台風の風倒木処理、現場の人手不足の解決を
■質問■ 私は、森林・林業振興、農業振興、高齢者の医療費問題、総合選抜制度、ラブホテル建設問題について質問いたします。
最初に森林・林業振興に関連して、おたずねします。
まず、第一に風倒木処理の問題です。
昨年の台風で県下の人口林のスギ、ヒノキなどが倒れ、その処理は、3年間、全額公費で行われることになっています。しかし処理をする現場では、作業の困難さ、人手の問題、費用の問題などで不安の声があがっています。
被害区域面積が大きかった、ある町では、3年間で仕上げるには、今年度中に20ヘクタール近く処理しなければなりませんが、できるかどうかとのことでした。
私は、生産森林組合から委託された、素材業者による処理現場をみせてもらいましたが、山から山へワイヤーをはって急斜面での風倒木処理は、大変危険で困難なものです。ワイヤーをはれないところは手をつけられないということでした。
人の確保も大変です。作業の主体となる森林組合の従事者数は全県で800人あまりと聞いていますが、高齢化の問題もあり、どれだけの人が処理にたずさわれるのか疑問です。頼みの素材業者は全県で272人ですが、通常の切り出し作業で手一杯だったり、この危険な作業を「引き受けてもらえるのか」というのが関係者の声です。
また、補助金がおりるのは、事業の完成後であるため、支払い費用はいったん森林組合や生産森林組合が立て替えなくてはなりません。何億、何千万円というお金の準備が必要と頭をかかえておられました。
風倒木処理は、二次災害を防ぐためにも急がなくてはなりません。知事は、昨年のわが党の一般質問に対し、人の確保については「必要ならば広域的な協力を得るよう検討」と答弁されています。
県は、風倒木の安全な処理に責任を持つ立場で、現場や市町の実態をしっかりと把握し、他県からプロの応援を含めて人手を確保すること。風倒木処理は全て公費で処理する原則を守るよう求めますがいかがですか。
▼答弁▼ 黒田農林水産部長:風倒木処理への支援についてでございます。風倒木の処理につきましては地域における被害の実状や市町及び関係団体からの要望も踏まえ森林所有者の負担を求めず全額公費負担で危険度に応じたランク分けに基づき緊急度の高いカ所から既に計画的に事業実施しているところであります。
また、作業従事者の確保につきましては森林組合や素材生産業の作業班員で対応することとしておりますが、作業班員が不足する森林組合等につきましては、県森林組合連合会の広域的な調整により対応しているところであります。現時点では県内の労働力で対応可能だと考えております。さらに風倒木処理は危険を伴いますことから今回安全な処理作業に特化したマニュアルを作成しそれに基づく実技研修を行うなど安全作業の徹底に努めているところでございます。なお、森林組合におきます事業費につきましては、補助金の交付回数を増やすとともに県単独の森林組合機能強化資金の活用を指導することにより資金の円滑化にも努めていくこととしております。
県産木材の積極的活用と森林整備事務所の統廃合中止を
■質問■ 第二に、林業振興についてです。
「京都議定書」の発効で、温室効果ガスの吸収源としての森林が注目されていますが、昨年の台風被害でも明らかなように、県下の森林は荒廃しており、その背景には外材の輸入があります。日本は最大の木材輸入国の一つで、木材自給率は2割に落ち込む一方、輸出国では森林が破壊され、自然災害を引き起こす原因になるなど地球規模の問題となっています。
人工林は、県下森林の約4割を占めています。間伐などの手入れがされることによって優良な木を育て、その木を売るという林業生産活動のサイクルがあってこそ、森林の公益的な役割も保てます。しかし、搬出費用にも満たない木材価格のため、木が売れずこのサイクルがうまく機能していません。なによりも産業として成り立たせることが肝心です。県にはこの点での支援がなく、昨年度の間伐材のうち搬出され利用されたのは1割に過ぎず、高齢化した木の利用にも展望を示せていません。
今一番必要なのは、林業を振興させ、木が売れる状況を作りだすことです。そのためには、国に外材の輸入制限をはじめ、森林林業政策の抜本的転換を求めるとともに、県公共施設はもとより、市町庁舎や公営住宅の木造・木質化をもっと大規模に進めることが必要です。県の木造・木質化の目標は20%ですが、木造建築では70〜80%が可能で、燃代設計など耐火性能を持たせれば需要は大幅に拡大できます。内装はもちろん外装も木質化をすすめることはいうまでもありません。
高知県梼原町では、町営住宅や保育所・体育館など多くの施設を地元産材で建設し、活用を進めるとともに、間伐など山の手入れに、1ヘクタール当たり10万円の助成を行っています。それが引き金となり、森林組合の雇用を増やし、建設業者の仕事起こしにもつながって、地域経済の活性化に役立つ公共事業として、大変喜ばれています。県も大いに見習うべきではないでしょうか。
また、森林整備を声高に言いながら、県が「行革」により森林整備事務所を廃止するのは許されません。森林整備事務所は、今回の風倒木被害調査でも最前線で役割を果たし、林業改良指導員として、所有者や森林組合などの相談や指導など、林業振興に生かせる現場に密着した仕事をされています。地球温暖化による自然災害は今後も発生が予測されることからも、森林整備事務所の役割は、ますます重要になるのではないでしょうか。
(Q2)そこで、県として、県産材活用量を大幅に引き上げ、県の公共施設はもとより市町の地元産材活用への助成、支援強化などを抜本的に強めること。森林整備事務所の存続を求めますがいかがですか。
▼答弁▼ 黒田部長:本県では杉・檜の木材生産機能を重視した従来の林業施策に加え社会経済情勢の様々な変化の中で森林の広域的機能に力点を置いた森造りを全国に先駆けて展開しているところでございます。加えて伐採・植採・保育の林業生産サイクルを円滑に循環させるには木材の利活用の促進が重要でありますことから県の率先行動として県立施設木造木質化20%作戦を展開し、県営住宅あるいは県立公庫などの積極的な木造木質化を進めております。併せて治山林道工事等におきましては、巧手によって県産木材の使用を義務づけるなど県産木材の積極的な利用促進をはかっているところでございます。また市町施設につきましては、県が行います補助事業の優先採択やあるいは県独自の随伴補助率の嵩上げなどの支援策により木造木質化の促進に努めています。
こうした取り組みの結果、県と市町施設あわせまして平成16年度見込みは155施設県産木材使用量1万1000リューべにのぼり平成11年度と比べて2.6倍と着実に増加しております。さらに平成17年度からは県立施設の木造木質化率これ20%ですが30%に引き上げいっそうの推進をはかってまいりたいと考えております。
また、森林整備事務所につきましては、川上から川下まで森林林業の多様な課題に対応するために農林振興事務所に人員を集約して組織の総合力を発揮できる体制の強化をこれをはかるものでありますのでご理解をいただきたいと思います。
「県民緑税」はいったん撤回し、十分な県民的議論を
■質問■ 第三に、「県民緑税」についてです。
県は、森林・緑の保全を県民全体で支える仕組みをつくるとして、県民一人当たり年間800円、法人は資本金などに応じて負担を求めるとしています。個人分は17億円、法人は4億円、合計21億円の負担です。
森林の荒廃に胸を痛めている人は多く、森林や緑を守ることについては理解しますが、新しい税の導入には多くの問題があります。
まず、税金の使い方です。「災害に強い森づくり事業」のひとつとして、30ヘクタールを一区画に、大きな46年生以上の杉などを1ヘクタール程度ずつ皆伐するところ、しないところとパッチワーク状にし、伐採跡には広葉樹などを植える。また遊歩道などもつくるというものです。しかし、山林が大半を占めるような町でも「そんなに広い場所は1箇所あるかないか」で、「災害に強いというなら間伐にもっと力を入れるべきだ」との意見です。
1ヘクタール当たり約2000本の杉やヒノキが植えられています。伐採・搬出は所有者が行うのが前提条件ですが、木が売れなければ事業は成り立ちません。また、「パッチワークの森」が災害に役立つのかどうかの理論的根拠はとぼしく、検証もされていません。まず県下の森林で、5年、10年と試し、検証することなどが必要ではないでしょうか。
都市緑化についても、ゴルフ場や大規模開発で森林をどんどん破壊しておきながら税をとって緑化するのもまったく理屈が通りません。民間の駐車場に緑を植えるというのも開発者の責任ではありませんか。
二点目には、いったいどれだけの県民のみなさんがこの税の導入をご存知なのかということです。県は、昨年末に構想を発表し、その後県民のみなさんの意見を聞くとして1月に主にホームページ上で20日間募集をしただけです。寄せられたパブリックコメントもわずか146件で、私たちが、さまざまな団体や、県民の皆さんにうかがっても、ほとんどの方が「初めて聞いた」と言われる状況です。なぜそんなに急いで決める必要があるのですか。新たな税負担を求めるにもかかわらず、県民に知らせ、意見を聞き、合意を得る努力がまったく不足しています。先に税の導入を決めてから、県民に周知するというのは逆立ちしたやり方です。参画とは名ばかりではありませんか。
三点目は、負担の問題です。この時期、医療、年金改悪、老齢者や配偶者控除の廃止や、定率減税の半減・廃止、さらに介護保険改悪や消費税増税計画などが予定されています。国民負担は増えるばかりです。その上の県民緑税導入はとうてい理解を得られるものではありません。
そこで、今回の県民緑税導入案は撤回し、森づくり・緑の保全のやり方、負担のあり方については、県民の意見を充分聞き、時間をかけた検討を行うことを求めますがいかがですか。
▼答弁▼ 井戸知事:県民緑税ですけれども森林の荒廃や都市の緑の喪失が進む中、県民生活に密接に関連した多様な公益的機能を有する緑の保全再生を社会全体で支える仕組みとして導入させていただこうとするものです。
検討の過程におきましては有識者検討委員会での審議状況をホームページで公表してきております。
昨年9月には委員会中間報告への意見を募集いたしましたし、1月には県の案に対します意見募集を行い現在までのアクセスは既に6000件を越えております。
内意見は、146件ですけれども賛成が4分の3を占めているという状況と承知しております。
ご指摘の針葉樹と広葉樹の混合林につきましては、目安としているおおむね30ヘクタール程度の規模の森林は県下で2百数十カ所あります。またこうした混合林が針葉樹のみの森林よりも保水力等の公益的機能が高いことは様々な機関で研究検証されております。さらに急傾斜地等の森林に間伐に組み合わせて土留め溝や幹が太くなるような枝打ちを行う防災林整備を実施したい。このように考えております。
また、森林の開発に対しては林地開発許可制度により指導を行っておりますが、一定規模以上の開発について開発者が面積に応じて拠出した協力金を財源に緑の復元にも努めております。
県民緑税の負担額については、県民のご理解をいただける水準を十分検討した上で昨年の一連の風水害での被害も踏まえ緑の保全再生を社会全体で支える仕組みを早期に確立しできるだけ早く安全安心な県土を作りたい。そのような意味で提案させていただいたものでありますので是非ご理解いただきたいと存じます。実施については18年度からとしておりまして、1年の準備期間におきましてさらに県民の理解を得るように努め使途につきましても県民の理解を十分得た上で円滑な実施を目指してまいります。
多様な担い手を支援する農業を
■質問■ 次に、農業振興について質問します。
政府はこの3月今後の農政指針となる「食料・農業・農村基本計画」を改定しようとしています。その内容は、昨年発表された「中間論点整理」で明らかなように、農業の「担い手」を水田経営では、10ヘクタールから14ヘクタールの大規模な認定農家などに限定し、圧倒的多数の家族営農を切り捨てようとしています。これは、日本の農業を崩壊させるものです。食料自給率の向上は国民的な要求ですが、自給率45%目標さえも下ろそうとしていることは許せません。食料主権の確立と自国の農業を守ることは避けられない緊急の課題です。
県下の農業の実態は、1960年と2000年を比べると、総農家数は約20万戸あったものが、11万5000戸に、耕地面積では10万8000ヘクタールが6万6300ヘクタールにそれぞれ4割も減っています。
青垣町の農業委員の方は、「ここでは75歳にならないと老人会に入れてもらえないほど高齢化がすすみ、農機具や田圃を捨てて出て行く放棄田が増えてきている」といわれます。「認定農家は、酪農も含め、13軒あるが、跡継ぎがあるのは1軒だけ、昔は二毛作で麦や小麦なども作ったが、今は輸入でだめになった。転作の交付金も来年までで、これだけ米価が下落すれば、農業をつづけていけるかとみんな不安を抱えている」といわれます。「農業をやりたい人を応援する施策をとってほしい」といわれました。
市川町で20ヘクタールの大規模農家の方は、「二百数十枚の田圃を家族やシルバーの人達を頼んで田植えも稲刈りも2ヶ月以上かかってやっている」「農機具の修理だけでも、年間500万円、朝早くから晩遅くまで働いても赤字で、息子は会社に働きに行っている」と話されました。「担い手」とされる認定農家でも経営は大変になっています。
経済評論家の内橋克人氏は「もう一つの日本は可能だ」と日本の国の向かうべき方向を提起されていますが、日本の農業でも「近代化」「大規模化」に代わる「もう一つの農業は可能だ」と地域農業再生のとりくみが全国で広がりつつあります。
たとえば滋賀県は、2003年3月に「滋賀県環境こだわり農業推進条例」をつくり、安全・安心な農産物の供給、環境と調和のとれた農業の健全な発展のため、県の責務を明確にし、県が率先してこだわり農産物を購入し、経済的助成などの支援を行っています。
長野県豊科町は、有機米や特別栽培米に取り組む農家に10アールあたり1万円の補助金を交付し、愛媛県の旧岩城村も、新規就農者に2年間月10万円の支給や荒廃した農地復旧に10アールあたり7万円の助成をしています。また、大阪府高槻市では、定年退職する兼業農家など、零細兼業層をより積極的に位置づけ、小規模農家を地域農業の担い手としています。
県としても、食料自給率の向上と、地域農業を守るため、「担い手」を特定するのでなく、圧倒的多数の兼業農家など多様な担い手を支援すること。合わせて営農指導に重要な役割を果たしている専門技術員や改良普及員、普及センターの拡充を求めますがいかがですか。
▼答弁▼ 井戸知事:国の食料農業農村基本計画の見直しにおいては、施策の目的と対象を明確にする中でまず望ましい農業構造の確立に向けた担い手として認定農家だけではなく営農組織も対象になりうるとしております。また地域住民が一体となって行う農地等の保全管理の促進も一つの柱に掲げられています。従いまして直ちに小規模農家の切り捨てになるとは私は考えておりません。特に本県は中山間地域が多くしかも小規模な兼業農家が約9割を占める状況にありますので認定農業者等が本格的に農業経営の自立を目指す、産業としての農業の確立を目指します一方、農地や里山等の地域資源の維持や地域の活性化をはかるための生活としての農業振興も重要であると考えています。このため、兼業農家や女性高齢者の参加を得て、女性の起業家や農産加工への支援を行うこと、農産物直売所の整備を進めること、兵庫県みんしょう食品の生産振興に取り組むことなど総合的に対処しており17年度からは意欲ある農業集落が行います地域全体としての活性化プランの策定を進めますとともにその実践の支援を行います。また、直売所の魅力アップや野菜の産地づくりを実施することとしているところです。またこれらの実施にあたりましては、農家や地域で密着して活動する農業改良普及センターが十分機能をしていくことが必要でありますので、行財政構造改革を踏まえつつ普及活動の効率化重点化を図り地域農業の振興に努めてまいります。
高齢者の高額医療費制度の改善を
■質問■ 次に、高齢者の高額医療費制度の改善をはかる問題です。
2002年10月1日、小泉内閣による高齢者医療の改悪で、1回850円の支払いから1割または2割負担となりました。それにともなって、高額医療費の償還払い制度が導入され、医療機関の窓口でいったん支払い、限度額を超えた金額を市町に申請し、払い戻しを受けるという仕組みです。申請の必要や制度の複雑さもあいまって多くの未払い金が発生していました。
私たちは、制度開始前から繰り返し、償還払い制度の抜本的改善を求めてきました。全国的には、新潟県や夕張市などは、病院の窓口の支払いは限度額までとする「受領委任払い」方式や、愛知県名古屋市などのように、老人医療対象者すべてに予め申請してもらう「事前申請方式」など改善がすすんでいます。県内で、この方式を採用している姫路市などは、スムーズに返還され、未払い率も低くなっています。
ところが、後期高齢者に比べ、県の福祉医療に該当する65才から69才、前期高齢者の70〜72歳の方は、発生するたびに高額医療費をいったん窓口で支払い、償還の申請もその都度、市町の窓口に出かけ返還は数ヶ月後となります。ある67歳のC型肝炎の患者さんは、現在インターフェロン投与と血液検査など、この治療だけで月に7〜8万円かかります。長期の治療を続ける患者の負担は大変です。後期高齢者同様改善されるべきですが、未払いの実態すら調査されていません。
そこで、本県でも、65歳以上の高齢者の高額医療費の償還払い制度は、窓口での支払いは自己負担の限度額を超えない方式や、せめて「事前申請方式」に改善をはかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
▼答弁▼ 下野健康生活部長:私からは高齢者の医療費償還の問題についてお答えをいたします。国民健康保険法などの医療関係法におきましては医療費のコスト意識を喚起いたしまして適正な受診を確保するために医療機関窓口では医療費の一定割合を支払い、支払額が限度額を超える場合は請求に基づき償還するというシステムにされております。例に出されました受領委任払い制度は、患者の委任を受けまして医療機関が限度額を超える金額のみを市町へ請求するもので患者は医療に要した経費が分からない問題もありまして、国は医療費適正化の観点からきわめて問題のある制度としています。また、事前申請方式は老人保健医療制度におきます特例措置として事前に申請を行い以後は償還金額を患者が指定した口座に市町が振り込む方式であると理解いたしますけれども、これまで老人医療の高額医療費申請による負担軽減につきましては平成14年度以降、一つは申請は初回時のみで足りる、二つ目には初回申請時に高齢者が指定した口座に振り込むことができるというふうなことでしておりまして、このことについては既に14年度以降通知を市町に対して発出をしておりまして徹底をしておるところであります。ただ、現行の国民健康保険を含みます医療保険制度では事前申請方式は想定しておりませんで、こういった場合に事前申請をする事務の量とそれから先ほど申しましたような初回時のみで足りるという方式と比較しまして現行制度で事前申請方式が可能かどうかということについては市町の意見もお聞きし国とも協議をしてまいりたいというふうに考えるところです。
住民の意見を聞き、総合選抜入試制度の堅持を
■質問■ 次に、高校改革に関連して質問します。
県は2000年から県立高等学校教育改革第一次実施計画を推進し、県立高校の統廃合、総合学科や単位制高校、複数志願制の導入など高校教育の内容や入試制度の改変をすすめています。これらの改変により、「学びたいことが学べる学校」や「魅力ある学校」になるとしていますが、本当にそうなっているでしょうか。
明石市では高校全入運動と相まって、それまでの単独選抜制度から、30年前に総合選抜制度となり、現在県立高校は6校あります。中学卒業生の67%が入学でき、学力均等方式でわけられ、希望する高校に85%の生徒が入学出来ています。6つの学校間に序列はありません。
高校生に聞くと「数学、わからへんゆうたら、よう分かっとう子が休みの日に学校出てきて、朝から晩まで教えてくれた」「人に教えることで分かる子はもっとわかるねん」「いろんなやつがいて、お互いにひきあげている」「自分のことだけ考えるんでなく、友達や親、先生とつながっている。それで自分の存在があると思える」「陰気な競争はない」「いい学校、悪い学校と見られないから6校ともいい」「学校めっちゃ最高」とはじける答えがかえってきます。子どもたちはみごとに総合選抜制度のすばらしさを見抜いていました。学力だけで能力も人格さえも評価が決められるのではなく、まるごと受け止め、学び合い、助け合い、つながり合って高校生活を楽しみ、成長しています。この総合選抜制度ですが、複数志願制に変えられると、序列が復活し、制服がいや、学校名も胸をはって言えないような状況がつくりだされます。
今、子どもの荒れが大きな社会問題になっています。この中で、制度の持つ教育力について改めて考えることが必要です。
神戸大学の広木克行教授は、今日の子どもに「他人の感情に配慮・共感することが苦手」や「対人関係が築けない」などのゆがみの原因のひとつに教育制度があり、子どもの発達に与える影響が大きいといわれます。
小学生が同級生を殺害するという衝撃的な事件が起きた長崎県では、その前年に総合選抜制度が廃止され、中高一貫教育が導入されました。その中で子どもたちは、小学生段階で「勝ち組」「負け組」にしゅん別される状況が急速に広がったことが背景として指摘されています。
また、10年前に総合選抜制度を廃止した三重県は、全国でももっとも少なかった不登校率が3倍にも跳ね上がっています。
「勝ち組」「負け組」に引き裂くのではなく、みんなが影響しあって高めあえる総合選抜制度こそ、求められる教育制度ではないでしょうか。
ところが、県教育委員会が行おうとしていることは、まったく逆です。「あなたの夢を育てます」と「多様な選択が出来る」がキャッチフレーズの総合学科を明石にも導入しようとしています。実際には「夢」を保証するものではありません。すでに総合学科が導入された高校では、1年生は、入学2ヶ月後には、2学年からの選択科目のプランニングを始め、11月には決定しなければなりません。生徒たちは、絵画、書道やダンス、音楽、スポーツ、ファッションなどペーパーテストのない科目を多く選択する傾向です。15や16歳で進路をきめてしまうと、途中で進学したい、進路を変えたいと思っても単位不足などで取り返しはききません。大多数のこどもたちが進路について2年生、3年生で大きく揺れ動き悩みます。大学進学などでは選択した科目から、どこが受けられるかを探さなくてはなりません。総合学科は、高校卒業時の人生選択の幅を大きく狭めてしまうのではありませんか。また、総合学科は学区を超えての全県募集となり総合選抜制度を崩すことにもなります。総合学科とは何かも地域住民には知らされていません。
「明石、西宮などの総合選抜制度を堅持し、総合学科の導入はやめてほしい」との要求はますます大きくなっています。県は、住民や子どもたちの声にこそ真摯に耳をかたむけるべきではないでしょうか。さまざまな制度の改変にあたっては、学校の教職員はもとより、生徒やPTA、同窓会や地域住民への十分な説明と合意を得ることを当然のルールとすることを求めます。教育委員会委員長の答弁をお願いします。
▼答弁▼ 武田教育長:本県では平成10年に設置をいたしました全日制高等学校長期構想検討委員会の審議を得まして、同委員会から個性を尊重する多様で柔軟な高校教育への転換、行ける学校から行きたい学校への選択を可能とする選抜システムの構築などを内容とする提案がなされました。これらを受けまして平成12年に県立高等学校教育改革第1次実施計画を策定し、学びたいことが学べる魅力ある学校造りを目指す高校教育改革をスタートさせたところであります。この計画に基づきましてこれまで総合学科や単位制高等学校などの新しいタイプの学校や特色ある学科の設置等を推進してきたところです。県が実施をいたしました総合学科へのその後の調査によりますと様々な検定試験やコンテスト等に意欲的に取り組む生徒が増えたあるいは、具体的な目的意識を持って進路選択をするようになった。部活動や委員会活動が活発になったなどの回答が寄せられておりまして、またある総合学科高校のアンケートでは卒業生が個性に合わせた多様な額数ができ充実した学生生活だった。普通科にない学びが自分の糧になって自分を見つめて進むべき道が見えたなどと答えるなど着実に成果を収めているものと受け止めているところであります。
また、選抜制度につきましては、複数志願選抜、特色選抜からなる新しい選抜制度を導入しその2年間の検証結果を見ますと受験学力のみによらない、学びたいことが学べる学校選択が進むなど初期の目的がほぼ達成できている物と受け止めております。また、全国的に見ましても総合選抜制度はかつて16都府県で実施されてきたところでありますが、学校の個性化特色化を普通科でははかりにくい、生徒が行きたい学校を選べないとの理由から敬遠され既に13都県で廃止されその結果は、廃止した結果はおおむね評価ができるものとなったと聞いておるところであります。
今後もこれまでの改革の成果を踏まえ第1次実施計画に基づき高校教育改革を着実に推進してまいりたいと考えておりますのでご理解を賜りたいと思っております。
西新町のラブホテルの建設中止を
■質問■ 最後に、明石市市内で「ラブホテル」が建設されようとしている問題についておたずねします。昨年の9月、高架化される山陽電車「西新町駅」隣接地でパチンコ店の跡地に「ホテル」が建設されることを住民は知りました。
業者は「ビジネスホテル」の建設だと説明しています。しかし、旅館業界の常識となっている社団法人全日本シティホテル連盟の施設基準でみると、「ビジネスホテルは一人用の洋室が全客室数の二分の一以上であること」としています。ところが、このホテルの設計図では、「一人用の洋室」は一室もなく、計画の28室すべてが二人または三人用の部屋です。「これは、ビジネスホテルを装ったラブホテルではないか」と疑惑の声が上がりました。
昨年12月10日の350人もの住民が参加した説明会でも、事業者はあくまで「ビジネスホテルだ」と強弁しながらも「周辺には主要な会社がないので、経営が成り立つためには泊まり客だけを対象にしているのではない」とラブホテル計画を否定できず、大きな怒りを買いました。
明石市内では、ラブホテルと思われるホテルは17軒ありますが、風営法の第2条第6項第4号に規定されている「モーテル、ラブホテル等」として警察に届けられているのは、わずか2軒だけで、他は「ビジネスホテル」となっています。
実態はラブホテルであってもビジネスホテルとして建設が認められるのは、フロントや食堂の基準さえ適合しておれば、風営法の規制がかからないからです。
また、明石市には、「ラブホテル及びぱちんこ屋の建築等に関する指導要綱」がありますが、この要綱は旅館業法に基づいているため、「ラブホテル」として届けられていなければ拘束力もありません。
このように法律の不備が明らかになる中、自治会をはじめ、高年クラブやPTAなど地域住民のみなさんは「西新町ラブホテル建設反対同盟」を結成して、「私たちの町にラブホテルはいらない」と、多数の署名を集め明石市との話し合いを持つなど運動を強めてきました。
そのような中、当初は「予定地は商業地域と近隣商業地域で法律上建設を止めることができない」といっていた明石市も、今年1月27日の市長と語るタウンミーティングでは、事実上ラブホテルであることを認め、施主に対して指導する努力を約束するなど、変化も生まれています。また、明石市議会では、3月1日超党派で条例が議員提案され、明石市も同様の提案をするなど、ラブホテルを規制しようとの動きが進んできました。
しかし、これは明石市だけの問題ではなく、県下各地で同じような運動がありながら、法的には建設をストップすることは難しいと結局建設が強行されてきた経緯も数多くあります。
そこで、法の改正を国に求めるとともに、県として、住民参加で安心できる「まちづくり」を推進し、健全な青少年育成のための環境を守る立場に立って、新たな条例制定もしくは、既存の条例改正等で規制ができる様にするべきではありませんか。
同時に、緊急の問題として、西新町のラブホテル建設をさせないよう明石市などに働きかけ、住民を応援していただくことを強く求めます。権限を持つ知事の答弁をおねがいします。
▼答弁▼ 陰山県土整備部長:私から明石市におけるラブホテル建設問題につきましてご答弁申し上げます。いわゆるラブホテル等の建築の規制を行おうとする時は、その手法といたしましては、明石市で行われようとしておりますような条例による対応あるいは都市計画区域内での都市計画制度であります。地区計画等の活用によります対応等の方法がございます。都市計画制度の活用につきましては、いわゆるラブホテル等は都市計画で定める用途地域の内、商業地域でのみ建設できることになっておりますが、市の決定考え方次第で地区計画や特別用途地区の制度を活用したしまして商業地域であってもラブホテル及び疑似ラブホテルを含むホテル一般を禁止することは可能でございます。ただこの制度の適用につきましては、区域内の土地所有者、利害関係者の意見を求めるなど合意形成のための期間があるていど必要になります。地域でこのようなホテルを禁止するのか、そしてまた禁止するのであればその手法として都市計画制度を活用するのか又は明石市が作られようとしてますような市町条例で対応するのかは当該市町が判断するのが適当な事柄であると考えております。既に県下の35市町でラブホテル等に関する禁止等の条例が作られている状況でございます。実効を上げている状況でございます。なお、今回の明石市の場合、県といたしましては、明石市がホテルを規制しようとするのであれば都市計画制度等の活用も可能である。そしてその内容につきましても、内容を説明いたしました上で助言しているところでございます。
■再質問■ 新町議員:2点について再質問いたします。どちらも知事に答弁をお願いします。
一点目は、ラブホテルの建設です。今の法律の基づいてビジネスホテルだと言えば、例えばロビーとか食堂とか一定の広さを持てばこれはビジネスホテルだというふうにみなされて事実上のラブホテルが規制されない。だからこれを規制をしてほしい。これは明石市だけの問題だけではなく県下で様々な事例として出てきております。法の整備を埋めるこれは県の役割だと知事も先ほど他の議員に答弁をされておられました。その姿勢をこれにも適用すべきだと思います。責任が持てる知事の答弁をお願いします。
もう一点、「高校改革」の問題です。「高校改革」という名前で学校を廃止をする。また入試制度を変える。そして学校の中身を変える。これは地域にとっても子ども達にとっても重要な問題だと指摘をしました。この重要な改変にあたっては当然関係者の例えば生徒、PTA、同級生、そして教職員これらの人達の意見を十分聞く。地域住民に充分に説明をして合意を得る。これが民主主義の当然のルールだと思います。ですから、そのルールを守っていただきたい。ルールを確立いただきたい。こう約束をしていただきたいです。これを約束できないとおっしゃるのでしょうか。知事いかがですか。
▼答弁▼ 井戸知事:まず、ラブホテル建設問題についてありますけれども、先ほど景山部長がお答えいたしましたように既に36の市町におきまして規制条例が実施されているわけでありますし、明石市におきましても現に提案をされて審議がされているということを伺っております。従いまして、私としても今の36市町の実状を見ました時にさらに県の全体としての補完的な規制条例が必要かどうかということを慎重に判断させていただきたい。今の時点では明石市の条例の制定の動向を見守らせていただきたい。そのように思っております。
それから教育委員会におきます学校統合等の取扱の問題は設置をされております設置主体としての県の役割というのはございますけれども、具体的な設置責任は教育委員会が実施されているところでありますので教育委員会において充分にご議論いただき、その中で今ご指摘ありました民主的な手続き等が必要ならばおっていただくということでありましょうから、私は教育委員会にその運用等も含めまして今はお任せをしているとこういうことでありますのでご理解いただきたいと思います。 |