私は日本共産党県議団を代表して議案についての討論をおこないます。
今議会は、深刻さが一層増す不況、雇用問題、県民の負担が増える一方の福祉や医療改悪、時代をになう子どもたちの教育、公共事業の見直しなどについて県政がどのように応えるのか、また、民意の反映に最大限努力すべき県議会の改革を進めることができるのか、が問われた議会であります。
今回県より提出された第154号議案、第158号議案ないし第160号議案、第233号議案、第237号議案、第241号議案ないし第243号議案および議員提出の第12号議案についてはいずれも県民の利益に反するものであり、反対であります。
また、議員提出第13号議案は、議員各位の賛同を求めるものであります。
生活道路に名を借りた無駄な公共投資
最初に公共事業の見直しに関連して、第237号議案 緊急道路整備事業朝来町道釣坂線あすなろトンネル建設工事請負契約締結の件についてです。
本義案は、過疎代行事業として総事業費17億円のうちのトンネル部分について約16億円にのぼる工事請負契約を締結しようとするものです。
このトンネルは、上八代地区と町役場のある立脇地区を結ぶもので、4.5kmかかるところを1.2kmに、時間にして10分程度の短縮効果をあげようというもので、いわば1分あたり1億7000万円の投資であります。
現在、この両地区を結ぶ道路は、国道429号を経て県道養父朝来線のルートがありますが、このルートは、冬季積雪で通行不能になる峠道でもなく、大半は歩道もあり2車線が確保されており、狭い箇所といっても十軒程度の対策で改善が可能であります。さらにこのルート以外に、すぐ近くに、3年前に朝来ゆめトンネルがすでに開通しており、また、先の県道と並行する形で立派な農道が現在建設途上という実態で、代替道路にまったく事欠きません。生活道路に名を借りた無駄な投資であることは明らかであります。
数々の疑念がある不透明な事業
つぎに第233号、農業用河川工作物応急対策事業北村地区第4工区工事請負契約締結の件についてです。
この工事は、1級河川揖保川の井堰の改修事業で、今回は総事業費22億4600万円の内、第4工区10億2900万円の工事を株式会社川崎重工と契約しようとするものであります。
しかし、この工事には、取水方式の選定、地元合意、業者決定などの点で数々の疑念があります。
まず、取水方式の選定ですが、すでに事業採択をうけ、前年より億を超える予算がついていた平成12年3月そして4月の段階でも、近畿地方建設局の幹部から「非常に高い建設費である。安くする方法はないのか。自然取水などは考えられないのか」と、引き上げ式のゲート採用に疑念の声が出されています。この指摘の自然取水方式は、当初「他案にたいし河川管理上はもっとも有利」と判断されながら、いつの間にか消えてしまっています。また、県の資料でも、現行の起伏堰の付近は、十分な川幅もあり、現状の堰の状態でも、計画洪水量が流れても計画高水位以下で、十分な余裕があるとされています。毎秒0.75t取水するのに、他の取水方式の10倍もかかる22億円もの巨大な工法をなぜ実施しなければならないのか、もっと柔軟な検討がおこなわれるべきであります。
また、この引き上げ式ゲートの強行にたいし、地元から異論が続出し、1億円を超える工事が予算が付きながら着工できず、町は、引き上げ式ゲート建設断念を決断し、工事が廃工寸前となる異例の事態が生まれましたが、いかに地元合意がなかったか、明らかであります。
さらに、今回、川崎重工が、引き上げ式ゲートを落札していますが、すでに、その2年も前から川崎重工が地元に入り、引き上げ式ゲートのメリットを強調し、起伏堰では不適であると決めつける話をおこなっています。これは、2年も前から川崎重工の受注が決まっていたということではありませんか。談合の疑念を持たざるを得ない実態であり、到底認めるわけにはいきません。
県民の声や実態が把握できなる問題も生じる県住整備業務委託
つぎに第241号議案ないし第243号議案、県営住宅整備事業に係る業務委託契約締結の件についてです。
これは、県営住宅の設計と建設工事発注を兵庫県住宅供給公社に委託するものですが、本来県がおこなうべき業務を県公社に委託するものであり、公営住宅法に抵触する行為であります。今後、予算配分を決定する県庁主管課が現場の実態、県民の声を把握できなくなる問題が生じていくことは明らかであります。今年に入って職員の自殺が起き、過労との関連を指摘する声もありますが、十分な予算と人的体制を持って、「住宅に困窮する低所得者に住宅を整備する」業務は、県においてこそおこなうべきであることをあらためて主張するものであり、この議案は認められません。
資産家優遇の県税条例改正は認められない
つぎに第154号、兵庫県税条例の一部を改正する条例制定の件についてです。
この条例改正は、長期所有上場株式等に係る軽減税率の創設や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度の創設など、上場株式保有投資家などにたいする優遇策を実施しようとするものです。しかし財政危機を口実に一般庶民にたいする所得税、住民税の増税計画、中小企業にたいする増税計画が打ち出されながら、一方でこのような一部特定の人々への減税は認められません。
保健所の役割をなくす規正緩和は認められない
つぎに158号議案、クリーニング業法一部改正による県条例制定についてです。
県は今回、国の法改正にともない、県規則を県条例にする際に、クリーニング事業者に、業務従事者が結核などに感染した場合の保健所所長への連絡義務や、保健所所長からの健康診断受診指示に従う義務の項目を外しました。しかし、わが国の結核感染は、先進諸国の4〜5倍も高く、しかも最近罹患率が増加に転じ、国が結核緊急事態宣言を出す状態で、中でも兵庫県は全国ワースト2位という深刻な状態です。今回、連絡義務や受診義務が外されれば、措置命令や営業停止などの対象にならず、結果、事業者の感染予防の取り組みが問われず、公衆衛生行政の後退となります。また、医師としての保健所所長必置規定削除の動きの先取りともいえるものであり認められません。
県がおこなうべき広域的事業の市町負担は認められない
また、第159号、国営加古川水系広域農業水利施設総合管理事業について市町の負担すべき額を定める件、第160号 県が行う建設事業について市町の負担すべき額を定める件は、いずれもこれまで指摘してきているように、県の責任でおこなうべき広域的な事業であり、市町への負担は認められません。
民意の反映する議会改革にほど遠い定数条例
つぎに、議員提出第12号議案 兵庫県議会の定数ならびに選挙区および各選挙区において選挙すべき議院の数に関する条例の一部を改正する条例制定の件についてです。
県議会の役割が問われているとき、県議会定数、選挙区定数は、民意の正確な反映、県民1人1人が平等に政治参画する権利を保障するものでなければなりません。
しかし、今回の条例案は、民意の正確な反映をという県議会の改革とはほど遠いものであります。
まず第1に、今回の改正案は、3つの選挙区の議席を対象に、いわゆる2増1減をおこなおうとするだけで、本県が1票の格差が4倍という議会制民主主義を蹂躙する異常な状態がつづいていることをなんら改めるものとなっていません。
第2に、特例選挙区問題も、城崎郡について4年先の検討として触れるにとどまり、当分の間とされながら30年近く存続している特定選挙区の存在を未だに先送りする姿勢は厳しく問われなければなりません。
民意の反映という基本を崩している現状の打開には、特例選挙区や1人区を合区などにより、解消していくことが必要であることは、すでに明らかになっているにもかかわらず、これに全く手をつけようとしていませんが、ますます矛盾を拡大するだけであります。
もともと、本県は、全国第2位の議員定数減がおこなわれており、このことが1票の格差是正の解消の障害になっています。この際、県民1人1人が平等に政治参画する権利を保障するためにも、1票の格差2倍未満、特例選挙区廃止などの抜本的な改革を実施すべきであります。 中小企業振興を県政の中心柱に
最後に、議員出第13号議案 兵庫県中小企業・地域経済振興基本条例についてです。
中小企業・地域経済がいかに深刻な事態になっているか、今議会での各議員の質疑の中でも指摘され、この深刻な事態の打開が政治の急務であることは何人も否定できないものです。
問題はこのような政治の責任、役割が問われているときに、それにこたえる県政にどのようにしていくのか。また、それがなぜできないのか、ということであります。
たとえば、議会でも議論になった深刻な県下の中小建設業の実状にたいして、その改善のための系統的な施策も担当部局もない状態がなぜ続いているのか。個々の対策はあっても県政の中心柱に県下中小企業振興が座っていないからであります。ここに問題の根本があります。
一部に理念条例でなく、具体的施策をと主張する向きもあるようですが、これは木を見て森を見ないものといわざるを得ません。今問われているのは、担当部局の努力や工夫にとどまらず、県下中小企業振興を県政の中心柱に据えるという確固たる決意と姿勢、基本方針が不可欠であります。
それを具体化したのが今回の条例であります。そして特に、国ではアメリカ追随、大企業中心の経済運営を強行しているだけに、県政には、県下中小企業を振興するという確固たる姿勢と方針が求められるのであります。この基本姿勢と基本方針の確立なしに現下の中小企業が苦境を乗り越えることは不可能であります。
私どもが県に変わり議員提案した真意もここにあるわけであります。
先日の地元新聞でも、「国の言いなりでなく、国に堂々とものを言え」「県独自の施策をやれ」が、県民の圧倒的声であること。そしてその求める県独自の施策の第1が経済雇用問題となっていますが、この条例はまさにこの県民の声に応えるものと確信をするものです。
条例案そのものの内容については、委員会審議でも特に異論は述べられていないわけであり、この際、県民と県下中小企業の危急の声に応えるべく、議員各位の賛同を強く願うものであります。
以上で私の討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。 |