研究職の任期付採用は、現行地方公務員制度の基本原則をゆがめる
私は日本共産党議員団を代表いたしまして、追加議案中第267号「一般職の任期付研究員の採用等に関する条例制定の件」について反対し、討論をおこないます。
この条例案は2000年7月1日施行の地方公共団体の一般職の任期付研究員の採用等に関する法律、これをもとにするものでありますが、この法律は自治体の試験研究機関の研究業務に従事する職員を任期をあらかじめ定めて採用することによって、公務員の任用にあたっては期限を切らないという現行の地方公務員制度の基本原則をゆがめるものであります。
具体的に申しますと、若手研究員で3年から5年、招聘研究員でも最長10年と任期を切ることによって研究公務員の身分を脅かし、特に若手研究員については、能力の涵養をも目的にしながら、育成した人材をどう活用するか、その制度的保障はなく、20代から30代の最もフレッシュで創造的な研究ができる時期だけ使い、任期が終われば自動的に辞めさせるというものであります。まさに貴重な人材の使い捨てを制度化するものにほかなりません。
しかもこの制度の導入は短期の有期雇用を将来の地方公務員制度全体に広げる突破口にしようとするねらいをもつものであると考えられます。
すでに人事院勧告が、かねてからこのことをうたい、現に国は研究員について1997年に法制化したのに続いて、これを2000年には一般職全体に広げているのであります。国民全体の奉仕者として、なによりも継続性、安定性が求められる公務のあり方からしても、このような有期雇用制は許されることではありません。 条例制定を急ぐ必要はまったくない
つぎに、この条例案は国の法律に基づくものではありますが、地方自治の立場からも、決して従わなければならないという性質のものではなくて、また、いますぐ県が実際的な必要に迫られているわけでもありません。にもかかわらず、条例制定を急ぐのは何ゆえでありましょうか。
県は、行財政構造改革推進方策において、県の試験研究機関を効率主義の見地から整理、統合そして縮小を進めようとしています。これが全体として県民の福祉と県内産業の振興の課題に背くものであることは、わが党が繰り返し指摘してきたところでありますが、条例案が、この行革推進の一環であることはあきらかであります。
このほか、条例案には、採用が任命権者の選考によっておこなわれることによる恣意的な運用のおそれや、研究職であることを名目にした裁量労働の制度化の導入など重大な問題点が含まれています。
最後に、ノーベル賞を受賞された野依良治博士は「研究プロジェクトへの従事者は多いが、真の学者はいなくなった。」と発言しておられます。実利を追い、目先の成果を求める研究活動だけが尊ばれる風潮は、決して科学技術の大局的な発展に寄与するものではありません。ゆったりした空間と自由に使える時間のもとでの腰をすえたとりくみこそ、研究を活性化させる道であります。
研究に制限時間を設ける条例案は、このような研究活動のあり方にもとるものであると言わなければなりません。
以上、反対の理由であります。議員諸賢のご賛同を心からお願いいたしまして、討論といたします。ご清聴ありがとうございました。 |