを合わしてきましたが、もはやそれも期待できなくなり、50%もの大幅値下げや借地への切り替えを行っています。しかしそれでも一般企業への土地売却が進まず、過去の開発姿勢が厳しく問われる結果となっています。また、収益的収支会計が実態に合っていないという問題も解決されていません。
第四は、誰もが等しく享受しなければならない教育の中にも教育行政によって格差が持ち込まれる問題です。
その一つは新年度早々全国の小学校六年生、中学校三年生に一斉学力テストが導入され、すべての子どもが全国的に序列化されます。今でも国際的に問題視されている日本の「競争教育」が、今回の「一斉学力テスト」で自治体や学校に順位をつけ子どもを序列化すればさらに激しい「競争」に追い込まれることは容易に予測されます。子どもの中にますます「格差」を作り出すことになります。同時に予算審議の中で指摘したように、保護者の了解も取らず、子どもの個人名や学校名、成績、さらに生活情報まで民間の受験産業に渡すことは、子どもの個人情報保護の観点からも絶対認めることが出来ません。
もう一つは、「高校改革第」による高校再編や学区拡大、総選制廃止等についてです。これが強行されれば、これまで指摘してきたように、競争をいっそうあおり立て、学校間格差をさらに拡大することになります。また、学区統合拡大が行われれば、近くの行きたい学校に行けなくなり、遠距離通学を強いられます。そうなれば長時間通学や高い通学費負担など、結局高校教育を受けることの出来ない子どもをつくり出し、高校教育でもさらに格差の拡大が必至となります。計画の撤回こそが求められています。
その外、一般会計予算案の中には戦争を準備する「国民保護計画推進費」や個人情報の漏洩が問題となっている「住基ネット」関連の予算、また、これまで問題点を指摘してきた酪農生活センターのさらなる整備事業費や、地元の合意のない神戸中央卸売市場整備事業費等々、問題ある予算が含まれており反対いたします。
また、県営住宅特会は入居希望者が増加しているにもかかわらず、新規建設はゼロの上、建て替えで戸数が減らされ、改修予算もあまりにも不十分で県民の要求に応えていません。
さらに県立病院事業会計は、第44号議案と関連しますが、「診療機能を見直す」として、診療科目の廃止・縮小、再編等が行われます。病床数の削減や総合病院としての機能後退が地域に与える影響も大きく、反対であります。
県営水道用水供給事業会計と工業用水事業会計、電気事業会計については従来通りの理由でありますので省略いたします。
次に、条例案件について述べます。
まず第25号議案「公益認定等委員会条例制定の件」でありますが、公益法人に認定されない法人の税制上の優遇措置を無くすことにつながり、民間の非営利法人の活動を抑制する危険性があるため反対です。
第29号議案は「老人休養ホーム六甲保養荘」を廃止して勤労福祉協会に無償で貸し付けるものでありますが、先の補正予算議案で「瑞宝園」を県が購入し新たに県立施設として運営することにしたことと整合性がとれません。この様なお年寄りにとって低廉な料金で利用しやすい施設こそ県が維持運営するべきです。
第30号議案「県立知的障害施設の設管条例改正」については施設の使用料に障害者から猛反対が起こっている「応益負担」制度を導入するものです。県立施設ですから、障害者の負担はせめて従来通りにするべきです。
第35号議案「教職員定数条例の一部改正」ですが、小中学校は「新学習システム」の推進や生徒増等により教職員の数は増えますが、高等学校については生徒の募集定員を減らしておいて「生徒数が減ったから」と教職員の定数を削減することは許せません。希望者全入と少人数学級こそ実現すべきであります。
第36号議案は「盲・聾・養護学校名を一律に特別支援学校に変更」しようとする条例です。法律が変わったことを理由ににしていますが、長年親しんできた母校の名前が児童生徒や卒業生は勿論保護者にもほとんど伝えられないまま一方的に変更して良いのでしょうか。学校現場ではとまどいを隠せません。
全国的に見てもこの様に性急に変更をさせるところは少なく、神戸市や県内の各市でも校名変更に慎重になっている中、県立盲・聾・養護学校の校名変更については、現場・関係者の声を参考にもっと柔軟に対応するべきであります。
第37号議案「考古博物館の設置及び管理に関する条例」は、新しく完成する博物館の「設管条例」制定であり、必要なものでありますが、第5条「観覧料」が「特別展示」の場合、議会の同意なしに値上げ出来、同条第3項では上限をも取り払ってしまう条例となっています。古代文化の博物館資料という学術的なものであれば、たとえ特別展であっても県民誰もが気軽に観覧できる料金にするべきであります。
第39号議案及び第40号議案は、これまでの留置場を「留置施設」と名称を変えて県警察に設置し、この留置施設を視察し運営に意見を述べる「視察委員会」を設置しようとする条例です。約100年前に「拘置所が足りない」という理由で警察の留置場が拘置所の代わりとして長年使われてきました。いわゆる「代用監獄」は、自白強要とえん罪の温床とされ、その解消が強く求められています。ところがこの条例は「代用監獄を将来にわたって制度化する」ものであります。また、視察委員会も県の公安委員会が指名する制度では中立・適正な委員指名とはいえず反対です。
最後に事件決議案件についてです。
第48号議案はPCBの処分を行う環境再生保全機構に8700万円出捐(しゅつえん)するものです。PCBの早期処理は必要ですが、本来、PCB製造・使用事業者が責任を持たなければならない処分を独立行政法人にゆだねるものであり反対であります。
第49号議案、50号議案はそれぞれ関西国際空港株式会社と日本高速道路・債務返済機構への出資であり反対理由はこれまで述べてきたとおりであります。
また、第52号〜第54号議案は「指定管理の件」でありますが、いずれも利用料について基準額さえ定めればその1.5倍までなら、議会の承認を得ることなく指定管理者に料金設定をゆだねるものであり賛成できません。
以上、議員各位のご賛同を期待いたしまして討論を終わります。
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