議会報告

  • 2018年09月07日
    その他

    「行財政運営に関する条例(仮称)骨子」「兵庫県行財政運営方針(案)」 に対する意見開陳

    兵庫県行財政運営方針(案)は、「行革」で掲げた財政目標こそ達成する見込みですが、なお震災関連県債の返済、新たに発行した財源対策債などの償還をすすめ、適切な財政運営をすすめる必要があるとして、2019年度から10年間の方針として提案されたものです。
     日本共産党議員団は、財政を悪化させた震災関連県債について、震災復興に名を借り「創造的復興」と称した、震災復旧とは全く関係のない大型開発を行ってきたことにあると批判をしてきました。
     「創造的復興事業」の一例を挙げると「淡路交流の翼港」については県から38億9千万円が支出されましたが、定期航路は開設されず、釣り客の駐車料金が船舶停泊料金を上回っている状況です。
     「海上コンテナ輸送の多重化に対応した港湾整備」については、86億9千万円が支出され、そのうち姫路港広畑港区には5万t超の大型貨物船が入港できるようにと水深-14mの公共岸壁と、それに対応するガントリークレーンを約40億円かけて整備・設置しましたが、年間取扱貨物量予測64万tに対し、平成29年度の取扱貨物量はわずか3万5千t、5万t超の大型貨物船入港実績は平成27年度~29年度にかけては全くありません。その他にも、阪神高速道路=北神戸線、神戸山手線、大阪湾岸道路、大阪池田線等に174億4千万円、関西国際空港2期工事に77億1千万円など、震災復旧とは直接関係のない大型開発事業に創造的復興という名のもと巨額の投資をし、県財政を悪化させてきました。
     県はこうした借金のしわ寄せを、行革と称して福祉・医療、教育などの社会保障削減、県職員の3割削減、公共施設の統廃合によって県民に押し付けてきました。

    県は、行革後の新たな枠組みとして今後10年間の兵庫県行財政運営方針案を示しましたが、その内容は、自動車保有台数が平成7年をピークに減少しているにも関わらず「高速道六基幹軸計画」総延長803kmから、「基幹道路八連携軸」として、総延長距離918kmへと新たに115kmの高速道路整備をすすめようとするものです。また、方針案では直接掲げられてはいませんが、県庁舎の建替えと、それにともなう元町北部再整備計画が打ち出されるなど、基金の活用を基本としつつも新たな借金を積み増す事業計画も浮上しています。
     今回の行財政運営方針(案)は、従来の大型開発事業をさらに推進し、新たな借金をつくる一方で、社会保障費や県職員の枠を財政的に制限し、「選択と集中」の徹底として、県営住宅の統廃合による戸数削減、病院や警察の統廃合、水道事業の広域化、阪神北県民センターと阪神南県民局の統合など、県民の安全・安心の拠り所でもあり、地域創生の拠点ともなる公共施設の統合再編を進めようとするものです。高速道路優先の大型公共事業から、自然災害が多発する中で減災・防災型公共事業への転換、県民の福祉・暮らしが大切にされ、それを担う職員・公共施設の充実を求めて意見開陳を行います。

    1点目は人件費についてです。
     運営方針(案)では、財政運営の目標として、経常収支比率に占める人件費の割合を現状の36%から、2028年度には30%にまで抑えるとしています。将来の少子化を見込んだ教職員数の減ということです。しかし、兵庫県の35人学級いわゆる少人数学級は小学1年生から4年生までに留まっているのに対し、近隣だけをみても奈良県では小1~中3まですべて30人学級になっているのをはじめ、鳥取、岡山、香川、徳島、滋賀、京都、和歌山では一部では30人学級も導入しながら小1から中3まですべての学年で35人学級の少人数学級になっています。近隣他府県と比べても大幅に遅れている35人学級への拡充などを考えても、少子化を前提とした人件費削減ありきの財政フレームは認められません。
     また職員数については、この間の「行革」によって削減率全国1位、人口や面積に対する職員数は全国で2番目に少なくなったということです。方針案では、今後もこの体制を維持するということですが、前回意見開陳でも指摘しましたが、県職場では長時間労働、残業代の未払い、職員の健康問題など、公務職場に最も求められている働くルールの順守や、ワークライフバランスなどと逆行する事態が次々と発生しています。また、土木事務所や福祉事務所、農業改良普及センターも削減され、十分な県民サービスが担えない状況にもなっています。運営方針案では、さらに阪神南県民センターと阪神北県民局の統合も検討の対象になっています。県民サービス低下にもつながる職員3割削減ありきでなく、また法令順守、ワークライフバランスなど、民間職場のモデルともなる適切な職員配置を求めます。

    2点目は社会保障費についてです。
     社会保障関係費等は、国が示す自然増分や消費税増税による充実分の上乗せなどから、現状の34%から2028年度には40%程度を目標にするとしています。県単独の社会保障費についても国が示す自然増分に沿った枠組みに抑えようとするものです。しかし、これでは「住民福祉の向上」を本旨とした自治体本来の役割を果たすことはできません。国の地方財政抑制方針のみを前提とした社会保障費の枠組みではなく、県民サービス向上に向け、国に対し財政措置を抜本的に求めると同時に、行革によって削減された医療費助成制度の復活など県単独社会保障費の充実を求めます。

    3点目は地域医療についてです。
     地域医療については「地域医療構想」で、病床機能の役割分担を明確にした病床数の削減を、「保健医療計画」では公立病院との再編・ネットワーク化を推進するとしています。
     地域医療構想については、2018年度内を目途に各病院は対応方針を決定することになっています。しかし、厚生労働省が進捗度合を図る事を目的に行った調査では2017年度末で方針を決めた病院・診療所は約1万4千施設の内、117施設に留まっており、そのうち108施設は公立病院です。全体の約8割を占める民間病院はほとんどが未決定となっています。現場の混乱が伺えるのではないでしょうか?地域医療構想による強引な病床削減計画の中止を求めます。
     保健医療計画では、西播磨圏域・阪神北圏域について「高度・特殊な救急医療の提供を図るため他の圏域との連携が必要である」としています。本来、それぞれの医療圏域で完結されるべき医療提供体制が圏域毎では確保できないため圏域間の連携・統合によって医療提供体制を確保しようとするものです。
     西播磨地域内では3次救急医療施設までの到達に30分以上かかる地域が多く存在し、60分以上かかるエリアも北部に存在しています。阪神北圏域でも同様です。多量出血などの高度・特殊な救急医療を必要とする患者の場合、30分後の死亡率は約50%とされています。
     地域の医療格差をなくし、地域医療を充実させることは住民の切実な願いであり、行政に求められる最も大切な役割でもあります。西播磨、阪神北圏域で不足している医療資源については圏域間連携でなく、圏域内完結を追及し充実に努めるべきです。

    4点目は水道事業についてです。
     方針案では、水道事業について「県内水道事業体との広域連携等の取り組みを推進する」とし、平成30年3月には「兵庫県水道事業の在り方に関する報告書」をまとめています。報告書では経営改善を目的に、市町毎に設置している浄水場の統廃合や、自己水源から県営水道への転換などを推進しています。報告書では浄水場統廃合のモデル区域として北播磨ブロックを例に挙げ、現在多可町、西脇市併せて8つある浄水場を、1つの新大型浄水場に統合することによって経営改善効果が図られるとして試算がさています。県下全域でこの様な浄水場や水源地の統廃合が検討すべきとして挙げられています。
     一方で、留意点として「災害によって集約化した大規模浄水場が稼働しなくなった場合、復旧までの間、給水が完全停止するリスクが高まることからバックアップ施設やバイパスラインの検討も併せて必要になる」との指摘もされています。
     今年7月の西日本豪雨災害では中国自動車道の法面崩壊に伴い、県営水道の広域送水管が水平に押し出され破断するという災害事故が発生しました。バックアップ管路の活用や、市の自己水源活用、節水呼びかけなどで断水という事態は危機一髪避けることができましたが、水道事業の広域化は、こうした災害時のリスクも広範囲に及びます。
     ご存じのとおり、台風21号では想定外の高潮によって関西国際空港が浸水し、唯一1本の連絡橋が破損したことによって空港機能は完全に麻痺してしまいました。
     5日に発生した北海道地震では、道内の50%以上に電力供給していた大規模火力発電所が損傷し、その影響で道内全域で停電が発生しています。本日付神戸新聞社説は「大規模な発電所に頼る一極集中型の脆弱さが露呈し、電源分散型システムの必要性が指摘されているが、教訓はいかされていない」と書きました。
     想定外の災害が次々と発生する中、経済性のみを追求する水道事業の広域化、水道施設の統廃合ではなく、国への予算措置も求めながら災害に備えたリスク分散こそ必要です。

    5点目は教育施策についてです。
     運営方針では、「教育施策」として、「ひょうご教育創造プラン」では、教職員の働き方改革を行うとしています。
     適正化推進プランでは、1ヵ月の残業時間が、小中学校ともに60時間をはるかに超え、休日の超過勤務を含めると、中学校では過労死ラインの80時間を超えるという実態が明らかになっています。しかしその解消方向は、「ワークライフバランスの実現に向けた『3つの心構え』」として、意識改革を図ろうというものですが、これでは根本的な解決にはなりません。
     人件費の部分でも触れましたが、教育施策と教員の働き方改革で最も必要なことは、少人数学級の実現と教員定数の抜本的な増員です。少人数学級と教職員の定数増を求めます。

    6点目は進度調整地についてです。
     方針案では「地元自治体等の理解と協力を得ながらその利活用を検討する。利活用が困難な場合は、県有環境林としての活用も検討する」としています。
     平29年度末時点において、公共事業用地特会が所有する長期保有地と、企業庁が所有する進度調整地も含めた未利用地の面積は1939ha、簿価は1096億円になります。
     その内、企業庁が保有する進度調整地の面積は1379ha、当時の買取価格にこれまで支払った利息と管理費を合わせた帳簿価格、いわゆる簿価は499億円になります。簿価に含まれる累計利息額は71億円、管理費は3億円、平成29年度単年度で支払った利息は2億円、年間管理費は100万円になります。
     また、これまで県有環境林として買い戻した用地は平成29年度末で2180ha、1423億円にもなり、県有環境林買戻しに充てた累計利息額は45億円、管理費は1.1億円にもなり、平成29年度単年度で支払った利息は11億円、年間管理費は4千万円にもなります。
     少なくとも進度調整地については「乱開発防止」ではなく、「経済性の発揮」を目的に企業庁が公社から買い受けた用地です。巨額の血税を投入しながら「経済性の発揮」という用地取得の目的を果たせないまま、事業の失敗を曖昧にし、県民への説明のないまま県有環境林としての活用など県民の理解を得ることはできません。事業失敗の総括や、進度調整地の時価評価を県民に明らかにすべきです。

    最後に。提案された、行財政運営方針案では、住民福祉増進という自治体本来の役割が十分に発揮できる方針になっていません。これまでも指摘してきましたが大企業優遇、大型開発優先の県政運営を抜本的に改めることを求めて意見開陳とします。

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