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本会議 第279回県議会議案反対討論 つづき研二
2004年06月11日

「県住出訴の知事専決議案」に反対

 私は、日本共産党県議団を代表して、自民党・ひょうご県民連合・公明党・21世紀クラブの4会派の議員提出第6号議案 「県議会の権限に関する事項中 知事の専決処分事項指定の件」について反対討論をおこないます。

 この議案は、県営住宅の明け渡し並びに滞納家賃及び損害賠償の支払いを求める訴えについて、これまでなら、県当局より一件一件、議会に提案され、議会の審議と議決を保障してきたものを、今後は、議会の事前の審議や議決なしに、知事の専決処分に委任してしまうというものです。
  今なぜ、このような決定を兵庫県議会がおこなうのか、全く理解できないものです。
  私は、第1に居住の権利、第2に、阪神淡路大震災を受けた兵庫県議会として、第3に、地方議会の活性化という観点から、この問題を見るべきだと考えるものです。

居住権の保護の国際的な流れに逆行

 第1の居住権に関わる問題です。
  現在、兵庫県議会において、知事に専決処分を委任しているのは、条例中の町名や字名などの変更と、一定額以下の交通事故の賠償についてのみです。居住権という人権の土台に関わる問題について、町字名の変更や、交通事故の賠償程度と同列に扱うということが妥当といえるのでしょうか。その見識が厳しく問われるものです。
  日本国憲法は、第13条で幸福追求権を明記し、第24条で個人の尊厳、第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権保障をうたっています。また、公営住宅法は、その第1条で、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備」する国と自治体の責務を明記しています。
  さらに、1996年におこなわれた国連人権居住会議は、「支払い可能な」「低廉で快適な住まいに平等に到達できること」、そしてそれを実現する義務が政府にあることを明確に確認し、日本政府も批准しています。
  まさに居住権は、人権の土台として、人として生きていく上で、ゆるがせにできないものであり、その居住権に関わる決定は、慎重に全面的に検討がなされなければならない問題です。
  4会派の方々は、「定型的で画一的処理ができるものであり、出訴の妥当性について判断する余地がない」問題とされますが、この考え方こそ、第2回国連人権居住会議などで、厳しく戒められている姿勢です。
  第2回国連人間居住会議は、居住権保護を厳格に実行する立場から、適正な手続き、真正な協議の機会を保障され、実行されているかと指摘しています。一つ一つの事例について、この検討とチェックこそが議会に求められます。一つ一つの事案には、一つ一つの人の一生、居住権が重く関わっています。県が、出訴することについてやむをえないものなのか、滞納にいたる経過について、居住権保護という点から、行政施策として改善すべき点はないのか、県民一人一人の居住権保護の観点から全面的慎重に検討する事こそ、県議会の役割ではないでしょうか。そして、この慎重な検討の中で明らかになった問題点を行政施策の改善につないでいく事が、広く県民全体の居住権保護へともなっていく取り組みではないでしょうか。
  今議会に提案されている出訴議案でも、不況とリストラで1年間に三ヶ月ほどしか働けず収入が激減したが、家賃減額制度を知らず、教えてもらえなかったという事例もあります。その他にも、これまで、家賃の低い部屋に移れる制度を知らない、生活保護を受けられるのに申請すらできていない、心の病の人がきちんと治療を受けることもできていないなどという事例が私たちの調査でも多数存在しています。
  事実、提案者のひとりの方も、この間の会議の中で、「不況で倒産、家賃滞納して追い出しを受けている例がある。よく考慮してほしいとの声が出ている」と発言しています。
  私たちは、これまでも福祉的対応等を求めてきましたが、個別のきちんとした相談体制ができていない事は明らかです。
  実際、担当する県職員や公社職員が直接滞納者一人一人に事情を聞き、相談を受け、アドバイス、援助する事はほとんどできていません。公社に委託された巡回員がいくつかの団地を回る中で対応しているだけで、しかも公社に常駐していないので、入居者は連絡をとることも困難との苦情が寄せられているほどです。
  第2回国連人間居住会議の、いわゆるハビタット2の宣言で言う真正な協議など適正な手続きが保障されていないではありませんか。
  家賃を6ヶ月滞納したとして機械的に処理するのでなく、病気、失業、その他の事情を親切に丁寧に聞き、相談にのる体制こそ必要です。

 また、提案4会派は、「公営住宅法などが国際的な規約上問題が指摘されたことはない」としますが、事実に相違します。国連社会権規約委員会によって明確に是正勧告が出ています。「強制立ち退きは存在しない。法律に従い、国連人権規約に反せずおこなわれている」などという日本政府の説明に対して、国連社会権規約委員会は「最終見解」で、ホームレスが多数存在し、これを解消する包括的計画を持っていないことを指摘するとともに、裁判所の命令を含めたあらゆる立ち退き命令について、国連社会権委員会の一般的意見及びガイドラインに従うよう日本政府が是正措置をとることを勧告しているのです。
家賃滞納をした場合、現在、「1、家賃減免打ち切り措置」、「2、近傍同種家賃の適用」、「3、延滞金加算の懲罰的措置」がおこなわれていますが、家賃滞納問題の解決にはつながらず、滞納額を雪だるま式に増やし、退去に追い込むだけです。
  今議会の事案でも、実際には無収入が続いていたが、収入申告がなかったということだけで、一挙に近傍同種の10万円以上の高額家賃に変更され、とても払えず、滞納額があっという間に膨大なものになった事例がありますが、制度上の改善が必要であることは明らかです。
  現行制度で問題なしという日本政府や4会派の姿勢こそ、国連社会権規約委員会から指弾されている問題ではありませんか。

被災地の県議会としてあってはならないこと

 第2の大震災に関わる点です。
  ハビタット2の宣言でも、自然災害の被害は、一様に受けるのでなく、社会的条件によって、また行政の無計画な居住、基本的インストラクチャの欠如など行政の対応や社会的に置かれている条件によって被害は異なる。弱者ほど被害を受ける。このことを考慮した居住の保障の取り組みが必要だと指摘しています。
  阪神大震災では、被災者は、避難所、仮設、復興住宅と転々として、コミュニティと人間関係を切り離されてきました。そういった被災者が生活がひどくなり、また、行政によって住宅から追い出される。しかも、これを県議会として、行政まかせにする。被災地の県議会としてあってはならない対応ではありませんか。
  「他の先進国に例を見ない多種多様な施策をしている」と弁明されますが、他の先進国では、ドイツでもイタリアでも、アメリカでも、台湾でも、災害で失った個人住宅再建への支援は当たり前のこととしておこなっているではありませんか。この肝心要を拒み続けてきたのは一体誰であったのか。その責任こそ問われるものであり、阪神大震災の時には、その枠組みすらなかったことこそ重く受け止めるべきです。多種多様な施策についても、孤独死がやまず、ますます深刻になっている事態が、その施策の不十分さを明瞭に物語っているのではあります。

地方議会の活性化が時代の要請

 第3に、知事、行政当局任せでなく、議会で審議、提案、議会機能の強化が時代の要請のときに、知事の専決にしてしまう事は、県議会の役割放棄となることは明らかです。なぜ議会としての審議権、決定権を放棄するのか。知事にゆだねてしまうのか。全く説明にならないものです。
  4会派は、この議決権の放棄を、早期入居を図るためと説明しますが、議会での滞納者の(明渡請求訴訟提訴の)議決は、一年に4回であるのに、県営住宅の募集は、一年に2回だけです。早期入居というのなら、募集の取り組みこそ改善すべきです。また、空家の長期間放置や、空家になってから次の入居まで相当な期間がかかっていることこそ解決すべきです。追い出しを簡単にできるようにして、入居確保とは、全くさかさまです。たくさんの県民が入れず、県営住宅応募が何十倍という高率が続いているのは、県が公営住宅法第1条に明記された自治体の責務を放棄しているからです。改めるべきは県のこの姿勢であり、県営住宅の新規建設や、民間賃貸住宅への家賃補助施策などの改善充実こそ、県議会として県に要求していくべき事柄です。県民の居住権にかかわる問題の審議権、決定権放棄は全く逆さまです。
  他県でもやっているという意見もありますが、それこそ、国連人権居住会議に反するものであり、是正されるべきものです。

  私は、議会運営委員会で「重要問題なので、震災問題や、住宅問題に取り組んでいる方々の意見を聞く場、公聴会を持ってはどうか」と提案しました。
  来年は、震災10周年ということで国連防災世界会議が本県で開かれます。その開催地の県議会がこのような決定をして、いかなる報告をするのでしょうか。
  居住権保障という国際的到達点から逆行し、議会の活性化とも逆行し、震災の教訓からも逆行したこのような決定はおこなうべきでありません。今からでも直ちに撤回し、県民の居住権をほんとうに保障することのできる県政と取り組みにすることを強く訴えて私の反対討論を終わります。

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