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本会議の目次へ 第269回本会議請願討論 筒井もとじ
2002年3月28日

 私は、日本共産党県議団の請願に対する態度を明確にし、議員各位のご賛同を訴えます。請願第138号、第153号、第154号、第158号、第159号、第161号ないし第165号の10件の不採択に反対し、採択を主張します。また請願第155号および第160号の採択に反対し、不採択を求めます。さらに第76号の継続審査をやめ、採択することを主張します。

小泉医療大改悪反対の意見書提出を

 まず、請願第164号、第165号の2件、患者の負担増となる医療改革を行わないことを求める意見書提出の件であります。
 3月1日、小泉内閣は空前の国民負担増をもりこんだ医療制度の大改悪案を国会に提出しました。その内容は大きく分ければ3つに分類できます。
 その1は、来年4月からサラリーマン本人家族の窓口負担を3割に引き上げ、さらに70才未満の年金生活者も同様とし、その負担増は8000万人以上の勤労者と年金生活者およびその家族に及ぶというまさに空前の大改悪であります。
 窓口負担増だけに止まらず、保険料も総報酬制にし、引き上げるということで、政府管掌健保だけで1人平均年間3万円、全体で6000億円もの負担増が不況下の中小企業の事業主、労働者に押しつけられます。
 その2は、高齢者への集中攻撃です。今年10月から70歳以上の高齢者の窓口負担が大幅に引き上げられます。今の定額払い制が取り払われ、患者の自己負担を1割又は2割に引き上げようとするものです。上限は設けられていても、いったん立て替え払いが必要で、高齢者に経済的、心理的圧力をかけ、強引に医療費を抑えようとする冷酷なやり方です。 
 その3は、今年4月から予定されている診療報酬の引き下げです。圧倒的な医療機関は今でも経営が困難を極めていることは県立病院経営を見ても明らかです。今でも職員不足からの医療事故が後を絶たず、2.7%の引き下げは医療機関の運営を一層の危機に追い込むでしょう。
 さらに6カ月を超える入院患者は医療の必要の低い「社会的入院」とみなし、病院をかわっても通算し、患者に新たに月4万〜5万円の負担増をさせようとしています。
 小泉総理は三方一両損など名奉行ばりに得意に説明しましたが、奉行が一両出す三方一両損どころか、損を押しつけられる三方とはすべて国民であり、多少の痛みどころでない国民一方損の耐えがたい激痛を押しつけるものであります。抜本改革の正体は際限のない国民負担増への道しか示せないのであります。
 その道は病気の早期発見、早期治療を困難にし、結果かえって保険財政を悪化させるデフレスパイラルの医療版ともいえるもので、本請願を採択することは当然であります。

県立病院の性急な公営企業法「全部適用」撤回を

 請願第162号、県立病院への「地方公営企業法全部適用の延期を求める」請願であります。
 県立病院への公営企業法の全部適用については非公開の「県立病院のあり方検討懇話会」で検討され、県民へのインターネットなどでのパブリックコメントは年末・年始をはさんだ僅か25日間行われただけでした。大多数の県民は全く知らされておりません。2月4日の医療審議会も非公開で審議され、全部適用の答申を出し、4月1日から適用しようというもので、住民参加の精神にほど遠いものであります。6総合病院と5専門病院は、年間延124万5000人の入院患者、約200万人の外来延患者を診て、地域の中核病院として、直接県民の命と健康を守り、地域医療の重要な役割を担っています。救急・高度・専門医療や研修医の受け入れ、看護婦の養成など民間では担えない不採算部門を引き受けてもいます。病院運営において公共性より採算を重視することにならないか、健康保険の大改悪によって、とりわけ診療報酬の引き下げによって重大な問題が出てこないか、病院職員の処遇がどうなるのか、これで県民医療が守れるのか、いろいろな問題点が明らかではありません。県民とともに「県立病院の今後のあり方」を検討するために性急な「全部適用」を見合わせ、説明責任と県民参加を求める本請願は採択されるべきであります。

児童扶養手当の改悪やめよ

 請願第138号、児童扶養手当の見直し撤回を求める意見書提出の件であります。
 政府は来年4月実施として、母子家庭に支給する児童扶養手当改悪案を国会に提出しました。現行法は「児童扶養手当は児童の心身の健やかなる成長に寄与することを趣旨として支給される」とされていますが、改悪案は手当の大幅削減とともに「手当ての支給を受けた母は自ら進んでその自立を図り」という文言をつけ加え、自立のための活動をしなかった場合、支給しないことを法律につけ加え、児童扶養手当を離婚後の一時的支給に限定する、情け容赦のない改悪であります。
 受給開始から5年以降は支給額を減額し、父親からの養育費は母親の所得に加算し、支給額を減らす等々で、年間360億円を減らそうとするものであり、削減の対象は33万人に及びます。
 年収200万円以下の母子家庭の収入の低さ。幼い子どもをかかえた母親にとって、仕事も見つからず、パートをかけもちする場合も珍しくありません。母子家庭の母親から、「うちの支給額はどれだけ削られるか」「高校にやれなくなる」と不安や怒りがあふれています。本請願は、当然採択されるべきであります。

最低年金制度をつくる請願の採択を

 次は、請願第158号、最低保障年金制度の創設を求める意見書提出の件であります。
 1961年、国民皆年金と称してスタートした国民年金は1985年から強制加入になったが、保険料が高く、年金額が低いため、現在65歳以上の無年金者は55万人にもなっています。空洞化が進み、無年金者と生活できない低年金者は将来900万人を超えると推計されています。老後の生活不安もますます増えています。英、カナダ、オーストラリアなど世界の20カ国以上が、掛け金なしで生存権を保障する公的年金支給制度が実施されており、わが国でも4割を超える地方議会が賛同の意見書を国に提出しています。本請願の採択をお願いいたします。

リストラすすめる「新しい解雇ルール」に反対

 わが党は、今の不況と失業を克服するためには、公的就労をはじめとした雇用拡大、賃下げなしの労働時間短縮、そして何より大企業によるリストラを規制することが必要であるとして、最高裁判決にある「整理解雇四要件」を踏まえた、解雇規制法案などを国会にも提出しています。こうした立場で提出された請願について慎重に審査しました。
 まず、請願第155号、雇用の危機突破を求める意見書提出の件ですが、請願項目1と3については一致できる内容であり、賛成したいのですが、残念ながら2の項目については、「労資協調のもとに新たな解雇ルールを確立」することを求める内容となっております。1999年から2000年にかけて東京地裁において先ほど触れた最高裁判例の到達を後退させる決定や判決が出され、政府・厚生労働省では「解雇しやすい」という意味での「新しい解雇ルール」についての議論が続けられている中で、こういう表現はむしろ雇用ルールを壊す方向に一人歩きする危険性があるといわざるを得ません。残念ながら不採択を主張します。

雇用対策の意見を全会一致で採択

 次に、請願第160号、雇用対策のさらなる拡充を求める意見書提出の件では、「円滑な労働移動」「職業能力開発」などが見られます。合わせて請願要旨においても、国の「改革先行プログラム」や最近打ち出されたデフレ対策を踏まえた上で、さらなる対策充実強化を求める内容となっています。
 例えば「改革先行プログラム」は、全体としてリストラ、常用雇用からパート、アルバイトなど不安定雇用への切り替えを前提とし、さらに派遣労働や期限付き労働契約や裁量労働制の規制緩和など、実質は解雇回避などではなく、経営側に解雇の自由を渡してしまうものです。また、「ミスマッチ論」「能力開発」が言われる背景には、失業を労働者の能力の問題だとする不当な論理があり、不採択を主張します。
 しかし、第155号、第160号の請願が雇用対策の充実強化を国に求める意見書を国に提出することを求めており、意見書提出の重要性は言をまちません。わが党も加わった協議が重ねられ、その結果、全会一致で意見書が採択される運びとなったことを、多とするものであります。わが党は引き続き雇用情勢打開の努力を払って参ります。 

信金・信組つぶしやめ、地域経済守れ

 請願第159号、地域経済と地域金融を守る措置を求める件については、実体経済がよくならないから不良債権が生じるのであるにもかかわらず、これをさかさまにみて処理を急ぐことが、結局、中小事業者をはじめとする企業を窮状に追い込むことになる、しかも不良債権は当面増えこそすれ減らないということは、当の金融庁も報告をしているという事実。信金・信組潰しがペイオフ解禁を前にした金融庁の意図であることは国会論議で明らかです。そのことで地域経済が潰されている実態など、現実に続いている中小事業者の深刻な実態を救済するよう求めているのであり、まったなしの課題だと考えます。
 ただちに採択いただきたいと思います。

神鋼石炭火力 公害を未然にふせぐ対策を

 請願第161号、神戸製鋼所神戸発電所の140万キロワット火力発電の稼働開始に伴う公害発生を未然に防ぐ措置を求める件について申し述べます。
 神戸市と神戸製鋼所の間で締結された「環境保全協定」には地球温暖化ガス(CO2)の排出は現状の63万トンから263万トンと増大する、硫黄酸化物(SOX)、窒素酸化物、その他有害物質も大きく増大することになっています。また常時の情報公開が部分的であり、市民参加が認められていないなど多くの問題点があります。
 石炭火力発電所は全国で初めて都市部に建設されるもので、現在でも自動車排ガス、道路公害のひどい地域に設置され、その影響は東部新都心に近く、神戸市のみでなく阪神地域周辺自治体に及ぶ以上、県としても県民の命と健康を守る立場から公害を未然に防ぐ対策が必要です。本請願は公害未然防止措置を求めるものであり、当然採択されるべきと考えます。

環境ホルモン物質の規制を国に求めよ

 請願第76号、ビスフェノールAなどの実情を明らかにし、その安全基準の見直しを求める件についてであります。環境ホルモンの一つであるビスフェノールAは「プラスチック容器」や「塩化ビニール製の調理用手袋からの溶出」が疑われています。そのため学校や病院給食などの溶出調査を県下の主要地点で行うと同時に安全基準の見直しを国に求めるものであります。本請願は平成12年6月に出され、2年近く「継続審査」という名目で事実上棚ざらしされており、行政に調査を求めるため採択し、請願者に誠実な対応をするべきであり、継続でなく採択を主張いたします。

30人以下学級の実現で、ゆき届いた教育を

 請願第154号は、30人以下学級の実現を求める件でありますが、かねてよりたびたび主張して参っておりますように、全国で県レベルでも30人学級に踏みきる自治体があいついでいます。学習集団であるとともに、生活集団でもある学級規模を小さくすることで一人ひとりにゆき届いた教育が行えることは自明です。
 その段階的実施で今の県財政でも実行できるものであります。請願の採択が行政の背中を押すことが今求められています。ぜひ採択しようではありませんか。

豊かな障害児教育の実現を

 請願第163号、教育予算を増額し、豊かな障害児教育の実現を求める件についても不採択ではなく、採択を主張します。
 障害児が通う養護学校では学級数が増加し、深刻な教室不足が続いています。養護学校が少ないため、障害をもつ子どもが片道2時間近くかけて通学をする状況もあり、養護学校を増設してほしいという願いは切実です。また、プールがない、狭い運動場、老朽化した寄宿舎など問題は山積みしています。誰もが等しく教育を受ける権利を保障するためにも採択を主張します。

有事立法反対の意見書提出を

 最後に、請願第153号、有事法制の立法化反対に関する意見書提出の件であります。
 小泉首相は2月4日施政方針演説で「有事に強い国づくりを進めるため、有事への対応に関する法制について、とりまとめを急ぎ、関連法案を今国会に提出します」と述べ、4月上旬にも提出されようとしています。
 小泉首相は有事法制を制定する理由にテロや不審船問題を例にあげ「備えあれば憂いなし」といっています。わが国への他国の武力攻撃が差し迫っているなどということは誰も予測しないし、中谷防衛庁長官も「想像できない」と述べています。テロや不審船問題は警察や海上保安庁が取り締まる犯罪です。アフガン攻撃のようにテロを戦争と見なし、軍隊を出せば、罪のない多くの人々に耐え難い犠牲をもたらし、テロのタネをまき散らすだけです。にもかかわらず、有事法制を策定しようとするのはアメリカの強い圧力があるからです。
 同時テロが起こったとき、米軍の報復戦争に自衛隊を参加させるように迫ったアーミテージ国務次官補らがまとめた文書では「有事法制の立法措置を含む改定ガイドライン(日米防衛協力のための指針)のしっかりとした実施」をさせよと迫っています。
 新ガイドライン法では米軍がアジア太平洋地域で起こす介入と干渉の戦争に日本が自衛隊のみでなく、自治体や国民を動員して協力することが約束されているからです。有事とはまさに米軍の有事です。だから米軍への協力に強制力を持たせるための法律を盛りこもうとしているのです。
 日本国憲法は、戦争の違法化をすすめた国連憲章の流れをさらに押し進めた先駆的なものです。この憲法の平和原則を今こそ高くかかげ、世界平和に貢献することこそ日本の国際評価を高める道です。様々な紛争の背景には世界的な貧富の格差、深刻な貧困の問題があります。アメリカの戦争に加担するために軍事費を増やしたり、使うことは真の解決に役立たないばかりか逆に問題を深く、大きくするだけであります。国民にとって戦争に協力することは犯罪、それは憲法の精神であります。戦争に協力することを強制し、協力しないものに罰則を与える、これが有事法制です。
 戦前の戒厳令、国民総動員令などの有事立法はどれ1つとして、日本を守るために使われなかったではありませんか。有事の備えのあとは侵略戦争だったというのが歴史の教訓であります。私は少年期ではありましたが、戦争を体験した1人であります。中学生でありながら勤労動員で軍需工場にかり出され、学業を放棄させられ、油まみれで微用工とともに働かされました。爆撃や機銃掃射で、毎日が死と隣り合わせ、空腹のまま戦闘機をつくらされたのです。敗戦後の苦難と占領下の日本の状況も体験しました。歴史は繰り返すといいますが、同じ次元でなくても、余りにも戦前の雰囲気に似てきたのを感じます。今、戦争の惨禍を知らない国民が大多数となってきたとはいえ、国民の反戦、非戦の思いはこんな法律を許してよいのかの運動として広がり、このような企みに立ち向かう大きな勢力となっていくであろうことを疑いません。それは日本国内だけでなく、アジア諸国民をはじめ、国際的な大きな流れとなっていくでしょう。20世紀の教訓から21世紀の人類は必ず紛争の解決の新しい手段を見いだすに違いありません。
 本県議会が国に対して、有事法制の立法化を行わないことを求める請願を採択されることを、心から願います。

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