議会報告

  • 2019年02月22日
    本会議

    第343回本会議 補正議案一般質問 入江次郎

    農業の大規模化・集約化一辺倒では、兵庫農業は守れない

    2018年12月30日にTPP11が発効し、関税が撤廃される農林水産物は関税品目で82.3%を占めます。国会決議が交渉の対象としないよう求めた米・麦・牛・豚肉・乳製品・砂糖でも関税撤廃は28.6%にものぼり国内農業への打撃は明らかです。
     さらに2019年2月1日には日欧EPAが発効され、日本では農林水産物の約82%の品目で関税が撤廃されます。食料の外国依存を深めるEPAやTPPによる輸入自由化や競争力強化一辺倒のやり方ではなく、小規模・家族農業の重要な役割を認識し、支援することこそ必要です。

    本補正予算案では、TPP協定の早期発効に対応するため、農林水産業の強化策として、規模拡大や法人化を進める認定農家や、集落営農組合、畜産クラスター協議会を重点的に対象とした予算配分となっています。

    本県では、農家戸数約8万1千戸、耕地面積約7万4千㌶の農業規模に対し、認定農業者は2463団体、集落営農法人は128法人で、集積された農地面積は目標にしている4万9千㌶に対して3割程度です。つまり本補正予算案では本県耕作農地の約7割と、農家戸数の9割が予算付けの対象からさえも外されています。

    また、県内肉用牛繁殖農家のうち畜産クラスター協議会に加入する農家戸数は75%になりますが、クラスター協議会で飼育されている雌牛頭数の割合は本県肉用繁殖牛のうち55%程度です。しかし、本補正予算案では畜産クラスター協議会へ加入する畜産農家のみが予算付けされています。規模拡大や生産性向上の全てを否定するわけではありませんが、大規模化一辺倒で農村、農地を守れるのか疑問でいっぱいです。

    「兵庫2030年の展望」の策定過程では審議委員から「自分たちの農業・農村の将来像が描けない、大規模化だけで進んでいってよいのか疑問」という声が出されています。また、姫路市内で大規模農地を担うある法人の代表者にお話しをお伺いしたところ「現在は、かつて農業をしていた年金暮らしの農地所有者がお小遣い程度の賃金で、繁忙期などに手伝ってくれている。それによって法人がどうにかやっていけている。ただ、今後は担い手が農地を耕作していることによって、農地所有者なのに農業を知らない世代が増えてくる。そうなると就労雇用が必要になる。人手不足の中で就労雇用を雇い、被雇用者が結婚し子育てできるだけの他産業並みの賃金を支払っていては法人はやっていけない。」と、おっしゃられていました。大規模化を進める国や県はこういった大規模農家の疑問に答える必要があります。

    そこでお伺いします
     TPPや日欧EPAが発行され競争力強化の名のもと、農地集積や規模拡大が一辺倒に進められていますが、日本の農家1戸当たりと比較して1000倍もの農地面積をもつオーストラリア等と比較して、中山間地の兵庫農業では規模拡大にも限界があります。日本農家が国際競争の場に引出される中で、10年20年後に農地所有者が農業を知らない時代になった時、就労雇用者を雇い、就労雇用者に対し子育てできる他産業並みの賃金を支払い、就労雇用者が農村に居住する将来像についてどのように描いているのかお示し下さい。

    ○答弁:井戸敏三知事 入江議員の質問にこたえます。
     グローバル化の進展によって海外だけでなく、国内の産地間競争も激化していると考えられます。このようななか、本県農業を将来にわたって発展させるためには、農業経営者、雇用就農者が、農村地域で安定的に生活できるように、農業経営の収益力を高めることが基本になると思います。このためにまず稲とか麦等の土地利用型作物の経営では、農地中間管理事業による、農地の集積集約化や、収益性の高い作物の導入による経営の多角化、高度化を図る必要があると考えています。
     野菜等園芸作物の経営では、ICTを活用した高度な環境制御技術の導入など経営形態に応じた収益力強化にとりくみます。一方高齢化により営農継続が難しい経営体や小規模な経営体など、単独では収益力強化が困難な経営体については、集落単位で営農を行う集落営農組織への誘導をすすめてまいります。また集落営農の発展段階において法人化をすすめていくとともに機械導入や販路開拓など収益力の向上をはかるとりくみを支援して、その機能を強化してまいります。
     私は常に小規模農家については、集落営農で株主になろう、そして農業の実際の作業等は、専門家が効率的におこなっていく、でそのためにはある程度の規模の強化が必要で、そしてさらに大きくしていく場合は、法人化をしていく必要がある、こういう筋道をのべさせていただいています。これらの施策により雇用就農者に対して他産業並みの賃金を支払うことができる収益力の高い経営体を育成して、これが兵庫県の農業を担う、このような意味で基幹産業化をはかってまいりたいとかんがえるものであります。

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