私は日本共産党県会議員団を代表して、請願の態度について討論をいたします。
本議会に上程された22件の請願のうち第132号ないし第137号、第141号、第142号、第144号ないし第150号の15件は、不採択でなく採択を、第44号、第76号、第138号の3件は、継続ではなく採択を、第140号は採択ではなく不採択を求め、以下その主な理由を申し述べます。
福祉充実のために労働条件の改善、基盤整備計画の策定、予算の増額を
まず、福祉の充実に関する請願134号、135号についてです。これは福祉労働者の大幅増員と労働条件の改善、福祉充実のために基盤整備計画の策定と予算の引き上げを内容とする意見書の提出を求める切実なものです。福祉労働者は、社会福祉医療事業団の99年度業務報告でも明らかなように、勤務年数は全国平均で7年弱、賃金は厚生労働省の調査で医療労働者に比べて月額6万円も低く、このうえに規制緩和が進み保育サービスなどへの営利企業への進出とコスト削減により、過酷な労働と低賃金へと追い込まれようとしているのです。願意である豊かな福祉サービスを県民に提供していくためにも、福祉労働者が専門性を発揮し、働きつづけられる労働条件の改善は急務です。
福祉充実のための基盤整備についても、わが党がかねてから求めてきた保育所、特別養護老人ホームの待機者解消のための施設整備は緊急の課題です。また、2003年から始まる障害者の支援費支給制度に伴うサービスを保障するための施設整備も不十分です。願意である基盤整備計画の策定と予算の増額が強く求められています。よって本請願は、不採択ではなく採択すべきです。
医療制度の大改悪を撤回し、国の責任で医療制度の充実を
つぎに請願第136号は、医療制度改悪を撤回し、国の責任でその充実を求める件です。政府は、高齢者医療費の増加による医療保険財政の悪化を理由に医療制度改革試案を発表しました。その影響は、老人医療の対象年齢の段階的引き上げ、社会保険本人負担2割から3割への引き上げなど、国民のほとんどの階層、年代にわたり戦後の歴史のなかでも例を見ない過酷なものです。医療保険財政を破たんに追い込んだ最大の原因が、国の負担の削減と高すぎる薬価にあり、むしろ国の負担を増やし高すぎる薬価を引き下げることにこそ求められているのです。しかし、この医療改悪が実行されれば、深刻な受療、受診抑制を招き、県民の健康悪化をもたらし、かえって医療費の増大を招く結果になりかねません。命を削る医療制度の大改悪を撤回し、国の責任で医療制度の充実をはかる意見書の提出は当然採択すべきです。
高齢者が老後を安心して暮らせる「最低保障年金制度の創設」は当然
請願第137号、公的年金制度の改革で最低保障年金制度の創設を求める意見書提出についてです。公的年金制度は、1985年以来、保険料の引き上げ、年金額の引き下げなど改悪が繰り返されてきました。国民皆年金の名のもと強制加入となったものの、65歳以上の無年金者は55万人、保険料が高く、受け取る年金額が低いため、年金離れがひろがり、2000年3月末で保険料未納者は265万人、年金未加入者が若者を中心に99万人に達し、制度の空洞化という問題がおこっています。また、保険料免除者は443万人にも達しています。一方、国民年金財政は、この5年間毎年6400億円の黒字であり、その積立金の累計は10兆円をこえ、厚生年金積立金とあわせると147兆円をこえています。高齢者が老後を安心して暮らせる最低保障年金制度の創設を願う請願は、全国で1379の地方議会で採択され、国に意見書が送付されるなど、国民の切実な願いとなっています。よって本請願は、不採択ではなく採択を求めます。
請願の継続審査を繰り返さずただちに採択を
請願第138号は、児童扶養手当の見直しの撤回を求める意見書の提出についてです。児童扶養手当は98年、所得制限が大幅に引き下げられ、全国で6万4000人の支給が打ち切られました。このうえ、母子家庭の家計を支える命綱である児童扶養手当の基準切り下げがおこなわれれば、母子家庭医療費助成など地方自治体が実施している他の制度も受けられなくなり、不況のさなか事態はいっそう深刻となり、児童扶養手当改悪の撤回を求める本請願は継続ではなく直ちに採択すべきです。
請願第44号、乳幼児医療費助成制度の拡充を求める件についてです。本請願は就学前まで入院、通院とも無料化を求めるものです。2001年4月現在、全国で通院で296自治体、入院で716自治体が就学前までを対象にしており、中学卒業までを対象にする自治体も広がっています。また、今議会でも就学前まで拡大を求める質疑が出るなど、機は熟しています。また、自己負担については、不況のもと、お金がないから子どもに満足な治療を受けさせられないとの悲痛な声にたいし、県は何ら対策をされていない状況です。請願提出からすでに2年が経過しており、いたずらに継続を繰り返すのではなく、本請願は直ちに採択すべきです。
つぎに請願第76号は、学校給食などで使用される容器や調理用手袋における環境ホルモンであるビスフェノールA溶出の実態調査と国の安全基準見直しを求めるものです。ビスフェノールAの危険性は各方面からも指摘されており、本請願はこのまま継続せず、ただちに採択することを求めます。
狂牛病被害対策の拡充を
請願第146号、但馬牛を守るため、BSEいわゆる狂牛病被害対策を国および県に求める件についてです。狂牛病感染が確認されて以来、但馬牛の主産地である美方郡の畜産農家は、子牛の市場価格の暴落など、その衝撃は畜産農家の経営努力の限界をこえるものです。狂牛病の発生、その後の対応など、狂牛病問題はあげて政府の責任であり、その対策や被害補償は当然国がおこなうべきです。ところが今実施されている緊急対策は、貸付と出荷後の補てんで、出荷調整や価格の暴落などで経営サイクルが狂い、苦境に立たされている畜産農家にとっては極めて不十分なものです。県のブランド「但馬牛」を守るために、被害対策のいっそうの拡充を求めるのは当然であり、本請願は不採択ではなく採択を求めます。
教育の充実を求める請願の採択を
つぎに教育に関する請願についてです。
まず請願第144号、教育復興担当教員の継続配置など教職員の定数増を求める件についてです。本請願は請願第139号、第143号と同様に復興担当教員の継続配置を求めるとともに、被災児童を含め生徒一人ひとりに行き届いた教育を実現するために、教職員定数を改善することを求めるもので、不採択ではなく採択すべきです。
請願第142号、私学助成の抜本的拡充で、行き届いた教育の実現を求める件についてです。私立高校の学費滞納調査によると、3カ月以上の滞納者は1校平均18.2人と全国平均14.3人を上回る状況で、長期化する不況のもと、子どもと子どもを取り巻く教育環境は深刻な状況です。その上に県が一昨年から行財政構造改革で私学助成を削減したことは、事態をより深刻にするものと言わざるを得ません。公立と私学の授業料の格差は6倍に達しており、父母負担の軽減のためにもその是正は急務です。33万人をこえる賛同署名の重みを受けとめ、本請願は不採択ではなく採択を主張します。
第145号、第147号ないし第150号は、30人学級の実現、学校の施設改善、県独自の奨学金制度の創設などを求める請願です。
1つは、30人以下学級の実現、教職員の増員についてです。国立教育研究所の調査結果でも少人数学級の効果が明らかとなり、県も新学習システムで少人数指導の効果を認めています。次代を担うすべての子どもの成長のために、30人以下学級の実現は、地方自治体の積極的姿勢にかかっており、今、山形県で全小学校、秋田県、千葉県、埼玉県志木市、新潟県、福井県、広島県、愛媛県、鹿児島県などでは、できる学年から実施へと努力が始まっております。県下の54自治体で、30人学級を求める請願が採択されており、その実現が急がれます。
2つめには、子どもたちに快適な学校生活を保障するために、校舎改善、改築など教育環境整備をすることです。学校施設の老朽化が進んでいるにもかかわらず、改善は進まず、維持管理費も実態に合っていません。黒板さえ取りかえられない学校があるなど、教育環境を整備することが急がれます。
3つめには、県独自の奨学金制度の創設についてです。長期化する不況の中で、経済的理由による退学者が増加、授業料滞納者も例年の1.5倍に増えており、教材費や修学旅行費用も支払い困難の家庭も増え、父母負担の軽減措置が求められています。すでに全国31都道府県で実施されており、待ったなしの課題です。また、授業料減免制度の拡充も急がれます。
以上、主な内容に限って申し述べました。よってこれらの請願は不採択でなく採択すべきです。
被災者支援の延長と充実を
つぎに、震災復興に関する請願についてです。
請願第132号は、自然災害にたいする被災者支援策の拡充を求める意見書提出についてです。98年に成立した被災者生活支援法の、この間の災害被災者への適用は全体の1割にも満たない状況であり、見直し時期2003年を前に支給基準の大幅改善は急務です。全国各地の災害地から国にたいしてすでに意見書が提出されており、兵庫県からの発信は当然です。また住宅再建支援法も政府の「被災者の住宅再建支援のあり方に関する検討委員会」の報告で自然災害時の住宅の公共性が認められたことなどを考慮すれば、請願者の願意は時宜にかなったもので、幅広く合意できるものであり、本請願は不採択でなく採択すべきです。
請願第133号は、兵庫県生活復興資金返済問題に関する相談窓口の設置を求める件についてです。不況と震災の二重苦で幾つもの借金をかかえ、被災者の苦境は大きいものがあります。兵庫県独自の基金事業であり、返済の相談を銀行まかせにせず、相談窓口を県に設置することを求める本請願を不採択とせず採択することは当然です。
請願第141号は、被災地しごと開発事業の継続と拡充を求める件についてです。被災者1400名が就労している基金事業が、来年3月で期限を迎える問題について、引き続きこの事業の延長を求めるものです。失業や倒産が最悪という状況のなかで、この事業が被災者にとって貴重な就業の場となっており、この事業を終了することは新たな失業者をつくることになるではありませんか。被災者の立場にたって、他の被災者支援策の延長と同様に、この事業の延長が求められているのではないでしょうか。本請願の採択を心から訴えます。
高規格幹線道路ネットワーク計画は過大で無謀
最後に第140号は、道路整備の促進と道路財源の確保を求める意見書提出についてです。わが党は、無駄な公共事業、開発事業を中止して、その財源を住民生活に密着した道路や歩道の整備にあてることを、これまでも一貫して主張してきました。高速道路すべてを一律に否定するものではありませんが、第二東名、第二名神高速道路や紀淡海峡道路などの高規格幹線道路ネットワークは著しい環境破壊を招く上に、公共投資基本計画に基づいた道路整備5カ年計画をそのまま推進するものであり、必要性や採算性を無視した過大で無謀な計画です。わが党は計画そのものを中止することを求めてまいりました。したがってこのネットワーク整備を国に求める願意に反対であり、本請願は採択でなく不採択とすべきです。以上、議員各位のご賛同を心からお願いし、私の請願討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。 |