議会報告
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産業立地補助金では、県経済は発展しない
■入江次郎■ 日本共産党の入江である。早速質問に入る。
産業立地促進条例についてお伺いする。
平成29年度の県下平均有効求人倍率は、1.32倍まで上昇し、産業立地条例で雇用促進地域に位置付けられている淡路地域では、1.88倍にもなった。ただ有効求人倍率が上昇しているもとでも正規求人の伸び率は鈍く、全体の約4割にとどまっている一方で、非正規の求人は全体の約6割を占め、本県の非正規雇用率は全国平均より高く、非正規雇用者のうちの約14%が不本意非正規雇用となっていることも指摘しておきたいと思う。有効求人倍率が上昇するもとで、とりわけ中小企業の人手不足が深刻である。
日銀神戸支店が行った県内企業短期経済観測調査によると、平成26年度末では、大企業、中小企業ともに雇用人員DI判断は、およそマイナス10%程度の人手不足指数であったが、平成29年度末には大企業はマイナス15%程度に対し、中小企業ではマイナス40%程度にまで急激に人手不足指数が拡大している。中でも人材不足職業として挙げられているのが、介護サービスに次いで生産工程職場が挙げられている。要するに、有効求人倍率が上昇するもとで、地域ほど兵庫の物づくり産業を担う人手不足が深刻化しているということが言えるのではないか。
一方で、産業立地促進条例は、平成14年当時、県下平均有効求人倍率が0.44倍程度に低迷する中で雇用の創出を大きな目的に作られたが、平成29年度の有効求人倍率は、先ほどご紹介したとおりである。産業立地促進補助金については、平成14年に条例が施行されて以降、平成29年度までに約230億円の設備投資補助金と、約25億円の新規雇用補助金が支出された。撤退による一部返還はあったものの、設備投資補助金総支出額の約7割に当たる163億円が液晶パネル製造業であるパナソニックグループに支出された。平成29年度を見ても、大手製造業者に多額の補助金が支出されている。
そこでお伺いする。人手不足が地域ほど、とりわけ兵庫の物づくりを支える製造業で深刻化しているもとで、社会情勢の変化に対応し、産業立地促進条例の見直しを求めるが、ご答弁をお願いする。
■産業立地室長(谷口幸史)■ 本県は、平成29年も転出者が転入者を6,657人上回るなど、転出超過が続いている。このため、兵庫県地域創生戦略においても、企業の立地・投資の促進を人口の社会増対策の一つと位置付けているところである。
人口の社会増を実現するためには、先ほどの製造業だけではなく、首都圏等からの本社機能や、それから研究開発拠点等の移転の促進、既存企業の県内拠点での事業拡大支援等により、県内外から企業の立地・投資を呼び込み、若者、女性、高齢者も含め、多様な働き方のできる仕事の場を創出する必要がある。
産業立地条例は、産業の活性化と新たな雇用の創出を図ることを目的としており、人口の社会増対策として極めて重要な取組であるので、引き続き本条例に基づき企業立地を促進していく。
■入江次郎■ いろいろ言われるが、条例の目的は雇用の創出ということを大きな目的に作られてきたが、社会情勢が大きく変化しているということが一つあると思う。もう一つは、これまでも繰り返し言ってきたが、巨額の補助金がこれまでも支出されてきている。企業が兵庫県に立地を決定する投資動向に、補助金がどれだけ影響を与えたかということは、効果の測定、検証こそが最も大事なことだと思う。
経済産業省が工場の立地動向調査というのをやっている。兵庫のを見ると、平成25年2位、26年、4位、次が2位、4位、2位と続いているわけである。当局も兵庫県では企業の立地が随分と伸びているということを盛んに宣伝されているが、経済産業省の工場立地動向調査を見ると、条例ができる平成13年以前、例えば平成8年は、兵庫県は全国で3位である。平成9年も3位である。だからわりかし兵庫県の企業立地動向というのは、ずっと条例ができる前から高水準で推移している。だからそういう点から見ても、企業の投資動向に巨額の補助金がどれだけ影響を与えているかというのが大きな疑問であるが、この工場立地動向調査をどう分析されているかをお伺いしたいと思う。
■産業立地室長(谷口幸史)■ ただいまご質問にあった工場立地動向調査と補助金への貢献の話であるが、企業誘致は先ほど補助金が兵庫県は平成14年度から全県的に制度を制定して推進してきたわけであるが、ほぼ同じ時期に全国各地で、いえば企業の誘致合戦というかいろいろと企業を呼び込むための施策というのは、ほぼどこの府県も同じ時期に始まっている。であるので、ほとんどの自治体に補助金がなかった自治体で、いえばイコールコンディションの中で兵庫県がやはり上位にあったのが、例えば補助金がそのまま兵庫県だけなかったとしたら、ひょっとしたら件数が落ちてるんじゃないかと。そこは、やはりほかの府県に負けないような、それは補助金だけではない。兵庫県はいろいろと交通インフラとかいろんな立地の優位性を持っているため、そういう総合的な評価をする必要があるが、そういう中で補助金というのはやはり一つ最後の決め手になる大きなファクターになっていると思っているため、そういう理解をしているところである。
■入江次郎■ 最後の決め手と言われたが、これも経済産業省の工場立地動向調査の結果の中にあるが、立地地点の選定理由というのを経済産業省は調べている。そしたら自治体の補助金、助成金は5番目である。以前も紹介したが、姫路市のパナソニックに県も補助金出しているが、立地選定の決定的要因として、大企業は今言ったようにインフラが整備されていることが決定的理由として挙げている。中小企業は補助金が決定的な要因となっているといっているが、少なくとも大企業は補助金が立地選定に当たって決定的要因とはなっていないという分析がされている。
これまでもずっと言ってきたが、予算の執行に当たっては、最少の経費で最大の効果を発揮しなければならないというが当局には求められているわけである。だからそういう意味でも、巨額の補助金が立地選定の動向にどういう影響を与えているかという効果の測定、検証というのは、必ずすべきだと思う。これは求めておきたいと思う。
兵庫県奨学金返済支援制度のサポート強化を
■入江次郎■ 次に、ちょっと時間がないので進む。被るところもあるが、兵庫県奨学金支援制度についてお伺いする。
兵庫県では、平成28年度より中小企業就業者確保支援事業として、兵庫型奨学金返済支援制度をスタートさせ、中小業者、若者にも大変喜ばれているところである。兵庫県奨学金支援制度とは、30歳未満の若者が県内の中小企業に就職した場合に、制度を設ける中小業者が3分の1、県が3分の1、本人が3分の1を支出し、5年を上限に奨学金編成の支援を使用とするものである。人手不足に悩む中小企業にとっては、若年者の雇用確保、若者からすれば重い奨学金返済の負担軽減、県からすれば若年者の県外流出防止となるわけである。ただ、いい制度であるにもかかわらず、実績が余りにも少ないということである。平成29年度の実績は、助成対象企業数47社、対象者数は目標1,500人に対して148人にとどまっており、予算執行率も54%にとどまっている。予算執行率低迷の原因と今後の対策についてお聞かせいただきたい。
■労政福祉課長(竹谷昭宏)■ 兵庫県奨学金返済支援制度については、平成30年の10月10日現在で、導入企業は86社、対象者は既に昨年度末の実績を上回る195人になっている。
予算執行率の低迷については、予算額においては県内企業数、及び対象となり得る若者の総数をもとに、1,000人を超える補助を見込んでおったが、本制度は企業に置いて精度を導入していただくことが前提となっているため、忙しい企業担当者が制度を理解した上で、社内の意思決定を図っていくということがなかなか困難、あるいはそうでなくてもかなりも時間を有するということで、導入企業数が伸び悩んだということが実績低迷の大きな要因であると考えている。このため、経済団体総会や合同企業説明会等において、事業の認知度を高めていくのに加え、個別の企業訪問等による制度の導入に向けたサポートを強化するとともに、戦略的に各地域の導入企業を拡大するため、県幹部による企業トップや地域、あるいは業界の牽引企業へのアプローチを行ってきた。本制度は、県内企業の人材確保、若年者の県内就職、定着の促進に向け、重要なものと考えていることから、今後とも刷新したリーフレットをもとに、粘り強くこうした個別企業へのアプローチなどを継続し、制度の導入実施に向けた県内の機運を高めていきたいと思う。
■入江次郎■ 最後に、社会情勢が大きく変化するもとで、雇用の創出という目的を持って作られた産業促進条例。そして巨額の補助金を投入しながら効果の研修も十分できてない条例の見直しを求める。その上で、兵庫県の事業所数の99%、そして雇用者の7割を占める中小業者への支援をより強くしていただくことを求め、私の質問を終わる。ありがとうございます。