■質問■ 私は、県民の願いを反映しながら、さらに県政を充実・発展させる立場で、以下、五点について質問いたします。
高齢者の見守り体制の充実
生活援助員(LSA)の増員を
■質問■ はじめに、LSA、生活援助員の問題についてです。在宅高齢者の見守り体制として、LSAは大きな役割を発揮しています。「何かあったら来てくれるLSAが近くにいると思うだけでも安心」という高齢者の皆さんの声を何度もお聞きしました。
わが党は、夜間に緊急を要することが起こりやすく、高齢者の不安が大きいことから、LSAを増員して24時間常駐とし、高齢者が安心できる体制を繰り返し求めてきました。
夜間や休日にはLSAの配置がなされていないため、見守り体制がくずれている問題があります。ある県営住宅では、夜間に倒れていたお年寄りを翌日になって訪問したヘルパーが発見する事態が多発しています。また、夜間や休日は、ほとんどが警備会社の対応ですが、日常的に住民と接しているわけでない警備員が来ても、対応の仕方がわからず、結局はLSAなどの自宅に電話があって対応しているのが実態です。LSAを増やし夜間常駐の実現が本当に求められています。
私は、先日LSAの皆さんにお話を聞かせていただきましたが、人数不足のため、ほとんどの団地で「一人職場」となり、昼間も大変な実態です。LSAが派遣されているシルバーハウジングは、当初は「自炊できる」ことが入居要件でしたが、途中で要介護状態でも入れるようになり、ある住宅では、27世帯のうち13世帯が介護保険のサービスを受けており、痴呆老人や、徘徊をするお年寄りが入居しています。LSAは、安否確認や一時的な家事援助といった本来の業務に加え、痴呆老人への対応を含む介護から、住民同士のトラブルの仲裁まで様々な仕事をこなさなければなりません。こうしたことからもLSAの人員増が必要です。
県は、夜間・休日の見守り体制については不足を認め、新年度予算で被災高齢者の見守りを推進するとして、「夜間・休日『安心ほっとダイヤル』開設事業」を創設しました。
この事業は一つの電話窓口について約500世帯が対象となるということです。対象世帯がこれだけあれば通話中が続き、つながらない事態が起きることは目に見えています。さらに、利用者にとっては、対応する相手が、昼間はLSA、夕方から24時までは老人福祉施設や市町の職員、それ以降は緊急通報に対応する警備会社の警備員とばらばらで、果たして高齢者の安心につながるのか、疑問が残ります。やはり、思い切ってLSAの増員を行い、24時間常駐を県としてはかる、このことを抜きには、抜本的な解決は、はかれないのではないでしょうか。
ところが、県は、LSAの財源を2億1000万円も削り、14年度補正予算でもLSA事業費補助が減額されています。なぜこれをLSAの増員に当てないのでしょうか。先の臨時議会で指摘をしたように、増員すれば見守り体制の充実だけでなく、雇用拡大にも役立つはずです。
知事、少なくとも、シルバーハウジングの入居者等の構成の変化を調査し、変化に見合うLSAの充実・強化をはかるとともに、すぐに求められていることとして、夜間常駐を行うよう求めますが、いかがですか。
▼答弁▼井戸知事
まず、LSA生活援助員の充実・強化についてです。シルバーハウジングの入居者個々人の健康状態などについては、見守り主体の市町において、LSAをはじめ、民生委員、老人クラブ会員等による声かけ、町の保健室の看護ボランティアによる訪問活動などを通じて、随時見守られているものと承知しております。見守り体制については、これまでから、シルバーハウジング以外の住宅にも、高齢世帯生活援助員を配置するなど、順次強化をはかっております。夜間等の見守りについても、市町において、LSA、民生委員等の訪問活動に従事する者や、市町の担当者からなる協議会を設け、高齢者個々人に即した支援計画を策定し、関係者が連携して活動しておりますほか、今回の「安心ほっとダイヤル」の設置により、さらに体制が強化されるものと考えます。なお、夜間常駐の必要性については、ご指摘のようなご意見もお聞きしておりますが、その設置の責任を持つ市町からは現在のところさらなる強化の要請を受けていないので、更に把握に努めたいと思います。特にLSAの配置について、市町の判断で弾力的に配置できるようになりました。県としては、その積極的な活用を働きかけていくほか、派遣対象住宅の拡大についても国に緊急に要望したところです。予算措置は、「介護予防・地域支え合い事業」のこれまでの実績を踏まえたものであって、LSAの配置については、昨年同様派遣に必要な予算額は十分確保しており、支障はないものと考えています。今後とも、地域のおける在宅高齢者の見守り体制の強化等に努めてまいります。
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アレルギーを持つ児童・生徒の調査、
各学校に学校栄養職員の配置を
■質問■ 第二に、学校給食のアレルギー対応についてお聞きします。
食物アレルギーを持つ子どもたちにとって、給食にどんな食材が使われ、どのように調理されているかは重大な問題です。食物アレルギーの場合、原因となる食物を摂ると、ときには命にかかわるからです。
現状は、給食を作る段階でのアレルギー対応はほとんど考えられておらず、親が目配りし、食べる子どもが自衛するしかない状況です。例えば、牛乳アレルギーを持つ子どもだと、牛乳を飲まないだけではすまないのです。センター方式で提供される給食のカレーには、牛乳が加えられています。お母さんは、毎日献立表とにらめっこして、お弁当を持たせるなどしています。
この問題で、市町の対応はさまざまです。例えば、西宮市・尼崎市・宝塚市などでは、食物アレルギーを持つ児童の把握はされていますが、学校ごとの対応の把握や、食材に関する情報提供も不十分な市町もあります。また、代替食・除去食の提供は学校まかせです。
県は、こうしたアレルギーを持つ児童・生徒の状況や、学校・市町の対応をつかんでいません。一方、長野県では、県内給食実施の公立小・中学校すべてを対象に調査を行い、アレルギーを持つ生徒数、原因食品、学校の対応等について実態を把握し、対応が検討されています。まず、県としてこうした調査を行い、実態を把握することが必要です。
さらに、アレルギーを持つ子どもがいる学校すべてで除去食・代替食の実施ができるよう、環境を整えることが求められています。その一つとして、学校栄養職員の充実が必要です。原因食品が多様なもとで、一人一人に対応した献立づくりや、原因物質を取り除くだけでなく成長に必要な栄養を摂取できる工夫、他の子どもと違うものを食べることで子どもの心の負担にならないような教育上の配慮、これらには栄養職員の持つ専門的知識が欠かせません。文科省の協力者会議の報告でも、食物アレルギーのある児童生徒について、「学校栄養職員がその栄養学等に係る専門性を生かしながら、個別に対応をしていくことが求められている」と指摘しています。
芦屋市では、給食実施の小・中学校すべてで、自校調理方式による給食が行われ、市の負担で3人の学校栄養職員が加配され、各校に1人の配置になっています。ここでは、アレルギーを持つ子どもの親と学校栄養職員を含めた学校関係者が懇談を行い、例えば、卵アレルギーの子どもなら、ハンバーグの日はつなぎに卵を使わないものを用意し、間違いなく配食できるよう、栄養士さんがその子どもに届けるなどの対応がされています。
本来、アレルギー対応を含め小回りのきく自校調理方式が望ましいと考えますが、センター方式の場合でも、各学校に栄養士さんがいればある程度個別の対応が可能なはずです。
ところが、県下の公立小・中学校に配置されている栄養職員の約36%が2校以上をかけもちしており、受け持ち数が6校以上に及ぶ職員もいます。複数校をかけもちする状況では、個別対応に十分な役割を発揮することができません。
そこで、アレルギーを持つ児童・生徒の実態と学校対応について、調査を県として行うとともに、少なくとも1校に1人の学校栄養職員を県の責任で配置することを求めます。ご答弁ください。
▼答弁▼武田教育長
私から、学校給食のアレルギー対応と、障害児教育について3点ご答弁申し上げます。学校給食における食物アレルギーを持つ児童生徒への対応については、従来から文部科学省の指導にもとづきまして、市郡町教育委員会に対し、教職員の共通理解のもと、保護者の申し出や医師の指導等に基づきまして、児童生徒の状況や学校の状況を考慮して可能な範囲で弾力的な対応をするよう指導してきたところでございます。また、県内の市町の小中学校における対応状況を見てみますと、平成13年度の調査で回答のありました六十四市町見た場合、該当児童生徒数は753名でありました。またその対応は、除去食が43市町、代替食が17市町、弁当持参が21市町でございました。また、14年度の県内市別の状況につきましては、除去食対応が9市、代替食をとっておるところが5市、その他何らかの対応をしているところが4市でございましたが、未対応が8市36%でありました。今後は、私どもといたしましては、児童生徒一人一人の特性や体質などを考慮し、調理施設や調理作業等の各学校における実態に即したよりきめこまかな指導と、その徹底を図ってまいりたいと考えております。また、学校栄養職員につきましては、いわゆる義務標準法に基づきまして、配置をしているところでございまして、平成13年度からの第7次教職員定数改善計画によってその配置基準が改められました。学校給食単独実施校では児童生徒数が549人以下の場合4校に1人、550人以上の場合は1人の配置となっているところであります。県教育委員会ではこの配置基準にのっとりまして、市郡町教育委員会の意見等を聞きながら、今後も適正な配置に努めてまいる所存でございます。
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障害児童の寄宿舎の改善、指導員の夜間複数配置を
■質問■ 第三に、障害児教育に関わって質問します。すべての障害児が豊かな教育を受けていく上で、児童が生活する寄宿舎は特別な意味をもっています。
県下に寄宿舎は、盲学校2校、聾学校4校、養護学校3校、計9校に併設されています。障害児の多くは、環境の変化にとても敏感です。なかでも、食べる、寝る、排泄という行為は、子どもの生命に関わる重大問題です。だからこそ、障害児にとっては、家庭以外の場での生活を経験し、その環境の変化に対応していく力をつけていくことが重要なのです。寄宿舎の生活は、そうした障害児の生命をも守り、発達を促す重要な場にもなっています。まさに寄宿舎は生活まるごとが発達の場、教育の場なのです。
ところが、本県に設置されている寄宿舎の状況は深刻です。例えば、県立盲学校では、改修の連続がそこここに段差をつくり、トイレもほとんどが和式です。また、築35年の播磨養護学校でも、同じく段差が多いだけでなく、お風呂場の古く欠けた床タイルで傷つく生徒がいたり、男子部屋では、4人部屋に押入れ3つという状況です。
さらに、エアコンは大半の寄宿舎で未設置です。県立神戸聾学校の寄宿舎は、校舎から離れたところにあるうえ、女生徒も入舎しており、防犯面から夏の酷暑のさなかでも窓を閉めきってしまわなければならず、まさに昼間に照りつけられたそのままに寝苦しい夜を送っているのです。それは、播磨養護学校でも同様です。今年度から整備するといった県立盲学校でも13室中5室しか設置されていません。ハンディを背負って生きるこの子どもたちにあまりに冷たい行政姿勢です。
以前に県立盲学校を訪れた際、可愛い花が各所に飾られていました。いくら視力に障害があっても、花の形は見えなくとも、その香りや、そこにただよう空気のあたたかさ、それを皮膚で感じてもらうためにと教職員の皆さんが心配りをしているのです。
文部科学省の「21世紀の特殊教育のあり方に関する調査研究協力者会議」最終報告でも、寄宿舎を「自立し社会参加する力を培う重要な場」と位置づけ、「老朽化した施設の改善を図る」、バリアフリーの推進など「居住環境の向上に十分配慮する必要がある」と言われているのです。
新年度予算で、老朽化した寄宿舎の新築・改築をすすめるとともに、全ての部屋の冷暖房化を盛り込むべきだと考えます。
さらに、子どもたちの寄宿舎生活を支える寄宿舎指導員が、長時間の過酷な勤務実態になっていることも見過ごせません。泊まりをはさむ勤務は、午後2時15分から始まり、交代するのは翌日午後1時45分、23時間30分もの時間を寄宿舎で勤めなければなりません。各校少しの違いはあっても、これが寄宿舎指導員の実態です。夜間の事故や、身体の不調を訴える子どもに対応するのに十分な体制とは、とても言えません。
直ちに子どもたちの寄宿舎生活を守るためにも、適正な労働時間の順守と、夜間は複数を保障する寄宿舎指導員の人員増を進めるべきだと思いますが、あわせて心のこもった答弁を求めます。
▼答弁▼武田教育長
また、障害児教育について、その一は、寄宿舎の整備・充実についてでありますが、盲・聾・養護学校の寄宿舎の改築につきましては、施設の経過年数のみを目安として判断するものではなく、改築に至らない場合でありましても施設の耐久度や緊急度などを勘案し、計画的に進めているところであります。さらに、障害の重度化・重複化や生活様式の変化に対応し、より快適な居住環境といたしますために、寮内の内装改修、あるいは空調設置につきましては、すでに昨年から計画的に取り組んでおるところでございまして、15年度につきましても、播磨養護学校他三校で、予定をしているところでございます。
次に、寄宿舎指導員の勤務につきましては、1週40時間の枠内で適正に勤務の割り振りを行っているところであります。宿直につきましても、労働関連法規に基づき、勤務を命じているところでございまして、そのうえで、前後に週休日や遅出・早出を組み合わせるなどの配慮を行っているところでございます。また、職員配置につきましては、各学校ごとに寄宿舎に入舎する児童生徒の状況、使用している寄宿舎の棟数・部屋数、あるいは、運営状況等を考慮して、適正に行っているところでありまして、宿直勤務につきましても、複数体制で勤務できるように、努めているところでございます。
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聴覚に障害をもつ児童のための教育支援を
■質問■ この項の二点目は、現在県立神戸聾・姫路聾・豊岡聾学校の3校で取り組まれている通級による指導の充実です。
この通級とは、通常学校に通う聴力に障害のある児童が、「聞こえとことば」の指導を受けるため、県立聾学校に通うことです。具体的には、補聴器を正しく使い、言葉を正しく聞き取る聴能指導、発音の明瞭化をはかり、語彙・語法の言語指導、家庭での指導のあり方、子どもへの接し方、保護者の悩みなどの相談も行われています。例えば、垂水区にある神戸聾学校には、遠くは、三田、芦屋などからも通級されています。子どもたちは小学校が終わってから通うわけですから、大変です。交通費も時間も必要です。しかも、子ども一人で通うことはできません。働く母親の増える中、週一回通うことも困難をきたします。現在、教諭が小学校に赴き指導する巡回指導も取り組まれていますが、これもまた、出張費などに限界があり思うにまかせられません。阪神・東播磨地域でも通級をしている児童を受け入れる施設が求められています。聴覚障害児には、「早期発見・早期指導」が大変効果を挙げると言われています。
西宮市にある「こばと聾学校」は、幼児の教育をすすめています。今は医学の発達とともに、聴覚に障害が発見されるのが新生児の頃からといわれ、早くは2ヶ月の乳児の教育相談を受けるそうです。平成13年度は、127名にものぼっています。こばと聾学校を卒園したり教育相談を受けた子どものうち、通常の小学校に入学した児童は、通級や巡回指導を希望しているのです。
また、社町にある「兵庫教育大学」では、高度な技術や機器、指導方法で、すでに、県立の聴覚障害児の教育を担当する教師たちの研修が行われ、たいへん注目を浴びています。
そこで、全県を見通した通級による指導の充実と、阪神間の子どもたちは「こばと聾学校」で、そして東播磨地域では「兵庫教育大」との連携で通級児童の受入れを実施していただきたいのです。もちろん、通級をしている児童の人数に見合う施設整備と教諭の配置を確保していただきたいと思いますが、ご答弁ください。
▼答弁▼武田教育長
次に、通級指導の充実についてであります。通級による指導は、小中学校の通常の学級に在籍をし、聴覚や言語等に比較的軽度の障害のある児童生徒に対し、週2時間程度特別の指導を行い、その障害の改善・克服をはかるものでございます。従いまして、就学前の幼児を対象といたしております「こばと聾学校」におきまして、小中学校の児童生徒への対応は、現行制度上無理がございます。また同様に、兵庫教育大学におきましても、大学で、児童生徒への通級による指導を行うことは、困難であるという面がございます。また、通級による指導教室は、従前から市町の小中学校に設けることができたわけでございますが、市町ごとの単位では、指導対象となる児童生徒数が、少ない場合、開設が困難でありました。しかしながら、本年度から県立聾学校での実施が可能となり、より広い地域の児童生徒を対象といたしますことから、通級や教師が、児童生徒の在籍する学校に出向く、巡回の需要が増える傾向にございます。今後は市町にこの事業の啓発をはかりまして、地域や障害の実態に応じたきめ細かな対応をはかってまいりたいと考えているところであります。さらに、平成15年度から兵庫教育大学において、聴覚障害関係の講座が開講され、指導教員の養成がなされることとなっておりますことから、今後は、大学との連携を図り、これらの教員を活用した通級による指導の充実に努めてまいる所存でございますのでご理解を賜りたいと思っております。
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県立舞子公園
松林の保全など市民の憩える公園に
■質問■ 第四は、県立舞子公園の整備についてです。『塩屋、舞子の海岸は美しかった。夕映えを映した夕なぎの海に岸近く小舟で軽く揺られながら、胡坐をかいて、網をつくろっている船頭がある。白い砂浜の松の根から長く綱を延ばして、もう夜泊の支度をしている漁船がある』。これは、志賀直哉の名作「暗夜行路」の一節です。白砂青松の舞子は古く平安時代から近代まで多くの作家によってその景観、風光の素晴らしさが讃えられてきました。
舞子公園は1900年7月25日、兵庫県初の県立都市公園として誕生しました。以来100年が経過するなかで、これまで私たちが歩んできた歴史的、文化的な遺産を持つ舞子公園を、いかにして後世に残し、伝えていくかという新たな課題が生まれています。
ひとつには景観を守り、育てることです。舞子公園のメイン・アピール・ポイントは、当然「松」であり、その集合体である「松林」です。松林の保全・育成は欠かすことはできません。開園当時には勇壮な根が地上に横たわり、優雅な姿で枝は張った、いわゆる「根上がりの松」が豊かな砂浜と共生していました。兵庫県園芸・公園協会が出版した「兵庫県立舞子公園百年史」は、安藤広重が画いた「舞子浜の松」で始まっているほどです。
ところがその松林の状態が深刻で、早急に対策をとる必要があります。松の木約1400本のうち約100本が枯れ、他にも弱っている木もたくさんあります。さらに密に植栽されたため幹が細く背が高く景観上だけでなく、台風などの強風で倒れる可能性もあります。さらには枝葉が繁りすぎているため、昼間でも薄暗く、防犯上からも問題があり、地域の方々はもとより観光客からも松林の育成への改善が提起されているほどです。
すでに県も、松の間伐や良好な生育について検討するための有識者等による検討会を開き、JR路線に伸びた松の枝打ち等が実施されていますが、この延長上での対策では、間尺にあいません。伝統ある素晴らしい松林を少しでも回復・再現するため、急いで対策を講じるべきです。
さらに、昭和初期の建造物、木下邸が、3年前に、県に寄贈されましたが、その木下邸の利活用の問題です。そのひとつは、文化財としての価値を生かすことです。昭和初期の建造物の特長を生かし補修・保存しながら、舞子公園に関わる古来の絵画や詩歌、文学作品などの展示場として整備すること。また、「さわやかフォーラム 知事と神戸市民が語るつどい」の場でも何度か意見・要望のあがっているコミュニティーの場作りとして、お茶室などの利用も含め、活用することを求めますが、「松林の保全・育成」とあわせ、お答えください。
▼答弁▼井戸知事
次に、県立舞子公園の整備についてです。古くから詩歌に読まれ、絵にもかかれた舞子の松は、戦後の伐採や台風によってそのほとんどが失われ、この松の回復を目的に40年代に松が植えられましたが、密に生育し、高く伸びたため、鉄道や来園者に対して危険を与え、景観上の問題も生じています。その対策につきまして、学識者や、地域住民を交え、検討を行い、枯れ木や危険な枝の撤去に取り組んでいます。引き続き早期に、古くから残っている松の保全、適正な間引き、高さを抑える剪定をおこない、かつての舞子の浜の松林の景観の再現に取り組んでまいります。また、木下邸につきましては寄贈後、国の登録文化財の指定を受け、県として保存・補修の調査を行いました。今後具体の工事に取り組みます。利活用の方策につきましては、県民の参画もいただきながら、学識・文化団体を交え、幅広く検討をおこなっておりますが、茶道・俳句等の文化的活動が提案され、引き続き地域住民の利活用についても議論が進められております。県としてはこれらの提案も踏まえながら、木下邸も含め、海上プロムナードや、移情閣など、一体として今後いっそうの利活用がされるように取り組んでまいります。
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神戸市漁業共同組合をめぐる疑惑について
■質問■ 最後に、神戸市漁業協同組合をめぐる問題について質問します。
昨年8月、各マスコミがいっせいに報じたように、一部の幹部によってプールされていた19億円の所得隠しと簿外処理が明らかとなり、国税から7億3400万円の追徴課税を受けました。あれから半年が経過し、この間の県の調査で徐々に実態が明らかになると同時に、「使途不明金」の疑惑も深まってきました。
まず、簿外処理については、過去五年間に支払われた関西国際空港二期、神戸空港関連の漁業補償289億円に対して、現在わかっている簿外処理の合計額は58億4436万9000円となっています。このお金は11冊もの預金通帳に分けられ、その名義は、一つは「神戸空港」、二つは「関空二期 代表 山田春三」などとなっていました。
58億円のうち、19億円が「隠し所得」として国税に追徴され、使途が明らかな関空二期の補償金や、他漁協への見舞金などを除く、5億1200万円が、「何に」「どう」使われたのかが問題となってきます。県は「調査をした」と言いますが、帳簿など記録もない、領収書もない。ただわかっているのは、預金通帳から出金された「日付」と「金額」で、その使い道を幹部から口頭で聞いたのみで、文書での報告も求めていません。幹部は、「役員手当」に1億2100万円、「職員賞与」1億1600万円、「漁業補償の調整金等」に1億6100万円、「会議費」に5900万円など、たった6項目の内訳を示したのみで、「使途不明」と判断されても仕方がないものです。
渦中にある総代をはじめとする組合員には、このような説明すらされていません。説明されたとしても、いまの県の、当事者の説明を聞く程度の調査では、納得の得られるものではありません。
水産業協同組合法は、協同組合に対する行政庁の「監督権」を定めていますが、この「行政庁」とは、「主たる事務所を管轄する都道府県知事」で、県は2年に一回、漁協の業務や会計に不正がなく「適正な運営」がされるよう「行政検査」を行っていますが、その際、「簿外処理がないかどうかは、口頭で確かめるだけ」だといいます。このようなずさんな「行政検査」で、法に定められた県の監督が行なわれているとは、とても思えません。
県は、今になってあわてて新しい「指導マニュアル」を作成し、協同組合等への指導にあたるとしていますが、これまで指導・監督を怠ってきたことが、今日の事態を招いたのではないでしょうか。
その上、漁業補償から派生したこのお金は、もともと公金であり、組合員のための将来への補償です。1円たりとも不透明なままで放置することは、県民から見ても納得できるものではありません。神戸市漁協には過去に、明石海峡大橋、関空一期、マリンピア神戸埋め立てなど、800億円にのぼる公金が漁業補償として渡っています。この莫大な補償金に関しても、不正な処理がされていたのではないかと疑われてもしかたがないものです。
知事、漁協の監督権限のある県が、今回の簿外処理の全容を明らかにし、過去にも不適正な処理がなかったのかどうか、しっかりと調べる責任があります。いかがですか。答弁を求めます。
▼答弁▼北原農林水産部長
私のほうから神戸市漁協問題に係ります詳細についてお答えいたします。漁業協同組合は、自主・自立・組合員による民主的管理など、協同組合原則にのっとって運営される組織でありまして、行政による介入は、必要最小限度にとどめるべきであるということが、すべての協同組合に共通する法の精神でございます。このため、水産業協同組合法の規定に基づいて、県の行う条例検査につきましても、公権力による強制的監視を意味するものではなく、あくまでも、組合員による民主的管理を治重・補完し、漁協の健全な活動が社会公共の福祉の向上に寄与する方向での支援を行う役割を担うものでございます。これらのことを踏まえながらも、条例検査は、現金通帳、証書等の現物確認及び帳簿その他、関係書類の検査を行うなど、当然のことながら厳正に対処してきております。また、補償金の漁協会計への受入れ、および組合員への配分については検査時に確認はしておりますが、受入当初から簿外処理をしていた場合などは、帳簿や通帳等からの確認は困難であり、過去の税務申告書類も確認し、さらに、念のため計上漏れがないか口頭確認も行っているが、どうしても限界がございます。今回の件では、漁協幹部から事情聴取を行った後、税務調査の対象となった簿外通帳及び関係書類を調査した結果、国税当局の指摘を受けた簿外の残額全てを本会計に繰り入れ、適正化していることを確認しております。さらに、同漁協の理事会に対しては、理事の責任により組合員にこれまでの経過を説明するよう強く指導した結果、漁協は11月6日に臨時総代会を開催し、事実関係を報告しております。今後の検査にあたりましては、できる限り事前の情報収集に努め、情報の更なる精度の向上を図りますとともに、今後指導マニュアル等を活用し、このような不適切な会計処理の再発防止して漁協の健全で適正な組織運営を確保してまいります。また、神戸市漁協が現在最優先にすべきは、組合の経営改善でありますので、県としては、これ以上の混乱を避け、経営再建に向けて最大限の支援を行うこととしております。
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「政治とカネ」神戸空港などの漁業補償金の政治への還流を改めよ
■質問■ さらに、これはひとつの漁協の会計上の問題だけでは済まされません。使途不明金について、重大な疑惑が浮かび上がってきているからです。
「県広報」に掲載されている、平成10年分から13年分の「政治資金収支報告書」によれば、神戸市漁協の簿外処理の預金通帳の名義人となっている組合長が、個人名で201万2000円を自民党垂水本部分会に政治献金、また、組合長と当時の副組合長2人が、そろって個人名で各100万円を、3度にわたり合計900万円を政治献金しています。内訳は、前知事が届出した「新兵庫創生研究会」に600万円、「矢田たつお後援会連合会」に300万円です。たとえ、「適正に処理されている」としても、公的なお金の不正経理にたずさわった人物からの献金をうけていることは、まぎれもない事実であり、社会的・道義的責任はまぬがれません。
また、昨年10月の神戸新聞によれば、神戸市漁協の組合長が会長を務める建設会社が、公共事業である神戸空港の下請け工事を42件、総額約80億円受注しており、業界関係者から「特別扱い」との指摘が出ていること、また、自民党などに、会長と社長の個人名や、当該会社名で、1500万円の献金をしたことが報道されています。神戸市漁協で簿外処理されていた巨額のお金の使途が明らかにされていない一方で、こうした問題が発生しているのです。
今、神戸市漁協の組合員さんは、春を呼ぶ「イカナゴ漁」解禁にもかかわらず、浮かぬ顔をされています。このような組合員のため、県民・市民のために、この問題の真相究明は切実に求められています。
知事、いま県政にも関わる重大な疑惑が生じている以上、責任を持って、このような疑惑に対して明らかにすることを強く求めます。ご答弁ください。
以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
▼答弁▼井戸知事
つづきまして、神戸市漁業協同組合をめぐる問題についてでありますが、神戸市漁業協同組合が補償金の処理に当たって、不適正な取り扱いを生じたことは、協同組合という組合員の自主的運営を基本とするにしても、残念なことであると考えます。今回の事案に関しては、詳しくは農林水産部長から報告しますが、すでに県の指導のもとに総代会を開催し、そこで説明がおこなわれたものと承知しています。県としては今後、神戸市漁協の理事会に設けられた、経営改善委員会に県漁連などとも参画し、その経営再建に向けて、最大限の努力を傾注してまいります。また、個人としてなされた政治献金については、政治資金規正法にのっとり、適正に処理されたものと承知しております。なお、政治資金は民主主義の基盤である政治活動を支えるものであるため、公権力が自由な政治活動を妨げないこと、政治資金の流れを明らかにして、国民の不断の監視と規制を仰ぐことを基本として規制されているものです。従って私も政治資金規正のこの考え方を踏まえて対応していくべきものと考えております。
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■再質問■ 一点だけ再質問させていただきます。これは、指導監督の責任のある知事にお答えをいただきたい。神戸市漁協問題です。先ほどの答弁を聞きまして、事実をどれだけ確かめているのかなと疑いたくなります。調査の結果を報告した、昨年の11月6日の臨時総代会、そうおっしゃいました。けれども、組合員さん、総代さんはそんなことを言っていません。それは一つには、その臨時総代会の前に各地区で総代会が開かれているんです。そのときに、組合長に迫ったんです。きっちりと調査した報告をしなさい、こういいましたところ、組合長は、県の許可がないから言えない、とはっきり言っているんです。県が隠れ蓑になっているということは、これは県がきっちりと調査をして報告をしようとする姿勢がないということです。その調査の内容にしても、私はこの間何度も聞き取りをしました。そのなかではっきりしたのはこういうことです。
簿外処理をされている,過去5年間だけですけれども,例えば六甲南であるとか、神戸空港、須磨桟橋の事業は、漁業補償に対してだいたい14%から18%の簿外処理がなされている。ところが、関空2期これは32億の補償でした。これは一冊の預金通帳には29億、一冊には3億、もうまるごと簿外処理です。あるいは、神鋼火力もそうでした。3億5000万、これに対してほぼ100%簿外処理です。これをどう調査したかと私ききましたら、なぜこんなことをやったのかわからないというそういう答弁なんです。これでなぜ調査をきっちりしたといえますか。きっちりしていないからその調査結果だって報告できるはずがありません。
今日もじつは通常総代会が午後3時から行われますが県の方行かれますか。行かれないでしょう。そう聞いています。報告もなされない。国税や地方税合わせて11億、組合から追徴されているんですよ。この11億円、誰が負担するんですか。これだけ大きな簿外処理の内容、不正の内容が明らかになりながら、例えば「自主的なものだから」とか「必要最小限度に調査や検査はとどめる」こんなことを言っているときじゃないでしょう。県の姿勢、知事の姿勢をはっきりすべきなんです。
しかも、知事、私は行動に慎むべき点があると指摘したいんですが、この2月16日、この組合長―まだ疑惑がはっきりしていないんですよ―その組合長が主催したパーティーに出ていかれています。おまけにお祝いの言葉まで言っている。確かにそこに、自民党の前政調会長さんが来られる。その事前に例えば県政や震災問題で要請をしたい、この思いは十分わかります。それはしていただいて結構です。
けれども、そのあとのパーティーにその国会議員と一緒に参加することはないですよ。この問題はまだはっきりしていないんですよ。だからこそ、知事、知事の今の説明では私は納得できません。再調査し、報告をはっきりすることを再度求めます。いかがですか。
▼答弁▼井戸知事
先ほども申しましたように、簿外経理というような、本来、あってはならないような対応が、処理の一環としてなされたことについては真に遺憾だと存じております。
ただ、部長からお答えいたしましたように、知事としての検査権限の中で、できるだけの調査と解明をさせていただいたうえで、11月6日の臨時総代会で説明がなされ、その総代会において信任されたものであると聞いているところであります。さらに、必要があるかないかにつきましてはただいまのご指摘もございますので、私の持っている権限の範囲内でさらなる必要があるかどうかを確認したうえで、対応を考えたいと思います。
なお、私の2月16日の行動がありましたけれども、これは政治行動の考え方に基づくものでありますので、ご注意をいただいたことは、確かに承っておきます。
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