日本共産党県議団として、兵庫県「行財政構造改革推進方策5か年の取り組み(案)」(以下「取り組み案」といいます)に対する意見を述べます。
まず、行財政改革に対するわが党の基本的立場でありますが、「住民本位の行政を効率的な機構と体制で実施」し、自治体本来の仕事である県民生活の向上と福祉の増進を図るものであることを基本とし、絶えず見直しも必要と考えるものであります。
その際、県政の主役である県民の生活実態と県政に対するニーズをしっかりと踏まえ、また見直しにあたっては、真に県民参加を保障することが前提であることは言うまでもありません。
今日の県民生活の実態を見ますと、小泉内閣の「構造改革」路線の下、大企業の空前の利益増大とは裏腹に、中小企業は衰退し、雇用不安は依然として深刻な事態が続き、そこへ年金・医療・介護など社会保障のほとんど全ての分野で負担の増大と給付の切り下げが強行され、今後も「痛み」の先にまた「痛み」が待ち受けているという事態に追い込まれています。
こうしたなかで、知事は、県税収入の減少に伴う財政難を、「負担の公平」を理由にして、新たに400億円もの負担増を県民に押し付け、切りぬけようとしています。
そこには、2000年度から実施された県行革「推進方策」によって、県民生活にどんな影響を与えているのか、何の検証ありません。また、県財政の困難を作り出した最大の要因である「公共投資」では、毎年度、総額3400億円を優先確保し、これまで通り高い水準を維持することとなっております。
これでは、少子・高齢社会のもと、県民生活に大きな悪影響を及ぼすだけではなく、将来不安をさらにかきたて、個人消費の冷え込みによって、地域経済にもマイナスになることは明らかであります。
わが党は、以上のことから提案されている「取り組み案」は、いったん撤回し、再検討を行うことを求めるものであります。
以下は、具体的に問題点を明らかにし、わが党の提案を含めて意見を述べます。
その第一は、「事務事業」についてであります。
今回の「取り組み案」では、またもや、大幅な事務事業の削減が提案され、その大多数は、福祉・医療・教育にかかわる施策の負担増や給付の切り下げ、福祉・医療分野の人材確保や養成事業からの撤退、ないしは後退などであります。
この分野こそ、県政として、もっとも力を注がなければならないにもかかわらず、これまでの大型開発優先の失政のツケを集中的にシワ寄せすることは、言語道断であり、とうてい認めることのできないものであります。
わが党県議団は、提案されている事務事業削減案のうち、ヘリコプター運航事業費補助の廃止、イベント事業縮小、新産業創造プログラム、国体開催経費などをのぞく、県民生活にかかわる事業については、負担転嫁や公的責任の放棄・後退でなく、現行制度の維持・拡充を求めるものであります。
その主なものの一つは、福祉医療についてです。
今回の「取り組み案」では、高齢者・乳幼児・障害者、それに母子・父子家庭の医療費助成が削減され、県の分だけでも、年平均34億円、5年間で170億円の患者負担増となり、これに市町が同様に削減するようなことになれば、その倍の負担増になります。
さらに、入院生活福祉給付金の廃止による負担増も大きくのしかかることになります。
県当局は、これを「負担の公平の観点から」とか「無理のない範囲」「会費程度の負担」などと答弁を繰り返してきましたが、実際の影響は、決してそんなものではありません。
老人医療費公費助成は、70才以上の高齢者世帯との「負担の公平を図る」として、現行1割負担を2割に引き上げるとしていますが、老人保健法では、高所得者のみが2割負担で、それ以外は1割負担です。65才から69才の県民には住民税非課税の低所得者まで2割に引き上げることは、高齢者の生活に大きく影響し、逆に不公平を拡大するものです。
乳幼児医療費公費助成は、入院については、これまでの「負担なし」から、1割負担となり、通院も状況によっては負担増となり、子育て世帯にとっては、決して軽いものではありません。
少子化対策の面からも「乳幼児への手厚い医療保障制度を確保することは、地域社会、地方自治体の当然の使命」(神戸三医師会)と指摘されているところであります。
母子・父子家庭への医療費助成も、しかりです。
さらに、重度心身障害者(児)や、高齢者重度心身障害者にたいして、入院・通院とも、これまでの「負担なし」から一部負担を導入することは、年金のみ収入の人が7割を占めるなど、経済的に困難な上に、いくつもの合併症による医療費の増大、タクシー代や入院の際の個室料などの保険外負担など、ただでさえ障害のない人に比べて大きな社会的不公平がある障害者にたいして、負担増となります。
障害者にたいする施策は、自立と社会参加、ノーマライゼーションの実現を理念として推進され、県の"すこやか兵庫障害者福祉プラン"でも「生活の基盤づくり」の「経済的自立への支援」として位置付けられ、実施されてきたものであります。
「負担の公平性」を理由に、ハンディキャップを補うための施策の利用を「受益」とみなして「受益者負担」を押し付けることは、逆に「不公平を拡大」し、ノーマライゼーションの理念にも反するものです。
以上述べた理由により、高齢者、乳幼児、母子・父子家庭、障害者にたいする福祉・医療助成制度と、入院生活福祉給付金は、すくなくとも現行制度の継続を強く求めるものであります。
事務事業の2点目は、厚生専門学院を廃止し、総合衛生学院に統合、それにより、両学院における看護師3年課程、助産師・保健師の養成課程を廃止しようとする問題であります。
この件は、県議会の審議でも、県民的にも大きな議論となっている一つであります。このなかで、総合衛生学院における助産師の養成については、わが党県議団は、決算特別委員会等で指摘したように、助産師の役割は、妊娠から出産、その後の育児にいたるまでケアーし、女性の内面的な力をつくっていく支えとなり、少子化対策にもつながっていく、また、過剰な医療介入を抑制して、安くて安全で質の高いお産ができるということで、いま国際的にもその重要性が再確認されているところであります。いま病院でおこっている産科看護師といわれる違法状態の解消も急がなければなりません。
こうした重要な役割をもつ専門職としての助産師の養成課程を廃止することは、事態の要請に逆行することになります。
専門家・識者などからも、助産課程を廃止し、大学での養成になれば、過密カリキュラム・実習不足が現実となり、充実こそ求められている助産師養成が逆に後退し、助産師の質の低下をまねく危険性がある、と指摘されています。
厚生労働省の幹部のなかからでさえ、問題点が指摘されています。看護大学に助産課程や保健師課程を組み入れるやり方でなく、これまで十分な時間をかけてレベルの高い専門職を養成してきた、総合衛生学院の助産師課程の存続を、強く求めるものであります。
次に、厚生専門学院の廃止案についてであります。
「平成17年度に看護職員の需給が見合う」「民間養成所の設置がすすんできた」。その結果、「県の先導的・補完的な役割が終わった」というのがその理由であります。しかし、これも、事態はけっして「役割が終わった」といえる状況にはありません。
今日なお、各医療機関では、看護師の確保に苦労しているのが実態です。
また今日、高齢化や長期慢性疾患患者の増加に伴う在宅看護等のあらたな需要に対応できる質の高い看護職が求められています。
同学院は、これまで40年間にわたり、看護師を養成し、医療および公衆衛生の分野で働く優秀な人材を輩出してきました。
同時に、民間に比べて国家試験の合格率も高く、民間も含めた看護師全体のレベルアップを図る上でもリード的な役割を果たしてきたと評価されています。
また、昨年の受験者は、一部が4.7倍、二部が2倍と、非常に希望の多い学院であり、いまなお重要な役割を担っており、ぜひ存続の方向で再検討すべきです。
もう一つの問題は、この学院は、在学期間6年以内となっています。ことし4月の入学者は、3年後に廃止になれば、もし途中で病気や他の理由で休学や留年した場合、卒業もできず、国家試験も受けられないことになります。
そのため、今年の受験生に対し、学院から受験票が送付された後、2回にわたり、おわびと廃校案を知らせる文書が送られ、混乱と不安をいだかせておりますが、こうした事態はどうしても避けなければなりません。
さらに、三点目は、廃止方針を出すのが唐突で、同学院の教員をはじめ、学校関係者はもとより、各方面からも「あまりにも乱暴なやり方ではないか」との批判の声があがっています。
みなさんが指摘されるのは、こんな大事な問題をわずか2〜3ヶ月で結論をだすのでなく、いったん白紙にして、どういう方向が良いのか、十分議論ができる時間がほしいということです。当然の意見です。
ぜひこの声に応えて、いったん白紙にして議論する時間を保障する措置がとられるように強く求めるものであります。
事務事業の3点目は、民間社会福祉施設職員の処遇改善についてですが、当局が廃止理由としている「施設にたいする財政支援が改善された」というのは、まったく根拠がなく、事実と違う内容であり、「設置者の判断で人件費引き上げも可能になった」というのは、特養ホームの例からも、逆に人件費が削減される可能性が強く、廃止の理由になり得ないものであります。
また、今日なお、民間と公立の職員の賃金格差は歴然としており、民間施設の人材確保のためには、民間福祉施設職員処遇改善費が、なお必要であり、存続を強く主張するものであります。
第二の大きな柱は、投資事業についてであります。
今日の県財政の困難を作り出した最大の要因は、90年代以降、バブル経済がはじけ、税収が減少しているにもかかわらず、政府がアメリカとの約束で推進した630兆円もの公共事業計画をそのまま受け入れるばかりか、県も同様に経済対策として、借金に借金を重ねて大型開発事業を中心とした公共投資を行ってきた結果、起債残高は03年度末で約4兆2200億円を超え、一般会計での償還額(借金返し)は、県税収入の約7割にあたる3500億円にも達しています。行財政改革と言うなら、ここにこそ抜本的なメスを入れるべきであります。
ところが、今回の取り組み案では、見直すどころか、補助事業、県単事業合わせて毎年度3,400億円、5年間で1兆7000億円を優先確保し、公共投資を続けるというものであります。これは、これまでの事業規模を維持する莫大な額であります。
これによって今後1兆円からの借金を上積みし、起債制限比率で15%台というものの、借金体質は変わらず、結局、将来そのツケが負担増やサービス切り下げとなって、県民に押し付けられるのは明らかであります。
わが党は、こうした事態を繰り返さず、県民生活の支援を優先しながら、財政の健全化をすすめていくために、投資事業について、次の点を提案するものであります。
一つには、毎年度3400億円の優先確保の枠を撤回すること。
二つには、投資事業の毎年度の予算は、今後5年間にわたって対前年度比マイナス10%とする。これによって推進方策の4割削減となり一般財源として1100億円が確保され、これを福祉・医療・教育に振り向ければ少なくとも今提案されている400億円を超えおる事務事業の削減を避けることができます。
三つには、公共投資のなかで、特に大型の事業については、各事業ごとに具体的な見直しをおこなうことです。
ここで、投資事業のなかで、特に見直しが必要なものについて、具体的に指摘をしておきます。
そのひとつは、六甲山グリーンベルト事業であります。
この事業は、六甲山東南側斜面で市街地に面する1600ヘクタール、その内、国が1140ヘクタール、県が460ヘクタールを買収し、砂防事業を行なおうとするものです。
すでに97年度から事業を開始し、国が467ヘクタール、県が100ヘクタール、あわせて全体計画の約3分の1を買収済ですが、県は国直轄事業の地元負担分もあわせて買収費用だけで325億円も費やしています。
今後さらに、約600億円の県費支出が必要となります。
事業の内容は、砂防事業の工事とともに、樹林整備をおこなうというものですが、これだけの事業をおこなうのに、基本方針があるだけで、具体的な事業を行なうための基本計画もなければ、樹林整備の調査・整備計画もない。また、樹林整備は木を植えて整備していく事業をNPOなど住民参加で行なうとしているものの、県民の協力体制もない中で、毎年、国の予算がついた範囲で、場当たり的に土地を買収しているのが実態であります。
この財政が厳しい折に、何も全用地を買収する必要はありません。砂防対策のための工事が必要であれば、その部分を買収なり地権者の協力を得て整備を行なえば対応できるものであります。
民間の乱開発防止という点では、全体の7割を占める保安林や、2001年4月施行された土砂災害防止法の地域指定を行なうなどの活用を行なえば、安全は確保できるものであります。
したがって、今後の全用地を対象とした買収は中止し、その予算約600億円は、県民生活や中小企業支援などに、振り向けるよう強く主張します。
次に、企業庁がすすめている「地域整備事業」についてであります。
現在、継続中の播磨科学公園都市、ひょうご情報公園都市、宝塚新都市、潮芦屋浜、津名の埋め立て事業などは、そのほとんどが予定していた民間企業の立地がすすまず、当初計画が暗礁に乗り上げ、立ち往生しているが実態です。そこへ今、津名の埋立地を運動公園にしたり、淡路夢舞台のホテルを買い取ってリースしたり、播磨科学公園都市に県立施設を次々と建設するなど、公共事業がすすめられています。
当局は、わが党の質問にたいし、「これらの事業は企業会計で行っており、税金は使っていない」とずっと答弁されてきました。しかし実態は、事業計画の破綻を、公共事業など、税金で穴埋めしているのが実態ではありませんか。
さらに、地域整備事業の重要な情報が、県民にわからないようになっていることも大きな問題点です。
わが党は、個別の事業を判断する上で、個別事業ごとの収益的収支を含めた会計の全面公開を求めてきましたが、いまだに県民に明らかにされておらず、いわば「ひみつ会計」です。全国的にも異常な事業会計となっています。
2001年から、北摂整備事業も企業庁に移り、その後の会計が、県民から見えなくなっており、弊害は明らかです。
このような多くの問題点をかかえた企業庁にたいし、今回の「取り組み案」では、不十分な「企業庁経営ビジョン」を前提にした取り組みを指摘しているだけです。県「行革」の見直しをおこなうのであれば、地域整備事業についても、全面的に見直し、県民参加で再検討をすることを、強く求めるものであります。
次に、土地問題についてであります。
県土地開発公社と住宅供給公社の所有している3032ヘクタールについて、今回の「取り組み案」では、「先行取得によって、乱開発の抑制を図ってきた」と評価し、「本格的な事業化にむけた検討」「県による買い戻し」「土地開発公社への集約」という3つの方向性が出されました。
しかし、12月の特別委員会のわたしの質問の中で、次のことが明らかになりました。
一つは、先行取得の目的が、乱開発防止などでなく、その大半が右肩上がりの経済成長の延長線上で、県自身が産業団地やニュータウンなど大型開発計画をたて、次々と用地の先行取得をおこなったなかで、バブルがはじけ、長期不況に入り、「どうしよう」もなくなっていることです。
もう一つは、現在、2つの公社が保有している土地の8割は、「利活用の基本的な方向が決まっている」というものの、結局、県の失政、誤った見通しによって広大な土地が、活用する目途もなく、長期間放置されることが、今後も長期にわたり続くということです。
しかも、この土地を県が最終的に買い戻す際に必要な3070億円は、将来の県民の税金で負担しなければならない、「隠れ借金」とも言うべきものであります。
わたしは、そのような認識の上にたって、今後の、より抜本的な対策を提案し、当局に実施を求めたいと思います。
一つ目は、今後は、土地の新たな買収は行なわないこと。
二つ目は、具体的な利活用の内容が決まるまでは、取り付け道路など、周辺整備も含めた新たな投資を行なわないこと。
三つ目は、里山林など暫定的な利活用を含めた今後の土地利用計画については、用地ごとに、地域住民を含む県民参加で、たとえば「武庫川委員会」(仮称)のような組織をつくって検討することです。
四つ目は、「取り組み案」の「土地開発公社に集約する」という方向性についてです。全国的にも公社の解散が増えており、土地開発公社の役割は低下しています。今後の仕事を縮小し、存廃を含めた抜本的な検討を求めるものであります。
以上4点の、抜本的な対策強化を求めます。
次に、大きな第3の柱は、組織・定員、給与についてであります。
これもすでに取り上げてきたことですが、地方機関の再編のうち、県税事務所について、不動産取得税や個人事業税など、相談も多く、現地調査、あるいは資料収集等のウェイトが大きい業務は、「住民へのサービスを低下させない」という観点から、できるだけ納税者の近くで事務を行なう必要がありますので、是非が地域事務所で事務が行なわれるよう要望しておきたいと思います。
その2点目は、教員配置の問題であります。
「取り組み案」では、現行の推進方策の削減計画に、さらに50人追加して3410人を削減。一方、第7次定数改善分で、プラス1435人ありますので、実質的に教員数を2000人削減する計画になっています。
しかし、いま教育については、全国的にも、県内的にも「少人数学級」の要望がますます高まってきています。
先般、県教育委員会が市町に対しておこなった「小学校1年生での35人学級の実施について希望するかどうか」の調査では、9割の市町が望んでいることが明らかになっています。
県として県民の願いを反映したこの調査結果を受け止めて、新年度から少人数学級に足を踏み出すために、教員の削減でなく、必要な教員配置を計画的にすすめられるよう求めるものであります。
最後に、県民合意についてです。
今回の「取り組み(案)」は、パブリック・コメントで県民からの意見募集がされましてが、期間も短く、周知が不十分ななかで800件もの県民の意見が寄せられ、その7割が医療・福祉の関係の意見です。
さらに、県下の市町からも異論が出され、県・神戸市医師会や保険医協会などの医療団体、腎友会などの患者・運動団体、それに、多くの県民から反対や異論が出されています。
このような点から、県民に合意されている状況でないのは明らかです。
こうした意見について、県当局は、真摯に受け止める必要があります。そのためには、県民の意見ひとつ一つを、どこで、どう検討したのか、検討過程を県民に公開するよう、強く求めます。
以上、縷縷述べた理由により、日本共産党県会議員団は、この「取り組み(案)」は、撤回し再検討を、重ねて求め、意見表明と致します。 |