議会報告

  • 2018年08月17日
    その他

    行革特別委員会 「行革検証」に関する意見開陳 入江次郎

    11年間にもわたる過酷な行革によって、県民、市町、職員には大きな負担が生じています。行革で削減された医療費助成制度など、県民にとって必要な事務事業の復活、市町との共同事業の負担割合の見直し、職員の適正配置を求めて以下、意見を述べます。

    1点目は、「住民の福祉増進」を目的とした地方自治体が最も手厚く措置を講じなければならないはずの低所得者への医療費助成制度が県行革によってばっさり削減されました。県単医療費助成制度の復活を求めて意見を述べます。

    県は、高齢者、重度障がい者、ひとり親家庭の医療費助成制度について、平成20年度には県単独社会保障関係費として157億円支出していたものを平成30年度には120億円へと、対20年度比で81%、単年度あたりでは37億円削減しました。

    とりわけ、ひとり親家庭医療費助成制度については、助成対象となる所得制限を268万円未満から95万円未満へと大幅に引き下げ、助成対象世帯を削減しました。対象から外された父母、多くは母親ですが、これまでの外来1日600円、入院については月額負担限度額2400円等々だったものが、助成制度から外れたことによって外来入院ともに通常通りの3割負担となってしまいました。

    高砂市では3年~4年に一度、全ての一人親家庭を対象に「ひとり親家庭の生活と意識に関するアンケート調査」を実施しています。その中で「経済的理由のためにできなかったこと・見合わせたこと」との問いに対し、18.2%もの母親が「医療機関への受診」を挙げています。また、アンケートにある自由記載欄では「母子医療費の免除がなくなったため、中々病院に行くことを我慢してしまい、体調不良になると不安になる」。他にも「母子家庭の所得制限が低すぎる。子どもは無料でありがたいですが、親の方にも少しでも安く病院に行けるようにしてほしいです。お願いします」。他にも「共働きの家庭と比べてはるかに収入が低いにもかかわらず、母子医療が受けられない。早く受診すれば完治できることも、見合わせたことで手遅れになることもある。もう少し所得枠を広げてほしい」等々、切実な声がアンケート調査に多数寄せられています。地方自治体の最大の使命は住民福祉の増進にあります。それにも関わらず、行革による医療費助成制度の見直しによって受診抑制が起こっています。行革によって削減された医療費助成制度の復活を求めます。

    2点目は、県と市町共同事業について、削減された県負担分の復活を求めます。県行革によって、現在、市町が最も必要としているバス対策補助事業、コミバス対策費補助、鳥獣被害対策事業、老人クラブ助成事業などの、県と市町の共同事業について県負担分が削減されました。

    平成28年に県公館で行われた最終2か年行革プランの市町説明会では「県の考えで一方的に市町の負担を上げるのはやめて頂きたい」と、厳しくも切実な声が市町から寄せられています。県民にとって欠かせない共同事業については、市町の意見をよく聞き県負担分の復活を求めます。

    3点目は、職員の適正配置と、廃止された出先機関の復活を求めます。

    県の、10年間の職員定数削減率は3割削減によって全国1位に、人口、面積に有する職員数を示す「定員回帰指標」は全国で2番目に少ない職員数になったと報告がされました。

    一方で県職場は過酷を極めています。

    過労死判例では、死亡した直近2か月あたり連続して月80時間以上の超過勤務があった場合に、超過勤務と死因との因果関係を認める過労死判例が確立しています。

    平成29年度の、同一職員の超過勤務時間数をご紹介します。11月192時間、12月230時間、1月321時間、2月108時間にもなります。過労死基準の超過勤務時間数を数倍も上回る異常な実態です。

    職員課が実施している健康悩み相談では「不安、イライラ」「憂鬱気分・意欲低下」「職場への不適応感」などの相談が多く寄せられており、県職場ではこの10年間、毎年自殺者を出しています。

    また、この10年間、好景気不景気に関わりなく県内中核市では横ばい、上昇傾向にある職員応募倍率が兵庫県採用試験では下降の一途をたどっています。合格者の辞退者数も増加傾向にあり、辞退後の就職先として、その他の国家公務員、地方公務員を選ぶ人数も増加傾向にあります。これでは職員の質は下がり、ひいては県民サービス低下へとなってしまいます。県職場の実態が学生の間に漏れ広がり、就職先として敬遠されているのではないでしょうか。

    また、質疑でもご紹介しましたが、2015年には北播磨県民局の一部の事務所で、管理者が補助簿で確認した超勤時間数と異なる時間数を命令簿に書き、超勤代が未払いとなる事案が発生しています。

    また、2017年には、考古博物館で、実際の超過勤務時間数を何らかの変換ルールを通じて当初予算にあった時間数に改ざんし、残業代の未払いを発生していたことも明らかになりました。東播磨県民局でも、考古博物館でも「超勤予算がない」「超勤予算のフレームを守るため」というのが未払いの要因となっています。

    考古博物館の超過勤務手当の当初予算額と支給実績を紹介します。

    平成25年度当初予算額3,258千円に対し、支給実績は 3,252千円で予算と支給実績の差額はわずか6千円、平成26年度は当初予算3,354千円に対し、支給実績は 3,350 千円で差額は4千円、平成27年度は3,698千円に対し 3,695千円で差額は3千円、平成28年度は 3,855千円に対し 3,854 千円で差額はわずか1千円となり、執行率は当初予算ぴったりの99,97%です。しかし、実際には当初予算を大幅に上回る超過勤務を行っていたにも関わらず超勤予算のフレームを守るために超過勤務数を改ざんしていたことがこのたび明らかになりました。解っているだけでも過去3年分の未払い賃金額は1380万円にもなり、遡及払いが今後されるということです。

    当局は今回の行財政構造改革の検証の中で「行革プラン財政フレームの範囲内での財源対策に止めるなど、収支不足額と財源対策を適切に処理してきた」と強調されていますが、実際には当初予算をオーバーした超過勤務時間数については、改ざんまでして当初予算の範囲内での支出に留めていたということです。職員の3割削減が過労死水準の数倍にもなる異常な超過勤務を発生させ、一方では行革の予算フレームを守るために超過勤務時間数の改ざんまで行っていたことが明らかになりました。

    また、県と県民、市町との情報交換の場でもあり、県民・市町の拠り所でもあった土木事務所、保健所、農業改良普及センターは統廃合され地域の出先機関は次々と廃止されました。先ほど紹介した市町説明会では「地域からの要望が強い地域農業普及所は存続してほしい。」との切実な声が出されましたが、平成29年度には廃止された農業改良普及センターの代替として設置した12か所全ての地域普及所まで廃止してしまいました。地域普及所への相談件数は平成21年度には2835件あったものが平成27年度には550件へと大幅に減少しています。地域普及所になり機能が低下したことで、農家の足が遠のいてしまったというのが実態ではないでしょうか。

    また、佐用町で発生した大水害時には、佐用土木事務所を廃止してしまったために職員が現場に到着するのが随分遅れたとの批判の声も県民から出されています。

    職員の適切な配置と長時間労働の是正を求めます。また地域創生と災害対策が大きな課題となる中で、県と地域住民・市町との貴重なコミュニティの場でもあり、県民の命を守る拠点ともなる出先機関の復活を求めます。

    最後に、行革期間中でも維持してきた大型公共工事、大企業に有利な企業立地補助金の見直しを求めます。

    投資事業については、異常気象による自然災害が多発する中、防災・減災事業の拡充・前倒し実施が求められているにも関わらず、平成19年度比85%水準に抑制され、県管理河川の改修率は59.6%、土砂災害警戒区域の整備率は26%に留まっています。また、道路・河川の維持管理については「河川の草刈の回数が減った」「道路の補修をしてくれない」「河川堆積土砂や樹木の撤去をしてくれない」等々、県民からは安全・安心に係る声が多く寄せられています。

    一方で、浜坂道路・北近畿自動車道路・東播磨自動車道路の高規格道路の事業費については、地方財政計画で投資事業費が抑制され、行革期間中であるにも関わらず、毎年補助事業分の10%~20%を確保し、約1396億円が支出され、同期間中の補助事業通常分全体額1兆1159億円の1割強にも当たります。また、県は「投資事業費を抑制していることから県債発行額は抑制している」と、言いながらも同期間に同高規格道路に充てた県債発行額は膨張を続け総額で約653億円にもなります。

    大型公共工事では地域建設業者の仕事おこしにもならないことはこれまでも指摘してきた通りです。地域創生、災害に強い県土というのであれば、大型公共工事から防災・減災事業への転換を求めます。

    産業立地促進補助金については、平成15年に条例が施行されて以降、平成29年度までに、行革期間中も含めて約230億円の設備投資補助金と約25億円の新規雇用補助金が支出されました。撤退による一部返還はあったものの設備投資補助金総支出額の約7割にあたる162億円がパナソニックグループに支出されました。

    産業立地促進条例は平成15年当時、有効求人倍率が0.43倍程度に低迷する中で「雇用の創出」を目的に条例は作られましたが、平成30年6月時点の有効求人倍率は県下平均で1.30倍に、淡路地域など、条例で云う雇用促進地域では平成29年12月には2.17倍に直近の平成30年6月には1.92倍にもなっており、雇用の場を確保することより人手不足が地方ほど深刻です。

    「雇用の確保」から、「雇用の質の改善」こそ、今求められています。呼び込み型の大企業優遇の条例を見直し、地域の中小企業と、そこで働く人を応援する雇用の質の改善策こそ必要です。

    大型公共工事優先、大企業優遇の行政を改め、行革で削減された県民サービスの復活と、適正な職員配置を求めて意見表明とします。

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