県民が直面する深刻さを物語る請願が数多く提出
私は、日本共産党県会議員団を代表して、請願の態度について討論を行います。
今議会は、継続審議2件を含め30件の請願を審議しました。新たに28件もの多岐にわたった請願が提出されたことは、県民が直面する困難が多様かつ深刻であることを物語るものです。
私は、178号ないし201号の24件は不採択ではなく採択を、第76号は継続ではなく採択に、そして第176号は採択ではなく不採択を主張し、以下その理由を申し述べます。
「有事法制」反対の意見書提出を
まず、第185号ないし第187号「有事法制」の立法化反対に関する意見書提出の件です。
先の通常国会での審議を通じて、政府の狙う有事法制が、アメリカの戦争に自衛隊が武力をもって参加し、日本国民を動員するためのものであることが明らかになりました。今、ブッシュ政権がイラク攻撃を公然と主張し、いっそうの「協力」を日本に求めている中で、有事法制の危険性はますます強まっています。
有事法制は憲法第9条を蹂躙し、日本を「戦争をしない国」から「する国」に変えてしまうものです。さらに地方自治体も戦争体制に組み込まれ、首相が自治体首長に指示、強制執行できるなど地方自治体としても見過ごすことはできません。よって「有事法制」の立法化反対の意見書を国にあげてほしいとの願意は当然のことであり、採択を強く主張するものです。
「住基ネット」の中止を求める意見書提出を
次に、第188号「住民基本台帳ネットワークシステムの中止・見直しを求める意見書提出の件」です。「住基ネット」が8月5日に稼動して2ヶ月、配布された住民票コードなどをめぐってトラブルが続出。プライバシー漏洩への国民の不信は根強くあります。本県では、1ヶ月で神戸市の3000件をはじめ、住民から各自治体に、住民票コードの削除希望や、情報流出など、多くの声が寄せられています。
それは、政府が住基ネットを施行する際の「前提」としていた個人情報保護の法律が作られていないこと、この仕組みでは個人情報の漏洩と不当使用の危険は避けられず、また、全ての国民に11ケタの番号をふりあてることへの国民的合意もなく、今からでも中止すべきと考えます。
住民の権利や自由が侵害されないよう、本請願は不採択でなく採択を求めます。
地域経済振興条例の制定で、中小企業施策の抜本的な強化を
次は、第179号「兵庫県地域経済振興条例制定を求める件」についてです。今、中小企業は業種を問わず深刻な不況におちいり、各地で倒産・廃業があいついでいます。
こうなった重要な要因として、県の中小企業政策に関する位置づけが極めて弱く、施策も不十分だったことがあげられます。この落ち込みに歯止めをかけ、新たな振興をはかっていくためには、今までの延長線上での施策の手直しでは困難で、抜本的な施策の強化・拡充が必要です。
そのようなとき、県内の128もの中小企業・中小業者のみなさんが、「中小企業基本法」第6条に基づき、地域経済の根幹に中小企業発展を位置づける「地域経済振興条例」を制定するよう求めたものです。
中小企業振興の重要性は、今議会においても会派の違いを超えて多くの議員から述べられたところです。ぜひ本請願の願意を受けとめ、不採択でなく、採択を主張するものです。
在宅酸素療養の患者さんをはじめ、安心できる医療のために
次は、第180号ないし第184号、医療に関わる請願についてです。
今年から来年にかけて、社会保障の全ての分野で3兆2400億円という史上最悪の負担増が、国民に押しつけられようとしています。今回提出された4つの請願「患者負担増の撤回を求める意見書提出の件」「高齢者の医療費負担の償還払いを利用しやすくすることを求める件」「在宅酸素療養など在宅療養患者の高額な負担に対する助成を求める件」「老人医療費助成事業の所得制限の緩和を求める件」各々が「法」改悪によって人間として「健康で文化的な生活を営む」当然の生存権が脅かされることに対し、安心した治療、安心した暮らしを要求しているもので改善が図られるべきです。
ひとつは、来年4月実施予定の健康保険の3割自己負担を延期、もしくは撤回との要求は当然のことです。ますます雇用の不安、経済の落ち込みの中で、患者負担増は受診を抑制することにつながり、結局病状を悪化させることとなります。もちろん、高齢者の負担増についても同様です。そのうえ、高齢者の自己負担上限額を超える場合は償還払いにより払い戻しを受けることとなります。一時的とはいえ高額を支払うことになり受診抑制につながることも懸念されます。月額3200円程度ですんでいたものが一挙に4倍近い値上げとなり、耐え難い負担となります。
特に、「在宅酸素療養」の患者さんたちは、障害者1級の認定でなければ、医療費公費負担助成制度の適用を受けられず、大きな負担額を背負わされます。これらの患者さんたちに助成をおこなってほしいとの願いは当然です。
よって本請願は不採択でなく、採択を強く主張するものです。
乳幼児医療費の自己負担をゼロに
次に、乳幼児医療費助成事業の拡大を求める件です。今日の経済不況が、とりわけ若い世代に重くのしかかっているとき、行政はできるだけ安心してお医者さんにかかれる環境を保障すべきです。乳幼児医療費助成事業の自己負担割合をゼロにすることと、ゼロにするまでの間、償還払いの申請手続きを不要にしてほしいとの願意はもっともであり、採択を求めます。
神戸空港の建設中止、県税投入の中止を
次は、第178号「神戸空港建設中止等を求める件」についてです。
神戸空港の建設については、その必要性があるのか、採算性はどうか、安全・環境の問題はないのか、神戸市の財政事情が許すのかなど、様々な疑問があり、いまだに解消していません。
現職の大臣や政府与党幹部が、「関西に3つも空港は必要ない」「大阪湾に同時に関西2期と神戸空港を建設する必要はない」「神戸空港はむだ」などと発言するほど、必要性もなく、また、本会議でわが党が空の危険性も指摘したところです。
「ストップ!神戸空港」は、県民・市民の声です。本請願の、神戸空港関連事業に対する県費補助金の支出の中止を求める願意は当然であり、不採択でなく、採択を強く主張するものです。
安全な学校給食、30人学級、複数志願制反対など、教育の切実な願いの採択を
次は、第189号ないし第201号、教育に関する請願についてです。
まず、「学校給食に安全で安心できる地場産業の食材の使用を大幅に増やすことを求める件」です。今、食品の偽装表示や汚染食品問題、危険性の高い残留農薬が検出された輸入冷凍野菜など、「食」にたいして不安が広がっています。なかでも、成長期の子どもたちが毎日口にする学校給食には、安心安全な食材が提供されることが求められています。その学校給食に安全性が疑われる食材を使用していないか調査し、結果を公表することは当然の県民の願いです。そして、安全で安心な地場産の食材の使用を大幅に増やしてほしいとの願いは、県の地産・地消という施策推進ともつながり、地元野菜の食材提供の実績を全県に広げることにもなり、本請願は不採択でなく採択を主張します。
つづいて、「30人以下学級の実現を求める件」です。少人数学級は、児童・生徒ひとり一人に行き届く教育として成果があがっています。いまや30人以下学級は社会の流れです。実施県は1年間で12県から21県へ広がり、全国の半数近くにおよんでいます。未来を担う子どもたちに財源を使ってもかけすぎということはないはずです。あとは知事の英断を待つばかりです。ぜひ県議会の総意で30人以下学級実施への歩みをすすめようではありませんか。採択を主張するものです。
次に、「高校改革」に関わる請願についてです。まず、神戸第三学区に導入しようとする「複数志願入試選抜」に関わる問題です。この問題については、10もの団体から請願が出され、導入への不安や疑問の声の多さを象徴するものです。しかも、いずれの請願も、来年春導入の入試制度なのに今なお県教育委員会の説明不足を訴え、制度の内容がわからないままの拙速な導入の再検討あるいは中止を要求しています。県教委が説明責任を果たしていないことを示すものです。学校の序列が激化しないか、加算点50点の使い方で合否の予測が困難、など、教師、父母、とりわけ生徒が、理解しにくい制度の複雑さに翻弄されています。一生に一度しかない入試という大切な挑戦に、「入試制度の変更先にありき」の県教委の姿勢は、真に子どもの教育を考えた教育行政とはいえず、説明責任を果たしてほしいとの願いは充分納得のできるものです。「複数志願制」導入の再検討、見直し、中止などを求める願意は当然とし、採択を強く主張します。
そして、「県立武庫荘高等学校と県立武庫工業高等学校の統廃合計画の撤回を求める件」です。この請願は、両校の父母、卒業生、教職員、地域住民がつくった、各高校を守る会の方々が提出されたものです。地元住民の強い要望と用地提供などの協力で設置された普通科の武庫荘高校、一方、武庫工業高校はものづくりの技術を身につけ、産業界に有用な人材を送り出してきた高校で、両校に歴史と伝統が刻みこまれています。
市内でも、人口増が見込まれる地域からなぜ普通科高校をなくすのか、ものづくりの技術は継承できるのか、総合選抜の校区割りがどうなるのか、父母、生徒、住民に納得のいく説明がありません。両校を普通科高校、及び工業高校として存続してほしいとの願いをぜひ受けとめて、不採択でなく採択を主張します。
ビスフェノールAの安全基準の見直しを
次に、請願第76号、ビスフェノールAなどの実情を明らかにし、その安全基準の見直しを求める件についてです。
本請願が出されて2年4ヶ月も経過しています。今「食の安全性」が大きく問われているときに、いたずらに継続を続けるのでなく、直ちに採択すべきだと考えます。
過大な高規格道路の整備をすすめる意見書には反対
最後に、請願第176号「道路整備の促進と道路財源の確保を求める意見書提出の件」についてです。
わが党は、年間約6兆円と言われる道路特定財源を「一般財源」とすることを20年以上前から主張してきました。道路特定財源制度を廃止して、生活基盤密着型の公共投資や社会保障などに使えるようにすべきだと考えます。したがって「道路特定財源の基本的な枠組みを維持」するとの願意には反対です。
さらに、私たちは、高速道路を全て一律に否定するものではありませんが、高速道路整備計画のうち未整備の2300キロのほとんどは必要性も採算性も無視したもので問題です。第二東名、第二名神高速道路や、紀淡海峡連絡道路などの高規格幹線道路ネットワーク整備はその典型で、環境破壊をも招きます。わが党が中止を求めている来年度からの「道路5ヵ年計画」案を推進するものであり、このネットワーク整備を国に求める本請願は採択でなく、不採択とすべきだと考えます。そして、これにもとづく意見書は提出すべきでないことを申し添えます。
以上、議員各位のご賛同を心からお願いし、私の請願討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。
|