議会報告

  • 2018年12月11日
    本会議

    第342回本会議 一般質問 ねりき恵子

    1.高潮被害と災害対策についてです。

    本年9月4日、県企業庁が分譲した潮芦屋で、台風21号が起こした高潮・波浪による浸水被害が発生しました。潮芦屋住民は阪神淡路大震災、東日本大震災を目の当たりにし、自然災害が多発する中で「災害につよいまち」と、県企業庁が宣伝してきたコンセプトを最大の魅力として、潮芦屋に住宅を購入しました。

    しかし、浸水被害直後に県が行った測量調査では、潮芦屋の堤防護岸高は地盤沈下によって計画高さより低くなっていた事が判明し、このことによって浸水被害が拡大したことは明らかです。

    さらに驚くべきことは、2006年に県が潮芦屋のハザードマップ作成時に用いた堤防測量値が、1996年の潮芦屋竣工時の堤防測量高を上回っていたという、でたらめな測量業務を行っていたことも明らかになりました。

    ハザードマップが公表された時点で、潮芦屋の堤防護岸高は浸水予測潮位を下回っていた可能性があります。でたらめな測量によるハザードマップを策定し、「浸水しない」「災害につよいまち」と売り出してきた県の瑕疵は極めて重大であり、想定外を言い訳に責任を免れることはありません。住民への謝罪と補償を求めます。

    同時に、でたらめな堤防測量値に全く気付くことなくハザードマップを作成し、公表した、あまりにもずさんな県業務の総点検と、潮芦屋の高潮対策については、住民の皆さんの声をよく聞き、堤防の嵩上げだけでなく、防潮堤の整備など景観にも配慮し、住民の命と財産を守るための最善の対策を求めます。

    さらに、潮芦屋の教訓を全県で活かした高潮対策をとらなければなりません。

    兵庫県では水防法の改正によって2015年から5年間を目途に、全県的なハザードマップの見直し作業を進めています。この度、すべての人工島で現在の護岸高が、計画高さよりも低いことが判明しました。潮芦屋の教訓を活かし、改めて現行の堤防測量高を測量し、計画高さを満たしていない堤防については堤防高を嵩上げすることが必要です。

    また、大阪湾の設計高潮位は1966年に設定されたもので、大規模な自然災害が多発する今、見直しも必要になっています。県民の命と財産を守るため、施設設計基準を見直し、それに応じた堤防の嵩上げ、防潮堤の整備を求めます。

    ○答弁:県土整備部長 台風第21号では、潮位は昭和41年に設定した設計高潮位よりも低かったものの、計画規模を上回る高波により、潮芦屋等で浸水被害が発生した。このため、有識者等による高潮対策検討委員会により原因究明を行い、年度内に浸水した地区の高潮対策を護岸の嵩上げを基本に、経年沈下や今後の沈下も加味した上でとりまとめる。潮芦屋の対策は、景観も配慮する。

    また、来年度には、全県下を対象に「兵庫県高潮対策10箇年計画(仮称)」を策定し、優先度の高いところから高潮対策に取り組むこととしている。その際には、防潮堤の沈下の状況や必要高さのチェックを併せて行う。

    一方、高潮浸水予測区域図については、平成27年に改正された水防法に基づき、想定し得る最大規模の高潮により、全県的に新たな浸水想定図を作成する。測量業務の点検については、浸水想定図作成に併せて防潮堤の高さを新たに測量することで対応する。

    なお、企業庁が「災害に強いまち」をコンセプトとし、時にハザードマップを示しつつ分譲してきた潮芦屋が、結果として被災したことについては誠に遺憾であるが、今回の被災は、計画規模を上回る高波等による不可抗力に基づくものであり、瑕疵担保責任は負わないものと考えている。

    今後とも、県民の安全・安心を図るため、高潮対策に取り組む。

    2.河川整備計画と大堀川の浸水対策についてです。

    今年7月の豪雨、引き続く台風では、河川でも浸水被害がおきました。

    県管理の河川改修率は2017年度末で59.6%に留まっており、浸水被害を防ぐためにも河川整備が急がれます。

    県河川整備計画に基づく工事完了は2038年を過ぎる河川もあり、今後20年以上もかかるのが実態です。これでは、多発する集中豪雨などの災害に対する住民の不安にこたえることはできません。災害の危険から県民の安全を守ることが第一です。あらたな高速道路建設など従来型の公共事業から、防災・減災型公共事業へ大きく転換して予算を振り向け、河川改修率を高めるとともに、河川整備計画を前倒して、一日も早く工事完了をすべきです。

    宝塚市でも、武庫川流域河川の大堀川の溢水で、市内向月町・鶴の荘一帯で床上・床下浸水被害が起きました。繰り返される浸水被害に住民は物的被害だけでなく、不安な気持ちを抱えて精神的にもストレスのある生活を強いられています。

    この地域は、以前より浸水被害が繰り返され、宝塚市も雨水対策として尼宝雨水幹線整備、向月町水中ポンプ機能の強化、川面2号雨水幹線などの整備を進めてきました。

    住民の声に応え、県は、やっと2011年に大堀川河川改修事業計画を定め、現在、西田川橋から第一小浜橋まで約360メートルの改修に着手し、左岸の護岸整備工事がおこなわれています。しかし、工事完了には、あと4~5年かかる見込みで、浸水対策の効果を上げるための河床掘削が先送りになることが大きな課題の一つです。

    また、国道176号をくぐるボックスカルバート部分は、川幅が急に狭くなり流下能力が落ちることで、浸水被害のネックとなっていることから抜本的な改良工事が必要です。

    そこで、豪雨による河川の溢水など浸水被害から県民のいのちとくらしを守るため、公共工事を防災・減災型に切り替え予算を確保するとともに、河川整備を抜本的に進める事。

    また、大堀川河川改修工事の予算を十分確保し、護岸整備を確実に進め、河床掘削や国道176号のボックスカルバート改良など流下能力を高める抜本的な対策を行うこと。

    当面、宝塚市が整備した尼宝雨水幹線吐ロ下流部の合流部分の河床掘削など暫定的な対策を検討するとともに、浸水被害のおきる向月町付近の河床に堆積した土砂の撤去を行うこと。以上、大堀川河川改修工事の一日も早い完了を求めますがお答えください。

    ○答弁:技監 武庫川の支川大堀川の治水対策については、平成23年度策定の河川整備計画に基づき西田川橋から上流約1.21㎞の区間について、護岸を先行整備した後に、下流側から順次、河床掘削を行う工法による抜本的な河川整備を行っている。

    向月町の浸水被害の主な要因は、宝塚市管理の尼宝雨水幹線の吐け口が、大堀川の河底付近の高さで合流しているため、河川水位の上昇に伴い雨水排水が困難となることによる内水氾濫である。

    このため、西田川橋から上流の吐け口合流付近までの間の整備を急ぐこととし、これまでに右岸側の護岸整備は完了し、残る左岸側の護岸整備についても、地権者との協議が整ったことから、今年度工事着手している。

    しかし、河川沿いには、人家等が近接し、護岸整備等のための進入路を複数確保できないため、下流から順次進めることとなり、完了までに今後5年程度必要になる。残る吐け口合流点から上流の区間についても、下流から整備を基本としつつも、議員ご指摘の流下能力のネックとなっている国道176号ボックスカルバート部の改良工事に早く着手できるように、護岸を先行整備するための施工方法等について今後検討していく。

    向月町付近の堆積土砂撤去は、今年度の9月補正予算を活用して実施していく。また、吐け口合流点から下流の区間を先行して河床掘削することについては、現地の土質が軟弱で護岸整備がなされてない状況では背後地の資産等に影響を与える恐れがあるため、困難と考えている。

    治水対策など防災・減災対策にかかる予算確保は、これまでも最優先課題として取り組んできているが、全国各地で甚大な被害をもたらした本年の災害を踏まえ実施された国の重要インフラ緊急点検結果に基づく今後3ヶ年の集中投資予定等の機会を活用することにより、最大限の予算確保に努め、大堀川をはじめとする県内河川の整備をスピードアップして進めていく。

    3.待機児童の解消についてです。

    今年4月1日の待機児童数は、全国で1万9895人。兵庫県では、明石市が全国最多の571人、宝塚市は116人、県全体で1988人と前年比416人の増で、増加数は全国ワースト1位と深刻です。

    国が力を入れているのは、既存施設への受け入れ定員増を認める「つめこみ」や、認可外の「企業主導型」保育です。 兵庫県は、2017年度、163施設を整備、既存施設の受け入れ増で4106人の入所拡大を行いましたが、その約6割の98施設1932人が「企業主導型」保育です。

    「企業主導型」保育は、企業が社員のこどもを対象にした施設で、定員の半数まで地域の子どもを受け入れ可能です。問題は、認可施設並みの補助がありながら保育士の配置は半分で良いなど、職員配置や設置基準が大幅に緩和されていることです。しかも、都道府県への届け出義務、都道府県による報告徴収・立ち入り調査が行われるものの、市町村が整備する仕組みも、指導監督権限もありません。

    日常的に指導・監査するのは内閣府の外郭団体である公益財団法人「児童育成協会」で、その業務は、現在、人材派遣会社パソナに業務委託されています。これでは、株式会社が利益目的で参入しやすく、保育の質が確保されるか大きな懸念があるのも当然です。

    実際、内閣府の報告でも、昨年、立ち入り調査が行われた「企業主導型」保育の7割以上で保育士不足の時間帯があるなど、認可保育所よりゆるい基準さえも守られない危険な実態が明らかになり、国は、質の確保や事業の継続性、指導監査のあり方の検証に動き出しています。こどもの安全が確実に保障されないまま、県として「企業主導型」保育を先行させることは問題です。

    保育所増設の要は、保育士の確保で、その不足は深刻です。

    全産業平均より約10万円も低い賃金の引き上げとともに、人員の配置増など業務負担の軽減を図るため、国や行政が責任を持って保育士の処遇改善を抜本的に図ることが急務です。

    待機児童の解消は、「企業主導型」保育でなく、こどもたちの発達と安全に必要な「最低基準」を定めている認可保育園の増設をすすめること。保育士確保のため、給与水準向上に向け、公定価格の抜本的引き上げを国に求めること。同時に、県として、民間福祉施設運営支援事業を拡充し、財政支援を行うことを求めますがご答弁下さい。

    ○答弁:福祉部長 保育定員については、新制度開始の平成27年度から3年間で、12,120人を拡大し、このうち企業主導型保育事業は2,463人と20%の割合となっている。この事業は、従業員の多様な働き方に対応した保育サービスを提供できるうえ、企業所有の不動産の活用などで柔軟に開設できることから、大幅に増加している。

    企業主導型保育事業は、認可外保育施設の位置づけではあるが、設置基準は小規模保育事業並の水準が求められ、児童育成協会のもと指導監査が行われている。本県でも健康福祉事務所が、毎年、運営状況報告書の提出を受けて確認し、必要な場合には立入調査を実施している。

    今年度は、保育所・認定こども園等の整備により約5,000人の定員拡大を見込んでいる。待機児童の解消には、多様な受け皿整備を進めることが重要であり、企業主導型保育事業を含め、都市部で開設容易な小規模保育事業など地域の実情に合わせた整備も進めている。また、今年度の補正予算で創設した、質を確保して定員の弾力化を進める事業などを市町に働きかけ、定員拡大の上乗せを図っている。

    さらに、保育士確保のために、国にはあらゆる機会を通じて、配置基準の改善や公定価格の引き上げの要望を行うとともに、県単独事業である民間社会福祉施設運営支援事業により、職員を配置基準以上に配置している保育所に対し、人件費を支援している。今年度からは国の処遇改善加算の対象外となる中堅保育士にも技能や経験に応じた処遇改善を行える事業を創設した。

    今後とも、更なる受け皿の拡充や保育人材の確保に取り組み、女性の社会進出と子育て環境の整備を一層推進していく。

    ○再質問:ねりき恵子 先ほど、企業主導型保育事業は、問題ないような答弁でしたが、保護者の緩和された基準では、安心して預けられないというのが率直な思いです。しかも、監査を民間企業に任せているという点でも、懸念・不安が寄せられています。待機児童解消は、認可保育施設の整備・充実を基本とするべきだと考えますが、再度、ご答弁をお願いします。

    ○再答弁:井戸敏三知事 企業主導型保育施設については、設置基準は小規模保育事業並みの水準ではあるが、運用の面で課題を持っているところも見受けられるということもあり、現在国の方で企業主導型保育事業について点検していると承知している。

    待機児童対策については、ご指摘のように認可保育所だけでも対応できるならば、それで臨むのが望ましいが、なかなかそれだけでは対応できないということで小規模保育とか、定数外の運用の保育の実現とかいろいろな組み合わせをその地域の実情においてやってきているので、企業主導型保育だけではなく他の事業と一緒になり、待機児童対策を進めていくことが今の段階では必要なのではないかと考えている。

    ご指摘のとおり、企業主導型保育に運用上の課題があるならば、それはそれで、しっかり指導してまいりたい。

    4.少人数学級の拡充についてです。

    日本共産党県議団は、100回を超える質問で少人数学級の実現を一貫して求めてきました。県教育委員会は、当初「教育効果がない」と拒んでいましたが、少人数学級を求める切実な声にこたえ、2004年、全国に先駆けて小学1年生の35人学級を導入し、2008年に小学4年まで拡充しました。

    少人数学級は全国にひろがり、今では、22府県が小学校全学年で、23府県が中学校全学年で実施しています。

    ところが、兵庫県では、小学4年生のままで、中学校では未実施です。特に、中学1年生で未実施なのは、大阪府、広島県、熊本県、兵庫県の4県のみです。

    県教委は、「中1ギャップ」の解消のためと、小学5・6年生は、「兵庫型教科担任制」で加配教員の配置がありますが、少人数授業をするのは、算数など限られた教科のみの上、カリキュラムを組む煩雑さや、指導の平等性を担保することの困難さが生じ、矛盾をひろげています。いじめや、不登校、教育格差に関する支援等、こどもたち一人ひとりにきめ細かな対応ができるよう少人数学級の充実こそ必要です。

    また、教職員の長時間・過密労働も深刻です。

    兵庫教職員組合の「働き方を考えるアンケート」では、長時間労働の1番の原因は、担任業務が増えた事で、「過労死ラインで働いても授業準備や子どもと接する時間が取れない」と、深刻な状態があらためて浮き彫りになりました。教職員の長時間過密労働解消のためにも、少人数学級の実現は待ったなしの課題です。

    2017年4月の公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正では、少人数指導等の推進のための基礎定数の新設がされました。わが党国会議員の質問で、「各自治体の判断で、少人数学級の拡大に活用できる」ことが確認され、文部科学省も、少人数学級について「よりきめ細やかな指導が可能となり、有効な施策だ」と答えています。兵庫県でも早急な対応が求められます。

    少人数学級の拡充のため、加配教員の活用中心でなく、「基礎定数」改善による教職員の抜本的増員と財政措置を国に強く求めるとともに、新設された少人数指導等の推進のための基礎定数を活用するなど、県として小学5・6年生、中学校での35人学級を一日も早く実現すべきです。教育長の決断を求めます。

    ○答弁:教育長 小中学校の確かな学力の育成はもとより、いじめ、不登校などの課題、教員の長時間勤務の解消には、抜本的に現行の学級編制基準を引き下げ、定数改善を行うこと、さらに、生徒指導などの課題に対応するための加配教員の充実が不可欠である。このため、県としては、従来から、学校現場の実態や課題を踏まえた教職員定数の拡充を国に強く働きかけてきた。

    国の加配を活用して新たに小学校5・6年生及び中学校1年生に35人学級を導入することは、現行でも確かに可能である。しかしながら、それをやると県独自で行っている国の加配を活用した、35人学級よりも少ない20人程度の少人数による学習ができなくなる。

    また、小学5・6年生のクラス担任から教科担任に変わる、いわゆる中1ギャップを解消するために対応している兵庫型教科担任制、これもできなくなるので、結果として、新たな課題への対応が必要となるということが生じる。加えて、35人学級となるクラスは、現行では小中学校全体の1割程度に止まるということもあるので、こういったことを総合的に勘案すると、現時点では導入を考えていない。

    このほか、いじめや不登校に関連する課題については、国及び県単独の加配を活用し、支援が特に必要な学校に教員を追加で配置をしており、教職員の長時間勤務の解消に向けましては「定時退勤日」「ノー会議デー」「ノー部活デー」等の完全実施、また、先進事例集に基づく業務改善、外部人材の活用など、県独自の取り組みを進めているが、やはりこういった取り組みとともに、抜本的には定数改善が必要と考えているので、引き続き国に要望してまいりたい。

    5.国民健康保険料(税)の引き下げについてです。

    高すぎる国民健康保険料に、県民の悲鳴があがっています。

    県内の国保加入世帯は、790,648世帯(2017年6月1日現在)で、滞納世帯数は、102,315世帯・12.9%にも及び、私の地元宝塚市でも、31,301世帯が加入、滞納は、3755世帯11.9%という状況です。国保加入者の多くが、年金や非正規雇用者などの低所得者にもかかわらず、協会けんぽなど被用者保険と比べ、高い保険料が滞納世帯をうみだす要因です。

    宝塚市で試算すると、年収400万円で40代夫婦と子ども2人家族の場合、協会けんぽ保険料・年額392,112円に対し、国保料は532,390円と、1.4倍の高さです。

    国保料が協会けんぽより大幅に高いのは、子どもも含め世帯人数に応じてかかる「均等割」、各世帯に定額でかかる「平等割」という国保にしかない保険料算定方式があるからです。

    国保料を協会けんぽ並みに引き下げるには、均等割、平等割をなくすための公費投入が不可欠で、全国知事会も、「1兆円の公費負担が必要」と政府に要望をしています。前述の家族の試算で、均等割、平等割をなくせば、国保料は309,890円と約4割も引き下げ可能です。

    しかし、国は、国保都道府県化を強行し、市町からの一般会計繰り入れ等による自治体独自の国保料軽減をやめさせる等、引き上げを狙っています。今年度は、激変緩和措置として3400億円を投入しましたが、これがいつまで続くのか見通しはありません。さらに国は、予算を重点配分する保険者努力支援制度を導入し、差し押さえなどの収納対策の強化、病院統廃合や病床削減による医療費削減などをおしすすめようとしています。

    このもとで、低所得者が多い滞納世帯への滞納処分が進んでいます。2017年度は、全県で前年比2割増の7,635世帯、約30億円が差し押さえられ、宝塚市では前年比約2倍の584世帯、額は約2.6倍の3億7300万円にもなっています。

    高すぎる国保料が要因で、大規模に無慈悲な差し押さえが行われていると言わざるを得ません。国保料の引き下げは喫緊の課題です。

    国保料をせめて協会けんぽ並みに引き下げるため、1兆円の公費負担を国に求めること。県としても、子どもの均等割減免を創設すること。また、滞納世帯への国保証取り上げや差し押さえを中止させ、市町の一般会計からの法定外繰り入れや独自の減免制度などを維持・拡充するよう求めますがお答えください。

    ○答弁:福祉部長 高齢化の進展等により医療費が増大する中、県では、本年1月に策定した国民健康保険運営方針に基づき、特定健診・特定保健指導等の保健事業の充実強化や口座振替制度の推進による収納率向上対策等によりまして、保険料の伸びの抑制を図っている。

    今年度の各市町への納付金の算定に当たっては、市町の国民健康保険料(税)が急増しないよう、国の調整交付金を活用し、激変緩和措置を講じたところである。

    ご指摘の子どもの均等割保険料については、国民健康保険の制度設計とそれに伴う財源確保の責任、権限を有する国が対応すべきものと考えており、その廃止を提案しているところである。

    また、滞納世帯への対応については、市町に対し、1つには生活実態の把握、2つには分割納付や減免の実施、3つには短期被保険者証や被保険者資格証明書の発行などにより、滞納者の実情に合わせ、きめ細やかな対応を図った上で、なお滞納する特別な事情もない者に対しては、負担の公平性や健全運営の観点から、法令に基づき適切に差押え等の滞納処分を実施するよう助言しているところである。

    市町による法定外繰入については、新制度においても保険料の賦課決定権を有する市町の政策判断とされている。実施の要否を適切に判断されているものと、私どもとしては認識している。

    県としては、今後も、国に対し提案の実現を強く求めるとともに、保健事業の推進等により、国民健康保険制度の持続的で安定した運営を図っていく。

    6.病院の統廃合をやめ、地域医療を守ることについてです。

    国は、医療費抑制を狙って、入院患者を病院から在宅へと追いやる制度改変を続けてきました。

    「医療・介護総合法」に基づく病床削減の仕組みとなる「地域医療構想」を都道府県に持たせ、高齢化のピークである2025年の病床数を、本来必要な152万床から119万床へ、33万床削減するのが、国の計画です。

    この削減を着実に実行するため、都道府県には、各医療機関に「増床中止」「稼働していない病床の削減」などを要求する権限や、従わない医療機関に、▽機関名の公表、▽補助金・公的融資の対象からの除外、▽各種指定の取り消しなど、ペナルティを行なう権限も与えられました。まさに、医療資源の強権的な淘汰です。

    兵庫県では2007年から11年間で30近い地域の中核病院が再編・統廃合の対象となり、病床数が減り続けています。2016年の兵庫県地域医療構想では、2014年比でさらに662床の病床削減をかかげ、病院統廃合を推し進めようとしています。

    阪神間では、阪神北医療圏域が、阪神南圏域に統合され準圏域となったもと、川西市民病院と民間病院、伊丹市立病院と近畿中央病院、三田市民病院と神戸市北区の済生会兵庫県病院、県立西宮病院と市立西宮中央病院などの統合が進められようとしています。

    たとえば、三田市民病院と済生会兵庫県病院の統合問題について、阪神北圏域地域医療構想では「三田市民病院は二次医療圏域に限定しない再編・統合も視野に入れた連携を検討」する、神戸圏域地域医療構想では「三田市など関連圏域と連携した医療確保を推進する」と位置付け、連携と言いつつ統合が前提の医療構想です。三田市の審議会メンバーである神戸大学からは、新専門医制度の導入も踏まえ、両病院の急性期医療の集約化をすすめる旨の意見も出されています。特に、運営主体も医療圏域も違う病院の再編・統合問題に、住民からは「市内から公的病院がなくなるのか?!」と、不安・反対の声が上がるのも当然です。住民合意のない病院の統合再編は進めるべきではありません。

    県は、医師不足の解消を病院の統廃合で進めるのではなく、住民の命のとりでである地域医療を守るために力を尽くすことこそ必要です。

    公的病院の統合・再編で病床数を減らす、地域医療構想の病床再編計画を見直すとともに、住民合意のない病院の統合・再編は行わないことを求めます。お答えください。

    ○答弁:井戸敏三知事 そもそも地域医療構想に示した2025年の病床数は、現在の疾病構造・受療行動が変わらないものとして、2025年の年齢別推計人口を乗じて機械的に計算したものであり、ご指摘のように、病床の政策的な配置を考えたものではない。

    もともと、地域医療構想は、単に病床を削減することを目的とする病床再編計画ではなく、地域に必要な医療機能をそれぞれの医療機関が把握したうえで、自主的な経営判断と地域での話し合いにより医療体制を再構築していくものとして策定している。このような内容の計画ですので、今直ちに見直さなくてはならないとは考えていない。

    また、地域医療構想は、地域の合意のもとで進めていくものであるため、地元医師会や病院・行政関係者から構成されている地域医療構想調整会議で、それぞれの医療機関の役割分担や医療機能の連携について、議論を進めている。

    特に、公立・公的病院は、民間での対応が困難な高度医療、あるいは不採算な医療を提供する病院として、一定規模の病床や一定数の医師、高度な医療設備等の整備が必要となる。一方、今後需要が高まる回復期機能や在宅医療を支援する病院は、身近な地域で確保していくことが重要だと考えている。このような基本的な考え方で調整が進められるものと考える。

    なお、三田市民病院と済生会兵庫県病院の統合再編については、先のあしだ議員の答弁にも述べたが、地域ニーズを踏まえた役割を担えるよう慎重な検討のうえで、適切な医療提供体制が構築されていくものと考えている。

    7.旧優生保護法の強制不妊手術による人権救済についてです。

    勇気ある1人の女性の提訴により、旧優生保護法のもと強制不妊手術による人権侵害の実態が明らかとなり、兵庫県でも、聴覚障害を持つ2組の夫婦が、国家賠償責任を求め訴訟を起こされています。

    旧優生保護法は、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人同意のない不妊手術を認め、国は身体拘束やだましたうえでの手術も容認する通知も出していました。厚生労働省によると、旧優生保護法のもとで不妊手術を受けたのは約2万5千人、うち本人同意のない強制不妊手術は、全国で約1万6475人と報告されています。

    私たち日本共産党は、被害者の声を聞くまで優生手術の事実を知らなかったことに対し、不作為の責任があると謝罪し、被害者が求める補償と人権回復が速やかに行われるよう努力すると表明しました。

    兵庫県議会では、今年6月「旧優生保護法による不妊手術の被害者救済を求める意見書」を全会一致で採択したところです。

    第二次世界大戦後、憲法九条をはじめ平和と民主主義、基本的人権の尊重などを基本原則とする日本国憲法が施行されたもとで、個人の幸福追求権・基本的人権が真っ向から否定される不妊手術が、国の法律によって本人の同意もないまま強制されたことは、深刻な人権侵害であり、国による憲法違反の重大な事態といわざるを得ません。

    また、兵庫県としても、当時「不幸な子どもの生まれない施策」を推進してきた責任は重大です。

    県は国からの依頼で記録資料調査を実施し、県下で330件の不妊手術が行われ、その内65人の個人が特定されたこと。さらに、594件の個人が特定されない資料があることを公表し、「旧優生保護法専用相談窓口」を設置しました。

    しかし、当時保健所のあった神戸市や姫路市の年報では県の資料より多い手術件数の記録が見つかった事や、前述の原告の方も、家族や医師からの説明もなく、行政や病院に記録も残されていません。今後、県自らが実態を把握し、被害者の人権救済に最大限の努力をすべきです。

    戦後の日本国憲法のもとであってはならない人権侵害が国と行政によっておこなわれたことに正面から向き合い、憲法を遵守し、謝罪と全容解明、被害者補償、人権救済を行うよう国に求めるとともに、兵庫県としても「不幸なこどもの生まれない施策」を推進してきたことの反省と謝罪、さらなる県内被害者の実態調査とともに、人権救済に取り組むべきと考えますが知事の誠意ある答弁を求めます。

    ○答弁:井戸敏三知事 旧優生保護法に基づく優生手術については、機関委任事務として、法律に基づいて国の機関として実施してきたものだが、今日の社会的価値観に照らせば、国の事務の履行であったとしても不適切であったと考えている。このため、国に対して、統一的な方針のもと、優生手術の状況について実態把握に努めるとともに、迅速に必要な救済措置を行うことを、全国知事会として、県としても要請した。

    本県としては、これまでから国の調査に対応し、県政資料館や県関連部署の調査を行い、また、手術実施の情報があった「県立ひょうごこころの医療センター」のカルテの悉皆調査を県独自調査として実施するなど、徹底した調査を行ってきた。 一方、ご指摘の「不幸な子どもの生まれない運動」は、安心して出産・育児が行えるよう、①妊娠中からの疾病予防や保健指導、②新生児センターや母子健康センターの整備、③未熟児対策や先天性疾患対策、④愛育組織の結成と育成など、総合的な母子保健対策の一環として実施してきたものである。

    現在、優生手術を受けた方々への救済については、政府・与党ワーキングチーム等でお詫びや一時金の支給を盛り込んだ法案の基本方針がとりまとめられている。今後示されるであろう国の統一的な方針を踏まえて対応してまいりたいと考えているので、ご理解いただくようお願いする。

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