私は、精神障害者社会復帰支援、小児救急医療、JR甲子園口駅バリアフリー化、公共事業見直し問題、武庫川治水、西宮市街地治水対策について質問いたします。
精神障害者の社会復帰や小規模授産施設に県の支援を
■質問■ 最初に、精神障害者社会復帰支援についてです。
今、精神障害者は全国で200万人、34万人が入院、そのうち社会的入院は、7万2000人に及ぶと言われ、欧米に比べて退院が可能な人への社会的受け皿が日本では全く立ち遅れています。昨年、ようやく、厚生労働省は、精神障害者の社会的入院を10年以内に解消することを柱とした重点施策策定5ヵ年計画を発表しました。
ところが、今年度、政府は、精神障害者とその家族の切実な願いである精神障害者社会復帰施設整備費補助を大幅にカットする暴挙を行いました。全国からの社会復帰施設新設要望161施設に対して、追加採択を加えても、53パーセント、86施設が切り捨てられました。中でも、兵庫県は8施設の新設要望に対してわずか1施設しか認められていません。
私は、先日の知事申し入れの際、この不当な国の予算カットに対して、担当部長任せでなく、知事自ら政府に直ちに予算復活の要請をすること、必要なら県が負担してでも予算確保することを知事に求めました。知事が「いい提案を受けた。参考にしたい」と、さっそく翌日に厚生労働大臣に直接要請をしていただいたことは、私も大いに評価するものですが、家族会の皆さんの声に答える取組が今こそ求められます。
政府は、補正予算で措置するときは、兵庫を優先的にと、回答したと伝えられていますが、予算措置を直ちにすることを求めるべきです。予算措置されなければ、県の責任で実施すべきだということを強く指摘しておきます。
さて、県下の精神保健福祉手帳の所持者は約1万人おられ、また、県下の社会的入院者は、人口比で計算すると2,400人となりますが、精神障害者の方々が社会の一員として暮らすことができる施設計画になっているでしょうか。生活の場の提供としてのグループホームや福祉ホーム、また、街なかの身近なところにあるべき小規模通所授産施設や小規模作業所も県の目標が達成されても、精神障害者の社会復帰にはまだまだ不足している状態です。
- (問1)精神障害者社会復帰施設建設計画を抜本的に拡充するとともに、県自らが公的場所を提供して社会復帰施設建設促進の先導的役割を果たすべきと考えますがいかがでしょうか。
さらに、小規模通所授産施設の運営には、国県市町から年間1100万円が補助されているだけで、施設の方や家族会の方はたいへんです。
- (問2)大阪府や滋賀県が行っているように施設運営や施設整備に県単独の助成をおこない、さまざまな障害者の方が社会の一員として生きる希望を持ち、社会全体での支援の取組へ進めるためにも県庁や県民局など県の施設の一角を、作業所や施設で作られた品物を販売する場や障害者による喫茶店運営、また、絵画や各種作品の発表などの場に提供していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。あわせて答弁を求めます。
先日行われた緊急集会で、関係者の方が、「精神障害者が家族にいることで貧乏することは我慢できる。しかし、精神障害者が家族にいることでなぜ恥ずかしく生きねばならないのか。誰もが幸せに生きる権利がある」と悲痛な訴えをされておられました。知事、ぜひこの声に応え、精神障害者や家族会の方々が生きる希望の持てる兵庫にしていただきたい。知事の暖かい答弁を強く求めるものです。
▼答弁▼井戸知事:精神障害者社会復帰支援についてです。ご指摘のように先月さっそく坂口厚生労働大臣に、わたくし直にお目にかかりまして、兵庫県の実状を訴えてきました。結論からいいますと、予算が全く枯渇をしてしまっているということでございまして、補正予算待ちにならざるを得ないということでありまして、補正予算を編成する場合にはまずこの予算を確保して、箇所付けは兵庫県を優先して善処したいということでありました。関係の各国会議員のみなさんにもあわせて要請をし、そして、厚生労働省の事務次官以下関係者にも要請をしてきたところでございます。いずれにいたしましても、補正予算の編成が行われるかどうかは、衆議院選挙待ちのことだと思いますので、衆議院選挙明けの動向を見ながら私も要請活動を続けてまいりたい、このように考えております。
また、精神障害者社会復帰支援につきましては「障害者福祉プラン」の改訂に向けての作業をすすめており、その中で精神障害者の社会参加、社会復帰へのニーズ等を踏まえ、社会復帰施設整備のあり方についても基本的な方向を明確にしていきたいというふうに考えております。
また、公的場所の提供については、すでに県営住宅を精神障害者のグループホームに提供しているほか、但馬県民局庁舎等においても授産製品の展示販売を行っています。今後さらに適当な場所があるかどうか検討していきたいと思います。さらに授産施設等に対する県の優先発注制度を行っておりますが、その他授産製品をカタログやインターネット販売も支援してまいります。こうした取組みを今後ともすすめてまいりたいと考えています。
なお、法に定められました小規模の授産施設の運営費につきましては、国がその運営費の2分の1を補助する仕組みとなっていますので、国に対し運営費補助単価の引き上げを要望しているところです。今後ともユニバーサル社会の実現を目ざして努力をしてまいります。 小児救急医療の、実状にあわせた整備を
■質問■ 次に小児救急医療の整備についてです。
私は西宮市内の乳幼児のおられる若いお母さん約100人から小児救急医療について聞き取り調査をおこないました。「高熱でグッタリした子どもを休日夜間診療所に連れて行ったが、小児科医がいなく、他にまわされて入院した。」「小児の2次救急病院に行ったが、2時間も待たされた。」「2時間もかかってやっと神戸の病院に運ばれた」など深刻な実態が浮き彫りになっています。
今、西宮芦屋地域の一次救急の休日夜間診療所は、小児科医師がいなかったり、西宮では深夜は開いていず、芦屋市は逆に開いているのは休日の昼間だけなど、小児一次救急は態勢がとれていません。
また、小児二次救急病院群輪番体制は、県の資料では、県立西宮病院、西宮市立中央病院、芦屋市民病院、宝塚市立病院、市の補助を受けて私立の明和病院などが当番曜日を決めて、西宮芦屋宝塚の阪神間西部の小児救急輪番体制を維持しています。しかし、土曜日や祝祭日の日中はこの態勢は空白となったままです。
一方、二次救急輪番制病院で治療を受ける患者の半数以上は、軽症の患者といわれ、また、二次救急輪番制は担当病院が一般県民には公表されていないため、担当日でない病院に親が駆け込むという事態が各公立病院で起きています。一次、二次と言う機械的分け方は小児救急については崩れています。
県では、小児二次救急にくる患者は軽症が多いからと、親の教育を主張する向きもありますが、正しい知識の普及は大切でも、内科医でも判断が難しい小児救急への正確な判断を若い親に求めて、この事態が解決できるでしょうか。また、電話相談も大切ですが、治療が必要な時、「それはたいへんだ、すぐに来なさい」と、診療にも応えてくれる電話相談ならどんなに心強いでしょうか。
ある小児科の医師は「幼児は、自分で症状を訴えられず、症状の進行も早いため、軽く見えても実は重い病気のことが時々ある。子供の救急にこそ、1箇所ですべて対応できる体制が有効」と語っておられます。欧米で行われているように、そこへ行けばどんな症状でも対応してくれる自己完結型の小児救急医療をこそ目指すべきと考えます。
その点で、私は、三次救急の併設や各市での実施も展望しながら、当面はまず、一次から二次への転送をなくし、一次でも二次でもその病院で治療してくれる小児救急医療体制の確立を提案します。 ■質問3■二次救急輪番病院に一次救急、さらには電話相談も併設し、地元医師会、小児科開業医の方々の協力も得て、数名以上の態勢で対応するようにすることです。地元医師会の協力が不可欠ですが、小児科を持つ公立病院が各地域に配置され、小児科開業医が約80名もおられる西宮芦屋で、まずこの取組を進めてはどうでしょうか。知事の英断を求めます。 さらに体制をきちんと作るために、小児救急への財政支援の抜本的強化が不可欠です。病院によっては、小児救急輪番の夜間当直に研修医が入っていますが、すべての当直医に夜間勤務に相当する給与をきちんと支給することが必要です。
ところが、これほど小児救急が社会問題になりながら、小児二次救急輪番制への国の補助は、一回あたり、すなわち一晩約2万6000円のみで、内科外科などの一般の二次救急輪番制へは約7万円も出しているのと比べてお粗末この上ない実態です。小児二次救急輪番制が一般輪番を補完する目的で設けられたからとのことですが、全く時代遅れの対応です。救急に携わる小児科医の過重労働、小児救急体制整備の社会的緊急性を考えれば、一般輪番を上回る財政支援措置をとることこそ必要ではないでしょうか。また、救急車に肝心の小児治療用の機材・設備が必ずしも配置されていないことの改善も必要です。
■質問4■小児救急輪番制への劣悪な財政支援の抜本的改善を行うとともに、県下の幼い子供たちの命を守るために一次併設の二次輪番制確立や、救急車に小児治療用の機材・設備を充実するための県独自の財政支援を求めるものですがいかがでしょうか。知事の勇断を求めるものです。
▼答弁▼井戸知事:小児救急医療についてであります。第2次救急輪番病院への1次救急及び電話相談の併設につきましては、医療資源を有効に活用する手段の一つと考えられますが、各県域の地域特性があるため、今後は各県域の健康福祉推進協議会等においてそれぞれの圏域の状況に応じた推進方策の検討を行うことといたしております。
いずれにしましても、1次、2次、3次の救急体制という基本的な枠組みを全県に機能的に配置しながら、さらに実状に即した対応をすすめてまいる。これが基本ではないかと考えております。
「小児科救急対応病院群輪番制補助」の増額につきましては、以前より全国衛生部長会議等を通じまして厚生労働省に要請をしておりまして、引き続きその実現をめざしてまいります。
救急車への小児用機材設備の配置でありますけれども、各消防本部におきまして、各救急車にワンセット配備されておりまして、基本的には整備されているものではないか。このように考えております。
今後とも県民の安全・安心を確保するため、小児救急医療の体制整備をめざして関係者ともども努力をしてまいります。
なお、輪番制では国の制度上、土曜日は平日と考えられておりますので、土曜日の日中は制度の対象とされていないものです。また、祝祭日の日中につきましては、尼崎市も含めた阪神南圏域として対応しておりまして、空白日は生じていないものと承知しております。 JR甲子園口駅にエレベーターの設置を
■質問■ 次に障害者や高齢者にやさしい駅のバリアフリー化についてです。
私の地元のJR甲子園口駅は、毎日3万8000人が乗降する西宮で3番目に乗降客が多い駅ですが、いまだにエレベーターもエスカレーターもなく、バリアフリー化が全く遅れている駅です。そのため、足の不自由な高齢者はタクシーに乗ってエレベーターやエスカレーターのある駅に行くという実態です。私は昨年、住民の方と一緒にJRと交渉し、具体的な案の提示を近く行いたいという回答を得ましたが、最近そのJRの案をお聞きすると、橋上駅案、地下駅案、線路を廃止してのプラットホームの拡大延長案となっています。いずれも大規模改造で大変な経費となり、地元西宮市の財政状態からいえば、実現にきわめて困難な提案です。しかもこの三つの案は、いずれも鉄道をはさんで北と南に分かれている改札口をひとつにしようという発想のものです。バリアフリー化と言うよりも改札口の統合、駅員の削減を目的にしているとの印象を持ちました。
私は専門家の人とも現地を調査しましたが、元町駅にあるエレベーターならJR甲子園口駅のプラットホーム中央にある自動販売機の幅よりも小さく、エレベーター設置は可能です。また甲子園口駅の構造ならこのエレベーターにつながる通路も別に作ることが十分可能です。
県下のJRの各駅でエレベーター設置がいまだ行われていないところは、共通して大規模改造で、とのJR側の考えがあるようですが、駅員減らしの合理化、改札口の統合を優先した計画でなく、高齢者や障害者に一刻も早くバリアフリーの駅を提供することを主眼にした検討をすべきではないでしょうか。
■質問5■JR甲子園口駅へのすみやかなエレベーター設置へ県として強力に取り組むことを求めますが、いかがでしょうか。 ▼答弁▼県土整備部長:JR甲子園口駅のバリアフリー化についてでございます。既存鉄道駅舎のバリアフリー化につきましては、法令上鉄道事業者の努力義務とされておりますが、福祉の街づくりを推進する観点から重要な課題として考えておりまして、県といたしましても補助制度を設け支援してきているところでございます。
甲子園口のエレベーター設置につきましては、この駅の構造上、地下道の新設が必要となるなど大規模な改修が必要であるとJRから聞いております。県からは、実現可能な方策をJRにおいて立案検討するよう申し入れているところでございます。
今後もバリアフリー化にかかります設備や施工技術の進展を踏まえまして、例えば車椅子用階段昇降機の導入等、多様な使用につきましても必要な情報収集を行いましてJRに対しましてバリアフリー化の早期実現を働きかけてまいる考えでございます。
県下の「生活ダム」の見直しを
■質問■ 公共事業見直し問題として生活ダムについてです。
淀川水系でダムの見直しが始まり、各自治体もダム建設計画からの撤退をはじめています。
県は、地域生活貯水池整備事業いわゆる生活ダムの建設を進めていますが、治水、利水、環境保全などの検討がきちんと行われているでしょうか。以下、与布土ダム(山東町)、八鹿ダム(八鹿町)、但東ダム(但東町)、西紀ダム(篠山市)の四つの生活ダムについて質問します。
先日、私はこれらのダム計画地を調査しましたが、いずれも川幅3,4メートルの川にダムを作ろうというものです。しかし、治水対策なら、ダム予定地の下流域は田畑がほとんどなので、川幅を広げるか川底を下げるかの河川改修をすればよく、この方がダムを作るより格段に安上がりです。
また、水の需要予測という点でも、たとえば西紀ダムでは、旧西紀町での1000立方メートルの水使用実態に対して2倍の2000立方メートルの水需要を見込んだり、但東ダムでも、一日最大給水量を町の現状よりも3割近くも増加を見込むとか、与布土ダムでも、町での一人当たり使用水量も人口も、減少しているのに、いずれも右肩上がりの計画をたてるなど、利水ダム共通の過大水需要予測です。
さらに、環境保全です。与布土ダム、但東ダム、西紀ダムは、1998年の兵庫県事業評価監視委員会でダム建設にゴーサインを出した翌年に初めて環境調査、八鹿ダムも環境調査の大半が建設ゴーサインのあとです。まさに「先にダムありき」です。
- (問6)知事、この際、生活ダムについても、治水、利水、環境保全などの面からきちんと代替案を検討しなおすべきと考えますがいかがでしょうか。
この四つの生活ダムについての公共事業審査は、2回にわたって行われましたが、代替案の検討どころか、まともな環境調査もないうちから建設にゴーサインを出す実態で、公共事業審査のあり方が根本から問われます。
- (問7)公共事業等審査会そのものを、少なくとも「(仮称)武庫川委員会準備会議」でおこなわれているように県と異なる意見を持つ専門家や住民を加えて、住民が傍聴する場で検討するように改善すべきです。知事の答弁を求めます。
▼答弁▼望月理事:私から、公共事業審査のあり方と生活ダムの見直しについてお答えをしたいと思います。生活貯水地整備事業は山間部などにおける小河川における直接的な治水利水対策を目的としておりまして、県下では「みたからダム」等2ダムが完成をいたしまして、現在但東ダムと5ダムで事業を実施中でございます。
治水上の必要性につきましては、河川改修の代替案と比較した上で、ダムが経済的であると判断したものではございますが、当該地域は山間部であり、水道水源である渓流水や地下水が枯渇・減退していることから、安定水源の確保のため市町から生活貯水地整備に対する強い要望があり、その水道事業の妥当性についても確認をしております。
また、環境につきましては、もともと環境アセスの対象となっていないところでありますけれども、事業評価監視委員会から「環境影響評価に関する条例の対象とはならない場合においても自主的に評価を行い影響の緩和に努めるべきである」という「答申」をいただいたため、必要な環境調査を行ったわけであります。
なお、各ダムとも再評価後5年経過し、事業継続中でございますことから、今年度におきましても、再度公共事業等審査会の意見を聞くこととしておるところでございます。公共等事業審査会は、環境、土木、農林、経済と各分野の学識経験者の方々のほか、幅広く一般県民の意見を聞くために、マスコミ、文化人、弁護士等多方面にわたる有識者に様々な角度から審査を行っていただいているところでございます。この審査内容につきましては、議事録や評価調書等を県のホームページや中央県民情報センターで公表し、評価過程の透明性の確保に努めているものでございます。以上でございます。
真に安全な武庫川へ
正しい情報を伝え、
問題箇所の対策を
■質問■ 次に武庫川ダム・武庫川治水計画にかかわる質問です。
現在、武庫川委員会の設立に向け、取組が進められていますが、この取組が真に環境保全と両立する治水計画作りとなるためにも流域の県民が事実にもとづく正しい情報を持つことが不可欠です。しかし、この間、県がともかく武庫川ダムだと宣伝する中で、県民に間違った情報、誤解が広く残されています。
たとえば、3,4年前に、武庫川ダム問題について当時の西宮市長と住民団体の方が懇談したときがありました。私も同席しましたが、私たちが「武庫川ダムができても、西宮の市街地の水害はなくなりませんよ」と指摘したとき、市長さんは「ほんとうか」と後ろにいた治水担当の幹部に問いただすという場面がありました。県が、武庫川が今にもあふれる絵をインターネットで流し、西宮の水害が何でも武庫川ダムと関わりがあるかのように危機感だけをあおる宣伝をしたために、市のトップの方にも大変な錯覚が生まれていたのです。
また、水害に苦しめられているリバーサイド住宅地域は、県資料でも現在毎秒1,000立方メートル=いわゆる1,000トンしか流下能力はなく、仮にダムができても30年に一度の大雨の時、上流から流下能力の倍の毎秒1,900トンの洪水が流れます。ダムができても安全ではないのです。この事実を県は一切地域の住民に明らかにしていません。県はダムをつくる時に改修するといいますが、ならばなぜ暫定改修などと言わず、抜本的改修をしないのでしょうか。
県は、100年に一度の洪水対策にはたくさんの橋梁の架け替えが必要となるために実際には30年に一度の洪水対策、すなわち毎秒3,100トンの洪水にダムと河川改修で対応する計画を進め、武庫川下流域については、武庫川の川底を掘り下げる改修工事を進めてきました。
ところが、昨年県が発表した「武庫川治水計画検討業務報告書」をみますと、武庫川下流域では、すでに、昭和58年当時の洪水=毎秒2,500トンの洪水を十分に流せるだけでなく、ダムなしで、県がダム必要の根拠としていた流量=毎秒3,100トンの洪水を流せる流下能力が多くの区間で出来上がっていることが明らかになりました。
報告書によれば、盛土堤防区間の甲武橋から下流域までの区間8キロで、堤防の高さが足らないために、3,100トンの流下能力のないのは主として阪神電車橋梁と武庫橋付近だけで、堤防の高さを考慮すれば、ほとんどの区間は3,400トン以上を流せる断面となっており、堤防補強や一部の河床切り下げなどを行えば、流下能力を確保できます。報告書にも出ているように特に阪神電車橋梁付近の潮止め堰から一号床止めまでの1キロの区間は、河川改修工事を行ってもすぐに土砂が堆積する区域で、その原因は潮止めによる流速の停滞と、潮止め堰より上流区間の河床勾配を、上、下流と比べてゆるくしたため、流速が落ち土砂が堆積しやすくなったと推測されます。
この堰の上流付近には、かつて尼崎市が武庫川から工業用水を取っていましたが、すでにそれはなく、武庫川からの取水の関係では潮止めの必要性はありません。
また、3,100トンの流下能力確保に阪神電車橋梁の架け替えが必要ならそれこそ直ちに検討するべきではありませんか。着目すべきは、部分的改造をすれば、ダムなしで3,100トンを流せる条件が報告書の中で明らかになっていると言うことです。
この箇所は、ダムのあるなしにかかわらず、元々堤防の薄い箇所があるなど武庫川下流域で改善が不可欠のところです。
- (問8)流域住民に以上の事実を知らせ、地域住民の安全確保、安全な武庫川のために、堤防が薄く流下能力不足の阪神電車橋梁付近と潮止め堰の機能の再検討、堆積土砂の撤去など下流部の流下能力拡大の検討と堤防補強の取り組みを直ちに行うべきと考えますが、いかがですか。知事の明確な答弁を求めます。
▼答弁▼県土整備部長:武庫川の治水対策についてお答えいたします。武庫川の河川改修事業につきましては、昭和58年洪水相当流量でございます。毎秒2,600トンを安全に流下させることを当面の目的として整備をすすめております。「潮止め堰」は従来からあった潮止め機能をもっておりました構造物の代替え施設として改築したものでございまして、周辺の地下水利用あるいは、塩水の遡上による環境への影響等を考慮いたしますと、現在でも必要性はございますし、また、環境上の配慮から容易に撤去できるものではないと考えております。
また、当堰は転倒堰でございます。もちろん流量にもよりますが、洪水時にも流下能力に支障をきたすことはないと考えているわけでございます。周辺の堆積土砂につきましては、河川の彎曲部の関係から発生するものでございまして、潮止め堰に起因しているものではないと県としては考えております。これら堆積土砂につきましては、昨年度末から準じ掘削し撤去しております。今後も必要に応じ浚渫を行っていくことになります。
また、武庫川堤防の補強につきましては、学識経験者を入れた「武庫川堤防技術検討委員会」で検討いたしております。早期に結論を得て必要な対策を行っていきたいと考えております。
武庫川の治水計画につきましては、全般につきまして治水安全量と計画流量それに対処する対策の組み合わせ等につきまして、ゼロベースから検討することとしております。そのため仮称でございますが「武庫川委員会」を立ち上げる取組みをすすめております。今後この委員会の中で十分な情報開示をはかりながら具体的な治水対策を検討していくこととしております。
西宮南部の治水対策で「総合的な取り組み」を
■質問■ 次に西宮南部治水対策についてです。
西宮南部で発生してきた水害は、武庫川ダムとは全く関わりなく、独自に解決しなければならない問題とわたくしたちが指摘する中で、ようやく西宮市街地の治水対策の検討が県と西宮市によって進められてきていますが、この取組を真に実効あるものにすることが急がれます。
都市部の総合治水対策として、降った雨が一度に流れ出すのを抑える保水力の確保や流出抑制、河川や下水、ポンプ場などの治水能力の引き上げ、被害軽減の取り組みが不可欠です。
流出抑制については、数年前から、西宮市は、2,000立方メートル以上の開発には、降った雨を一時ためる地下貯留槽を設ける指導をし、2,000立方メートル以下の面積の開発には雨水の地下への浸透方式を指導しています。この努力は大切ですが、これだけでは市内でおきている水害を無くすことになりません。
県が今工事を進めている芸術文化センターのすぐ横に流れる県管理の津門川は、よくあふれる危険河川ですが、肝心の芸術文化センターの流出抑制は、この市の基準にとどまっています。県が目玉としている開発なら、それこそ率先して流出抑制に徹底的に取り組む模範的な開発にすべきでないでしょうか。
私は、横浜市の鶴見川総合治水を幾度か調査しましたが、本当に涙ぐましい流出抑制の取り組みが行われています。それに学び、貯留槽の設置対象を1000立方メートル以上の開発と厳しくし、20年、あるいは30年確率程度の治水目標に匹敵した流出抑制に強化することが必要ではないでしょうか。今、マンション開発が急速に進む中で、この改善が極めて急がれます。
また、道路地下に巨大貯留管を設ける構想があるようですが、莫大な経費の割に効果に限界があり、日常使い道の乏しいこのような方式に進む前に、たとえば、よくあふれる東川や津門川沿いにあり、それぞれ5万平方メートル、4万平方メートルの面積がある西宮中央グランドや津門中央公園を改造し、洪水時の遊水池機能を持たせれば、それぞれ数万トン規模以上の遊水池機能を確保することが可能です。さらに公園やため池などに調整池機能を持たせるとか、市内の駐車場を地下浸透式のものに変えるとかなど、河川への負担軽減の徹底した取組が本格的に検討されるべきです。
また、当初想定していた以上に開発が進み、全市的に流出係数が大幅に増加している現状の中で、河川、下水、ポンプ場の治水能力アップは不可欠です。
また、被害軽減についてですが、鳴尾の高潮被害のとき、半地下の居室の扉が、侵入してきた水の圧力で開かずにお年寄りが脱出できない事態も生まれました。数人がかりでドアをあけ、難を逃れましたが、このような危険をつくりだす地下あるいは半地下居室は西宮では許可すべきでありません。
今、県と市の担当部局だけで検討がおこなわれているようですが、総合治水対策には、河川、下水部門だけなく、都市計画、建築、農林、住民の参加や連帯などさまざまな部局による総合的な取り組みが不可欠です。
- (問9)総合治水対策の中身として、先に指摘した、徹底した流出抑制の取組、遊水池の確保、下水、河川、ポンプの整合性ある治水レベルアップの取組、被害を拡大する危険な開発の規制など早急に検討し、実施することを求めますがいかがでしょうか。
以上、知事の誠意ある答弁を求めて私の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。 ▼答弁▼県土整備部長:西宮南部の治水対策についてお答えいたします。西宮市南部地域の治水につきましては、河川改修や下水道の一次環境の整備をすすめてきたところでございますが、市街地が連体しておりまして、さらなる河川改修は困難で、総合的な対策が必要と認識しております。このため昨年度に県市の河川、下水道等の関係部局が核になります総合的な治水対策検討会を設置いたしました。貯留など流域対策も含めた治水対策素案を作成したところでございます。
今年度は、この素案を元に学識経験者や地域住民からなります「検討委員会」を設置いたしまして、公園、ため池、校庭などを活用いたしました流出抑制対策、市街化区域内の農地保全や開発時の流水規制等を盛り込んだ総合的な、いろんな諸案を盛り込んだ治水対策計画の検討を行うこととしております。この計画に基づきまして県・市の河川下水道、街づくり、農林等関係部局が連携いたしまして、河川下水、あるいはポンプ場の改築等整備水準の整合にも留意した所与の施策を実施していくように努力したい、と考えているところでございます。
精神障害者の社会復帰施設へ県独自の支援を
武庫川南部の治水対策の「あいまいな答弁」を批判
■再質問■ 再質問をさせていただきます。本当にどれもぼやっとした答弁ばっかりですしね、質問に対してきっちり答えるべきだと思うんです。治水対策の問題でも。具体的な数字をあげてですね、これでどうなんどという具体的な案を示しているわけですが、それに対して県はどう考えているのか答えるの当然のことだと思うんです。
その点で、再質問ですから2点に絞って質問をさせていただきます。
最初に、精神障害者社会復帰支援の問題ですけれども、精神障害者の方々への支援は、同じ障害者施策の中でももっとも立ち後れていた分野の一つだというように、それは知事もすでに認識しておられるんだと思うんですけれども。そういう中で、家族会の方が必死の思いで施設の運営に携わっていると。そういう苦労に対して、今知事は国に要望しているということでしたけれども、それでは大変だから、家族会の方々は困っているわけです。国に要望して国がずっとしなかったら知事はそのまま放ったらかしにするんですか。やっぱり大阪や滋賀県がやっているように、県として独自に施設の整備や運営になぜ補助しようとそういう立場に立たないのか。物を売るだけの協力だけで施設の方々が運営やっていけるのではないのです。そういう点でまず知事の方でその答弁明確にお願いしたいと思います。
それからもう一点これも知事に答弁をお願いしたいんですけれども、武庫川南部の治水対策の問題で、いま部長は、「武庫川委員会で検討するんだ」と非常にあいまいな具体的なことを示してない答弁の状況なんです。これはこの地域の問題は、治水対策だけの問題ではないわけです。この前の北海道の地震でもですね津波対策の問題が焦眉の課題だということが今や全国で明らかになってきているわけです。
この間指摘しているように、この武庫川の下流域は、まさに津波を受ける対象の区域。しかも県の調査の中でも地震が起きたときは、8年前の震災の時は、堤防がもうがたがたに痛んで、流動化して補強策が必要だということも焦眉の課題ですし、しかも阪神橋梁のところは堤防が非常に薄いと。ここへ津波がきたら一体どうなるのかという立場から、津波対策の面からもこれは直ちに県が責任を持って取組んでいくということが求められているわけです。そういった点からもこの阪神橋梁の部分あるいはその上下流のところの治水対策、津波対策としての検討もしなきゃならない。知事としてそれにゴーサインを出すという立場をはっきりと表明していただきたい。 ■答弁■井戸知事:まず精神障害者の社会復帰施設の整備運営についてでございますけれども、国におきましても精神障害者に対する対応が180度、最近になりまして方針が変更になって、できるだけ社会復帰を促進することによって普通の社会を作っていこうと、それがまあユニバーサル社会だと思いますが、そういう方向をめざして動き出したと、こういう状況だと思います。
県としてもそのような動き自体を高く評価をして、県としてやるべきところは積極的にやろうとしているところであります。ただ、財政秩序の面からいたしますと、国がやらなければ県がやればいいという発想は私はいかがかと思っております。国のやるべきことをきちんとやっていただく。その上に立って県としてもやるべきことをきちっとやる、これが財政秩序の当たり前の姿だと思っておりますので、私は、そのような意味で国にきちっとやらせる。県はやるべきことをきちっとやる。これが基本的なスタンスだと思っております。
2番目に武庫川の総合治水対策につきましては、いずれにしましてもゼロベースから検討をすすめるということで武庫川ダムの対策委員会を設置して、そして議論をはじめようとしているところでございますから、360度いろんな議論も含めて検討していっていただいたらありがたい、そのように思っておりますし、それが地域の方々の要望を踏まえての参画共同型の公共事業の推進の仕方だということですすめさせていただいたことであると考えております。
なお、津波対策の問題は、津波対策の問題として武庫川の総合治水の関連があるとすれば、その関連も十分関連づけながら検討してまいります。すでに今年の2月に、事前にひ門、水門等が締まるかどうかってことを含めまして、抜き打ちの防災訓練をやりましたところ、全部きちっと締まる、しかも時間内に締まるということも確認をできました。ですから、その辺の問題も単に施設を整備したからと言ってダメなんですね。ちゃんと運営・運用ができないとダメなんです。ですからそういうことも含めて総合的な対応をしてまいりたいという考えでございます。
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